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    三池書店③ 中編(上)三池光世(大典太光世)
    表向きは本格派古書店「三池書店」の店主。審神者からは「店長」と呼ばれている。
    裏の顔はメタルバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のベーシストHIKARI。
    店番をしている時は、基本的に身バレ防止のため和装。
    過去の交際相手から受けて来た酷い仕打ちのせいで、女性と一歩進んだ関係になるのを恐れている。
    審神者が自身のバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のファンだとは夢にも思っていない。

    審神者
    妖怪好きな貧乏学生。
    普段はホワホワした雰囲気だが、意外と激しい音楽が好き。
    推しは、メタルバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のベーシストHIKARIさん。
    本格派古書店「三池書店」でボランティアをやっている。
    今まで言われてきた酷い言葉のせいで容姿にコンプレックスがあり、身近な男性を好きになるのを恐れている。
    店長がHIKARIさんだとは夢にも思っていない。

    三池ソハヤ(ソハヤノツルキ)
    表向きはパーソナルトレーナー。
    裏の顔はメタルバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のドラマーSONIC。
    推しは、姉御肌がウリのアイドルグループ元リーダー。隠し持っていた写真集が半同棲中の彼女に見つかり背筋が凍ったが、意外と喧嘩には至らなかった。

    左門江雪(江雪左文字)
    表向きは名刹「沙門寺」の住職。
    裏の顔はメタルバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のギタリストLICKA。
    推しは、かつて絶世の美少女としてその名を馳せた往年の大女優。妻子が寝静まった後、一人静かに銀幕を鑑賞している。

