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GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

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    しおり
    三池書店②審神者
    妖怪好きな貧乏学生。
    中高時代に好きだった人から酷い言葉を言われ振られて以来、自分の容姿にコンプレックスがある。
    普段はホワホワした雰囲気だが、意外と激しい音楽が好き。
    推しは、メタルバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のベーシストHIKARIさん。
    ある日見つけた、品揃えと店主がめちゃくちゃ好みの本格派古書店「三池書店」に通い詰める。

    三池光世(大典太光世)
    表向きは本格派古書店「三池書店」の店主。
    裏の顔はメタルバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のベーシストHIKARI。
    学生時代、民俗学のゼミで妖怪の研究をしていたので、同じく妖怪が好きそうな審神者に親近感を抱き、無償で在庫の本を読ませてあげている。
    嫌いなのは、本の良さも分からないのに、希少な書籍をインテリア目当てで買っていく輩。
    店番をしている時は、基本的に身バレ防止のため和装。

    三池ソハヤ(ソハヤノツルキ)
    メタルバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のドラマーSONIC。

    左門江雪(江雪左文字)
    メタルバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のギタリストLICKA。

    肥前忠広(肥前忠広)
    メタルバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のボーカルHIRO。
    温い空気を掻き回す扇風機の音と、アイスコーヒーの氷が溶ける涼しげな音。春よりも少し濃厚に漂う、古いインクと、微かな煙草の匂い。
    梅雨が明け、本格的な夏の始まりである。
    効いているのかいないのか分からないクーラーが、申し訳程度の冷風を吹き出す三池書店の一階、店台の奥にある座敷で、審神者は一冊の本を読み耽っていた。外ではジワジワと、暑苦しい蝉時雨が降り注いでいる。
    時折、本を床に置いてコーヒーを啜り、ハンカチで手を拭いて再び本に戻る。
    初夏の頃、店主から言われた「また来るといい」との言葉に甘え、審神者はその後も暇ができれば三池書店に通い詰めていた。
    通い始めの頃は、自分では到底手の出ない希少な書籍を見せてもらうだけの間柄だったが、今ではコーヒーや茶菓子まで頂いている。ある日店主が「俺だけ飲むのは気まずいんでな。」と、自分の分までコーヒーを用意してくれたのがきっかけだ。
    店主の淹れてくれるコーヒーはとても美味しい。あれで愛想さえあれば、カフェを開いてもそこそこ繁盛することだろう。
    さて、当の店主は、現在裏庭に煙草を吸いに行っている。
    その間、本を読んでいていいから、客が来ないか見ていてくれと頼まれたのだ。
    時折、審神者は入り口の方をぼんやり見つめるが、誰もが前だけを見て通り過ぎていく。それはもう、この店には目隠しの結界が張られているんじゃないか、なんて妄想も現実味を帯びるくらいに。
    カラン、とグラスの氷が溶ける。
    結局、客は一人も来ないまま、店主が生暖かい外気とほろ苦い香りを纏って裏庭から戻ってきた。
    こちらを一瞥して店台に戻る店主の背中を見て、再び本に目を落とす。
    昭和の中頃に書かれた、そこまで希少でもない本だ。値札には、660円という店主の角張った手書きの文字。
    実は、1ヶ月ほど前に、興味のある希少本はあらかた見終わってしまっていた。それを店主に伝えれば「別に何を読んでくれても構わん。むしろ、安い本を読んでいてくれた方が気が楽だ」と言われたので、お言葉に甘え、最近は普通に買える値段の本まで読ませて頂いている。
    ああ見えて店主は、貧乏学生である自分の身の上を慮ってくれているらしい。
    その厚意がとても有り難い。
    とても有り難いのだが、あまりに一方的に受け取ってばかりで、正直心苦しい気持ちもある。
    勿論、店主から受け取るものを拒むつもりはない。というか、非常に助かっているので拒めない。
    だからこそ、せめて気持ちよく受け取れるよう、店主やこの店に何かしらの貢献がしたいのだ。
    とは言え、SNSでバズるのは嫌と言っていたし、売り上げに貢献なんて貧乏学生の自分には夢のまた夢だ。
    堂々巡りする思考の中、一瞬「身体で払う」というネタとも深層心理の反映ともつかない案が浮かんできたが、
    いやいや絶対ないでしょ、そもそも、あんなにかっこいい人と私じゃ、どう見ても私が払ってもらう側だしwとセルフツッコミを入れる。
    そこで、はたと思い留まった。
    「身体で払う」と言っておいて、肉体労働するというギャグをどこかで見たような…?
    これだ!
    審神者の頭上に電球が灯る。
    このお店でお手伝いをすれば、このご恩を返せるかも!

    早速審神者は、店台でアイスコーヒーを啜りながら、暇そうに売り物の本を読んでいる大きな背中に声をかける。
    「あの、すみません。」
    どうした?と背中越しに審神者を見る大典太。
    「いきなりなんですけど、ここでお手伝いをさせて貰えませんか?」
    その問いかけに、大典太は明らかに迷惑そうな顔をすると、
    「ウチにそんな金はない。」
    逃げるように目線を本に戻した。
    「違うんです、無償でいいからボランティアをさせて貰いたいなって…」
    自分がバイトをしたいと言っている。そう勘違いされたのかと思い、釈明を述べるが、
    「こんな暇な店だぞ。人手は俺一人で間に合ってる。」
    背を向けたまま、陰気な大男は本のページを捲った。
    その言葉に、店主が煙草を吹かしている間も、客は誰一人現れなかったのを思い出す。
    「大体、俺は人を使うのが得意じゃない。」
    うーん、と審神者は悩み込んだ末、
    「でも、タダで色々読ませて貰って、こんなに美味しいコーヒーまで淹れてくれて、私が貰うばっかりじゃないですか。」
    と食い下がると、
    「あんたが就職して金が出来た時、売上に貢献してくれればそれでいい。」
    尤もな事を言われて再び突っぱねられた。
    「それに、暇な時あんたとする妖怪談義は嫌いじゃないしな。」
    些か和らいだ口調で告げられて、頬が熱くなったのは、暑さのせいだけじゃないだろう。

    結局その日は、お手伝いをさせてもらうという提案は受け入れられないまま帰路に着いた。
    電車に揺られながら、どうすればお手伝いをさせて貰えるか考えを巡らせてみるものの、これといって冴えた答えは見つからない。
    車窓を流れてゆく、明かりの灯り始めた夕暮れの街をぼんやりと眺めながら、判然としない気持ちで審神者は溜息をついた。

