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    ニャンジ君と、わんいち君お話は次のページより
    こちらは人物紹介

     🐈‍⬛ ニャンジ。猫。わんいちと獅子神さんが好き。特にわんいちは自分のだと思っている。よく獅子神さんの胸を揉んでおり、その為に爪を切られてしまうが、致し方なしと受け入れている。村雨さんは同族嫌悪により、あまり近付かない。
     🐕 わんいち。犬。家族みんな好き。ニャンジより先に来たが、猫に色々譲ってあげる優しいワンコ。
     シャンプーは嫌いだったが、克服し(偉い)のちにお湯の気持ちよさに目覚める。
     ☔️ 村雨礼二。わんいちを拾った人。忙しくて世話ができないからと、獅子神に託す予定だったが、犬耳敬一君(半獣)に見えてしまい、離れ難くなった。
     わんいちと共に獅子神宅へ転がり込んで、現在同棲中。
     偶に散歩に行くとわんいちが凄く喜ぶが、日に2回、数キロ歩くワンコに毎回付き合うのは無理。
     ニャンジとはそれなりの距離を保っており、喧嘩はしないが、マウントを取る事もある。
     🦁 獅子神敬一。犬を引き取りに行ったら村雨もついて来た人。口に出さないが、暖かな家庭に夢を見ていたので、惚れた相手と犬という絵に描いたような形が嬉しいらしい。数ヶ月後にニャンジを拾って更に賑やかになる。
     獣医からはアスリートとお墨付きを頂いているわんいちが、モチモチした半獣にしか見えないのが悩み。どこまで鍛えていいのか。
     あとニャンジが胸を揉むので、村雨の嫉妬が心配。
     雨の日だった。
     右の前足を怪我し、ふらふらと彷徨う犬と出逢ったのは。
     仕事帰りで、タクシーも掴まらず、傘を片手に憂鬱な気分で、村雨は歩いていた。
     情けをかける気は毛頭無かった。
     しかし、綺麗であろうミルクティ色の毛並みが――
     怪我した足を引き摺りながらも、懸命に前へと進む姿が――
     誰かを彷彿とさせるもので。
     私も変わったな、とその変化を面白く感じながら、村雨は高いスーツが汚れるのも厭わずに、ふらつく犬へと手を差し伸べた。
     
    「ほら、走ると汚れるぞ」
     ハーネスを着けたわんいち(犬)へ、落ち着けと獅子神は声を掛けた。
     雨上がりを狙って、夕方の散歩に出た。
     所々水溜りはあるが、雨雲は去り、心地よい風が吹いている。
     分かったと返事をするよう、わんいちは振り返って笑顔を見せた。ご機嫌である。
     尻尾を上げて歩く犬は、不思議な事に、獅子神の目には小さな半獣に見えている。
     犬の耳と尻尾を生やした、幼い子供。
     言っている内容も何となく分かるのだが、それを説明しても、愛犬家はみんなそうです、我が子のように扱うし、話もできると思っています、と従業員達にすら、微妙な否定をされた。
     同じ症状を抱える医者は、可愛いからだ、という適当な診断を下し、アテにならない。
     もっとも、それが要因で、こうして家族のような形で暮らしているのだから、獅子神的にも悪くはない。
     
     初めは、里親にと話を持ち掛けられた。
     どういう訳か、邪の化身のような村雨が、犬を保護したと。
     家で仕事をしており、雑用係として従業員を雇っている獅子神には、犬1匹の世話など大した問題ではなかった。
     だからいいぞと即答し、会いに行った。
    (お迎えグッズは雑用係が準備中)
     昨夜保護されたばかりの犬は、1日も経たずに村雨宅を我が家と認識したのか、クッションの上でスピスピと腹を出して寝ていた。
     薄汚れた毛並みが、呼吸の度に揺れている。
     洗っていいか分からず、拭うだけに留めたようで、衛生面を気にする彼にしては珍しい。
    「コイツ、雑種じゃねえだろ?」
    「…………知らん」
     妙に歯切れが悪い。
     村雨が犬種に疎いのか、どうでもいいのか、それとも寂しくなったか。
     理由は分からないが、普段の村雨らしくはなくて、獅子神は胸が高鳴った。なんだ、可愛い所あるな、と。
    「……どうせ頻繁に会いに来るだろ」
    「そうだな」
    「大事にするからさ。んな顔すんなよ」
     犬は抱き上げると、見た目より軽くて。
     たくさん食べさせようと誓う獅子神が、村雨を通り越して玄関に出ようとした刹那――
     