    肥前忠広(肥前忠広)
    表も裏もメタルバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のボーカルHIRO。
    他にもいくつかバンドを掛け持ちしていたり、毒舌食レポY○uTubeチャンネル「カレー味のFxckin’ Shit」をやってたりする。
    推しなどいない、おれを推せ!……と言いたいところだが、最近バラエティで引っ張りだこのおバカタレントを密かに推している。
    拝啓、私と仲良くしてくださっている全ての皆様。
    二十歳という若きみそらで死んでしまうかもしれない不幸をお許しください。
    死ぬ、と言っても、心臓が止まることはございません。多分。
    尊さのあまり死に至る、そう、尊死です。
    私は今「盆踊り from HELL」の会場へ来ています。
    「盆踊り from HELL」が何かって?
    そりゃあ勿論、私の最推しバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のライブですよ。
    こんなタイトルだけど、ライブ自体が最高にかっこいいのは、去年の「血の池漬けMEN ¥3,800」で確認済み。
    揃いのライブTを着て、メンバーの登場を待ち侘びるこの時間。すご〜くドキドキする。
    実家で過ごした一週間、耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで待っていた甲斐があるというもの。
    元来今日は帰省開け一発目のお手伝いの日だったのだけど、店長も今日は予定があるらしく〈来週初回のお手伝いは結構です〉という連絡が入っていたのを、一昨日、帰省から戻る電車の中で発見した。
    ライブの幕が開く時間まで、あとちょっと。会場内では、ファンの会話がざわざわと聞こえてくる。
    「何やってるんだ。前に陣取るぞ。」
    「えぇ?そこまで詳しくないバンドのモッシュに巻き込まれるのはちょっと……。」
    「LICKAのソロ見るためにリハ抜け出して来たんだ。そんなぐらい気にするな。」
    近くで押し問答をしていたのはバンドマン風の二人。
    LICKA様は、過去にテクニック至上主義で有名なギター雑誌に載ったこともあり、同じくギターをやっている人間からは憧憬と畏怖の対象として見られている。だからこそ、こういう光景も珍しくない。
    …などとしたり顔をしている自分も、実を言えばライブ参戦は二回目に過ぎない。全てはファンブログからの受け売りだ。
    「あああ、HIRO…HIRO…やっとHIROに会える…。」
    「ありがたや…ありがたや…」
    反対側を見れば、髪を半分だけ赤く染めたゴスパンク女子二人組が、楽器とアンプしかないステージを泣きながら拝んでいる。
    気持ちはめちゃくちゃ分かる。分かるけど、まだ始まってすらいないんだよ……?ちょっと落ち着こう?
    その様子を他山の石として、キュッと表情を引き締めた。私だってHIKARIさんがこれから立つ舞台に五体投地したいのは山々だ。だけど、彼らはあくまでアーティスト。「本格派メタルバンド」を名乗っている以上、アイドルみたいな扱いをするのは少し違うと思う。配信でHIROが「V系じゃねぇよ!」とキレてる場面は何回か見た。…その割に、前回のライブではメンバーの等身大抱き枕とか物販してたけど、HIROによれば「いいか?あくまでこれはジョークグッズだからな。用法用量を守って正しく使えよ?」とのことらしい。
    観客席の照明がスッと落ち、薄青いフットランプの光だけがステージを仄暗く照らす。
    いよいよだ。
    水を打ったようにピタリと静まり返る観客席。
    ベースとギターのユニゾンによる、シンプルで静かな、けれどどこか焦燥と緊張を感じさせるリフが始まった。
    数秒遅れて、HIKARIさんとLICKA様が一歩一歩、地面を踏み締めるように登場し、その後ろから走ってきたSONICとHIROも所定の位置に着く。
    SONICのドラムから響く、チリチリと導火線を焦がす火花のようなスネア。次第に音圧を増していくそれは最後に弾け、HIROの鬨の声のような咆哮と共に、ヘビーな轟音が爆弾を投下したかの如く会場を揺らす。
    農民の反骨を歌った楽曲「百姓一揆」だ。
    重さが際立つスローテンポなラップ調の曲に、気付けば自然と首を縦に振っている。
    一曲目が終わるのと同時に、ステージの照度が一気に増した。
    HIROのシャウトで幕を開けたのは、先ほどの「静」とは打って変わって「動」の曲。
    アップテンポで疾走感ある攻撃的なリフと、駆け抜けるドラムは「Fxck 三十六刑」。江戸時代の刑罰を連呼する曲である。
    二曲目からこんなに飛ばしてくるとか激しすぎる。
    審神者は全身の血液が沸騰しそうなテンションで、天高く拳を突き上げた。
    ボーカルの合間に奏でられる、独特のグルーヴ感あるリフに「ハイ!ハイ!」という合いの手が巻き上がる。この一体感はライブでなければ味わえない。
    最初は前に行くのを嫌がっていたバンドマンも、今や子供のように目を輝かせてLICKA様の超絶ギターソロを見つめている。それが自分のことのように誇らしい。
    曲もそろそろ終盤を迎えようというところ、展開がアルバム版と異なることに気付いた。
    原曲には存在しないキーボードパートが奏でるのは、ホラー映画の出だしにでも使われそうな不穏な不協和音。続けて加わる、どこか哀愁を帯びた疾走感に溢れるリフ。
    「鋼音」だ!!!
    凶悪なのに美しく、煌びやかなメロディーは、まさにバンド名を冠するにふさわしい一曲と言えよう。
    荒れ狂うHIROのデスボイス。どこまでもヘビーなベースとギター。キラキラと輝く、ダイヤモンドダストのようなキーボードの旋律。それらを屋台骨から支える正確無比なドラム。
    全てが完璧な調和を伴って、観客の魂を刈り取っていく。
    まだ三曲目なのに既に泣きそうだ。
    曲の後半から終盤に入る直前、重く深く沈み込むようなHIKARIさんメインのパートが始まった。それと同時に、HIKARIさんとLICKA様が前に出て、舞台中央で向かい合う。
    お互いに対峙するような様相で弦をかき鳴らす死神と氷の王。
    うわやばい絵面が神。死ぬ。
    周りを見ると、自分同様、女性ファンが複数名死んでいる。
    HIKARIさんが退き、LICKA様の冴え冴えと凍て付くようなソロパートが始まると、それまで最前列で一心不乱に首を振っていたギターキッズが揃ってヘドバンを止め、その手元を食い入るように眺め始める。
    禍々しさと神々しさ、狂気と理性、邪悪さと神聖さといった相反するものを矛盾なく包括する自己紹介代わりの一曲は最高の盛り上がりを見せたまま終わりを告げ、その興奮も冷めやらぬ内にボーカルHIROがマイクの前で叫んだ。
    「待たせたなぁ、生贄ども!」
    がなり立てるような第一声と共にスポットライトが照らし出したのは、隈取風のコープスペイントに彩られた「地獄の獄卒」四人組。
    観客のボルテージは最高潮。ウオーっ!と野太い歓声が巻き起こる。中にはキャーッ!という女性の黄色い声も混ざるが、それはかなりの少数派だ。
    拍手と歓声のスコールが静まるのを待って、LICKA様が説法でもするような静かな表情で口を開く。
    「地獄の底から蘇り…」
    「今日もじゃんじゃん音を出す!」
    「怪異も病も恐れるメタルバンド」
    「「「「重金属凶奏隊 鋼音-HAGANE-だ!」」」」
    メンバーが一斉にCメジャーのロングトーンを鳴らせば、再び盛大な歓声で揺れる会場。
    あああああ、もう死んでもいい。ってか死ぬ!!!
    大量のアドレナリンで真っ白になる頭で、周りに負けじと全力の歓声を上げる。
    「謝肉祭『盆踊り from HELL』の幕開けだ!」
    雄叫びを上げるHIROに手向けられる指笛。
    「今日はもう一人地獄の獄卒を呼んでんだ。」
    SONICがドラムロールを叩き始めると、スポットライトがグルグルと舞台上を回り、舞台向かって右奥、LICKA様の後ろに陣取るキーボードの上で止まった。
    「紹介するぞ、サポートキーボーディストSILEN!」
    「よろしく頼む。」
    ともすれば、HIKARIさんより長身に見えるその男性は、紫の口紅から不敵に八重歯を覗かせる。
    SILENは、名目こそ「サポートミュージシャン」だが、実質鋼音の五人目のメンバーと言っても過言ではない。アルバムの八割くらいに参加してるし、ライブもほとんど皆勤賞だ。
    正式加入しない理由は本人曰く「MCで喋ることがないから」だそうだが、HIRO以外のメンバーだってそんなに喋る訳ではないし、その真意は定かでない。
    「SILENが来てるっつー事は、お次の曲はもう分かるな…?」
    HIROの問いかけに、観客席のあちこちから「荊!」「邪神!」「九頭竜!」「Apocalipse!」と、キーボードの入る曲名が上がる。
    SILENは、上がった曲名のキーボードパートの一部を即興で演奏し、その声を拾ってゆく。
    時折いる、別のバンドの曲名を叫ぶ客には、ブブーッ、と不協和音を奏でて応じるSILEN。
    そんなやり取りの中、会場のどこかから「三毛別!」という声が上がった。荒ぶるヒグマが人間を次々と屠っていく曲だ。
    SILENは、口元をニッと持ち上げながら、どこか機械的な響きを持つイントロを開始した。
    他の楽曲の時はワンフレーズだけ弾いて止めていたが、今度は止めない。他のメンバーも、演奏の定位置に着き楽器を構える。
    どうやら、これが正解らしい。
    ダンサブルでヘビーな音色に、観客席で自然発生するモッシュ。
    ベースが途切れるパートになると、ヒグマのようなポーズを取ったHIKARIさんがHIROに襲い掛かる。
    そんなHIKARIさんに対抗し、ライフルの如くマイクスタンドを構えながら歌うHIRO。HIKARIさんがヒグマなら、こちらはハンターだ。
    曲の終わり、二人は「相打ち」を匂わせるような格好で、仰向けに床に倒れ伏す。
    その体制を立て直さないまま、次の「Death Parade」が始まった。
    機関銃の乱射の如く音の絨毯爆撃を敷く楽器隊。その中にはHIKARIさんも含まれる。
    床に仰向けで倒れた状態でこんなに正確に演奏できるって、どんな演奏テクニックしてるんだろう。
    そのままジワリ、ジワリと、ブリッジしながら起き上がるHIKARIさん。その間もベースのリズムは乱れない。演奏テクニック以前に体幹が凄すぎる。
    リフが終わって、HIROの歌唱が始まった。これも、床に仰向けで倒れた状態でのスタートだ。
    ゾンビの大量発生をテーマにしたこの曲にぴったりのパフォーマンス。観客席ではモッシュの嵐が巻き起こる。
    ゾンビパニックとなったライブ会場で連呼される「Death!」のシャウトと、ぶつかり合って上も下も分からなくなる感覚。
    実家で過ごした囚われの一週間の記憶が、空に立ち上る煙の如く昇華されていく。
    楽曲が終わった頃には、全身汗だくになっていた。
    「まだまだいくぜ!着いてこれるか?」
    ぎゅう詰めの状態から元の位置に戻っていく観客を、自身も汗だくになりながら煽るHIRO。
    「『銀怪』未履修の奴は流石にいねぇよな?聴いてない奴いたら今すぐおれ達の公式動画で聴け!」
    「…無茶言わないでください。」
    HIROの無茶振りに、冷静なツッコミを入れるLICKA様。
    「未履修でも、これ聴いたら今日の帰りには速攻DLしてる筈だぜ!」
    満面の笑みを浮かべサムズアップするSONICに、普段無口なHIKARIさんもボソッと
    「この曲はガンに効く。」
    ネットミームにもなっている言葉を呟いて、ドッとウケる会場。
    HIKARIさんのこういう所が好きだ。普段あんまり喋らないけど、時々喋ると大真面目に謎めいた事を言う。かわいい。
    メンバーが互いに顔を見合わせ、ズンっと鳴り響くドゥーミーなリフ。各々のメンバーが地獄の底から響くような唸り声を上げる。
    それはまさに、獲物を求め地の上を這いずり回る怪異の姿。
    怪物の胎の中に飲み込まれたような錯覚を覚えるほどの圧倒的な音圧と、中間パートの疾走感。そして再び訪れる、重々しく地を這うようなリフ。
    聴了感は、まるで壮大な映画を一本見た後のそれである。
    その余韻も冷めやらぬままに、HIROがMCで新作「組曲・輪廻転生」を演ることを告げる。
    狂犬の如くギャウギャウと吠えるLICKA様のギター。エスニックな雰囲気の、妖艶でありながら冴えた知性を感じさせるどこまでも色っぽいリフ。独特の浮遊感と、眩暈を感じさせるような旋律。
    脳裏に浮かぶのは、極彩色の曼荼羅だ。
    HIROはその、BPM低めで凄味あるメロディを、始終クリーンボイスで艶かしく歌い上げる。
    続いて、BPMが一気に上がり、組曲二曲目「厭離穢土」が始まった。地獄の業火の如き疾走感を纏ったリフが会場を焼き尽くす。
    モッシュの上ではダイブしたファンが宙を舞い、タオルやら空のペットボトルやらが同じように空中を飛び交っている。
    その高揚感に身を委ねていると、あっという間に三曲目「欣求浄土」のターンになった。