    手伝いか…。
    閉店作業を終え、裏庭で煙草を吹かしながら、大典太はぼんやりと考える。
    濃紺から金色へとグラデーションを描く空には、燦然と輝く一番星。
    昼間あれだけうるさかった蝉時雨は、どこか侘しさを感じさせるヒグラシのそれへと変わっていた。
    手伝いたいという気持ちはありがたいが、人手は自分一人で足りている。
    何せ、こんな客の少ないオンボロ古書店のこと。
    普段は、売るのも買うのも、常連がパラパラと来るだけだ。
    学者や蒐集家が亡くなった折、軽トラを借りて蔵書の買い付けに向かう事はある。そういう場合、正直もう一人くらい人手があれば有難いと思わないでもない。だが、あれは随分な力仕事だ。男の自分だから何とかなるのであって、女にはかなりキツい作業となるだろう。
    やっぱり要らんな。
    大典太は再度、手伝いは不用だと結論付ける。
    そもそも、あそこまで対等に話せる相手というのは珍しいのだ。
    自分には友人が少ない。まして、専門について話せる相手と言ったら更に限られる。
    バンドメンバーで言ったら、肥前は学部も違う上に3年で中退しているし、江雪は民俗学ではなく史学系のゼミに進んだ。ソハヤに至っては大学自体が体育系だ。
    同じゼミに目を向けると、今でも関わりがあるのは鬼丸くらいか。奴とは今でもたまに飲みに行くが、恐ろしいほど何も喋らない。口数は、自分も多い方ではないが、それに輪をかけて酷いのだ。あれだけ無言を貫く相手に、スムーズに話を切り出せるほどのコミュニケーション能力は、生憎持ち合わせていない。それを押して、話題を見つけ話しかけても「ああ」とか「そうか」しか返ってこないので、botにでも話すような気分になってくる。いや、最近はbotでももう少し気の利いた返しをするだろう。
    人と話すのは、そこまで嫌いではない。ただ、適切な相手がいないだけで。
    そんな中、やっと見つかった貴重な話し相手なのだ。しかも、定期的に向こうから会いに来てくれるときた。それ以上、何を望む事があるだろう。
    その上更に店の手伝いをさせるなんて…。
    「それこそ俺が『貰いすぎ』だ。」
    大典太は独りごちて、古びた赤い灰皿に煙草の火を押し付けると、店に戻っていった。
    「えぇ〜?そのおじさま、アンタの事が好きなんじゃないの〜?」
    「…それはないよ…。」
    審神者の部屋、黒髪ストレートロングの強めギャルがからかうような声を上げた。彼女の名前はさやかちゃん。審神者と同じ学部の友達で、モータースポーツ部のマネージャーだ。審神者と同じアパートに住んでいて、たまにこうしてお互いの部屋を行き来している。
    「ゆーてさ、同じ趣味って最強ぢゃん?あーしもダーリン落とすために全力でクルマの勉強したかんね。」
    彼女は、同じモータースポーツ部のエース、工学部3年の豊前先輩と付き合っている。付き合う前から、どうやったら振り向いて貰えるかとか、自分も走り屋になるべきかとか、色々な相談を受けてきた。
    半年ほど前のバレンタインに「落とせた…!落とせたよぉ〜!マジ信じらんないんだけど!夢かもしんないからあーしの事一発ぶん殴って!」と泣き笑いで報告に来たのが懐かしい。
    その後も、毎週土晩になると自分をほっぽり出して峠に行っちゃうとか、ダーリンのドリフトを体験させてもらうにはどうしたらいいかとか、そういう取り止めのない相談を受けてきた。
    「でもさー、今まではあーしがアンタに相談するばっかだったけど、たまには相談受けるのもいいもんだね!」
    審神者が用意したお煎餅を齧りながら、ギャルはニッと笑う。
    「相談じゃなくて、近況報告だってば!」
    審神者は友人の言葉を慌てて否定した。
    「それに…私が好きなのはHIKARIさんだけって決めてるし…」
    「えぇ〜?だって、そんな絶対付き合えないオトコのケツ追い回してても虚しくね?」
    と、半年前に泣きながら「無理でもいい、付き合えなくてもいいから、豊前先輩が好き…!」と宣っていた口が言う。
    「私はこの通り太ってるし、顔もそんなに良くないから、全ての男性は『付き合えない人』なんだよ…。」
    「んな事ないって!世の中、200キロぐらいの女が水着でピザ食ってるだけのAVもあるらしいし、第一アンタ自分で言うほどブスじゃないし。」
    「そう…なのかな?」
    前者に関しては実在自体疑わしいし、仮にそんな物が存在したとして、よっぽどの変態向けだろうから参考にならないと思いつつ、「ブスじゃない」という言葉には少し安堵する。
    「普通にかわいーって!おっぱいもデカいしさ。」
    確かに、思春期の頃顔を埋め尽くしていたニキビは大学になったら治まったし、校則がないから眉毛や髪型も一番似合うものにできている。
    しかし、中高時代に好きだった人やその周囲の人間から投げ付けられた「デブ」「ブス」という言葉の棘は、一旦刺さってしまえば中々抜ける事はない。
    「あーしもアンタぐらいおっぱいがあればなぁ〜。ダーリン、あーしみたいなニボシ体型じゃなくて、ボンキュッボンが好きそうだし……。」
    「でも、付き合ってるって事は、先輩はさやかちゃんの体型が一番いいと思ってるんじゃないかなぁ。」
    「アンタさー、ほんっと、そーゆートコ…!」
    見た目にそぐわず純真な友人は、真っ赤になった顔を膝に埋めた。
    「とっ、とにかくさぁ!それだけ良くしてもらって、返さなくていいっつってんなら、多分そのおじさまはアンタの事が好きなんだと思うよ?そりゃー、厳しい目で見れば、恋愛的な意味かは分かんないけど……」
    「うーん、恋愛的な意味じゃなしに好き、って言うのなら、分からなくはないかも…」
    店主の顔を思い浮かべながら、審神者は納得する。
    「だったらご厚意に甘えりゃいーじゃん。向こうだって、10コも下のJD相手だからいい顔したいんじゃね?」
    「そうは言ってもやっぱり、お手伝いしたいなぁ〜…」
    「え?何?やっぱりアンタもそのおじさまの事好きなの?」
    「すっ、好きな訳ないでしょ?!だって、一回りも歳上の人だよ?向こうから見たら、私なんて姪っ子みたいなもんだろうし、第一、普通に彼女さんや奥さんがいるかもだし…」
    ギャルは、目の前の友人が「自分が相手を好きになれない理由」ではなく「相手が自分を好きになる筈ない理由」ばかりを並べ立てている事に気付く。
    「それに、すごくかっこいい人だからさ…。私なんかとは絶対釣り合わないよ…。」
    「かっこいい」という言葉を出した時、うっとりと遠い目をした審神者に、ギャルは、やっぱりアンタそのおじさまの事好きになり始めてるよ、と思ったが、今は何を言っても無駄だと思ったので苦笑だけして口をつぐんだ。
    ギャルが「そろそろバイトだわ」と言った次の瞬間、外からドルドルとバイクのエンジン音が聞こえる。それを聞くなり友人は、パッと花の咲いたように瞳を輝かせ、部屋を出て行った。
    窓の外から「乗れよ」「うん、ありがとね///」という会話が聞こえ、エンジン音が遠ざかっていく。
    いいなー、さやかちゃんは可愛くて…
    審神者はハーッと大きく溜息を吐いた。
    現実の世界で、誰かを好きになって、その好きになった人に愛される。
    そんな経験を、さやかちゃんみたいな可愛い子は当たり前のように享受できるのだ。
    正直、羨ましくないと言ったら嘘になる。
    けれど、自分には妄想という武器がある。
    可愛くなくても、太っていても、頭の中で想うのは自由なのだ。
    現実世界で関わりのあるどんな男性より、HIKARIさんの方がかっこいい。
    関わりのある人を好きになれば、どんなに無謀な相手でも、淡い期待を抱いてしまう。淡い期待を抱き、相手の言動に一喜一憂して、知らぬ間に育った期待を、ある日突然ボロボロに打ち砕かれるのが、現実世界の恋愛だ。そんなの、虚しいだけ。
    だったら、最初から絶対届かないと分かっている遠くの人を想った方が、ずっといい。最初から、期待の芽なんて育てなければ、それが枯れる事もないのだから。
    「何か、暗いこと考えちゃったな。。。」
    審神者は、フーッと息を吐く。
    「お手伝いは、あの人が好きとかそーゆーんじゃなくって、ただの恩返し。恩返しをさせてもらえないから困ってるの。」
    誰でもない自分自身に言い聞かせるよう、審神者は呟いた。

