1章 5話女王様が言葉を止めてから数十秒程度の間が空く。.....流石にもう何を話すかは決まったところだろ。
「.....まず、ホムラさんの毛先が赤くなっている理由を話しましょう」
毛先が赤くなってる理由.....?まぁそれも気になってないわけじゃないから一応聞きはするけど.....
「簡単に言ってしまうと、それは少なからず持っている魔力を上手く扱うことが出来ずにそうなってしまう.....と文献で読みましたが、本当にそうなのかは、
私にも分かりません.....」
.....なんだそれ、かなり不確かだな.....でも女王様にも分からないなら仕方ないのか.....?
「で、俺が勇者の生まれ変わりだってなる理由は他にもあるんだろ?」
「ホムラ!言葉使いに気を付けてよ......!」
イナバに言われて気が付く。普通にクラスのやつと話す感じで話してるけど、大丈夫なんだろうか.....
「楽にしていただいて
良いのですよ」
普通にいいって言われたな。じゃあそのままでいいだろ、楽だし。
「.....もう1つ、あなたが勇者の生まれ変わりだと分かることを言いましょう」
また不確かなものなんじゃ無いだろうな...と思いながら言葉を待つ。
「ここに来る前、表世界で魔物に襲われましたね?」
「あぁ.....さっきのあのデカい犬......」
名前.....はすぐに忘れたけど.....
「あの時、あなた以外の人には見えていなかった。.....これは、分かりますね?」
確かに、周りは見えてなかった.....現に岡本は見えてなかったみたいだし、俺の他に見えてたのはイナバくらいで.....
「.....そういえば、なんであの時イナバは見えてたんだ?」
あの魔物とか.....とイナバの方を見て言うと「多分親が裏世界の人だからって言うのとたまに裏世界に来て魔物相手に魔法の練習してたからだと思う」と話す。見える見えない.....って、そんな感じで分かれるのか.....?
「続きを話しますよ。.....ホムラさんが生まれるより数年前、イナバさん達の一族は『勇者は表世界で生まれ変わる』.....と聞き、表世界まで向かったのです」
.....一族?っていうか、なんでそんな生まれる場所とかがわかるんだ.....
「今はもう滅んでしまいましたが、クレアールと言う国にいた占い師の預言を聞き、表世界に行ったのです」
「占い師の預言.....?」
あれか、神とかから言われた言葉をそのまま人に伝えるやつ.....でもそんなのでわざわざこの世界から引っ越したのか......なんか大変だな。いつ産まれるのかもわからないのに。
「そうです。.....これで、良いですか?」
「まぁ、一応どういうことかは分かった」
「そうですか。.....ではミッシェル、剣と杖を」
「かしこまりました」
女王様の言葉に、側近らしき人物が返事をして玉座より少し奥の部屋に入っていく。しばらくしないうちに、ミッシェルと呼ばれた男の人が剣と杖を持って奥の部屋から出て来る。
「これで良いでしょうか」
「えぇ、それです」
そういいながらミッシェルさんから剣と杖を女王様が受け取る。
「ホムラさんは剣、イナバさんは杖を。.....さぁ、お取りください」
俺が剣で、イナバは杖.....まぁそうだよな。普通に考えてもそうなる.....んだろうけど、俺今までに剣とか使ったことねぇけど大丈夫なのか.....?そう思いながらも剣を受け取る。
.....これ、腰に剣をさすしか無くないか.....?ベルトが腰に巻くものみたいだし。
簡単にベルトから鞘が落ちないように2箇所ほど紐か何かで固定されている。
鞄を持ってて少しベルトを巻くのに時間が掛かる。
.....意外と重いんだな、剣って。俺これちゃんと使えるのか.....?
「ホムラ、もう大丈夫?剣ちゃんと固定出来た?」
「出来てないなら私、手伝おうか?」とイナバは言ってくる。
「いい!それにベルトくらい1人で巻けるしもう巻いた」
.....子供じゃあるまいし、それくらい普通に出来る。
「準備はよろしいですか?」
と女王様が聞いてくる。それに俺達は「はい」と返事をする。
「まずはセレジェイラへ向かってください」
「セレジェイラ.....?」
「橋を渡り北に向かって歩いていけば着きます」
それを聞くとイナバは早く玉座の間から出ようとする。
「気を付けてください、魔物は強いですから」
「はぁ.....」
開け放たれた扉が閉まる前に聞こえた声に俺は適当に返事をする。.....それとほぼ同時にバタンと音を立てて扉が閉まる。
「なぁイナバ」
「何?」
「お前さっき急いで部屋出てなかったか?」
俺がそう聞くとイナバは「別に急いでなんてないけど.....」と言う。
「じゃあなんですぐに部屋出たんだよ?」
「ん〜.....少しでもこの世界のことを知ってもらいたくて、それだったらすぐにお城を出ていかないで勉強したらいいんじゃないかなーって」
勉強.....?なんでわざわざ自分の嫌いなことをしないと行けないんだっ.....
「.....勉強って言ってもどんな場所があるのかとか、そんなのだよ?」
「それでも座って本見て.....とかはしたくねぇ.....」
俺がそういうと「うーん.....」と少し考えてから
「じゃあ歩きながら説明するのは?」
「それだったら本とか見ないし」と言ってくる。
「歩きながら.....で説明できる範囲だよな?」
「うん」
来た道を戻りながら話す。国とか街とかって、いくつくらいあるんだろうな.....?
「あ、そういえば」
急にイナバが呟く。
「今日はこのままストーリア国の城下町の宿屋に泊まりに行くからね」
「.....セレジェイラまで行かなくていいのか?」
俺がそう聞くとイナバは「疲れたままで先に行くのは良くないよ」と言う。
まぁ確かにそうだとは思う。でもそんな感じで進んでいっていいのか.....?と思う。
「とりあえず、早く行こうよ」
「.....そうだな」
先に進むのは明日で良い。ようやく城を出たところで、そう思った。