    「組曲・輪廻転生」は、後ろに行くにつれ盛り上がり、歌唱もどんどん過激になっていく構成だ。特に、最初から最後までシャウトしっぱなしの「欣求浄土」は、鋼音の全楽曲中最も喉の負担がエグい楽曲となる。
    まだ、ライブ折り返しぐらいだけど、大丈夫?
    そんな不安が一瞬脳裏にチラついたが、鋼音のことだ。何か策があるのだろう。
    三曲合計十五分近い筈の組曲は、怒涛の体感三分で幕を閉じた。
    「さあ、生贄女どもに朗報だ。」
    案の定喉を枯らし、ガラガラ声になったHIROは、それを気にする様子も見せずに会場を見回して
    「スーパーHIKARIさんタイム!」
    メロイックサインを掲げ宣言する。
    スーパーHIKARIさんタイム…???!
    今回初めて登場した趣向にざわつく観客。
    「あいつは意外と歌がうまい。」
    呼吸を整えながら会場を見据えつつ、右手の親指で後ろを指差すHIRO。
    待って?え?どゆこと??歌うの???HIKARIさんが?????
    会場のざわつきが大きくなる。
    「おめぇら、今日ここに来て良かったな。」
    不敵に笑うHIROの横に、ベースを構えたままHIKARIさんが歩み寄る。
    「ライブ限定だ。」
    腰をかがめ、HIROのマイクスタンドを奪って告げるHIKARIさん。
    「おめーらどうせHIKARIのこういうの好きだろう!」
    会場内にこだまする一部女性ファンの絶叫。だが、審神者は思考回路が焼き切れてしまって声が出ない。
    「好きだよな!」
    「好きでーす!!!」
    再び煽るHIROに女性ファンが声を揃えるが、男性の声はほとんど聞こえない。
    「野郎どもも好きだよな!」
    「……好きで〜す」
    HIROが念を押すように煽ると、男性ファンの野太い声がいかにも義務的な口調で応じる。
    「何でそんなにテンション低いんだよ!ふざけんな!」
    笑いながら怒鳴るHIROの声に混じる、ヒューヒューという風音。「欣求浄土」で潰れた喉が回復するまで、一時的にHIKARIさんが代打する、という流れなのだろう。
    しかし、正直不安の方が大きかった。普段あれだけボソボソ喋る人がそんなにうまく歌えるとは思えないし、推しの歌が下手だったり、まして気持ち悪かったりしたら、今まで通りの目で推しを推せなくなってしまうかもしれない。
    だが、不安なのは自分だけではなかったようだ。
    「…好きだよな?」
    ステージの上、これから歌おうという当人が、自分なんてメじゃないほど不安げな様子で問いかけるものだから思わず
    「好きでーす!!!」
    と返していた。そこには男性ファンの声も多分に混じっている。みんな同じ気持ちだったらしい。
    「何でだよwww」
    「人望の差…ですかね?」
    笑うHIROに、LICKA様がチクリと棘を刺す。
    「欣求浄土マジ喉潰れっからな。って訳で、頼んだぞ、HIKARI!」
    バシっとHIKARIさんの背中を叩き、咳払いをしながらステージ後方へと下がるHIRO。
    一割の期待と九割の不安を抱えながら、ステージの上、マイクスタンドを伸ばそうと悪戦苦闘するHIKARIさんを見つめる。
    マイクスタンドのロックを解除する方法を見つけたHIKARIさんが、自分の身長に合わせようとグッと柄を伸ばしたところ、勢い余って上半分がすっぽ抜けてしまった。それを戻そうと再び悪戦苦闘を始めるHIKARIさん。見かねたように、舞台袖からショートボブの男性スタッフが飛び出してくる。スタッフは、手早い動作でマイクスタンドを元に戻し、最大長で固定すると、ディレクター巻きにしたカーディガンをたなびかせ、舞台袖へと戻っていった。
    やたらと長く感じた一分弱のトラブル対応も終わり、舞台の上の準備は万全。
    キーボードによる、陰鬱で妖しげなイントロが始まる。「Franken」。いじめをテーマにしたメッセージ性の高い楽曲だ。
    確かに、こういうゴシックな雰囲気の曲はHIKARIさんによく似合う。
    問題は歌。この曲にメロディーらしいメロディーはなく、ボーカルによるセリフに近いラップとシャウトが続く構成だ。だからこそ難しい。
    実のところ、この曲は一回カラオケで歌ったことがある。BPM低めでうるさくないし、ワンチャン布教できるかも!という天啓を受けたのだ。
    しかし、どういう訳か、自分が歌うと耽美で不穏で陰鬱な原曲は見る影もなくなり、口から出るのは「変なお経の真似事」ばかり。白けた目でスマホをいじり始めたみんなの様子が居た堪れず、一番の途中で再生を停止し、次の人に順番を譲った苦い記憶を思い出す。
    自分はいいが、推しがあんな目で見られるなんて耐えられない!
    審神者の心配などお構いなしに、イントロは刻一刻と歌が始まる地点へ近付いてゆく。
    そろそろ来る……!
    審神者が生唾を飲み込んで身構えると同時に、HIKARIさんの歌が始まった。
    テンションの低い呪うような声でリズミカルに刻まれるセリフ。
    それは、レッキとした「音楽」だった。
    自分がカラオケで唱えた「お経」なんかとは全然違う。
    かっこいい…!
    HIROが歌うバージョンに比べ、只ならぬ重さというか、真に迫る迫力というか、心に直接訴えかけるような「圧」を感じる。
    Aメロは完璧。ただ、この曲はサビで一気に畳み掛けるようなシャウトが入る。普段あれだけ小さい声でボソボソと喋る人に、そんな歌い方ができるとは到底…………。
    そんな、新たに生じた不安も杞憂に終わった。
    HIKARIさんが腹の底から発する全力のシャウト。そのド迫力に目を見開く。
    よく考えてみれば、完全に床に寝転んだ状態からブリッジで起き上がりベースを掻き鳴らすという離れ業をこなす人のこと。その気になればこういう発声もできるのか。
    やばい…好き………。
    膝が震える。
    普通にめちゃくちゃかっこいい。本当に歌もうまいんじゃん!
    どうしよう、もっと好きになってしまう。
    一曲目の興奮も冷めやらぬ内に、スーパーHIKARIさんタイムの二曲目が始まった。鋼音屈指のどエロい歌詞で、HIRO歌唱の音源版ですら聴く度に瀕死になっている「忌事」である。
    HIROが歌っててもどエロいこの曲を…HIKARIさんが…歌う……?
    この曲のリフは短い。覚悟なんて微塵もできないまま、歌が始まった。
    甘く囁くような掠れた声で歌い出すHIKARIさんに思わず
    「やっば、エッロ………………」
    小さく声を漏らす。
    ベースが殆ど入らないAメロの最初で、磔にされたマリオネットのようなダンスを踊るHIKARIさん。
    長い手足がよく映えてとんでもなくエロい。
    この曲が始まってから「エロい」しか言っていない気がするけど、それ以外の語彙が全てぶっ飛ぶぐらいの、とんでもないエロスをステージ上から振り撒かれているのだから仕方ない。しかも、振り撒いているのは他でもない推しである。
    両手で、自身の胸元から太ももまでを悩ましげになぞっていくHIKARIさん。大きな手に、ゴツゴツとした筋肉質な身体のラインが強調される。
    サビに入る直前の「お前だ」という歌詞で、観客席を指差すポーズを取られ、心臓が止まりそうになった。
    重い音でベースを掻き鳴らしながら、前の方に設置されたアンプを長い脚でガッシリ踏み締めシャウトする姿がまた堪らない。
    既にこの時点で一生分の「HIKARIさんの色気」を摂取している気がする。心拍数は既にMAXだ。
    ヤンデレ系ラブソングとも解釈できる歌詞がまた、それに拍車をかけている。HIKARIさんが甘ったるいラブソングを歌ってる所は到底想像できないが、この歌に使われている語彙は全て、HIKARIさんの口から出ても全く違和感のない言葉たち。
    情緒はもうめちゃくちゃに破壊されていた。
    蒸せ返るほどのフェロモンに溺れ、呼吸もままならない。
    やばすぎる。来てよかった。
    サビの合間、喘ぐような吐息を漏らす推し。
    いけない、これはいけない。
    自分は今とんでもないモノを見せられている。
    こんなドスケベな存在が全年齢でいいんですか、HIKARIさん。
    ステージの上の、何だかよく分からないけどとてつもなくえっちな存在に心の中で問いかける。
    昼間外出したらダメなレベルのセクシーさなんですが、日常生活どうされてるんですか???何でHIKARIさんの存在そのものに年齢制限つかないの?もしこんな人に街で偶然出くわしたらエロすぎて失神するよ?????というか、半径3m以内に入ったら妊娠しちゃうのでは??????大丈夫?ほんとに大丈夫??
    ダメなのは言うまでもない、自分である。
    間奏で過呼吸気味になった呼吸を落ち着けようとするも、時折挟まれるHIKARIさんの吐息に再び呼吸を乱される。
    ちょ、呼吸ぐらいさせてください死んでしまいます!!!
    その後も、獲物を探すような表情で客席を見回しながら舌舐めずりしたり、ベースを足の間に挟んで意味深に仰け反ったり、ウィスパーボイスで二回目の「お前だ」という歌詞を囁いた後に不穏さしかない満面の笑みで微笑んだりする姿を見せつけられ、審神者オーバーキルの状態で曲は終わった。
    い、いえ、あの、私、確かにHIKARIさんの夢女なんですけど、ガチ恋とかでは全然ないですし、あの……嬉しいんですけど、その、何か、ごめんなさい……っ!!!
    HIKARIさんのドすけべパフォーマンスを余すところなく堪能し切って、心の中に渦巻いていたのは何とも言えない罪悪感。
    なお、HIKARIさんの挙動は全て脳内HDDに高画質版で保存してある。罪悪感とこれとはまた別物だ。こんなとんでもない公式供給、絶対に忘れない。忘れてなるものか。地獄の果てまで持っていく。
    審神者が、鼻息も荒く震える両手でガッツポーズを作った頃、ステージ上ではHIROを含めたメンバーが顔を見合わせて何か喋り始めていた。次の楽曲からHIROが歌唱に戻るのだろうか。
    そんな中、聞こえてきたのは周りにいたファンの会話。
    「そういえば、HIKARIに彼女できたってガチ?」
    「あくまでウワサだろ?」
    確かに最近、そういう話も聞く。検索で[鋼音 HIKARI]と打つと、サジェストに[彼女]が出てくる程度には。
    実は一回、怖いもの見たさで[HIKARIさんって何者?すっぴんは?彼女はいる?]というページを覗いたこともある。上下左右から当たり屋の如く飛び出して来る怪しげな海外アプリの広告をかわしつつ、辿り着いた先に書いてあったのはこんな言葉。
    [見た目はちょっぴり怖いですが、そのワイルドな雰囲気にときめいちゃう女性も多いのでは?]
    拍子抜け、である。
    「でも、今回のHIKARIが歌う企画とか、観客席に女呼んでるなら納得じゃね?」
    「あー、言われてみれば…。」
    ぐぬっ、と声が漏れそうになるのを必死に押し殺す。
    あくまでこれは、HIROの喉が潰れるからでしょ。実際「欣求浄土」の後のMCで声潰してたし…。
    頭では分かっているものの、突然意識させられた「推しの彼女」なる可能性に動揺が抑え切れない。グラグラと揺れて崩れ落ちそうになる脚をやっとの思いで踏ん張る。
    アイドルやイケメン俳優を推してる子達が熱愛発覚に嘆き悲しむ様は今まで何度も眺めて来た。でもまさか、その当事者になるなんて……。
    自分はガチ恋じゃない。ガチ恋じゃないんだけど、それでもキッツい。
    HIKARIさんに幸せになってほしいのは山々だけど、その隣に知らない女の人がいて、ベタベタとHIKARIさんに触って、微笑んで、HIKARIさんもその女に微笑み返して…なんて場面を想像するだけで泣きそうになる。
    つらい……。
    近くにいたファンの何気ない会話のせいで、熱くなった心に一気に冷水を浴びせられてしまった。
    だけど、泣くもんか。折角のライブなんだから。
    審神者が汗を拭うフリをして涙を拭ったのと同時に、次の曲が始まった。
    「月夜の武闘会」。ゴシックで耽美な曲とは裏腹に、歌詞は深窓の姫君たちが肉弾戦の大乱闘を繰り広げるというシュールな歌だ。
    出だしのデスボイスによるシャウトは、HIROによるものだった。声はこの短時間でほぼ復活を遂げ、声量は十分。
    BメロとサビのクリーンボイスはHIKARIさんの担当だ。
    今までで一番「歌らしい歌」を、いわゆる魔王ボイスで朗々と歌い上げる推しの姿にときめきが抑えられない。
    例え彼女がいたとしても、今、この瞬間のHIKARIさんは、自分を含むみんなのために歌ってくれている。だから、それでいいんだ。
    眦から涙を溢れさせながら、メロイックサインを突き上げる。
    大体、鋼音は「本格派メタルバンド」であって「アイドル」でも「V系」でもない。ファンも男性の方が多い。そんなバンドのメンバー相手に勝手に夢を見ているのだから、百パーセント自己責任だ。
    HIKARIさんの仕事は、あくまでかっこいい音楽を私たちに届けること。それ以上を望むのはお門違いだし、ステージの上で歌い、髪を振り乱してベースを掻き鳴らす姿は、世界で一番かっこいい。もう、それだけで十分だ。
    泣き笑いを浮かべながらモッシュの中に特攻する。
