7.それでもやっぱり敵わない最初は初心そうだったし。簡単に落ちてくれると思ってた。男慣れしてなさそうだったしね。
近くに「兄」という存在がいたとしても気にする必要なんてないと思ってた。女性の扱いは俺の方が上だから。
なのに簡単にはいかない。無機になってたところもあるかな。簡単に落ちてもらっても楽しみがない…と思うようになってた。
のに、俺の方がいつの間にか本気になってたのかもしれない。認めるなんて癪だ。
兄さんは。
他意もなく他人をほめる。肯定する。
その参考書を渡した子の事も、朔良さんに関しても、研究室の仲間に対しても同じ態度だ。
不快に思うことはきっと少ないはずだ。
そんな兄さんだから、最初に「俺のだから」っていう宣言だけじゃだめだったかな?
兄さんの夕飯を作る後ろ姿を眺める。家事は交代制だ。因みに俺の方が要領いいし美味い。自画自賛かもしれないが事実だ。
「ごめんね。待たせた」
出来上がった夕飯を二人で食す。相変わらず美味しいわけでも食べれないわけでもない。これも事実だ。
その時聞いた話だと明日で試験は終わるらしい。朔良さんも終わりなはず。この俺の連絡に返信しないとかありえない。
「ごちそうさま」
台所へ持っていって食器をシンクへうるかす。
その水音が部屋の中で響く。顔を上げることができない。
「高校生の子と朔良さんどっちが……」
我に返った俺は何事もなかったように振舞って後片付けは後でやると言い残して部屋逃げ込む。
後ろから
「二人共可愛い後輩だよ」
と予想通りの答えが返ってきている。
聞こえてたのか。
知ってるよ。
知ってるさ。
それが兄さんだもんね。
自己嫌悪に陥るも、しばらく顔を見かけない"彼女"が気になる。
あの日、朔良さんが兄たちを見つけたと傷付いた顔。どう見たって特別じゃない。気に食わない。
連絡こないのも気に食わない。俺でいいじゃない。
なんでこんな面倒くさいことになったんだろ。ちょろいと思ったのに。俺の方がのめり込んでるみたいじゃないか。それはそれで面白いからいいか
とりとめなち思考をしつつスマホを確認。
再度確認するけど連絡は……一切来ない。
むしろたれた気がする。
ベッドに腰掛けスマホをいじる。この俺がいつまでも待ってると思わない方がいい。絶対に逃してやらないんたからね?
本日快晴。
バイトも休み。これで心おきなく朔良さんを探せるというものだ。
この、俺が探しに来てるんだから、いないとかありえないよ…ね?
俺に勝とうなんて思わないでね。
連絡をたったぐらいじゃ、やっぱり敵わないと思わせてあげる。