    翌日、学食で昼ごはんを食べながら、審神者はまだ「どうやったら三池書店でお手伝いをさせて貰えるか」について悩んでいた。
    悩みからか、箸は殆ど進まない。
    「そげん浮かん顔して、どうしたと?」
    ふと顔を上げると、そこにいたのは商学部の博多くんだった。1年次の共通教育で同じ講座を取っていたのが縁で仲良くなり、今でも学食で見かければ一緒にご飯を食べる仲だ。
    「悩みでもあると?」
    お盆を自分の前の席に置きながら、着席する博多くん。
    彼は、同じ2年生ながら、ビジネス書なども熱心に読んでいて何かと頼りになる。審神者はこれ幸いと、堰を切ったように一連の悩みを話し始めた。
    「そりゃー典型的なYouメッシェージばい。」
    一通り話を聞き終わった友人からは、聞き慣れぬ言葉が飛び出してきた。
    「ゆーめっせーじ…?」
    思わず首を傾げる審神者。
    「要は、相手主体で要求ば伝えようとするメッシェージん事ばい。」
    彼によれば、今の審神者は、相手に何かして欲しいと一方的に求める要求をしているという。
    「むしろ逆だよ?私はただ、ご恩を返そうとしてるだけで…」
    「やーけーんー、そーれがいかんばい!」
    博多は呆れたような声を出す。
    「大体、そん店長しゃんは手伝いは要らんって言いよーやろうが。」
    「それはまぁ、そうだけど…」
    「要らん物ば無理矢理押し付けようとするとは、ただのエゴばい。」
    箸を指示棒のように使い、真っ直ぐ厳しい目で自分を見つめる友人に、本質を突かれたような気がして若干ギクッとする。
    そうかもしれない。自分は、あのお店にもっと堂々と入り浸る口実を作りたいだけだ。でも…
    「だったら、どうすればいいの?」
    「Iメッシェージば使えば良か。」
    「あ、あああ、愛メッセージ…?別に私、あのお店のご主人が好きとか、そーゆーんじゃ………」
    「何ば勘違いしとーと。愛だの恋だのの『愛』やなか。YouとI、『自分』の方の『I』ばい。」
    露骨に動揺する審神者を、友人は赤いセルフレーム越しに白けた目で見つめる。
    「なっ、なるほど、『You』と『I』ね!あはは、そうだよね!」
    わざとらしく目を逸らして笑う友人の姿に博多は、今まで少しだけ、本当にほんの少しだけ想定していた「大学生活初めての彼女は目の前の子になるかもしれない」という可能性を完全に捨て去った。
    「で、具体的にIメッセージって、どんな風に頼めばいいの?」
    「聞く限り、その店長しゃんは相当親切なお人ったい。それば利用しぇん手はなか。」
    彼によると、ボランティアをする事で審神者が享受するメリットを提示すれば、ほぼ確実に折れてもらえる、というのだ。
    「えぇっ?もう既に、何万円もするような希少本をタダで見せてもらったり、美味しいコーヒーやお菓子を頂いたりしてるんだよ?」
    「やけん、この作戦で良かとよ。」
    彼によれば、基本的に提案は相手の求めるところ、すなわち「ニーズ」を満たさなければ通らないと言う。そして、話を聞く限り、店主の「ニーズ」は審神者に親切にすること。逆に、審神者から親切にされるのは望んでいない。
    だからこそ、審神者が「ここで働けたら嬉しい」ことを前面に押し出す。
    それでもダメなら、「ここで働けなかったら、自分にはこんなデメリットがあります」と伝える。
    あくまで自分本位でいい。審神者の望みを叶えたいと思っている店主にとって、審神者のメリットは、すなわちそのまま店主のメリットとなるからだ。
    それが、博多の持論だった。
    本当かなぁ、と半信半疑のまま、お互い午後の講義に向かう。
    別れ際、友人は「じぇっっっっったい、後で俺に感謝する事になるけんね。そん時は、ジュースば奢って貰うばい。」と、勝利を確信するように手を振り去っていった。
    大した自信だが、実際今まで彼の言う通りにして失敗した事は一度もない。今回の話も、理論的には間違ってない、と思う。
    第一、自分だけの考えでにっちもさっちも行かなくなっていたのだ。ここは博多くんを信じよう。そう思った。