    「武闘会」と名の付くこの曲のモッシュでは、暗黙的にファン同士が殴り合っていい事になっている。それ故に、ただでさえ少ない女性ファンがモッシュに加わることは稀なのだが、今日は構わず特攻した。これぐらいの刺激がなければ、「HIKARIさんの彼女問題」を受け入れられる気がしない。自分の近くにいた、HIKARIさんのライブ衣装コスをした女性もモッシュに加わっている。
    そうだよね、あんな会話聞いたら辛いよね!思う存分殴り合おう!
    恐らく同担と思われるその女性とのパンチの応酬で、腕や脚の数箇所に真っ赤な痕が残ったが、心は幾分軽くなっていた。女性も、どことなく悲しそうな、けれどスッキリした笑みを浮かべ人波に流されていく。
    「おめーらの闘魂のお陰で完全復活だ。」
    両手でメロイックサインを作るHIRO。
    「さて、これでスーパーHIKARIさんタイムは終わりだが…」
    観客席から漏れるブーイング。その中には男性の声も混じっていて、推しの歌声をいいと思ったのが同担だけでなかったことに安堵する。
    「バッ、おま、歌わねぇボーカルとかただの穀潰しじゃねぇか!」
    「曲はHIKARIとLICKAが書いてるもんな!」
    そんなSONICとの軽口の応酬があり
    「でも、ライブはまだ続くからな。最後まで着いてこいよ!」
    言い切るが早いか、キーボードによるイントロが始まった。楽曲は「飛龍」。読んで名の如し天を翔ける龍の歌で、フルバージョンはこのライブにて初公開となる。
    疾走感あるギターとベースが描き出すのは、雲を切り裂き雷鳴を轟かせ、うねりながら飛び回る龍の姿……の筈なのだが、どうしてもそれがこの間の水族館で見たイワシのショーと重なってしまう。イワシと言ったらあのイワシだ。単体で見れば小さくて弱い小魚だが、それが群れをなし、一糸乱さず渦を巻いて泳ぎ回る姿は、それこそ龍のように雄々しく、力強かった。
    一旦それを思い出すと、もうイワシの曲にしか聴こえない。
    いや、まぁ、イワシもかっこよかったんだけど……でも、龍の曲でイワシを思い浮かべてしまうのは……うーん……。
    曲が終わる頃には、その葛藤が「イワシっぽい龍」という珍妙な落とし所で落ち着いてしまって、イワシはメタルなのでは…?などと思い始めている自分に気付く。
    曲終わりのMCは、珍しくHIROではなくHIKARIさんの担当だった。
    「実はこの曲、イワシの曲なんだが…」
    えっ???マジでイワシの曲なの?????
    笑いが溢れる会場で、審神者は一人目を剥いた。
    「ちょっと待て初耳だぞ?!」
    ステージの上でHIROも目を丸くしている。
    「いや、以前水族館で、ものすごいイワシのショーを見てしまってな…。」
    客席は、ドッとウケる者と、あ〜と頷いている者に二分される。勿論自分は後者だ。
    「N水族館に行った時は、是非見てみてくれ。ああ、イワシがどれだけメタルでも、ヘドバンはしてくれるなよ。」
    そんなオチに、頷いていた客からも笑いが溢れた。
    って事は、この前私、推しの行った空間にいたってこと???
    にわかに心拍数が上がるも「彼女と行ったのかな?」という疑問がその熱を奪っていく。
    そんなこと、考えちゃいけないのは分かってる。だけど、HIROがあんな顔するってことはバンドメンバーと行った訳ではないっぽい。
    HIKARIさんが一人水族館なんてイメージつかないし、家族とだったら実弟のSONICがもう少し反応する筈。
    だとしたら、やっぱり……。
    彼女。
    その言葉が脳裏を掠めた瞬間
    「俺からもオススメするぜ!あそこはマジで楽しい!アザラシ触れるしな!」
    SONICの言葉に救われた。
    あ、なるほど、家族で行ったんですね。ってか、あのアザラシSONICも触ったの?SONICが触ったアザラシに、私触ってたの?それもよくよく考えてみれば凄い話だよね。
    ホッとすると同時に、ワクワクとしたときめきが戻ってくる。我ながら単純だ。
    「アザラシ、北海道行けば食えるらしいよな。まだ食った事ねぇけど。」
    物騒な事を宣うHIROに
    「やめてやれ。可哀想だろう…」
    眉根を寄せるHIKARIさん。
    優しい……。
    私の推しは、優しくて、かっこよくて、ベースが上手い。その上歌まで歌える。それだけでいいじゃないか。
    彼女がいてもいなくても、私の推しは最高。それだけ。
    MCが終わり、LICKA様が作詞作曲した中で一番激しい「常世」が始まった。
    この世こそが地獄である、という救いのない歌詞が、疾走感あるメロディーに乗せて歌い上げられる。
    品のいい細面に「雄」の表情を浮かべ、ステージの上を右へ左へ暴れ回るLICKA様。担当じゃない自分ですらゾクっと来る。自分がLICKA様担だったら、この演奏で間違いなく狂っていることだろう。
    そういえば、LICKA様は妻子持ちらしい。何かのインタビューで「うちの子が」とポロリと漏らしたとか何とか…。
    SNSで仲良くなったLICKA様ガチ恋の生贄さんは「その背徳感が堪らない」みたいなことを言っていたので、世の中には色んな人がいるんだなぁとびっくりした。
    あの人は確かアラサーぐらいだった筈。自分も、大人になったらその境地に達する事ができるのだろうか?拳を突き上げ、合いの手を叫びながらふと思う。
    でも、歳下のHIKARIさんガチ恋で「彼女がいるHIKARIさんに浮気として抱かれたい」みたいなインモラルな事を言ってる子もいたし、結局のところそこは個人差なのかもしれない。
    「さて、おめーらに残念な知らせがある。」
    曲が終わり、HIROが両手でマイクスタンドを掴んで静かに告げる。
    演奏を終えた曲は既に十数曲を超え、そろそろこのライブも終わりが近いのだと悟った。
    客席からは「え〜?」という落胆の声に混じって、チラホラと「鋼音ハガ Neverネバ Dieダイ!」とアンコールを求める声が上がる。
    「待て!ステイ!ステイ!アンコールはまだ取っとけ!」
    先走って上がったアンコールを、怒鳴って制止するHIRO。
    「次で最後の曲になる。」
    再び「鋼音ハガ Neverネバ Dieダイ!」コールを始める観客が何人か現れて
    「だぁ〜っ!クッソ!最後の曲ぐらい落ち着いて聴けっての!」
    HIROは毒づいた。
    「まぁ、落ち着いて聴かせるつもりはサラサラねぇがな。」
    客席から響く歓声と指笛。
    「いくぜ!『坊主丸儲け』だ!踊れ!生贄ども!」
    掛け声に合わせて響くドンチャカした陽気なリフ。
    まさにお祭り騒ぎという言葉がピッタリ来る、ハッピーな曲だ。
    会場の真ん中では、曲のスタートに合わせてサークルモッシュが始まった。
    凄い勢いでグルグル回るモッシュに飲まれると、脳内麻薬が出てきて全てがどうでも良くなってくる。
    ステージの上では、間奏の間HIROがコサックダンスをやっている。
    ヘビーな曲から疾走感がある曲、禍々しい曲、妖艶な曲、そしてこんな破茶滅茶に楽しいお祭り曲まで、何が出てくるか分からない闇鍋的な面白さ。
    そんな鋼音が大好きだ。ファンで良かったと、心からそう思う。
    曲も終わりに近づいて、音源版にはない間奏の引き伸ばしが入る。
    マイクの前に立ったHIROが
    「さあ、今日という地獄を盛り上げた、獄卒どもの紹介だ!」
    片手を広げ、後ろを示す。
    「まずはサポートメンバー、実戦型の即戦力キーボーディストSILEN!」
    紹介を受けたSILENは、伝説的メタルバンドのキーボードソロをパロった旋律を奏でる。
    「お次は、冷徹無比・絶対零度のギタリストLICKA!」
    続いてLICKA様。最初は曲のノリに合わせたコミカルなソロを弾き、続けて曲のノリは保ちつつとんでもない速弾きを見せつける。
    「天翔ける音速のドラマーSONIC!」
    ドラムスティックをバンザイするように掲げた後で、ダカダカドコドコとパワフルにドラムセットを打ち鳴らすSONIC。
    「大地を揺るがす雷鳴のベーシストHIKARI!」
    呼ばれた二つ名の通り、一発目にズドンと稲妻が落ちたような低音を鳴らして地鳴りのようなジェントを始めあああああああああ!!!!推しがかっこいい!!!!!!あああああああああああああ!!!!!
    「最後にこの俺、森羅万象に人誅を下すボーカルHIROだ!」
    メンバー紹介が終わり、客席からは演奏に負けず劣らぬ大音声の歓声が上がっている。
    曲の最後のワンフレーズが演奏され
    「今日も最高の謝肉祭だったぜ!ありがとな!生贄ども!」
    HIROの感謝の言葉と共に、メンバーは楽屋へとはけていった。
    鋼音ハガ Neverネバ Dieダイ鋼音ハガ Neverネバ Dieダイ!」
    メンバーの姿が見えなくなるや否や、客席からはアンコールを求める声が湧き上がる。
    鋼音ハガ Neverネバ Dieダイ鋼音ハガ Neverネバ Dieダイ!」
    審神者も、あらん限りの声を振り絞ってそこに加わった。
    しばらくコールを叫んでいると、コープスペイントはそのままに、服だけを簡素なTシャツに着替えたメンバーが、両手を高く上げながら再び舞台に戻ってくる。
    MCなしに始まったアンコールの1曲目は「柳生」。老いて尚強き老剣士を描く、ヒップホップテイストを取り入れた縦揺れ曲だ。
    メンバーは、演奏を終えるとMCもなく再び舞台袖に帰っていく。その背中に向けて、再び浴びせられる割れんばかりの「鋼音ハガ Neverネバ Dieダイ」コール。
    暫くの間を置いて、メンバーが再び舞台の上に登場すると、客席のどこかから「狼〜!」という熱烈な叫び声が上がり、それに触発された観客から次々と「狼!」「狼演れ〜!」と声が上がる。
    そうだ、まだ新曲の内「狼」だけは演ってない。
    自分も負けずに「狼聴きた〜い!」と叫ぶ。
    これにはHIROもニンマリ笑い
    「えっ?何だって?何か忘れてるって?」
    耳をそば立てるようなポーズを取る。
    「狼〜!!」
    再び客席から上がる声。
    「ん〜?聞こえねぇなぁ、何だ?一斉に言ってみろ!せーの」
    「「「「「狼〜!!!!!」」」」」
    「チッ、バレたか。仕方ねぇな、やってやんよ!」
    どことなく嬉しそうな表情のHIROが、メンバーと顔を見合わせる。
    ドラムを先陣に、疾走感がありつつ重厚で、荘厳だけど爽やかなリフが始まった。
    脳裏に浮かぶのは、鬱蒼とした太古の森と、そこを駆け抜ける狼の姿。
    ライブの真の大トリに相応しい、美しくて壮大な曲である。
    メンバーの体力も限界に近いだろうに、それを感じさせない素晴らしい演奏だ。
    演奏を終え「楽しかったぜ!また会おう!」と客席に別れ告げるHIROと、手を振りながら舞台袖に戻る他のメンバーを、三回目となる「鋼音ハガ Neverネバ Dieダイ」コールが追う。
    何度も何度もコールを繰り返した頃、フラフラになったメンバー達が舞台に戻ってきた。
    「いいか、おめーら?これでほんとのほんとに最後だからな!」
    全てを振り絞り、カスカスになった声でHIROが観客席を指差すと、ファンは思い思いに「イェー!」とか「えぇ〜?」とか声を出す。
    「休ませろ!」
    ブーイングする客に怒鳴りつつ、HIROは嬉しそうだった。疲労を色濃く滲ませる楽器隊も、全員満面の笑みを浮かべている。
    LICKA様のクリーントーンで、イントロが始まった。
    曲は「徹底メタル主義」。こんなタイトルだけど、曲調はメタルではなくほのぼのとしたポップパンクである。
    HIROが言うように、本気の本気のラスト専用曲で、カラオケで歌ってもドン引きされない鋼音曲No.1(自分調べ)。ちなみに、これを歌って好感触を得た後「同じバンドの別の曲なんだけど」という文脈で入れたのが「Franken」なのだが、結果はまぁ、先程述べた通りだ。
    客席では、前の人の肩に手を置いて、スキップしながらの穏やかなサークルモッシュが始まる。
    「この曲、タイトルは『徹底メタル主義』だけどどっちかって言うとパンクだよな!」
    間奏のドラムを叩きながら、身も蓋もないツッコミを入れるSONICに、HIROとHIKARIさんが口を揃えて
    「「それを言ったらお終めぇだろ!」まいだ!」
    とツッコミを入れる。
    「私は…好きですよ。」
    微笑むLICKA様に
    「俺もだ」
    HIKARIさんが穏やかな顔で同意し
    「オレもだぜ」
    SONICがそれに続く。
    「おれも好きだ!この曲も、おめーらも、大好きだ!」
    そう叫んで二番を歌い始めるHIROに、HIROの女達が死んでいる。爆心地から遠い所にいた自分もちょっとだけキュンとしたくらいだから無理はない。
    二番が終わり、アウトロが始まる。
    「次のライブも絶対に来いよ!」
    アウトロに乗せて、HIROが観客に呼びかければ、観客は一斉に「イェー!」と返事をした。
    「首を長〜くして待ってるからな!」
    とSONIC。
    「新曲も誠意製作中だ」
    HIKARIさんの言葉に頬が緩む。
    「次は……スウェディッシュポップのコンセプトアルバムなど、いかがでしょうか?」
