1章 14話シオンとイナバの後を追い、ストーリアに到着する。
「多分.....一年半振りくらいだぞ!」
城門前でシオンはそう言う。
.....なんというか一回一回リアクション大きいような。
一人そう思っている俺は置いてさっさと城の中へ入っていくシオン。
イナバは「早くしないと置いていくよ?」と言うだけ言って城の門をくぐる。
(.....なんか酷くね?)
そう思いつつも二人の後に続いて俺も門をくぐる。
「これは.....シオン王子!お久しぶりです!」
「久しぶりだぞ!」
「.....相変わらず人脈すげぇな」
俺がそう言うとシオンは得意げな顔をして「これでも元王子だぞ!」と言って胸を張る。......元って言う割に今王子扱いされても何も言わなかったよな.....
って言葉に出すのはやめておこう、なんか取り返しつかなくなりそうだ。
「今日はどうされたのですか?」
「ホムラたちが表世界に帰ってる間ボクはここにいようと思ったから女王様に許可を貰いに来たんだぞ!」
「そうですか.....では玉座の間までお連れ致します」
門番はそう言って俺達を案内しようとしてくれる。けれどすぐに「行き方はちゃんと覚えてるから別に良いぞ!」と言ってシオンは先に階段を上がっていく。
「シオン王子.....何だか自由ですね」
「知り合って日は浅いけど大体あんな感じだろ」
俺が門番に対しそう言うと「いえ、以前お会いした時はもう少し暗かったので.....」と言う。
「今も、ですけど.....前は今よりも暗かったんですか?」
イナバがそう聞くと「えぇ、きっと国が滅びたのが原因でしょう」と門番は言葉を返す。
「.....やっぱり、それか.....」
「ですが安心しました」
「安心.....?」
俺もイナバもその言葉を少し疑問に思うと門番は「なんだか6歳の頃.....まだクレアール国で王や王妃、王女と一緒にいた頃のシオン王子に近付いたような気がしまして」と言う。
.....この兵士もしかして.....
「クレアール国の.....生き残り.....?」
「.....えぇ、そうです」
俺が呟いた言葉に門番はそう返す。それを聞いたイナバは「ならその事をシオンくんに言えば......」と言葉を発するが門番は黙ったまま静かに首を横に振る。
「それは.....出来ません」
「どうして.....」
「私はあの時、王の命で王妃様や王女、王子を守るために城からの脱出を試みたのです。ですが.....私は守りきる事が出来ず、今まで生きてきてしまったのです」
「そんな私に、今更王子に伝える資格など無いでしょう?」と少し悲しそうな表情をしながらそう言う。
「そんな事.....」
「そんな事ないだろ」と言おうとすると待ちくたびれたのかちょうどシオンが階段から下りてきて「遅いぞ!」と言って俺とイナバの制服の袖を引っ張ってくる。
「え、ひ、引っ張らないで......」
「遅いからだぞ!」
そう言いながら尚も袖を引っ張って強制的に階段を上らせるようにする。
「.....お二人共、シオン王子を待たせてはいけませんよ」
「ほら」と言って俺たちの背中を押してその場から遠ざけようとする。
その行動にイナバは何かを言おうとしていたけどそれよりも先に俺は「ちゃんと着いてくから袖引っ張るな」とシオンに向かってそう言う。
「着いていくって言ってもさっき来てなかったぞ!」
「来てなかったって.....話してたからだろ.....」
俺がそう言うとイナバは話を合わせようとしたのか「.....うん、門番さんとちょっと話してたから.....」と隣で話す。
「.....ふ〜ん.....」
俺もイナバもシオンの言葉にそう返すと少し不思議そうな表情をした後に「まぁ.....ちゃんと着いてきてくれるならいいけど.....」と言って袖から手を離して少し先を歩く。
「ねぇホムラ、シオンくんにあの事言わなくて良いのかな.....」
「本人が言うのを嫌がってたんだし別に俺たちが言う事でもないだろ」
イナバに対しそう言うと俺はシオンに着いていくために少し歩調を早くする。
「.....そうかもしれないけど.....」
何処か納得しきっていないイナバはそう呟きつつも後を着いてくる。
「.....ホムラ達さっきから何話して.....」
「シオンには関係ねぇよ」
「なっ.....気になるぞ!」
「教えて欲しいぞ!」と言いながらいつの間にか俺の横に並んで騒ぎ始める。
「騒ぐなよ.....」
「騒いでないぞ!」
そう反論してくるシオンに内心(充分騒いでると思うんだけどな.....?)とは思いつつも玉座の間までの長いようで短い道を歩いていく。
.....そうこうしているうちに気付けばもう玉座の間の扉の前まで着いていてその大きな門をゆっくりと押す。
「どなたかと思えば.....貴方達でしたか」
「女王様、お話があって戻ってきました」
階段前から後ろを着いてきていたイナバが前に出てそう声を発する。
「話.....ですか」
「はい、ですがお話があるのは私では無くて.....」
そこまで言うとイナバは一旦言葉を区切り、さっきまで話していなかったシオンが前に出て女王様と話を始める。
「話があるのはボクです。.....あの、ホムラ達が表世界へ帰っている間だけストーリアに滞在しても良いですか.....?」
シオンが恐る恐るといった様子でそう聞くと「えぇ、勿論良いですよ」と女王様は答える。
それを聞いてシオンはわかりやすく表情を明るくし、「ありがとうございます、女王様!」と感謝の言葉を告げた。
「じゃあ私達は表世界に帰りますね」
イナバがそう声を掛けたのを聞いて玉座の間を出ようと扉の方へ近付く。
すると後ろの方でいきなりシオンが「あー!」とかなりの大きさで声をあげる。
「こんな所で急に叫ぶなよ.....」
「ご、ごめんだぞ.....」
俺の言葉にシオンはそう返すとしゅん......と項垂れたように謝罪する。
「えっと.....シオンくん、何か言いたかったんじゃないの?」
イナバがそう声をかけるとシオンは思い出したと言わんばかりの勢いで顔をあげる。
「そうだぞ!えっと.....ばいばいって、言いたかったんだぞ」
「今度はちゃんと言えた.....!」とどこか嬉しそうな様子でシオンはそう言う。
そんなに嬉しそうにしなくても良いだろ.....と思いつつも再来週辺りには戻ってくるということを伝えて俺とイナバは玉座の間から出てストーリア国を後にした。