1章 4話「ようこそ、女王様の治められるお城へお越しくださいました」
兵士に出迎えられる。門番は.....2人か。
「女王様に御用ですか?」
「はい、少し報告しなくちゃいけないことが.....」
「そうですか、それでしたらどうぞお通りください」
ギギィッ.....と音を立てて扉が開けられる。音の割に1人で開けられるようなもの.....なんだな.....?
「詳しい場所は入ってすぐの階段近くにいる兵士にお聞きください」
バタン.....とそれだけ伝えるとすぐに門を閉じられた。.....外の人を余り城に入れたくないのか.....?
「ホムラ、階段はこっちだよ?」
「すぐ行く」
中々広いんだな、これなら敵に攻められても大丈夫そうだ。.....それが門から少し入った時の印象。
周りを見てみるとまるで図書館かのように床から天井まで本棚がある。机.....は一応いくつかはあるみたいだな。
俺は.....多分ここで本を読む、なんて事はないと思うが.....
「ようこそおいでくださいました。.....イナバ様はご存知かと思いますが、女王様の御座す玉座の間まではこの階段を上り、右に曲がって進まれれば辿り着きますので」
「そちらの方は初めてでしょうし、一応」と付け足される。まぁ確かに初めて来るけど今のを聞く限りイナバは何回か来てる感じだし、イナバに先に行ってもらえば.....って、既に何回か来た事があるのか.....?
「.....イナバ」
「どうかした?」
少し長い階段を上りながら話す。
「お前って、この城に何回か来たことあるのか?」
俺が聞くと「まぁ年に1回くらいは.....」と答える。年に1回.....ってことは、今年まだここに来てなかったら15回目なんだろうな。
「.....にしても、玉座の間まで遠いんだな」
階段を上り切って少し歩いたところでそういう。
「まだ少し歩いただけだよ?」
「1日でこんなに歩くこと自体滅多にねぇんだよ......」
普段で考えるとだいぶ歩いてる方なんだよな.....流石に疲れてきた.....
「ほら、まだ玉座の間まで遠いんだから頑張ってよ」
「引っ張ってなんて行けないんだからね」とイナバは言う。別に俺引っ張っていってくれとか言ってねぇけど.....
それに、イナバの力で俺を引っ張っては行けないだろ.....
「にしても、どうして玉座の間までこんなに遠いんだろうな.....?」
「あぁ多分それは.....」とイナバが呟く。
「敵.....要は魔物に攻められた時の対策として玉座の間を遠くしてるんだと思うよ」
「攻めてこられないのが1番良いんだけどね」と付け足す。まぁそうだな.....攻めてこられないのが1番良いんだろうな。
感覚的に、長い廊下を半分程歩いた頃。その頃にもなってくると流石に玉座の間の前にある立派そうな扉が見えてくる。
「あとどれくらい歩けば良い?」
「多分もうすぐ着くよ」
そんな会話をする。もうすぐ.....の感覚が違うんだよなぁ.....
そんな事を考えながら、とりあえず真っ直ぐ歩みを進める。歩いてたらそのうち着くだろうなという感覚で。
「.....あ、もう着くよ」
「は.....?」
いやさっきまだ少し遠かったよな?そんなすぐに着くわけが.....そう思って少し伏せていた顔を上げる。
「.....」
着いてる。.....早くないか?空間移動でもしたのかと思うほどには.....
「ホムラ?中入らないの?」
扉を少し開けながら聞いてくる。
「入る.....」
そう答えればまだ開け切っていない扉をギギィ.....と音を立てながら開ける。
「よく来てくれました。霧崎ホムラさん、陸奥イナバさん」
何だか凄く高そうなドレスを身に纏った女性が椅子から立って話す。.....っていうか、なんで俺の名前まで知ってるんだ.....?
「何故ホムラさんの名前も知ってるのかと思いますよね.....?」
.....もしかして俺、また声に出てたか.....?.....多分出てたんだろうな.....
「それは後でお話しましょう。
私はホムラさん、あなたがここに来るのをずっと待っていたのです」
「待ってた.....?」
待ってた.....って、どのくらいの時期からなんだ?.....まぁ考えてもすぐに分かるってものでもないか.....
「イナバさんはお久しぶりですね」
「はい、お久しぶりです女王様」
丁寧に、二人とも挨拶をする。久しぶりって言ってる所辺り、少なからず1年以内にはここに来てるんだろうと思う。
「ホムラさん」
「はい?」
急に名前を呼ばれて気の抜けた返事をする。それにイナバは「そんなボーッとしないで!」と声を掛けてくる。
別にボーッとしてたわけでもない.....けど、1回1回言うのは少し面倒だからやめておこう。
「今から言う
私の言葉、信じてくださいますか?」
「.....まぁ、一応.....」
余り巫山戯たものとかじゃなければ別に.....
「ホムラさん...あなたはこの裏世界で語り継がれている伝説の勇者の生まれ変わりなのです」
「...........はぁ?」
裏世界.....は今はまぁいいとして、伝説の勇者.....の、生まれ変わり.....?
何だか凄くぶっ飛んだことを言ってくる人だな.....
「今はまだ信じられないでしょうが.....」
「いや、信じる信じないの前になんで俺がその.....伝説の勇者?の生まれ変わりなんだってわかるんだ?」
俺が気になってるのはそこだ。どうして俺みたいなやつが勇者の生まれ変わりだ、なんて言われるんだ.....?
「それは、ですね」
と言葉を切る。.....なにか言いづらいような事でも聞いたのか.....?
「何から話しましょうか.....」と女王様は呟く。
.....そんなに難しいことを聞いた、のか.....?
でも、ちゃんとそうだっていう理由があるなら聞いておきたいし、聞いておいた方が良いんだろうって思う。思う.....けど、難しい説明をされるのは.....嫌、だな。
そんな事を考えながら女王様の次の言葉を待った。