    最後にLICKA様が割とマジな目で他のメンバーに尋ねると、口を揃えて
    「「「ダメに決まってん(る)だろ!」」」
    という答えが返ってきた。
    アウトロも、もう少しで終わる。
    ずっと終わらなければいいのに。
    これが終わったら、次会えるのは1年後。それまで何事もなく過ごせますように。
    アウトロの最後で今日演ったセトリのダイジェストメドレーが始まった。ボスラッシュを思わせる粋な演出に、オーディエンスからは拍手と歓声が巻き起こる。
    最後に「徹底メタル主義」に戻ってきて、曲が終わる。
    口々に「ありがとう!」と手を振りながらステージを去るメンバーを、万雷の拍手や歓声、指笛が見送る。宙を舞う、タオルやペットボトル、帽子、メガネ(!?)、パンツ(!?!?)。
    終わってしまった。
    最高だった。
    本当に、最高だった。
    審神者も、目から溢れ出した感情の激流もそのままに「鋼音ありがとう!HIKARIさんありがとう!」と叫ぶ。
    こんな最高の時間をくれたメンバーに感謝している。
    自分が産まれてきた事も、きっと間違いなんかじゃない。
    だって、鋼音に出会えたのだから。
    このバンドに出会えて良かった。
    宴の後、明かりが灯った観客席で、審神者は満足げに微笑んだ。
    「お疲れ!」
    楽屋に戻り、真っ先に口を開いたのはソハヤだ。
    「今日も、お客さまの笑顔が見れて、良かったです。」
    江雪が、鏡の前ドーランを拭っていた手を止め、やんわりと微笑み振り返る。
    「悪くねぇパフォーマンスだったじゃねぇか。」
    バシッとSILENこと静−静形薙刀の背を叩く肥前。
    「俺はただ、言われた通りにやっただけだ。」
    妖艶な長身のキーボーディストは、元から八の字の眉をもっと下げ、照れくさそうに目を細めた。
    「最初にパフォーマンスしたいって名乗り出たのはおめーだし、いい煽りだったぞ。やっぱりウチの正式メンバーに…」
    「いや、俺には生徒がいるからな…。」
    肥前によるメンバー勧誘を途中で遮り、スルリと躱す。
    静の表の顔は、音大を目指す子供に向けたピアノ教室の講師である。当人に本業を捨てるつもりが一切ないため、正式な加入を断り続けているのだ。
    「それこそ、生徒がいなくなったタイミングでスッパリ辞めちまうとか、できねーのかよ。」
    「それだけじゃ食えんだろう。」
    困ったように笑う静に、ぐぬぬ、と肥前が押し黙る。
    メタル界隈ではそこそこ名の知れている鋼音も、とどのつまりはローカルで活動しているマイナージャンルのインディーズバンドに過ぎない。
    古書店店主である大典太を筆頭に、江雪は住職、ソハヤはパーソナルトレーナーという形で生きる糧を稼いでいる。本人はバンド一本と思い込んでいる肥前も、その収入の半分は自身の食レポY○uTubeチャンネル「カレー味のFxckin’ Shit」から来るものだ。もっとも、本人は数学が壊滅的にできないため、その事実には気付いていないようだが……。
    「大体、俺が正式加入したらお前らの食い扶持が減る。それでは春子先生に申し訳が立たん。」
    静が持ち出したのは、大典太とソハヤの母の名だ。
    「うちのお袋の事は気にしなくていいぞ?ありゃー相当の奇人だからな。」
    ソハヤは「なぁ兄弟」と同意を求めながら、同じ母を知るもう一人を振り返ったが、いつもの圧倒されるような長身が見当たらない。慌てて四方を見回すと、部屋の隅、舞台メイクもそのままに、膝を抱え震える巨大な小動物の姿があった。
    「どうした兄弟?腹でも痛いのか?!」
    駆け寄ってきたソハヤに、背を丸めたまま首を振る。
    「…死ぬかと思った……………。」
    膝の間から漏れるくぐもった声。
    「ああ?」
    メイクを落とし終えた肥前が、メンチを切ように眉を寄せ、縮こまっても尚存在感のある巨躯を見遣る。
    「次、歌わせるなら、江雪にやらせろ…。俺には…無理だ…。」
    膝から顔は上げぬまま、震える声を振り絞る大典太。収まりの悪い癖毛から覗く耳が赤い。
    「スーパーHIKARIさんタイムの事か?」
    「…もう二度とやりたくない……。」
    頷いて弱々しく答える。
    「んだよ、めちゃくちゃウケてたじゃねぇか。」
    唇を尖らせる肥前を膝の間からギョロリと睨め付け
    「……それにしたって、あんな恥ずかしい歌ばかり選ぶ事はないだろう。」
    恨み言を吐くその目には、若干の涙が滲んでいた。
    「男の俺から見ても色っぽかったぜ!もし俺が女なら惚れてたな!」
    兄弟からのフォローにも、繊細な巨漢は複雑な表情で眉根を寄せた。
    普段なら、こういった悪ノリからは一線を画し、皆の嗜め役に回る江雪すら傍観に回っていて、大典太の眉間の皺は更に深くなる。
    我関せずといった顔でペットボトルの水を含んでいた江雪は、自分に向かう恨みがましい視線に初めて気付いたような体で眉を上げ、寡黙な口を開いた。
    「……意中のお嬢さんなら、気に入ってくださるのでは、ないでしょうか。」
    「意中のお嬢さん」という言葉に大典太の耳はピクリと震え、バネを弾いたかのように猫背を伸ばし江雪を見る。
    「あっ…あいつはそういうんじゃない!」
    しどろもどろになって否定する声は、完全に裏返っていた。
    状況を把握できず、四白眼をすがめながらタバコに火を付ける肥前は置き去りに
    「大体、あいつがこんな、俺たちのむさ苦しいライブになんて来る筈ないだろう。」
    他ならぬ自分に釘を刺す。それが思いのほか深く刺さり、哀愁を帯びた溜息を漏らす大典太。
    「でも、激しい音楽とか好きなんだろ、あの?」
    あっけらかんと言い放つ兄弟を悲しげに見上げ
    「激しいと言っても限度がある。」
    またすぐに目線を落とした。
    「だったらやはりここはスウェディッシュポップを…」
    ポーカーフェイスでそんな事を提案する江雪に
    「させねーよ!」
    肥前からの条件反射に近いツッコミが入る。
    「つーか、事情が全く飲み込めねぇ。」
    吸い終わったタバコを苛々と灰皿に押し付ける肥前から目を逸らしなつつ、ソハヤと江雪は誤魔化すような薄笑いを浮かべた。
    HIKARIが歌うというのは、元はと言えば大典太本人の発案だ。
    今回のセトリは本気で喉がキツい。
    そう漏らした肥前に「だったら俺が歌うか?」と、社交辞令三割、本気七割で提案したことに端を発する。
    本人が乗り気なのをいいことに、兄弟の恋愛成就を願うパリピのソハヤと、家業の最繁期「お盆」を乗り越え変なテンションになった江雪が選曲役を買って出た。
    「激しい音楽とか好きな二十歳のサブカル女子が確実に落ちる曲」というコンセプトの元、酒を酌み交わしながら喧々諤々の議論を交わし、選び抜かれたのがあの三曲。選曲が完了したのは深夜二時。二人とも相当に酔いが回った頃のこと。
    −最ッッッ高だな!−
    −ええ…。我ながら、怖いくらいです。……ふふふ。−
    互いに目の座った笑みを浮かべ固く握手を交わすと、その場で鋼音のグループチャットに選んだ曲を送る。
    程なくして、肥前から《おめーら最高だ》という返信が来て、三十路男二人は深夜の寺の本堂でハイタッチをした。
    翌朝、大典太から《正気か?》と困惑を隠し切れない返信が来たが、二日酔いの江雪が《キー、歌唱の難易度、ライブ全体の構成からしてこれがベストです》《皆さん納得しています》と若干の不機嫌を滲ませながら連投したところ、それ以上の文句が出ることはなかった。言い出しっぺの弱みもあったのだろう。
    なお、一人だけ事情を知らない肥前も、曲名を見た瞬間「あの朴念仁が無駄にセクシーなパフォーマンスをやったら面白れぇんじゃねぇか」と閃いたらしく、腹を抱えて笑いながらパフォーマンスを考案した。
    こうして爆誕したのが「スーパーHIKARIさんタイム」である。
    さて、当事者である大典太だが、曲名を告げられた直後の困惑を除けば、意外にも始終乗り気だった。
    ドライブの余韻の多幸感と、ライブを目前に控えた高揚感。この二つが悪魔合体して、今の今まで内心に眠る羞恥心を覆い隠していたのである。
    だが、楽屋に戻って冷静になった瞬間、自分の歌った歌詞や演じたパフォーマンスが客観的に蘇り、それと共に蓋をしていた羞恥心が一気に溢れかえってきて今に至る。
    「まぁ兄弟、終わった事なんて気にすんなよ。」
    戦犯の一人であるソハヤが丸くなった背中をユサユサと揺さぶるが、内気な兄弟は自分の殻から出て来ようとしない。眉を下げもう一人の戦犯である江雪と目配せした時、楽屋の入り口が勢いよく開いた。
    「素晴らしいパフォーマンスでしたよ、HIKARIさん!」
    入ってきたのは、先程ライブでマイクスタンドを直していたショートボブの青年。
    「前田もそう思うよな!」
    思わぬ助け舟の登場に、ソハヤはパッと表情を明るくして口角を上げる。
    「はい!鋼音の新しい一面が見れて、マネージャー冥利に尽きるというものです。」
    まだ学生の雰囲気を残す若きマネージャーは、目を輝かせ爽やかに答えた。
    「皆さんも、今日は本当にお疲れ様でした。僕も、気付いたら一ファンとして、純粋に楽しんでおりました。」
    笑顔でメンバーを労う前田。
    「この後、打ち上げの席を設けてありますので、準備ができ次第仰ってくださいね。」
    まだ二十代だと言うのに、ここにいるバンドメンバーの誰よりもしっかりしている。こんなに優秀で爽やかな好青年が、何故こんなイカついインディーズバンドのマネージャーをしているのかは、メンバーの誰にも分からない。
    ずっとふてくされていた大典太も、前田の声掛けには流石に重い腰を上げ、メイクを落とし始めた。
    化粧落としが拭うそばから、しがない古書店店主、三池光世が現れる。
    あれは俺ではなく、HIKARIだ。全部HIKARIがやった事だ。
    HIKARIから三池光世に戻ってゆく自分を鏡越しに眺めながら、心のどこかでそんな事を思った。
    HIKARIは決して、陰キャで、根暗で、病弱で、中学時代いじめられていた、三十路がらみの貧乏な古本屋のオヤジなどではない。K市の誇る、今をときめくロックスターだ。
    俺とは、違う。
    心の中の声に小さく頷く。
    多分HIKARIは、普段からかっこよくて、いじめを受けた事もなく、年収は一千万ぐらいあって、女も過去に十人ぐらい抱いている。
    俺とは、別人だ。
    思い浮かべた「HIKARI」像は絶妙にスケールの小さいものだったが、大典太自身は割とそれで納得していた。
    大典太は鏡の中の「三池光世」にもう一度ゆっくり頷いて、私服に着替えるため立ち上がった。
    「お疲れ様で〜す!」
    ガラガラとガラス戸の開く音と、店内に鳴り響くレトロなチャイム音。
    おおよそ十日ぶりとなる明るい声音の来訪に、大典太はいつもの凶相を和らげ、読んでいた本から顔を上げた。
    数字の上ではたったの十日。しかし、自分の中では永遠に続くように感じられた十日も、今日で終わる。
    長旅への労いの言葉をかけようと審神者の顔を見て、大典太はギクリと息を飲んだ。
    「……どうした?その髪は。」
    真っ先に飛び込んできたのは、わざとらしいほど真っ黒になった、審神者の髪。
    その、どこか異様さすら感じる変貌に、用意していた言葉は全て吹き飛び、和らいでいた表情にも険しい色が戻る。
    「まぁ、ちょっと色々ありまして…」
    苦笑いで誤魔化そうとする審神者の表情が、ほんの一瞬だけ悲しげに歪んだのを、大典太は見逃さなかった。
    言いたくないことを無理に言わせるつもりはないが、帰省中「何か」があったのは想像に難くない。普段なら、連絡すれば当日中に返信をよこす審神者が、一週間の間既読すら付けなかったことも、その予感を後押しする。
    「多分、すぐに色落ちすると思います。」
    その声色は明るいが、言葉選びから本意でないのは明白だ。
    「…大丈夫か?」
    審神者の髪が黒くなった。目の前に見えているのは、たったそれだけの事実に過ぎない。しかし、その裏に控えているであろう「何か」に、えも言われぬ不安が掻き立てられる。
    「大丈夫です!推しのライブに行ったので、今はもう元気いっぱいです!」
    両腕でガッツポーズを作る審神者。そのかんばせにはいつも通りの屈託ない輝きが戻っていて、ほっと胸を撫で下ろした。
    推しのライブ、か。
    思い出すのは、先日ライブで浴びた割れんばかりの歓声。
    鋼音うちも、誰かにとってそんな存在になれているなら本望だが…。
    同時に気になったのは審神者の「推し」のこと。
    こいつの推しもベーシストだったな。一体どんなバンドで、どんなライブを演るのだろう。
    そいつらのライブを見てみたいという純粋な好奇心と、自分達はそれより凄いライブをやってやるという対抗意識が、問いかけとなって口をつく。
    「何てバンドのライブに行ったんだ?」
    その質問に、審神者はポッと頬を赤らめると
    「…秘密……です。」
    恥じらうようにはにかんで目を伏せた。
    こいつにこんな表情をさせるのは一体どこのどんな奴なんだ。益々気になり、根掘り葉掘り詮索したい気持ちが喉元ギリギリまで込み上げる。
