201110_心の温かい人は身体が冷えているのかふぅ、と一吹きしながら、冷えた手を温めようとする仕草。
結局呼吸もそこまで温かくないし、風を手にあてるわけだから、
そこまで温まる気もしないのだけれど。
元来、こういった仕草で温まるものだと思ってしまっている。
(ほんと、人間って滑稽だよねぇ。)
そんなことを思いながらも、自身も手に息を吹きかけ、
外回りの暖を取ろうとしていた。
「おう、足立。お前も外回りしていたのか。」
呼びかけられた声の方を見やると、煙草を咥えながら堂島さんがこちらにやってきた。
「歩き煙草いけないんだぁ~。」
「うるせぇ。そこに灰皿あるだろうが。」
ポケットに手を突っ込み、こちらもこちらで寒いのだろうか、
暖を取ろうとしている様子だった。
(ジャケットも来ておらず、腕まくりも相変わらずなので、
まずはそこをどうにかした方が良いと思うのはやめておいた。)
ふぅ、と煙草の煙を吐き、一服した堂島さんは、ふと口を開いた。
「そういや、心があったけぇ奴は、体は寒いって話があるよな。」
「あぁ、ありますね。ほんとかどうかはわかりませんけど。」
さりげなく、堂島さんの頬を手で触ってみると、とても冷たくなっていた。
「うひゃ。冷たい!」
「文句あるかよ。ったく。お前はどうなんだ?」
堂島さんは少しむすっとしながら僕の頬を開いている手で触った。
すると、温かかったらしく、無言で撫で始めた。
「あの、おっさん二人でこんな状況、変だと思いますけど…。」
「恋人だからいいだろうが。」
「…っ、まぁ、そう、っすね……。」
まだ恋人関係になってから間もないため、むず痒く思うも、
悪気もなく堂島さんがそう言い放つものなので、反論せず、触られ続けることにした。
「でもな、俺は、頬が温かい奴は、表情豊かで、素直さがあるんじゃないかって思うんだよな。」
「へぇ~。じゃあ堂島さん、僕が今考えていること、わかるんですか。」
「あぁ、勿論。…このまま直帰したい、とかだろう。」
「うぐっ、せ、正解です…。寒いし帰りましょうよ~。」
シャツの端を掴んで上目遣いで強請ってみると、堂島さんは煙草の火を消しながらこう言った。
「お前が俺の身体も全部温めてくれるならいいぞ?
…お前の熱を分け与えてくれるならな。」