    「いらっs……なんだ、あんたか。」
    紋切り型でなくなって久しい店主の挨拶もそこそこに、審神者はお願いがあると切り出した。
    本棚のハタキがけをしていた店主は、手を止め、ハタキを店台の上に置くと、怪訝な顔でこちらを見る。
    「やっぱり私、ここのお手伝いがしたいんです。本当に、雑用とか、めんどくさい事を全部私に押し付けるような形でもいいんで、やらせてもらえませんか?」
    それを聞いて、何かを考え込むように腕組みし、眉根を寄せる店主。これを否定と受け取り、審神者は食い下がる。
    「私、諸々の都合で定期的なバイトはやっていなくて、でもそれだと就活で不利になっちゃうので、せめてボランティアくらいはやっておきたいと思ってたんですよね。」
    自分の就活のためだなんて、流石に身勝手すぎないか?と思いつつ告げると、店主の薄い片眉がピクリ、と持ち上がった気がした。
    「ここなら、お客さんもそんなに多くないですし、3ヶ月以上通ってるので馴染んでます。何よりこのお店が好きなんです。お願いですっ、ここでボランティアさせてください!」
    審神者は、パンッ!と顔の前で両手を合わせ、深々と頭を下げる。
    ギュッと瞑った目を片方だけ薄く開け店主を見ると、目線を泳がせつつ、しばらく考え込んでいるようだったが、
    「…仕方ない。あんたがそこまで言うんなら、させてやらんでもない。」
    頭を下げる審神者を、困ったような顔で見下ろしながら、店主は答えた。
    審神者は破顔し、深々と下げていた頭を上げる。
    「だが…」
    一旦了承した筈の店主は、顎に手を当て、再び考え込む素振りを見せた。
    えっ?やっぱりダメって言われちゃう?それとも、流石に身勝手すぎた…?
    店主の様子に不安を覚えた審神者が、悪い方に考えを巡らせていると、
    「…働かせる以上、無償、というのは流石にな…」
    審神者を見ながら、店主は苦い顔をして溜息をついた。
    えっ?そんなこと?!
    審神者は驚愕する。
    店主がどうやって生活できているかも謎なこの店で、自分のバイト代なんて捻出しようものなら、完全に赤字ではないか。流石にそんなご迷惑はかけられない。
    そもそもが、このお店に入り浸り、過剰とも言えるようなもてなしを受けるのを正当化するための提言だ。
    つまり、自分にとっての報酬は…
    「ここにある本何でも読み放題、でどうですか?あと、お菓子とコーヒー。」
    そう、自分にとっての報酬は、この店で過ごす時間そのものなのだ。
    これが報酬なら、随分と先払いで頂いてしまった事になるが、店主は苦笑し、承諾した。
    「…ッ!ありがとうございます!」
    再び破顔し、再度深くお辞儀をする審神者。
    「これからよろしくお願いします、店長!」
    顔を上げながら言うと、店主は怪訝な顔をして、
    「店長…?」
    と聞き返してきた。
    「えっ、ダメでしたか?」
    聞き返す審神者に、
    「俺はそんな大したものじゃない。三池さんでいい。」
    バツが悪そうに言う。
    「それだと何か、対等な同僚みたいで、私が困っちゃいますよぅ。」
    言われてみればそうかもな、と困ったように頭を掻きながら、口をへの字に曲げていた店主だったが、
    「それとも、オーナーとか、マスターとかの方がいいですか?あっ、もしくは古風に主とか!」
    審神者がどんどん突拍子もない呼び名を提案してくるものだから、最終的に店主は「もう店長でいい」と照れるように顔を背けた。
    「そうなったら、あんたに頼みたい仕事をまとめなきゃならないな。それと…」
    考えを巡らせ始める店主を前に、審神者は心の中でガッツポーズをする。
    (博多くん、凄い。凄すぎる。「絶対」はないでしょとか思っててごめん。本当に君はすごい。今度ジュースどころじゃなく学食奢るから、ちょっとでも疑ってたこと許して…。)
    「連絡先を教えてくれ。」
    内心で喜びを噛み締めている時に、唐突に言われたものだから、
    「ふぇっ?」
    変な声が出た。
    「本格的に手伝いに来るとなったら、予定が変わった時の連絡なんかも必要になるだろう。」
    そうか、お手伝いに来れば、店長の連絡先なんていう激レアアイテムまで入手できるのか…!
    若干興奮気味に、審神者はスマホを取り出しメッセージアプリを開く。
    QRコードの表示方法が分からず、眉間に皺を寄せながらああでもない、こうでもないと試す店長に方法を教え、表示されたコードを読み込んだ。
    メッセージアプリに、丸くデフォルメされたカラスアイコンの「mitsuyo.M」という連絡先が追加される。
    店長の下の名前、みつよ、って言うんだ。どういう字を書くんだろう?Mは三池のM?「三池みつよ」さん?そしてアイコンが無駄に可愛い。鳥、好きなのかな?
    表示名とアイコン、たったそれだけだが、そこから無限の情報が読み取れる。
    あんまり長々と、新しく増えた連絡先を眺めているのも変だと気付いたので、取り急ぎ自分の名前に雀がお辞儀しているスタンプを添えて送ると、一呼吸置いて店主のスマホが震えた。
    うわぁ、本当に連絡先交換しちゃったんだ、こんなかっこいい人と…。
    審神者は心の中でもう一度、最高のアドバイスをくれた友人に感謝した。
    「早速なんですが、何かお手伝いできる事ってありますか?」
    「…だったら、店番、頼めるか?俺はどうしても愛想がないんでな…。」
    愛想がない自覚はあったんだ。そんな事を思いつつ、審神者は元気よく返事し、『店長』と席を交代した。
    椅子の座面はまだ温かく、間接的とは言え、あんなにかっこいい人の体温を感じているという事実にドキドキする。
    店主はいつもの通りアイスコーヒーを作って審神者に手渡した後、後ろの座敷でパソコンを広げ、難しい顔で何やらカタカタやり始めた。
    パソコン、使えたんだ。
    アナログ人間だとばかり思っていたので少し意外だったが、よく考えば大学院まで行っていたのだし当然か。
    審神者は、氷でキンキンに冷えたコーヒーを一口啜ると、入り口に視線を戻し、客を待つ事にした。
    大典太は、険しい顔でパソコンの画面を見つめていた。
    向かい合っているのは、普段売り上げの記録にしか使っていない表計算ソフト。
    勤務表というのはどういう形式だっただろう。学生時代にやっていた、ラーメン屋のバイトの記憶を必死に手繰り寄せ、考える。
    実のところ、あいつが再び手伝いをさせてくれと願い出されなければ、自分から声をかけるつもりでいた。何なら、薄謝も渡そうかと思っていたくらいだ。
    全ては、ベースの練習のため。
    重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−のメンバーは、ボーカルの肥前を除き全員兼業だ。
    にも関わらず、演奏と楽曲のクオリティを保てているのは、メンバーが揃いも揃って本業が暇だからに他ならない。
    パーソナルトレーナーのソハヤはバンド活動に支障がない程度に仕事量を調整しているし、実家で住職をやっている江雪はお盆以外基本的に暇らしい。
    自分も少し前までは、営業時間中にこの座敷で作曲やベースの練習をしていた。
    ベーシストHIKARIの一般的な知名度はゼロに等しい。まして、この店に足繁く通っているのは、メタルのメの字も知らない中高年ばかりである。
    たまに、いかにもメタルやパンクが好きそうな若者がフラッと入ってくる時もあるが、どうせ一見だ。
    一見ごときに、自分がHIKARIだなんて気付ける筈もない。実の母ですら、鋼音のジャケ写を見た際に、息子二人が写っていると気付けなかった程だ。
    身バレの危険があるとすれば、HIKARIを知っている人間が、ここに通い詰めた時だけだろう。
    幸いな事に、審神者はあんな、ゆるキャラの一種みたいな奴だから、激しい音楽など聴きそうもない。まして、インディーズでドロドロにえげつない音楽をやっている「重金属凶奏隊 鋼音–HAGANE–」となれば尚更だ。
    そう思っていた。…あの時までは……。