    大典太本人は気づいていないが、その興味関心は、質・量ともに単純な同業者としての範疇を超えていた。
    平たく言えば、嫉妬である。
    しかし、これ以上の詮索には身バレの危険が付きまとう。審神者に気付かれないよう下唇をグッと噛んで一呼吸置き
    「…あんたが楽しかったなら良かった。」
    一旦話を終わらせ、タバコを持って裏庭に出た。
    審神者との話は半ば強引に終わらせたが、自分の中でまだ話は終わっていない。
    スマホ片手に、ここ一週間K市とその近郊で開催されたライブを洗い出す。
    爽やかフォークデュオのライブに、演歌歌手によるトークショー、アイドルグループのコンサート、ヒップホップのフェスなど、明らかにベーシスト不在のラインナップがパラパラと見つかる中で、一つのバンドが目についた。
    「Blood Line Carousels」バンド名からして「いかにも」な名前である。
    公式サイトに飛ぶと、病み可愛い系というのだろうか、赤と黒を基調としたトップページが開く。一番上に表示されたヴィンテージな字体のロゴをスクロールすると、続けて現れたのはメンバーのアー写。写っているのは、V系メイクで耽美なポーズを決めた六人組の美青年たち。いかにも「激しい音楽の好きな二十歳サブカル女子」ウケのしそうなバンドである。
    写真の下には公式SNSの投稿が埋め込まれており、ライブの告知や新曲発表に混じって、お洒落なバーで高そうなワインを飲んだり、テーマパークで楽しんだり、バスペタルを浮かべた風呂に入ったり、パーティーゲームをプレイしたりするメンバー達の華やかな日常が垣間見える。
    ……なるほど、あいつはこういうのが好きなのか。
    しみじみ納得する大典太。
    それと同時に思い起こされるのは、自分達の公式SNS投稿。
    前田担当の告知はともかく、肥前は脂っこくて臭そうなデカ盛りラーメンの写真ばかり載せているし、兄弟が載せるのは専ら筋トレ器具かトレーニング後の筋肉だ。江雪は江雪で、センスの欠片もないセミの抜け殻や落ち葉、朽ちたガードレールなどの写真に[諸行無常][盛者必衰][一切皆苦]といった気の滅入るような一言を添えて投稿してくる。
    ちなみに自分が最近よく載せているのは、オープンワールド犯罪アクションゲームのスクリーンショットだ。「Blood Line Carousels」の連中には敵うべくもないが、他のメンバーに比べれば多少はマシな方だろう。
    ……そう本人は思い込んでいるが、四人全員が互いに対して同じことを思っているのを、大典太は知らない。
    だが、こんな女ウケにステータスを全振りしたようなバンドのこと。どうせ技術的には大したことがない筈だ。
    そうタカを括りながら、メンバー紹介のページ開いていく。
    ボーカルは、ナツという軍服風の衣装を着た小柄で線の細い美少年。長い睫毛に縁取られた大きな目と白い肌から、儚げな印象を受ける。
    次にギター。このバンドは、ツインギターを採用しているらしい。一人目は紅煉くれん。「紅」とつく芸名ながら真っ白な衣装を身に纏った、これまた儚げな美青年。もう一人が、Vamヴァンというヴァンパイア風の衣装を纏った耽美な美青年だ。
    キーボーディストは、Mと名乗る美青年で、メガネの奥に意味深な笑みを湛えている。
    今のところ、メンバーはアイドルグループにでもいそうな線の細い美少年と、キラキラした美青年しかいない。その事実に再び嫉妬が湧き上がる。
    こんな線の細い連中にマトモなメタルが演れる訳がないと思い込むことで、せめてもの心の安定を図る。
    だが、ドラムのRockという男は、今までの儚げなメンバーとは一線を画す容姿をしていた。筋骨隆々とした長身と、リーチのありそうな長い腕。美青年より美丈夫という形容がしっくりくる容貌は、鋼音のメンバーに混ざっていても違和感がない。
    こいつはそこそこ「演れる」やつかもしれないな。
    ほろ苦い煙を吐き出しながら、大典太は唸る。
    最後に、ベーシストのカンデラという男のページを開く。こいつが恐らく審神者の「推し」なのだろう。
    右目を眼帯で隠し、スーツ風の衣装を身につけた黒髪の美青年は、夜の街でホストでもやっているのがお似合いな伊達男で、画面越しでもブルガリブラックの甘ったるい香りが鼻につく。
    あいつは、こんな奴がいいのか。
    大典太は、元から下がり気味の口角を更に下げ、奥歯を食いしばった。
    こんな、ファン喰いとかしてそうなチャラい奴が……
    だが、こんな奴の演奏技術なんてどうせ大したこと……
    そう思いながら写真を拡大し、その胸板や二の腕の太さに目を見張る。
    意外と「弾けそう」な身体ではないか。
    いや、まだだ。まだ、演奏を聴かないことには、こいつらがどの程度のバンドかなんて分からない。
    とは言え、ここで連中の曲を再生して店番をしているあいつに聞こえれば、自分があれこれ探りを入れていることがバレてしまう。それは避けたい。
    あいつが帰り次第存分に聴いてやる。覚悟しておけよ。
    心の内で強気な言葉を吐き捨てて、不敵に口角を上げる大典太だったが、煙草を持つその手は心なしか震えていた。
    さて、店長が裏庭に出ている間、審神者はというと店台でいつものように本を読んでいた。いや、いつもと同じを装って、本を読むポーズを取っていた、と言う方が正しいかもしれない。
    何せ、活字を追っていても、一昨日見た「スーパーHIKARIさんタイム」が脳裏にチラついて全く集中できないのだ。
    世界一かっこいいと思い始めていた店長が霞むほどのかっこよさ。店長が世界一なら、HIKARIさんは宇宙一?
    一般人とアーティストを比べる方がお門違いなのかもしれないが、あの時摂取した一生分のHIKARIさんのお陰で、店長には自然な態度で接することができる。思わぬ副効用に感謝だ。
    にしても、SNSには漢くさい投稿しかせず、女性ファンは勝手に着いてこいというスタンスだった鋼音が、あんなパフォーマンスを魅せてくれるとは。
    嬉しいのは山々だが、会場にいたかもしれない「HIKARIさんの彼女」の存在が浮かんで、しゅん、と表情が曇る。
    なんか、嫌だな。
    ハーッとため息をつく審神者。
    HIKARIさんの彼女って、どんな感じの人なんだろう?
    年齢は、HIKARIさんより2〜3歳下くらい。HIKARIさんと並んでも様になるくらいスラリと背が高くて、おっぱいは上品なCカップ。顔は、和ゴスが似合う妖艶な美人。物憂げで伏し目がちな切れ長の瞳を、長くて真っ黒な睫毛が囲っている。ぽってりとした日本人形のような唇を染め上げる真っ赤なリップ。大理石のように白い肌。髪は、絹糸のようなパッツン黒髪ストレートロング。
    審神者の頭の中で、「HIKARIさんの彼女」像がゴリゴリと構築されてゆく。
    傷付くと分かっているのに、その妄想は止まらない。
    性格は物静か。声は、落ち着きのある透き通ったアルト。詩的で含蓄に富んだ言葉を、ともすれば気怠さすら感じさせるような声音で溢す。職業は、モデルか何か。それも、読モ系ではなく、モード系のガチなやつ。
    デートは、美術館で前衛芸術を鑑賞したり、純喫茶でブラックコーヒーを飲んだり、老舗のバーで電気ブランを飲んだり、博物館に行ったり、とにかくそういう落ち着いた感じ。
    昼はそんな風に落ち着いた大人の女性だけど、夜の方はどエロくて、ちょっとアブノーマルなプレイも自分からガンガンやっちゃうようなタイプ。露出の低い黒のロングスカートの下にはTバックとか履いてて、ガーターベルトとか着けてる。
    ああ、勝てない。勝てる筈がない。
    脳内で勝手に想像した「HIKARIさんの彼女」は、我ながらすごくHIKARIさんにお似合いで、なんだかとても悔しい気持ちになった。
    ガチ恋ではない以上、勝つ必要なんてないのだが、自分とのあまりの落差に絶望する。
    自分はデブだし、胸だって、無駄にでかくて下品だし、身長も普通。顔が悪いのもそうだけど、赤リップやゴスメイクは絶望的に似合わない。服装も、ディスカウントストアで買った質の低いなんちゃって原宿系。髪の毛だってモジャモジャで、よく切れ毛や枝毛になる。
    性格はどうかと言えば、同世代と比べても子供っぽい。キャイキャイとバカなことばっかり言っていて、テンションが上がればすぐはしゃいでしまう。遊びに行くのも、落ち着いた博物館とかより、この前行った水族館みたいな、単純に楽しい場所が好き。
    夜……は、そういう事したことないから分かんないけど、少なくともTバックやガーターベルトを身に付けたら、この体型ではボンレスハムみたいになるのが目に見えている。もはやギャグの領域だ。
    はぁ〜〜〜。しんどい……。
    店台の机の上に突っ伏す審神者。
    それとタイミングを同じくして、耳元でカラカラ涼しげな音が鳴り、ぴとり、キンキンに結露したガラスが頬に触れた。
    「ぴゃっ?!」
    その感触に驚いて振り返れば、心配そうに眉根を寄せて佇む店長の姿。手には、アイスコーヒーの入ったグラスを持っている。
    「暑そうだな。エアコンの温度、下げるか?」
    アイスコーヒーを机に乗せながら聞いてくるその内容に一瞬呆けたが、自分の様子を暑そうだと取られたことに気づき、咄嗟に「お願いします」と答える。
    そこまで暑くはなかったが、推しの彼女について考えて絶望してました、なんて言える訳がない。
    ピッピッ、とリモコンの音が響き、エアコンからゴーっと先ほどより冷たい強風が噴き出してくる。
    あー、さっきのままでも良かったけど、涼しいのは涼しいのでもっと気持ちいい〜
    「暑かったら、遠慮なく言ってくれ」
    「は〜い」
    背を向けて、座敷に戻る店長に、片手を上げて返事する。
    それにしても、優しい……。
    HIKARIさんも、根は優しそうな印象を受けるけど、店長のこの優しさには敵わないだろう。女性の魅力がゼロの自分に、ここまで優しくしてくれる男性というのは中々いない。
    HIKARIさんは、いくら優しそうでもバンドマン。年収は多分一千万ぐらいあるし、女の人も過去に百人以上は抱いてると思う。
    彼女がいない頃は、ファン喰いとかもしてたんだろうな。出待ちの女の子の中で、特に可愛い子選んで「済まんな」とか言っちゃって。
    だからこそ、きっと目も肥えてるし、実際に関わってみたら自分を馬鹿にしてきた他のイケメン同様、嫌悪感を顕にすると思う。
    そう考えると、逆にHIKARIさんに彼女がいて良かったのかもしれない。
    彼女がいる限り、自分は絶対ガチ恋にならない自信があるから。
    HIKARIさんの彼女は、完璧なスペックを持っているだけじゃなく、そんなふうに私生活がチャラいHIKARIさんの事も完全に受け入れている筈だ。自分にそれはできそうもない。
    やっぱり、ガチ恋は店長一人で十分。
    そう独りごちる。
    最近気付いたのだ。店長も「推し」の一人だと。
    そして、こちらはHIKARIさんと違って「ガチ恋」だ。あくまで、「恋」じゃなくて「ガチ恋」なのは、店長と付き合えるとは思っていないし、それを望んでもいないから。
    「HIKARIさん×自分」は想像できないけど「店長×自分」は最近時々妄想してしまう、それだけの差。
    今のところ、店長に女っ気はなさそうだし、一般人である以上HIKARIさんほどチャラくはないと信じてる。
    だからこそ、妄想が捗るのだ。
    例えば、こないだのドライブの帰りに寄った海辺で、星空の下、そのまま、キ…キ…キス、しちゃったりとか…!
    すぐ後ろに、在庫の仕分け作業をしている店長がいるにも関わらずこんな妄想をする背徳感にドギマギしたが、あくまで妄想の中だけに留めるなら許される筈と自分を納得させる。
    でも、今はいいけど、もし店長にも彼女ができたら………。
    ふ、と表情に翳りを見せる審神者。
    自分みたいな不細工にすらこれだけ優しくしてくれる店長のこと。綺麗なお姉さん相手なら、どれほど優しくなるのだろう。
    HIKARIさんには及ばないにせよ、店長だってすごくかっこいい。そんなかっこいい人に優しくされたら、どんなに綺麗な女の人だって、きっと店長のことを好きになる。
    ライバルが現れた場合、到底こちらに勝ち目はない。戦わずして無条件降伏だ。
    そうなったら、その人の影がチラついて、今してるような妄想もできなくなる。
    「ガチ恋」も楽じゃないなぁ……。
    ストローでほろ苦いブラックコーヒーを啜って、審神者は一つ大きなため息をついた。
    閉店後の店で、大典太は一人ヘッドホンを装着しパソコンに向かっていた。
    目的は一つ。「Blood Line Carousels」がどの程度のバンドなのかを、この耳で聞いて確かめること。
    Y○uTubeでバンド名を検索すると、MVがゾロゾロと出てくる。
    とりあえず、一番上の曲から聴いてやろう。
    「One Night Carousel」と題されたリンクをクリックする。バンド名の一部を冠しているなら、代表作に違いない。
    最初に再生される広告で五秒数えてスキップボタンを押す。
    僅かな静寂を置いて始まる楽曲に、雷に打たれたような衝撃を受けた。
    ……顔バンドだとばかり思っていたら、想像以上に…いや、下手すれば鋼音と同じくらい……