     小さな手が村雨の袖を引いた。
     
    「は……?!」
     腕の中の存在は、確かに犬だったものだ。
     それが子供になって、小さな手を必死に伸ばしており、獅子神は驚愕に足を留めた。
     とっくにそう見えていたのか、村雨は姿よりも、袖を握る手に驚いていた。
     目を覚ました犬は、まん丸な目を潤ませ、村雨を頼る。
    「愚かだな……捨てられるとでも思ったか?」
     愚かと言いながらも、村雨の声は、この男のどこにと疑うほど優しい音を響かせており、重ねられた手は、安心させるよう握り締められていた。
     獅子神は早々に、連れ帰るのを断念した。
    「オレが毎日通うから、コイツここに置いてやってくれねえか?」
    「駄目だ」
    「これ引き離すの、オレにはちょっと無理だぜ?」
     痩せた小さな子供が、必死に縋っているのだ。
    「駄目だと言っている。ここではあなたの負担が大きい。だから、私がそちらへ行く」
    「へ?」
     頑なに思えた村雨だったが、犬と料理好きの獅子神の生活に適していない事が理由であり、その日から獅子神邸へ引っ越してきた。

     フンフンと雨上がりの空気を嗅ぎながら、わんいちがトコトコと歩く。
     朝はランニングを兼ねており、走る事も多いが、夕方はゆっくりと歩く方を好み、獅子神もそれに歩調を合わせた。
     これぐらいなら、体を鍛えていない者にも丁度いい散歩だ。
     本日は休みの村雨を伴えば良かったか、と思う獅子神だったが、もう1匹が焼き餅を焼くので、無理だなとすぐに頭を振った。
     犬の後に保護した猫は、小型猫耳半獣で、心身共に村雨に似ていた。
     村雨が獅子神とわんいちを独占すると、死神と見間違う形相で、こちらを睨み付けるのだ。
    (村雨も元々、獅子神が元奴隷達と出掛けるのを嫌がった)
     一応、家族として認めているのか、微妙な距離を保ちつつも、わんいちが散歩中は、村雨とリビングで寛いでいるニャンジだった。
     
    『獅子神! 見ろ!』
     わふわふ! とわんいちがハーネスを引いた。雨上がりの夕暮れに、虹が出ていた。
    「おう、綺麗だな」
     犬の目で同じ色は見えないが、知らせたかった無垢な笑顔が、輝いて見えるほど可愛い。
     空よりも、わんいちに目を奪われていた獅子神は、周囲への警戒が薄れていた。
     すぐ横を、車が勢い良く通り過ぎるまで、気が付かなかったのだ。
     車は車道に溜まっていた、雨水を跳ね上げていた。
     