    つい、1ヶ月ほど前の話である。
    期末試験期間だったのだろう。いつもより随分早めに店を訪れた審神者は、胡座をかいてベースを抱えた自分を見るなり
    「あれー?ベース、弾くんですかー?」
    と小首を傾げた。
    言われてみれば、こいつが来るタイミングで弾いていた事はなかったな。
    そんなことに気付きつつ、気にせずボンボンと弦を爪弾けば、審神者は丸い目をもっと大きくして、指先を食い入るように見つめてくる。
    その表情を見るや、少し驚かせてやろうという虚栄心が湧き上がってきた。
    大典太は、単調なスケール練習をやめ、一呼吸置くと、右手の指先でバチバチと弦をはじき始める。
    見る人が見れば超絶難度と分かる、激しいスラップ奏法だった。
    こいつの事だ。きっとこの後「びよんびよん言って面白いですねぇ!」とか「ベースって、そんな風に弾くものなんですかー?思ってたのと違います!」とか、そういう無邪気な反応が見られるに違いない。
    パッと顔を綻ばせる審神者の姿を想像して、大典太は口元を緩ませる。
    そしたら、これは「スラップ」と呼ばれる奏法だと教えてやろう。「チョッパー」と言う呼称なら、万に一つの可能性でこいつも知っているかもしれないな。
    その時は、「チョッパー」が日本ローカルの呼称で、世界的には「スラップ」と呼ぶのが標準的だと訂正しよう。
    興味を持ったら、実際に弾かせてみてもいいかもしれない。こんなぬいぐるみみたいな奴が、バチバチのスラップをキメたらさぞや面白いだろうな。
    どこか期待を込めたドヤ顔で、ビシバシと弦を引っ掻き続けていると、審神者は満面の笑みで口を開いた。
    「すごくかっこいいスラップですねぇ!!」
    想定の斜め上の反応に思わず手を止め、半開きになった口で審神者を見上げる。審神者は依然、目を輝かせながらニコニコと微笑んでいる。
    何でそんな単語がスラスラと出てくるんだ………。
    目の前の人物の口から発せられそうもない語彙に、大典太は目を白黒させた。
    その上「ちょっと推しの演奏を思い出しちゃいました!」などと微笑むものだから更に困惑する。
    こいつの「推し」とやらがどんなベーシストかは知らないが、スラップ奏法なんて使う奴は、俺同様エグい音楽をやっている奴だろう。
    意外と……そういう音楽が、好きなのか…?
    春の日差しのような微笑みをたたえた、マシュマロのような女と、過激な音楽との間に接点を見出すのは難しかったが、言動から見てそうとしか考えられない。
    だとしたら、自分のバンドも、名前くらいは知られている可能性がある。
    当初思い描いていた微笑ましい未来予想図は一瞬にして掻き消え、全身から嫌な汗が噴き出してきた。
    「い、いや、普段は弾かないんだがな、たまたまだ。カビ臭い演奏だっただろう。楽器も、たまには虫干しで外に出してやらないといけないからな…!うん!」
    大典太は、口に出すのも苦しい言い訳をすると、ベースを抱え、逃げるように私室のある二階に駆け上がった。

