1章 9話鍵を受付に返し、城下町から出る。
「えっとセレジェイラまでは.....真っ直ぐ行って橋を渡って.....北?」
「待てなんで最後疑問形なんだ.....?」
「だって地図見てないし.....」
「とりあえず橋を渡って陸に沿って左側を歩いていけば着くはず.....」そう言ってイナバは先を歩く。
なんで地図見てないんだ?.....そう言えば昨日から地図らしいものなんて1回も見てない。もしかしなくてもイナバ.....
「地図持ってきてねぇのか.....?」
「だって.....慣れてるからいらないと思って.....」
「あのなぁ.....」
慣れてても一応地図は持ってくるものだよな.....?仕方ない.....地図無しでセレジェイラまで行くしかないな。
「橋って今見えてるあの橋でいいんだよな?」
「うんあの橋だよ」
「あれ渡って左に行ったらセレジェイラに着くから」とイナバは言って少し早歩きで先へ進む。
「なぁ、なんでそんなに急ぐんだよ?」
「だって早く着いた方が間違ってた時に道聞けばちゃんとセレジェイラに行けるし.....」
「.....それってまた明日移動した方が早くね?」
「それだと時間が勿体ないよ......」
そう言って、イナバはさらに先へと歩みを進める。
時間がもったいないって言うけど、別にそこまで急がなくてもいいと思うけどな.....そう思いつつも、黙ってイナバの横を歩く。
そう言えば.....
「これって川、なのか?」
「ん?.....多分海の部類、だと思うけど.....」
橋を渡りながら話す。大きめの橋が架けられてる所は海ってことでいいのか.....?にしても橋長いな.....
何だか無理に陸と陸を繋いだって感じが凄くする。もう少しどうにかならなかったのかこれ.....
そう思いつつもその長い橋を渡り終え、さっきイナバが言っていた通り陸に沿って左に歩いていく。
ここら辺も最初に見た場所とあまり変わらない、木や山といったものばかり。.....自然豊かなんだな、この世界.....
「ガルゥ.....」
まぁ、自然すぎるのもどうかと思うけどな.....
「ホムラ.....!」
「わかってる」
またウルフだ。
今回は.....4匹か。大丈夫かこれ.....
「もう少しで街に着けるのに.....」
「しょーがねぇだろ」
とりあえず、倒せばいい。剣を鞘から抜いて前に構える。
「インパルス!」
イナバがそう叫ぶとウルフ1匹に雷が落ち、動かなくなる。.....また無詠唱なんだな.....
ていうか.....
「こいつらよく動くな.....これでどうだ!」
ウルフ1匹をよく狙い、一突きする。と、急所に当たったようで動かなくなる。
あと2匹.....のはず、どこに行った.....?
「ホムラ横見てよね!.....フレイム!」
自分のすぐ横でウルフが焼け落ちる。イナバがいなかったら怪我じゃ済まなかっただろうな.....
「.....っ!イナバ後ろ!」
「え?.....!?」
慌てて声を掛ける。自分のすぐ後ろに迫ったウルフを見て、イナバはその場に固まってしまう。
「くそっ.....!」
思い切り手を伸ばしイナバを自分の方に引き寄せ、ウルフに向かって剣を振り下ろす。
ザンッと言う音と共に、ウルフがその場に倒れ動かなくなる。
「.....そ、そんな無理しなくても良かったのに.....」
「手当て出来るやついねぇのに怪我したら駄目だろ.....」
「確かにそうだけど.....」
話しながら自分の方に引き寄せていたイナバを離し、剣を鞘に収める。今回は少し大変だったな......やっぱり、2人のままだとこの先も戦いが不利になったりとか.....危険になる時も出てくるのか.....?
そう考えているとイナバは何かに気付いたらしく咄嗟に呪文を唱えようとする。.....のを、「やぁ!!」という誰かの声に止められる。
「最後の1匹を倒したからと言って外にいる限り気を抜かない。.....普通に考えればわかる事だぞ」
「......子供?」
俺がそう呟くと、その子供は明らかに“やめろ”と言わんばかりの表情を浮かべ.....
「子供じゃない!」
と、そう叫んでくる。
「.....どう見ても子供だろ」
その子供は水色の瞳に少し濃い水色をした長い髪、その髪を束ねている黄緑色のリボン。黒いポンチョに身を包み、少し底が高い靴を履いている。.....でも、その靴を入れて考えても身長は140cmあればいい方.....みたいな感じだ。.....剣の扱いに長けていることは、分かる。
「.....そんなに見ないで欲しいぞ」
「悪ぃ」
そんなに見てたつもりねぇけど.....まぁ、本人がそう言うなら見てたのかもしれない。
「名前.....聞いてもいい?」
ストンッと、イナバはその子供より目線を下げるためにしゃがみこむ。するとその子供は一瞬迷ってから。
「.....シオン」
「シオン.....くん?」
「そう」
と言ってその子供.....シオンは背中にある鞘に剣を収めてどこかへ行こうとする。
「どこ行くんだ?」
「セレジェイラに戻るだけだぞ」
セレジェイラ.....今から行こうとしてる場所か。
「なぁ、それなら一緒にセレジェイラまで行かねぇか?」
「あ、そうだね。私たちもセレジェイラに行こうと思ってたし......」
「なんで.....」
“なんで一緒に行かなきゃいけないんだ”と言いたそうな表情を浮かべる。
「結局行こうとしてる場所は一緒なんだからそっちのが早いだろ」
俺がそう言うと、シオンは少し考えてから
「.....仕方ないぞ」
そう言って先を歩いていく。それをイナバは「待って」と急いで立ち上がり後を追いかけていく。
.....俺はそれを見ながら、後ろを歩いて行くことにした。