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  • わたしのお父様は、銀弾の職人です。
    銃が広く使用されるようになる以前は、銀のナイフや仕込み杖を製作していたらしいのですが、女性などの力を持たない者が力から身を守る為には銀弾が一番効果があると、そうお父様はよく話して聞かせてくださいました。また、わたし自身いつからかそう強く信じるようになりました。
    女の身ですが、わたしの他に子供ができなかったこともあり、次の当主として様々な得意先に連れて回ってもらいました。どの方もとてもかわいがってくださり、いろんな贈り物をしてくださったことをよく覚えております。とりわけ、出先で初めて見た「花」という植物の魅力に囚われてからはそれらをよくいただきました。我が家には仕事柄、庭はありません。庭が欲しいとねだったこともあります。銀の訓練にも鍛冶の修行にも耐えることは用意でしたが、それだけは唯一堪えました。
    大好きなお父様とお母様、かわいいと褒めてくれる使用人たちに取引先の方々。わたしはこの幸せが永遠に続くと信じておりました。

    その日までは。
    突然の出来事でした。
    わたしたちの屋敷に、大勢の聖職者と吸血鬼がやってきたのです。彼らは、あるだけ全ての銀弾を寄越すようわたしたちに剣を向けました。当然、使用目的を問うても答えない者に渡すことはできないと、お父様は断りました。
    最初に殺されたのは、わたしの乳母でした。
    脅しに使えると、わたしを狙う彼らから身を挺して護ってくれた、結果でした。それを皮切りに、聖職者は吸血鬼に命令して、家捜しを始めました。妨害する者は神の名の下に斬り捨てて。わたしはお母様や従者に導かれるままに逃げました。銀で吸血鬼を倒そうとすると、聖職者の魔術に妨害され、また、吸血鬼自身も聖水や火薬などでわたしたちを傷つけました。ひとり、またひとりと減っていき、気がついたら、地下室の奥の部屋にお父様とお母様と三人で、追い詰められていました。震える私を、傷だらけのお父様とお母様が小さな倉庫に隠してくださりました。
    狭い闇の中で、上で争う音に震えておりました。
    一方で、ここが次に開かれる時は、全ての状況が良くなった時なのだと、それまでの我慢なのだと。信じておりました。扉が開いたとき、世界が花に包まれたような気持ちで上を向いたら吸血鬼に多量の聖水を被されました。
    銀で肌を裂いても、火の中に手をついても、あれほどは痛くありませんでした。思わず声を上げ、痛みに蹲っているうちに髪を摑まれ引きずり出されました。肌が痛くて、殺されるのが怖くて。震えていると、頭上から「いい髪だ」という声が聞こえました。様々な方に褒められた、この銀の髪が金になると踏んだのです。助けを呼びたくて聖水の痛みを堪えわずかに目蓋を上げました。愛しい二人が、変わり果てた姿で転がっていました。
    呆然とする間もなく抱え上げられ、馬車に積み込まれ。髪を切られました。大切な糸が、ぷつりと切れたような感覚でした。
    それでもわたしは怖くて反抗できませんでした。わたしが金にならなくなったら殺す、という相談を聞いたとき、わたしはようやく気付いたのです。自分を救えるのは自分自身だけなのだと。
    急速に頭が冷えていくのが分かりました。同時に、視野が広がるのも分かりました。汚れたお気に入りの服も、短くなった大切な髪も、聖水で焼け爛れた皮膚の痛みも。全部忘れて、夢中で殺しました。怖くて、こわくて。どうやったら人が死ぬかなんて知らなかったので、ぐちゃぐちゃになるまで、やりました。
    奇跡的に、わたしは生き残ることができました。生の喜びに浸る時間は、甘露のような味でした。すぐにまた皮膚が痛み始めたので、わたしは聖水を洗い流すため家に戻りました。変わり果てた廊下を歩き、水鉢の前に立ったとき、わたしは変わり果てた自分の醜さに、一時、呆然としました。
    そして、弱い女の自分を殺し、強い男の誰かになって、襲撃者の背後に居る連中を血祭りにあげる決意をしたんだ。
    顔が見れる程度に修復するまで引き篭もった後は、復讐の為だけに生きていたよ。その甲斐あって、色んな方面から恨みを買っていた奴らを、誰よりも早く襲うことができた。殺すのは、吸血鬼でも人間でも、一回しかできないからね。
    達成感に浸って窓の外の月を眺めていると、驚いたことに、取引先の使用人に遭遇した。クラリスという女性で、元気で明るい方だ。

    待って昔のツイートにクラリスさんに名乗って初めて分かってもらえたって書いてあるのを発見してしまったから文字ではこっちのルートでいきます!!
    僕の様子があまりにも変わっていたから、驚いたのか、イーレの子供だと分からなかったのか。動揺していたから、挨拶と共に名乗った。

    すると驚いた様子で色々聞かれたから、思わず一切合切答えてしまった。どの道、それから先イーレの銀弾が収められることは無いと思っていたから、得意先にはその旨を説明して回るつもりだったけれど。
    有難いことに屋敷に招待してくださったんだ。復讐後どうやって生きるかも決めていなかった僕は、彼女の手を取った。そうして彼女の主人、フェリシア様の元でお世話になりながら、亡き父の背を追いかけた。大切な存在を護りたい、力無き人の武器として使える銀弾職人になることしたんだ。
    この銀弾は、そういった暴力で物事を思い通りにしようという奴を確実に殺す、そんな気持ちで、できているんだよ。

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    三冬さん宅クラリスさんお借りしました
    碧_/湯のお花 Link Message Mute
    2017/10/14 23:00:51

    銀弾のイーレ

    銀弾に込める思い ##吸血鬼ものがたり
    話リスト(http://galleria.emotionflow.com/20316/537486.html

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