    最初こそ、審神者が激しい音楽が好きという事に衝撃を受けたが、よく考えてみれば、ゴリゴリのメタルに「君を離さない」とか「幸せにするよ」といった甘い言葉を乗せて歌っているV系バンドはそこそこある。あいつが好きなのは、そういうバンドなのだろう、と結論付けた。
    一方で、自分のバンドはどうか。
    シャウトで「Death!」と連呼する曲。冒頭から最後までずっとデスボイスで呪詛を吐き続ける曲。江戸時代にあった刑罰をひたすら並べ立てる曲。敵を引き裂く妖怪の恍惚を妖怪の視点で描いた曲。……ロクなものがない。
    一番マシな曲を考えたところ「知らぬ間に人魚の肉を食わされた遊女が、愛する男と心中を試みては自分だけが生き延びる曲」だった。歌中で男は何人も殺害されるが、テーマは恋だしストーリー性もある。しかし、これは自分ではなく江雪が作った曲。これ以外にもいくつかマシな曲はあるが、どれもこれも決まって作詞・作曲LICKAだ。自分はハラワタとか臓物とか、そんな血生臭い歌詞ばかり書いている。
    あいつなら、仮に身バレしたところで言いふらすことは絶対しないだろう。それに関しては信じている。
    だが、それより何より、目の前の男がこんな曲ばかり書いている鬼畜だと知られるのが恐ろしかった。その結果怖がられ、二度と寄り付かれなくなってしまったら…。
    そんな理由から、最近は開店時間中にベースの練習をするのをやめていた。
    店を閉めた後に多少なりとも練習の時間は設けているし、その際持ち曲を弾いてみれば問題なく弾ける。不都合はない。そう思っていたのだ。
    しかし、前回の合わせで、ソハヤから早々に「兄弟、何か下手になってねーか?」と直球なツッコミが入ったことで、その考えは揺らいだ。
    続け様に江雪からも「ところで…新曲はまだ、出来ていないのでしょうか?」と凍て付くような目で見られ、このままではマズいと思うようになったのだ。
    審神者から「お手伝いがしたい」という申し出を受け、断った翌日の出来事である。
    身バレ覚悟で練習すべきか?とも思ったが、折角できた貴重な話し相手を失いたくはない。
    とは言え、適当な口実もなしに審神者が来る日時を管理する方法など思い付く筈もなく、出た結論が、やっぱりあいつにボランティアをお願いしよう、だった。
    一番悩んだのは謝礼である。
    この店の売上でマトモなバイト代を払うとなど不可能だ。そうなると、バンドで得た収入まで食い潰す事になり、生活のランクを落とさざるを得ない。
    禁煙するか?とも思ったが、それで節約できるのはせいぜい3日で500円ちょっと。その程度で足しになるとは到底思えなかった。
    謝礼の工面に頭を悩ませていたら、本人から「本読み放題とお菓子とコーヒー」という、非常にささやかな、こちらにとって無理のない条件を提示され、正直ホッとした。
    それに、ここでの手伝いが就活で有利になるとも言っていた。
    完全に無償で働かせるなら心苦しかったが、結果的にあいつの将来に繋がるならそれでいいか、と思った。
    願ったり叶ったりの顛末である。
    完成した勤務表の印刷ボタンを押して、大典太は目を細めた。
    がちゃこん、がちゃこん、ガーッというプリンターの音が鳴り止んで、店長がどことなく得意げな顔で7月と8月のシフト表のようなものを印刷して戻ってきた。
    「とりあえず、来れそうな日と時間帯を埋めてくれ。」
    渡されたのは、シンプルな勤務表。
    本当のバイトみたいだ、と審神者は思った。
    本当のバイトと違って、ここは変なお客さんも来ないし。
    かつて、2ヶ月だけやっていたコンビニバイトの苦い記憶を思い出す。
    自分を指差しながら「アレに連絡先渡して来いよw」「やだ、返信来たら泣いちゃうwww」などとゲラゲラ笑うパリピ。
    マジマジと自分を見て「すげぇブスだな」と言って去っていく背広姿の中年。
    この店舗にない商品を「あっちの店にはあった!」とゴネ続ける老人と、その後ろで「さっさと処理しろブス!こっちは待ってんだぞ!」と何故か自分を怒鳴る青年。
    自分をチラッと見るや列を抜け、ダイエット特集の雑誌を持って並び直したOLは、まだいい方だろう。
    同じ時間帯に入っていた隣のレジの子は読モみたいに可愛くて、袋詰めでモタモタしてたり、お釣りを間違えても(主に男性は)鼻の下を伸ばして「いいよいいよ」と許してくれる。
    隣のレジでもっと手早く正確に作業をしている自分は「早くしろ」とどやしつけられる。
    あまりに暴言を吐かれすぎて、「すんげぇ巨乳だ」と何度も口に出し、鼻の下を伸ばして帰って行った初老の男が神様に思えるほどだった。隣のレジの美少女は「酷い!セクハラだよ!店長に言いつけよう!」と憤ってくれたが、普段自分が受けている扱いに比べれば随分とマシである。
    その出来事に恩を感じて、隣の子が珍しく「うぜぇんだよブスw」と言われのない暴言を吐かれている時助けに入ったら、客が帰った後で「セクハラで困ってる時は助けてくれないのに、面白系のクソ客の時は助けてくれるんだね。」と皮肉を言われてしまった。
    審神者の心の中で、何かが折れたのはこの時だ。
    たった2ヶ月で辞めるなんて、自分でも根性なしだと思ったけれど、どうしても限界だった。
    自分みたいな容姿では、マトモにバイトもできないのか、とすら思った。
    でも、ここに自分を容姿で差別するようなクソ客は一人も来ていない。
    その事が、何事にも替え難く、嬉しかった。
    埋めた勤務表を店長に渡し、緩く微笑んでコーヒーを啜っていると、くたびれた背広姿の中年男性が現れた。
    「いらっしゃいませ!」
    今まで同様、元気に声をかける。
    男性はおっ、という顔をして、
    「新入り?」
    と声をかけてきた。
    「はい、今日からボランティアに入りました。」
    にっこり微笑んで会釈する審神者に、
    「この前予約してた本なんだけどさぁ。」
    男性は、唐突に切り出した。
    「えっと、予約、ですか?」
    審神者が聞き返した瞬間、男性の口元がほんの少しだけニヤリ、と上がる。
    「えぇ?知らないの?」
    眉を持ち上げ、素っ頓狂な声で大袈裟に驚く男性。
    「あのっ、すぐに店長に確認して…」
    と、庭の倉庫の整理に行った店長を呼びに行こうと背を向ければ、
    「お客様に背を向けるとは何事だ!」
    と、男性は突然声を荒げる。
    「ッ!あの、申し訳ございません!」
    肩をすくめ、慌てて謝罪する審神者。
    「ここは懇意にしてたんだけど、キミみたいな使えないのがいたらもう来ないかもなぁ…」
    ニチャニチャした声で、さも残念そうに告げる男。その目元は、こちらを馬鹿にするように細められている。
    「あの、よろしければそちらの書籍の詳細を教えて頂けないでしょうか?」
    お客様が怒っている。何とかしなければ。その一心で活路を探れば、
    「いやいや、それぐらい知っててよ。キミ、ここのスタッフなんでしょ?」
    ギイッとサディスティックに男の口が歪んだ。
    確かに、お客様にとっては店長も自分も同じ、この書店のスタッフだ。平身低頭、自らの知識不足を謝罪する。
    「謝り方に誠意ってものが足りないんじゃない?そんな四角四面の謝り方じゃ、本当に悪いと思ってるのか疑わしいんだけど。『謝りました』で済ませようとしているのがミエミエだよ、君ィ。」
    謝罪する審神者を前に、男はどこか嬉しそうに言葉を繋げる。
    どれだけ謝罪しても納得しない客を前に、考えつく限りの自分の至らない点を並べていると、
    「こいつが何か、失礼な事でもしましたか?」
    庭の倉庫から、温い空気を身に纏った店長が戻って来た。
    「ああ、お久しぶりです。お世話になっております。」
    その瞬間、男は先程までの高圧的な態度をスン、と消し去り、米搗きバッタの如くペコペコし始める。
    「いえ、先程ね、以前電話にてお問い合わせした書籍についてこちらのお嬢さんに伺ったのですが、ご存知ないとの事でしたので、それではご主人を呼んでくれますか、とお願いしていた所です。お願いしたのに、この子が言い訳をして中々呼びに行かないものですから、その態度はおかしいんじゃないの?と指摘をさせて頂いておりました。」
    媚びた笑みを浮かべ、事実とは全く逆の事を述べる男。店長は無表情に男の釈明を聞いている。
    ああ、ここでもやっぱり、こういうお客さんは来るんだ。こういうお客さんが来ても、耐えなきゃいけないんだ。
    店長と男を交互に見ながら、審神者は眉尻を下げた。
    店長は、審神者の方を一瞥し、
    「そうなのか?」