    上手い…………。

    歌詞こそ、一夜を共にしそのまま去っていった女を追い縋るという女々しい内容ではあったが、その演奏技術は相当のものである。音楽性も、正統派パワーメタルの系譜を汲んでいて、悔しいながら「かっこいい」と評せざるを得ない。
    まさか、こんなバンドがこの近辺に居たとは……。
    K市のメタル界隈も捨てたものではないと思いつつ、同時に「ろくな音楽はできない筈」と思い込むことで抑え込んでいた嫉妬心が猛烈な勢いで湧き上がってきた。
    だが、どれだけ演奏がうまくても、こんなチャラついた女々しい歌詞を書く連中だ。どうせ裏ではファン喰いだの何だの、散々汚いことをやっているに決まっている。
    彼らが審神者の推しだという思い込みがなければ、もう少し正当な評価も下せたのかもしれない。しかし、この時の大典太は、らしくなく頭に血が上っていた。
    衝動のままに動画のURLをコピーして、鋼音のグループチャットに〈どう思う?〉の一言を添えて送りつける。
    反応を待つ間他のMVも見てみたが、どれもこれも演奏は上手いし曲もかっこいい。唯一の欠点は、歌詞が女々しいことぐらいだ。
    あいつが好きなのは、こういう連中なんだな……。
    虚ろな目でビールの五百ミリ缶を開け、一気に流し込む。
    フフッ、そうだよな、俺たちみたいなむさ苦しいバンドより、こういうチャラチャラ、キラキラした連中の方が女は好きだよな。
    六人全員が、画面越しに「スーパーHIKARIさんタイム」なんて目じゃないほどの色気を振りまいてくるPVを眺めながら、泣き笑いのような表情で自嘲気味に口の端を持ち上げた時、兄弟から返信が来た。
    〈かっけぇじゃん〉
    歯を見せて笑う絵文字と共に送られてきたのは肯定的な意見。まぁ、そうか。こいつらに対して思うところがなければそういう反応になるか。
    自身の大人気ない行動をほんの少し反省した瞬間、もう一件メッセージが届く。
    〈歌詞は女々しいけど笑〉
    その言葉に大きく頷いて、少しだけ表情を明るくした大典太は、冷蔵庫に二本目のビールを取りに行った。
    何もせず待っているのも暇だし、かといって連中のPVをこれ以上見続けるのは精神衛生上よろしくないので、ゲームの電源を入れる。プレイするのは、よくSNSにスクリーンショットを上げている、オープンワールド犯罪シミュレーションゲーム。
    しばらくの間銀行を襲ったり、追跡してくる警官との銃撃戦を繰り広げたりしていると、座卓の上のスマホが震えた。
    キリがいいところでセーブして、メッセージを確認する。肥前からだ。
    〈鼻持ちならねぇ連中だな。うめーけど。〉
    よくぞ言ってくれた。
    そして次の一文。
    〈こんな女々しい歌詞書く連中は絶対ぜってー裏でファン喰いとかやってるよ〉
    大典太は、満足げな笑みを浮かべると、大きく首を縦に振った。
    既読が2から増えないので、再びゲームの世界に戻り、奪った車でパトカーとカーチェイスをしていると、江雪からも返信が来る。
    〈中々お上手なのではないかと思います。〉
    江雪はこういう奴だから仕方ない。
    〈歌詞は女々しいですが。〉
    そうだよな、やっぱり女々しいよな。
    バンドそのものの印象は賛否が分かれたものの、演奏技術が高いことと歌詞が女々しいことに関しては満場一致である。
    こんな女々しい歌詞を書くバンドには負けていられない。
    連中よりいい音楽を演る。自分にできるのはそれだけだ。
    セーブもしないままゲーム機本体の電源を落とし、残ったビールを飲み干すと、大典太は対抗意識をメラメラと炎のように立ち上らせながら、楽器のある二階の自室へと上がっていった。
    やることはただ一つ。
    演奏技術の猛特訓だ。