     玄関が乱雑に、焦ったように開けられて、村雨はソファーから立ち上がった。
     散歩から帰って来るには早すぎる。
     何かあったのだろうと、勘を働かせて出迎えれば、ぐっしょりと濡れた1匹を抱える獅子神が居た。
    「……車か。当然ナンバーは覚えただろうな」
    「んな暇ねえよ」
     腕の中のわんいちが、涙を滲ませていた。
     雨の中を彷徨った経験から、悲しい気持ちを思い出すのか、濡れるのが苦手になってしまった。
     勢いよく浴びせられ、その場でへたり込んでしまった犬を優先した獅子神に、ドライバーを特定する余裕はない。
    「人の右側を歩くクセ、治させねえとな……右手にリードを持てるから、ついそのままにしちまった」
     せめて車道から離れていれば、庇ってやれたかもしれない。
    「悪いのは人が居るにも関わらず、不注意な車だ」
    「あぁ、そうだな……手早く洗ってくるわ」
    『!?』
     危機を察知し、ひゃんひゃん、と悲しい声を上げる主は、無情にもそのままバスルームへと運ばれて行く。
     声を聞き付けて飛んで来たニャンジが、獅子神の後を追いかけた。
    『嫌がっているぞ!』
     と、抗議するよう、目の前で閉じられたドアを、テシテシと叩くから。
    「ニャンジ、虐めてねえ。ちょっと待っててくれ」
     外に声を掛けつつ、獅子神はお湯の温度を調整し、自身が濡れるのも厭わずにわんいちを抱えた。
     余談だが、こういった時に猫があまりに叩く為、ガラス製の高級透明扉は、安い半透明の引き戸に替えられた。
    「ほら、怖くねえぞ」
     優しく言い聞かせ、洗い出す。まずは足から。
     顔から遠い場所を洗っているのだが、恐怖が天元突破したのか、入る前とは逆に大人しくなったわんいちは、虚無の顔を晒して脱力した。
    「アンパンマンかよ」
     濡れて力が出ないー。
     そう言い出しそうなわんいちに、獅子神は苦笑しつつ大丈夫、と声を掛け続けた。
     悲しい思い出は、過去で、もう二度と起こり得ない。
     もう独りぼっちになんて、絶対にならないのだ。
    『あったかい……?』
     恐る恐るシャワーを確認するわんいちだが、足よりも上に来た事で、また魂が抜けてしまった。
    「もう少しだから、頑張れー」
     石などが飛んで来ていないか、怪我はないか、と検めながら、獅子神はお腹とお尻を洗って行く。
     顔周りはそれほど被害はなく、濡れタオルで終わらせた。
     後は、吸水性のいいバスタオルでふんわりと包み、外に声を。
    「村雨」
    「ああ、ご苦労」
     ニャンジと共に待っていた村雨が、わんいちを受け取った。
     くったりと力が抜けて、ただ宙を見上げる犬を撫でながら、村雨はあなたも、と中へ告げた。
     人間もシャワーを浴びた方が得策だ。
     おうという返事を機に、村雨はリビングに戻ると、ドライヤーを取り出した。
    「災難だったな」
     あなたのせいではない、と滲ませ、乾かしに入る。
     細い指先で髪をない混ぜ、頬を撫で、背をあやす。
     実際には毛皮に覆われているのだろうが、視覚からも触覚からも、柔らかな皮膚が伝わって来るので、否応にも丁寧さが求められた。
     しかしこの医師に限り、ミスなど有り得ない。
     触れる手は、心地良さだけを犬に教えた。
     暖かくて、優しくて、表情を取り戻したわんいちは、うっとりと目を細めて手に擦り寄って、その内にうとうととし始めた。
    「眠いなら、寝て良い」
     頭を膝に乗せて、村雨は眠りへと誘う。
     ああ、だがこれだけは言っておかねば、と話しを続ける。
    「右側を歩くのは、あれを護っているからだろう?」
     獅子神と散歩に行く時、わんいちは車道側にその身を置く。必ずだ。
     ひとえに、獅子神を護りたいから。
    「上出来だ」
     褒めて、あなたも随分とあれが好きだな、という村雨の呟きに、わふん、と犬は得意げに鳴いた。
     
     シャワーを済ませ着替えた獅子神が、頭を拭きながら廊下を歩いていると、リビング前に邪悪なオーラを纏った猫がいた。
     部屋から逃げ出したが、中が気になるらしい。
    「あー……ドライヤー苦手だったな」
     跪いて、出来るだけ目線を合わせて、ニャンジへ手を伸ばした。
     猫は保護当時、耳を患っていたが、すっかり回復し、大きな音が嫌いになった。
     イカの形になっている耳を、むにむにと揉む。
    「悪かったな……あんな声、聞きたくねえよな。俺のミスだ」
     ドライヤーもそうだが、わんいちの泣き声をことの他、ニャンジは心配した。
     自分のせいだと謝る獅子神に対して、猫は両手を伸ばす。
     抱っこをせがむ可愛い姿勢だが、ニャンジがすると偉そうで、またウニャアという声も『抱き上げろ』という尊大な音に聞こえた。
     断れるわけもなく、獅子神は脇の下に手を入れ、子供のように持ち上げた。
     抱き寄せた途端に、もに……もに……と、猫が胸板を揉みだす。真剣な顔で。
     母乳を出す仕草と言われており、どう頑張っても出ないのだが、甘えていると仮定して獅子神は好きにさせていた。
     ストレス解消なのだろう。どこかの医者の手術と一緒だ。
    「相変わらず、真面目な顔してんなぁ」
     村雨もこんな顔をして、オペをしているのだろうか。いやきっと、趣味の方は笑顔だ。
     獅子神は落ちないよう、ニャンジを両手で支えてやった。
     