    と静かに問う。
    審神者は小さく首を振り、今までの経緯を、できるだけお客様の失礼にならないように、けれど、正確に語った。
    審神者が全てを語り終えた次の瞬間、
    ダンッ!
    店長が、殴るような勢いで、店台に手を置いた。
    衝撃で、乗っていたコーヒーのグラスが小さく跳ねる。
    「…帰れ。」
    腰を屈め、男を睨み付けるように覗き込みながら、低く告げる店長。
    ここ数ヶ月、穏やかな表情しか見ておらず忘れかけていたが、店長の顔は一見ヤの付く自由業とも見紛うような強面である。その強面に射竦められたものだから、男は小さく悲鳴を上げ、引きつった顔で一歩後ずさった。
    「いえ、私はただ教育的指導を、ね?」
    貼り付けた笑みを凍り付かせながら男は弁明するが、
    「若い女と見て理不尽なイチャモンを付ける輩に教育を語る資格はない。帰れ。」
    店長は相手の言い分を丸ごと否定し、再度低く唸る。これには男も激昂したのか、
    「お客様の語る真実じゃなく、身内の妄言を信じるとはたまげたね!商売を何だと思ってるんだ!それが客に対する態度か!だからバイトもこんなクソ対応なんだな?こんないつ潰れてもおかしくない店をわざわざ使ってやって、その上こっちがこれだけ下手に出てやってるってのに、もう二度と来るかこんなクソ本屋!早く潰れればいい!今日あった事は口コミに全部書いてやるからな!本はもう要らん!」
    震える指で店長を指差し、臭い唾を撒き散らしながら早口で捲し立てる男。
    真っ赤な顔で踵を返し、乱暴に入り口のドアを開けるや咳き込んで、店の前にタンを吐くと、ヨロヨロと駅の方に去っていった。
    店長はフーッと息を吐いて上体を起こすと、男が開け放って行った入り口を丁寧に閉め、小さく舌打ちした。
    審神者はしばらく固まっていたが、
    「あっ、あのっ、すみませんでした!」
    店内に向き直った店長に、深々と頭を下げる。
    「私のせいで、お得意様を失ってしまって、その上、レビューまで…」
    やっぱり、自分はいない方がいいんだ。
    涙が溢れそうになるのを堪えながら、震える声で審神者は謝罪した。
    だが、そんな審神者に、
    「あんなもん、お得意様でも何でもない。」
    あっけらかんと店長は告げる。
    聞けばあの客は、今までもイチャモンに近い値下げ交渉をしたり、取り置きの商品を何ヶ月経っても取りに来なかったりと、散々迷惑をかけてきたらしい。
    「これを機に、あれが二度と来なくなればいいんだが。」
    虚空を見上げ、ボソリと独りごちた後、店長は審神者に目線を戻すと、
    「それより、あんなのの相手をさせてしまって、悪かったな。」
    心底申し訳なさそうに謝罪をした。
    コンビニ時代の店長は、どんな最低の客が来ても「そんな事もある」「客商売だから」「お前にも非があったんじゃないか?」で濁して、自分のことなんて一切守ってくれなかったのに。
    気付けば、目からポロポロと涙が溢れていた。そんな審神者の姿を認めるや、
    「やっぱり、店番はやめておくか?」
    こちらの優しい店長は、オロオロと心配そうに尋ねてくる。
    再び鼻の奥がツーンと痛んで、涙がとめどなく湧いてきた。
    「ッ…いえ、こんなに従業員を大切にしてくれるお店もあるんだなって、感動しただけです!」
    手のひらで涙を拭いながら本意を告げると、店長はしばらく心配そうに考え込んでいたが、
    「あんたに対応できない客が来た時は、すぐに俺を呼べ。」
    そう、優しい声音で告げた。
    「…あ、ありがとうございますっ!」
    か…かっこいい……
    袖の袂から煙草とライターを取り出し、裏庭に去っていく店長の背中を見ながら、そう思った。
    その後、閉店の時間までおかしな客は来ず、審神者は夕暮れの街の中、笑顔で帰宅した。
    2回目のお手伝いを翌日に控えた夜。
    シャワー浴びて部屋に戻った審神者は、スマホにメッセージ通知が届いているのに気づいた。
    可愛らしいカラスのアイコンと「mitsuyo.M」という名前。
    店長だ!!!
    店長からの初めてのメッセージに、緊張で手汗が滲む。
    うっかり手を滑らせ、画面を割らないよう、審神者は両手でしっかりとスマホを握りしめた。
    えっ?どんな内容?
    次に気になったのはそこである。
    通知には「mitsuyo.Mが画像を送信しました」としか書かれていない。
    何?まさか、私のせいでこんな酷いレビュー書かれました、とかそう言う内容?
    それを理由に、やっぱり手伝わなくていいって言われちゃう?使えないって思われた?
    店長からメッセージが届いた喜びと、同時に感じる一抹の不安。
    怖い。開けない。
    勝手に膨れ上がってゆく不安に震える手で、しばらくスマホのロック画面の、当たり障りない金平糖の写真と睨み合う。
    意を決してロックを解除すると、ドアップで表示されるHIKARIのアー写。
    ン゛ン゛ン゛、かっこいい!
    推しの、気高く美しい孤高の狼を思わせる顔貌を見れば、心は強制的にときめきで満たされる。同時に、増幅していた不安が少しだけ和らいだ。
    HIKARIさん…私に勇気を…勇気を下さい…!
    推しに祈りつつ、震える手でアプリを開く。
    連絡先のトップには「mitsuyo.M」からの2件の未読通知。
    ドクン、ドクン、ドクン…
    静かな部屋の中、自分の心臓の鼓動だけがやたらうるさく響く。
    心の中で3つ数え、ギュッと目を瞑ったままメッセージをタップした。
    深呼吸しながら、じわりじわり目を開けていくと、茶色っぽい画像が見える。画像全体が暗いが、真ん中に緑っぽい何かがあるようだ。
    想像していたような、白い背景も、黄色い一つ星も、クレーマーによる怒りの羅列も、どこにも見当たらない。
    あれ?レビューじゃない?
    拍子抜けして一気に目を開ければ、小さい機器が古びた机の裏に養生テープで固定されている画像が目に入った。
    なにこれ?
    不思議に思って指を下に滑らせ、一つ上のメッセージを確認すると、
    〈次に変な客が来た時は、迷わずこのボタンを押してください。〉
    と書かれていた。
    ボタン?と思って写真を拡大すると、養生テープで固定されているそれが、電池式の小型インターホンだと分かる。画面の端、椅子の上に映り込んでいるのは、近くのホームセンターの袋だろうか。
    「店長、優しすぎでしょ…」
    つい、声に出していた。
    店長を呼ぶと言っても、ヤバイ客の場合呼びに行く隙を与えてくれない事もある。今回だってそうだった。
    そこまで考えて、わざわざ買って来てくれたのだろう。
    店長が、あの大きな体を丸め、机の下に潜り込んで作業をしている姿を想像して頬が緩む。
    ちなみにその後、自分で三池書店のレビューを確認してみると、最低評価と共に「星1つも付けたくありません」から始まる罵詈雑言が増えていたが、店長が冷静に事実を述べ、論破していた。
    〈当店の従業員に理不尽な暴言・暴力をはたらくお客様は、実店舗、オンライン併せて、今後一切のお取引を停止させて頂くかたちとなります。誠に勝手ながら、ご認識おき頂けましたら幸いです。〉
    そう締め括られた文章を読み終わると、審神者は感嘆のため息をついた。
    かっこいい…。
    一見大人な対応に見えて、その実言ってる内容は「帰れ」なのが最高にロックでかっこいい。
    ………好き…。
    ………………………!?!?
    唐突に脳裏に浮かんできた二文字を前に、審神者はハッと顔を上げた。
    い、いやいやいや、好きではない、好きでは!
    た、確かに、かっこいいし、オトナだし、人間的にとっても尊敬できるし、優しいし、煙草のにおいの奥からすっごくいい匂いするし、話してて楽しいし、一緒にいて幸せだし、何か…近くにいると、ドキドキする…し………?
    …………………好き…なのかな……?
    ここで審神者は全力で首を横に振った。それはもう、水を浴びせられた動物の如く。
    「すっ、すすす、好きじゃないっ!わっ、私はHIKARIさん一筋!現実の恋は辛いだけ!」
    振り返って、壁にかかったポスターを仰ぐと、艶っぽいドヤ顔でベースを構える白塗りのバンドマンと目が合う。
    明日もお手伝い頑張るぞ!HIKARIさん、応援しててね!
    自分の気持ちを誤魔化すように意気込んで、審神者はベッドにダイブした。
    _c_a_r_r_0_l_l_ Link Message Mute
    2022/06/18 11:31:52