    待っていろよ「Blood Line Carousels」
    鋼音俺たちが絶対に食ってやる。

    心の中にしたためた宣戦布告が、この後思わぬ形で叶うことになるのを、大典太はまだ知らない。
    _c_a_r_r_0_l_l_ Link Message Mute
    2022/06/18 11:41:02

    三池書店③ 中編(上)

    ※支部再掲

    審神者ちゃんが「懲役一週間」と自称する帰省から帰ってきて、最推しバンド「重金属凶奏隊 鋼音−HAGANE−」のライブに行くお話。
    詳しくは、1ページ目の登場人物紹介にて。

    セトリの元ネタにした曲は、Twitterの固ツイのツリーにぶら下げております。デスボやシャウトの多用されるうるさい音楽に抵抗ない方は、聴きながらお読み頂くとより楽しめるかもしれません。
    なお、当該楽曲の動画のコメント欄やアーティスト様へのリプ等で、このシリーズについて言及したり、匂わせたりする発言は禁止させていただきます。
    (そういった行為が見受けられ次第、元ネタ公開は中止いたします。)

    
注意点

    このお話には以下の内容が含まれます。

    ・転生世界線現パロ(全員過去の記憶ナシ)

    ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
    ・若干の毒親匂わせ描写あり



    上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
    
合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
    #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ

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    • 三池書店③ 中編(下)※支部再掲

      【対バン】
      対バン(たいばん)とは、ライブイベントにおいて複数の出演者が入れ替わる形でステージに立ち、共演すること。
      いわゆる「バンドもの」においては、ほぼ「タイマン」と同義。語感も似てるし。

      古書店店主の大典太さんと、そこでボランティアしてる審神者ちゃんの現パロ。エア嫉妬回です。
      現時点での二人の関係性は両片想い。

      今回も、セトリの元ネタにした曲はTwitter固ツイのツリーに。
      デスボやシャウトの多用されるうるさい音楽に抵抗ない方は、聴きながらお読み頂くとより楽しめるかもしれません。
      なお、当該楽曲の動画のコメント欄やアーティスト様へのリプ等で、このシリーズについて言及したり、匂わせたりする発言は引き続き禁止させていただきます。
      (そういった行為が見受けられ次第、前作共々元ネタ公開は中止いたします。)
      
注意点

      このお話には以下の内容が含まれます。

      ・転生世界線現パロ(全員過去の記憶ナシ)
      ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
      ・夏場パンイチで寝る大典太光世
      ・自己肯定感低すぎてストーカーや不審者に気付かない審神者
      ・全力で嫌な奴ムーブかましてくる燭台切
      ・名実共にドMな亀甲
      ・(あくまでパフォーマンスとして)BLっぽい演出を取り入れる鋼音メンバー

      上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
      あと、作中で大典太さんが中々にヤバい飲み方をしてますが絶対に真似しちゃいけません。死にます。マジで。


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      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
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    • 三池書店①※支部再掲

      転生世界線現パロの典さにです。
      転生と言いつつ、全員過去の記憶はありません。
      古書店店主でインディーズメタルバンドのベーシストをやってる大典太さんと、近くの大学に通う審神者ちゃんの出会いの話。
      個性強めの女審神者が出てきます。
      続き物なので、まだ恋愛描写はありません。

      上記の通り、完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
      合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
      #女審神者 #大典太光世 #典さに #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
      _c_a_r_r_0_l_l_
    • 三池書店②※支部再掲

      前作への「いいね」「ブクマ」ありがとうございます!!
      お陰様で続きました。

      古書店店主でインディーズメタルバンドのベーシストをやってる大典太さんと、近くの大学に通う審神者ちゃんの話。
      前作読んでなくてもキャラ紹介見れば大体内容分かると思います。
      大典太さんに無自覚片想いをしてる審神者ちゃんが、三池書店でボランティアを始めるお話。

      注意点
      このお話には以下の内容が含まれます。
      ・転生世界線現パロ
      ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ
      ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
      ・ツール変換ほぼそのままの博多弁
      ・解像度の高いクソ客

      博多くんの台詞はこちらのツールで変換したものをそのまま使っています↓
      https://www.8toch.net/translate/
      違和感があった場合、コメントかTwitterで「こういう言い方の方が自然だよ」と教えて頂けると非常に助かります。。。
      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
      _c_a_r_r_0_l_l_
    • 人生に一度の「スーパーウルトラ猫の日」に支部に上げたものの再掲となります。

      朝の10時に気付き、構想2時間、執筆4時間で一気に書き上げました。
      そのため、色々と荒いかもしれません。
      タイトルは、今流行の同名曲から…なのですが、あんな切ない内容じゃありません。むしろ、しょーもないギャグです。
      大典太さんメインですが、そこそこ色んな刀剣男士が出ます。

      注意
      ・大典太さんの猫化(割とガチめの猫化)
      ・典さに要素は薄め
      ・ちょいお下品
      ・刀剣男子の容姿と個体差に関する独自設定あり

      途中「真剣必殺も見たことない」という審神者の叫びが出てきますが、執筆当時の私の心の叫びです。
      お正月の期間限定鍛刀で顕現してから、練度94になるまで真剣必殺を回収できなかった彼ですが、これを書いた直後に出陣させたら真剣必殺を見せてくれました。
      ほんと、大典太さん、マジ…
      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱夢 #刀×主 #刀剣乱舞
      _c_a_r_r_0_l_l_
    • 三池書店③ 前編※支部再掲

      前作までを読んでなくても、キャラ紹介見れば大体内容分かると思います。
      大典太さんが満を持して審神者ちゃんをお出かけに連れて行きます。
      関係性は「両片思い未満」です。

      注意点
      このお話には以下の内容が含まれます。特に下二つは、苦手な方ご注意ください。
      ・転生世界線現パロ
      ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ
      ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
      ・転生後の一部刀剣に彼女や妻子(名前アリ)がいる
      ・年齢操作
      ・若干の下ネタ
      ・DVやモラハラ被害を受けた人の描写
      ・いじめの描写

      下二つの描写のクリーン版が読みたいという方がいらっしゃいましたら、コメント/マシュマロ/TwitterのDM等でお気軽にご相談ください。
      時間はかかってしまうかもしれないのですが、ストーリーに影響を与えない範囲で、可能な限り配慮したバージョンを上げさせて頂きます。

      上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
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      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
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    • 三池書店③ 前編 Epilogue※支部再掲

      前作まででリアクション下さった皆様、ありがとうございます!

      大典太さんと審神者ちゃんが、海辺のドライブを満喫して、いつもの街に帰って来たところから始まるお話です。

      関係性は「無自覚両片思い」というか、「お互いにあえて自覚するのを避けている両片思い」。
      基本的にどの回も、登場人物紹介を見れば分かるように書いているのですが、この回に限っては前作のおまけ(蛇足?)的な内容となっております。
      そんな訳で、できれば前作読んで下さっていること推奨……なのですが、下記「注意点」にも書いた通り、前作の雰囲気を壊しかねない若干の下ネタを含みます。
      当該場面は6ページ目です。苦手な方は飛ばしちゃって下さい…。



      注意点

      このお話には以下の内容が含まれます。

      ・転生世界線現パロ

      ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ

      ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる

      ・転生後の一部刀剣に彼女や妻子(名前アリ)がいる
      ・若干の下ネタ(おっぱいとかAVとかに言及する場面)あり



      上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
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    • 三池書店③ 前編 Prologue※支部再掲

      古書店店主でインディーズメタルバンドのベーシストをやってる大典太さんと、大典太さんのやってる古書店でボランティアをしてる大学生審神者ちゃんの話。
      前作までを読んでなくても、キャラ紹介見れば大体内容分かると思います。
      この訳の分からないタイトルは、想定していた以上に全体のボリュームが出てしまい、泣く泣く分割した結果です。(一回タイトルを連番にしてしまったので後には引けない感)

      注意点
      このお話には以下の内容が含まれます。
      ・転生世界線現パロ
      ・転生と言いつつ、全員過去の記憶ナシ
      ・転生後の一部刀剣が過激なメタルバンドやってる
      ・転生後の一部刀剣に彼女や妻子(名前アリ)がいる
      ・転生後の一部刀剣がキャバクラ行ったりする(※下心はナシ)

      作中で、ソハヤが生物学部をdisるような発言をしますが、生物学部出身の筆者による自虐であり、差別的な意図は一切存在しません。
      生物学部には、Gとか内臓とか、そういった一般人から理解されづらいものを、心の底から「可愛い」と称する人間がマジで一定数存在します。少なくとも私の出身大学ではそうでした。

      上記の通り、地雷原・完全自分需要の設定ですが、それでも良ければご覧ください。
      合わないと思ったらブラウザバックでお願いします。
      #典さに #女審神者 #大典太光世 #刀剣乱舞 #刀剣乱夢 #現パロ
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