    「いつまでそんな所に居るつもりだ? 早く入れ」
     村雨が扉を開けて、リビングへと手招いていた。
     手招くと言っても、人差し指を曲げる程度で、猫を呼ぶ所作だ。
    「オメーはそれを俺に向けてんのか?」
    「何か問題が? 獅子も猫科だろう? あぁ、狐は犬に属するんだなったな。お手」
    「がう!」
     吠えながらも、獅子神は乱暴に手を叩く。
     ここでやらなければ、わんいちでも出来るのに、と煽られるのが目に見えていた。
     ドライヤー終了を悟ったニャンジが、獅子神の胸から飛び出して、犬用ベッドで寝かされたわんいちの元に、ダッシュで駆け付けた。
     フンフンと匂いを嗅ぎ、不満げに眉を寄せると、ぬりぬりと体を擦り付け始める。
     自分のだ、と主張する姿に獅子神が苦笑していると、村雨が再びドライヤーを持ち出した。
    「ちゃんと乾かしてから来いマヌケ。風邪を引きたいのか」
    「わんいちが気になって……いいよ、嫌がるだろ?」
    「この距離なら平気だ。それに、喉の音の方が盛大だと思うが?」
     親指で指し示す猫は、ぐるぐると喉を鳴らし、ワンイチの上に乗っかっている。
     念のためと、弱くしたドライヤーを、村雨は明るい髪に当て始めた。
     ソファーに座った獅子神は、優しく撫でる手に目を細める。
    「寝ちまうの、分かるなぁ……気持ちいい」
    「あなたは寝室まで運べんぞ」
    「うたた寝ぐらい……ここで許してくれ」
     乾いて軽さを取り戻した髪を、村雨は手櫛で整え、ドライヤーを仕舞った。
    「……なら、上に詰めろ」
    「うえ?」
     肘掛けに獅子神を追いやって、自分はその前に寝そべり、獅子神の胸を枕にした。
     ソファーは奥行きがあり、2人で横になれる。縦に重ならなくてもいいし、そもそもコーナー先の向こう側が空いている。
    「見たい動画がある。寝てていいぞ」
    「いや、せんせ?」
    「何だ? あやつには好き勝手させておいて、私は拒むのか?」
    「……猫と張り合うなよ」
     マーキングのように、ぐりぐりと頭を押し付けながら、村雨は手にしたタブレットで、大動脈瘤の手術動画を見始めた。
     中々にグロい映像から目を背けつつ、獅子神は村雨が落ちないよう、膝を立て、手を相手の腰に添えた。
    「感心だが、私が落下するようなミスを犯すと?」
    「思ってねえよ。暖かくて……」
    「そうか」
    「……なぁ村雨、オメーならあんな目に……遭わせなかったか?」
    「車道側を歩かぬよう、言い聞かせてある。1時間ほど説教した」
     しょぼしょぼした顔で説教を聞く、そんなわんいちが浮かんで、獅子神はこの手は使わない、と心に決めた。
    「もうちょい……交通量の少ない道を……」
     他のルートにしたり、抱き上げたり、方法はある。
     あんなに楽しげに歩くわんいちだ。
     出来るだけ好きにさせてやりたい。少なくとも、危険と天秤にかけて、部屋に閉じ込めたりはしたくない。
     思考を巡らせる獅子神だが、目はもう開いていなかった。
    (夜さ……散歩足りなかった、から……)
    「ああ、4人で行くか」
     言葉にはならなかった声を、村雨は難なく拾い上げた。
     
     すや、と寝てしまった枕を確認し、村雨はタブレットの動画を止めた。
     ついついと指先を動かし、友人の1人へとメッセージを送る。
    『◯◯通りの路上監視カメラ。◯時頃。調べたい』
    『礼二君どーした? 事件?』
     と、叶からすぐに返信が入った。
    『ウチの奴に、泥水をぶっ掛けた車がいる』
    『マジか。わんいち君は?』
    『泣いた』
    『よし死刑』
     水はねは道路交通法に違反するのだが、当然、死刑にはならない。しかし叶は、
    『オレの可愛いワンコを泣かせるなんて、万死に値する』
     と憤っていた。
     獅子神家に遊びに来た際に、愛想の良い犬に迎えられて、叶は一瞬で落ちた。
     こんな、無垢な目で、見られたの初めて。とのこと。
     それからニャンジに会って、小さな礼二君! とテンションを上げ、時々来ては2匹に囲まれる姿を配信している。
     余談だが、真経津は同じレベルでわんいちと遊び、クールなニャンジが珍しく反応していた、中々のじゃらし使いだった。
     2人とも、例に漏れず、半獣に見えていた。
    『こっちは任されよ。敬一君のフォローよろ』
    『あなたに言われなくとも』
    『ムフフ、礼二君がさ……ウチのって呼ぶのイイね』
    『プロポーズはまだだがな』
     その時はぜひ配信させて、断る、というやりとりを最後に、村雨はタブレットを手放した。
     向きを変え、獅子神へと顔を向ける。
    「寝顔までそっくりだな」
     わんいちとよく似た造形。しかし、図体が大きい分、より愛おしく思えた。
    「多少過保護だが、あなたは立派な飼い主だ。自信を持て」
     わんいちの飼い主は、獅子神だと村雨は考えている。
     性格、運動量の相性も良く、また獅子神の幼少期の傷を癒す、格好の存在だ。
     そもそも、獅子神が居なければ、村雨はあの日足下にあった消えかけの命など、見向きもしなかった。
     ニャンジの事も、村雨は好意的に捉えていた。
     自由だが、誰よりもわんいちを大切に考えている。
     そして、獅子神の隣には必ず、村雨という生き物が居る。そう証明してくれたようで、村雨は内心、ニャンジの存在を嬉しく思っていた。
     
