9.その味は炭酸、珈琲、檸檬?「朔良さんとどうなりていって、具体的に考えてるよ」
机から身を乗り出して顔を少し近づけただけなのに素直な反応を返してくれる。
『あぁ。楽しい。楽しすぎる』
面倒だとおもってものも全部全部吹っ飛んでしまう。こんなに楽しくて仕方ないのは初めてだ。
「いらっしゃいませー」と遠くで賑やかな声が聞こえる。窓から見える風景もどこもかしこも楽しそうだ。
そんな空気と真逆の顔してる。
さっきは驚いてお茶を吹いた時の顔。
次は不思議そうな顔。
その次は驚いた顔。
その次の次はどんな顔を見せてくれるのかな?
「そ、それで。具体的ってどういうこと…かな?」
次はおっかなびっくりだね。
また違う顔を見る事が出来て自然と笑みを浮かべてしまう。ただ楽しくて笑っただけなのに朔良さんはびくっと身体をこわばらせる。裏も表もないのにね?
目の前の紅茶を手に取って一口飲む。焦らそうと思ってゆっくりカップを置いて話し出す。
「具体的っていうのは…兄さんなんか置いておいて俺にしておかない?」
「は?」
「俺の方がいいよ?朔良さんの事一番に考えてあげるよ。呼ばれたらすぐにでも抱きしめてあげるし、キスだってしてあげるよ?」
「いやいやいや!!!だから何でそんなに直接的なの!?」
そんなに真っ赤になって抗議するところだろうか?
丁度紅茶を口に含んだところだったみたいだ。ギリギリセーフでふくことはなかったが。もう一回見たかったとかは一応言わないでおこう。
「そんなことないでしょ。好きな人に触れたいのは当たり前だし。じゃぁ、会いたいって言われたらすぐにでも会いに行くよ。家事も不得意じゃないし、お金もそこそこあるし。一番大切にしてあげる。どう?」
「どう?って…答えになってないよ…」
「えーここまで言ってまだ足りないの?」
「…こっちが、えーーだよ…」
落ち着かないのか朔良さんは紅茶を再び口に含む。
それを見計らって
「仕方ないな。具体的に言って彼氏彼女になりたいし。その唇に触れたいし。触れたらどんな味がするんだろうね?刺激的?ビター?甘酸っぱい?…それとも紅茶かな?」
狙いすぎたかな?
紅茶云々は俺が見たかっただけだけど、これぐらい言わないと伝わらないよね?
キスの、その味は炭酸、珈琲、檸檬?
朔良さんの事なら何でも知りたいんだ。
最後にもう一つ。
「キスしたいから外出たいなーとかも具体的に思ってたりするよ?俺は答えたよ。」
最高に楽しい。全開の笑顔で宣言する。
「朔良さんは俺とどうなりたい?どうもなりたくないって言っても離さないけどね。」