    三池書店②

    ※支部再掲

    前作への「いいね」「ブクマ」ありがとうございます!!
    お陰様で続きました。

    古書店店主でインディーズメタルバンドのベーシストをやってる大典太さんと、近くの大学に通う審神者ちゃんの話。
    前作読んでなくてもキャラ紹介見れば大体内容分かると思います。
    大典太さんに無自覚片想いをしてる審神者ちゃんが、三池書店でボランティアを始めるお話。

    注意点
    このお話には以下の内容が含まれます。
    ・転生世界線現パロ
    ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ
    ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
    ・ツール変換ほぼそのままの博多弁
    ・解像度の高いクソ客

    博多くんの台詞はこちらのツールで変換したものをそのまま使っています↓
    https://www.8toch.net/translate/
    違和感があった場合、コメントかTwitterで「こういう言い方の方が自然だよ」と教えて頂けると非常に助かります。。。
    #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ

    more...
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    • 三池書店③ 中編(下)※支部再掲

      【対バン】
      対バン(たいばん)とは、ライブイベントにおいて複数の出演者が入れ替わる形でステージに立ち、共演すること。
      いわゆる「バンドもの」においては、ほぼ「タイマン」と同義。語感も似てるし。

      古書店店主の大典太さんと、そこでボランティアしてる審神者ちゃんの現パロ。エア嫉妬回です。
      現時点での二人の関係性は両片想い。

      今回も、セトリの元ネタにした曲はTwitter固ツイのツリーに。
      デスボやシャウトの多用されるうるさい音楽に抵抗ない方は、聴きながらお読み頂くとより楽しめるかもしれません。
      なお、当該楽曲の動画のコメント欄やアーティスト様へのリプ等で、このシリーズについて言及したり、匂わせたりする発言は引き続き禁止させていただきます。
      (そういった行為が見受けられ次第、前作共々元ネタ公開は中止いたします。)
      
注意点

      このお話には以下の内容が含まれます。

      ・転生世界線現パロ(全員過去の記憶ナシ)
      ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
      ・夏場パンイチで寝る大典太光世
      ・自己肯定感低すぎてストーカーや不審者に気付かない審神者
      ・全力で嫌な奴ムーブかましてくる燭台切
      ・名実共にドMな亀甲
      ・(あくまでパフォーマンスとして)BLっぽい演出を取り入れる鋼音メンバー

      上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
      あと、作中で大典太さんが中々にヤバい飲み方をしてますが絶対に真似しちゃいけません。死にます。マジで。


      合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
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    • 三池書店①※支部再掲

      転生世界線現パロの典さにです。
      転生と言いつつ、全員過去の記憶はありません。
      古書店店主でインディーズメタルバンドのベーシストをやってる大典太さんと、近くの大学に通う審神者ちゃんの出会いの話。
      個性強めの女審神者が出てきます。
      続き物なので、まだ恋愛描写はありません。

      上記の通り、完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
      合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
      #女審神者 #大典太光世 #典さに #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
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    • 人生に一度の「スーパーウルトラ猫の日」に支部に上げたものの再掲となります。

      朝の10時に気付き、構想2時間、執筆4時間で一気に書き上げました。
      そのため、色々と荒いかもしれません。
      タイトルは、今流行の同名曲から…なのですが、あんな切ない内容じゃありません。むしろ、しょーもないギャグです。
      大典太さんメインですが、そこそこ色んな刀剣男士が出ます。

      注意
      ・大典太さんの猫化(割とガチめの猫化)
      ・典さに要素は薄め
      ・ちょいお下品
      ・刀剣男子の容姿と個体差に関する独自設定あり

      途中「真剣必殺も見たことない」という審神者の叫びが出てきますが、執筆当時の私の心の叫びです。
      お正月の期間限定鍛刀で顕現してから、練度94になるまで真剣必殺を回収できなかった彼ですが、これを書いた直後に出陣させたら真剣必殺を見せてくれました。
      ほんと、大典太さん、マジ…
      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱夢 #刀×主 #刀剣乱舞
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    • 三池書店③ 中編(上)※支部再掲

      審神者ちゃんが「懲役一週間」と自称する帰省から帰ってきて、最推しバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のライブに行くお話。
      詳しくは、1ページ目の登場人物紹介にて。

      セトリの元ネタにした曲は、Twitterの固ツイのツリーにぶら下げております。デスボやシャウトの多用されるうるさい音楽に抵抗ない方は、聴きながらお読み頂くとより楽しめるかもしれません。
      なお、当該楽曲の動画のコメント欄やアーティスト様へのリプ等で、このシリーズについて言及したり、匂わせたりする発言は禁止させていただきます。
      (そういった行為が見受けられ次第、元ネタ公開は中止いたします。)

      
注意点

      このお話には以下の内容が含まれます。

      ・転生世界線現パロ(全員過去の記憶ナシ)

      ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
      ・若干の毒親匂わせ描写あり



      上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
      
合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
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    • 三池書店③ 前編※支部再掲

      前作までを読んでなくても、キャラ紹介見れば大体内容分かると思います。
      大典太さんが満を持して審神者ちゃんをお出かけに連れて行きます。
      関係性は「両片思い未満」です。

      注意点
      このお話には以下の内容が含まれます。特に下二つは、苦手な方ご注意ください。
      ・転生世界線現パロ
      ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ
      ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
      ・転生後の一部刀剣に彼女や妻子(名前アリ)がいる
      ・年齢操作
      ・若干の下ネタ
      ・DVやモラハラ被害を受けた人の描写
      ・いじめの描写

      下二つの描写のクリーン版が読みたいという方がいらっしゃいましたら、コメント/マシュマロ/TwitterのDM等でお気軽にご相談ください。
      時間はかかってしまうかもしれないのですが、ストーリーに影響を与えない範囲で、可能な限り配慮したバージョンを上げさせて頂きます。

      上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
      合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。

      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
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    • 三池書店③ 前編 Epilogue※支部再掲

      前作まででリアクション下さった皆様、ありがとうございます!

      大典太さんと審神者ちゃんが、海辺のドライブを満喫して、いつもの街に帰って来たところから始まるお話です。

      関係性は「無自覚両片思い」というか、「お互いにあえて自覚するのを避けている両片思い」。
      基本的にどの回も、登場人物紹介を見れば分かるように書いているのですが、この回に限っては前作のおまけ(蛇足?)的な内容となっております。
      そんな訳で、できれば前作読んで下さっていること推奨……なのですが、下記「注意点」にも書いた通り、前作の雰囲気を壊しかねない若干の下ネタを含みます。
      当該場面は6ページ目です。苦手な方は飛ばしちゃって下さい…。



      注意点

      このお話には以下の内容が含まれます。

      ・転生世界線現パロ

      ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ

      ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる

      ・転生後の一部刀剣に彼女や妻子(名前アリ)がいる
      ・若干の下ネタ(おっぱいとかAVとかに言及する場面)あり



      上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
      _c_a_r_r_0_l_l_
    • 三池書店③ 前編 Prologue※支部再掲

      古書店店主でインディーズメタルバンドのベーシストをやってる大典太さんと、大典太さんのやってる古書店でボランティアをしてる大学生審神者ちゃんの話。
      前作までを読んでなくても、キャラ紹介見れば大体内容分かると思います。
      この訳の分からないタイトルは、想定していた以上に全体のボリュームが出てしまい、泣く泣く分割した結果です。(一回タイトルを連番にしてしまったので後には引けない感)

      注意点
      このお話には以下の内容が含まれます。
      ・転生世界線現パロ
      ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ
      ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
      ・転生後の一部刀剣に彼女や妻子(名前アリ)がいる
      ・転生後の一部刀剣がキャバクラ行ったりする(※下心はナシ)

      作中で、ソハヤが生物学部をdisるような発言をしますが、生物学部出身の筆者による自虐であり、差別的な意図は一切存在しません。
      生物学部には、Gとか内臓とか、そういった一般人から理解されづらいものを、心の底から「可愛い」と称する人間がマジで一定数存在します。少なくとも私の出身大学ではそうでした。

      上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
      合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
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