     胸元にkissを落とすと、くすぐってえよ、と声が聞こえた。
     自信を持て、と言った辺りで、心臓の鼓動が早くなったから、起きた頃合いも丸わかりだった。
    「15分程度か? もう少し休んでいればいいものを」
    「ん、平気。なぁ村雨、どっちが飼い主か、決めるの止めねえか? 少なくともわんいちは、オメーが大好きだよ」
     帰りが遅い日は、ウロウロと落ち着かないのだ。
     部屋で遊んでやって、ニャンジに毛繕いされて、やっと寝てくれる。そんな、犬だ。
    「それは知っている」
     わんいちに懐かれているなど、十二分に理解している村雨だ。
     獅子神に預けようと決めたのは、獅子神が適していたから、だけではない。
     私の留守中、彼を護って欲しい。
     その想いがあるからこそ、獅子神を飼い主としたい、村雨だった。
     
     夕食後、少しだけ歩こうとわんいちを誘うと、珍しくニャンジの影に隠れた。
     いつもならハーネスを自ら取ってきて、早く早くと急かすのに、今日はもういいと首を振る。
     顔を見合わせた2人は、2匹共にハーネスを着け、それぞれを抱き上げた。
     獅子神がニャンジを。村雨がわんいちを。抱っこしたまま散歩に出かけた。
     
    「ニャンジ、寒くねえか?」
    『ちょっと寒い』
    「入るか?」
    『入る』
     獅子神が懐をくつろげると、ニャンジがすかさず飛び込んだ。
     V字から顔だけ出し、心地よい場所からわんいちを眺める、という贅沢にゴロゴロと喉を鳴らせる。
     しばらく緊張していたわんいちは、大好きな者達に囲まれての散歩に、徐々に尻尾を上げて行った。
    『村雨、みんなでお散歩だ』
    「歩くか?」
    『今日はここがいい』
    「そうだな、特等席だ」
     ぎゅっと抱き付く犬を撫で、隣に視線を投げれば、獅子神と目が合った。
     嬉しそうに、わんいちと村雨を眺める笑顔が、少しだけ遠くて。
    「あなたの席も、ちゃんと用意してある」
     パートナーという場所を空けてある、と思わず伝えてしまったが、真意は読み取れなかったらしい。
    「オメーはオレ抱えて寝室にも行けないんだから、散歩は無理だぜ」
     と、獅子神が答えた。
     唯一思考回路が近い猫だけが、珍しく村雨に同情の眼差しを送っていた。察しが悪い奴にゃ、と言いたげに。
     

    ―――――――――

     わんいち君を好きすぎて、距離を無くしたい余りに覆いかぶさって寝ているニャンジに、心臓が止まりました。
     可愛い。しゅきが溢れて書きたいと、不躾ながらお願いした所、快く快諾して頂きました。優しさが留まるところを知らないお方。
     最後になりましたが、本家の方様には多大な感謝を送りたく、この7000文字をもって、感謝とさせて頂ければと思います。
     可愛いわんいち君とニャンジ君を世に生み出してくれて、描いてくださって、ありがとうございました。
    lev Link Message Mute
    2022/12/26 12:34:13

    ニャンジ君と、わんいち君

    人様のお話です。ネタをお借りしました。
    さめしし家に拾われたニャンジ君とわんいち君。
    普通の猫と犬ですが、可愛すぎてギャンブラー達には半獣に見えています。
    (礼二君と敬一君に耳尻尾あり状態。
    本家様を見て。もちもちのあの可愛さを見て欲しい)

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