「この前まで暑かったのにもう冬だ」
「だなァ」
「年末調整の提出が終わってお前にFェリシモのチョコカタログが届くと年の瀬が近づいた感が湧く」
「おい待てェそりゃァガチネタじゃねぇか?」
「何故そう思った」
「俺の勘」
「勘で渡って行けるほど世間様は甘くないぞ」
「何だか知らんが今すげぇむかついたぜェ」
「何故だか知らんが俺もやめた方がいい気がしてきた」
「んじゃァこっからはフィクションでェ」
「了解した。今年もまたどんぐりをもらうつもりか。よく振り込むな」
「言った傍からァ!」
「どんぐり入手は必ずしも必須ではないからこれはフィクションだ」
「…あっそォ」
「女にもらうべきチョコを自分で買う。それもまた乙なものだな」
「食いてぇもんは自分で買う。当然だろォ」
「このトマト風味のチョコが気になるな。申し込め」
「フィクション!」
「新宿先行の行列からの実況はもうやらないのか」
「沼垢見とけって話だしなァ」
「よくあんな女だらけの所へ恥ずかしげもなく入れるものだ」
「チョコ>女だろォ普通は」
「普通は違うな」
「初日は男だらけだぜェ?」
「男がそこまでスイーツに情熱を燃やせるものなのか」
「この日のためにえんまいカード持ってるようなもんだからなァ。チョコ屋とツーショ撮る趣味はねぇがな」
「チョコ屋とツーショ????」
「製作者もチョコの内ィ」
「何一つ理解できん話だ」
「ちったァ関係ないことにも興味を持てェ」
「じゃあ言うがお前はねじに興味があるのか?」
「ハ?」
「ねじだ」
「ハァ」
「街を歩くたびに風景の片隅に埋め込まれたねじに自然と目が行きなべか皿かと気になりおやこんなところに菱形ボルトがと思わず頬が緩む、そういう気持ちがわかるのか?」
「…お前そうだったのかァ、今までそんなことにも気が付かず悪かったなァ」
「そんな馬鹿なことがある訳がないだろう」
「死ね」
「上がったぞ」
「おゥ」
「お前が泥酔して脱衣所の扉をぶち破ったお陰で通気性が良くなってなかなか良い」
「…悪かったってェ」
「何も謝る必要はないぞ。俺がびた一文出すことなく真新しい脱衣所の扉が手に入る。いいことしかないじゃないか」
「イラっとするなァ」
「風呂に入って落ち着け」
「しかし洗面台はともかく脱衣所っていらなくねぇか?」
「俺たちはともかく女がいるなら必要だろう」
「実家じゃ部屋からまっぱで風呂直行って訳にもいかねぇからなァ」
「洗濯機の近くで脱ぐのが一番楽だ。ベランダにあるならベランダで」
「入浴前にベランダで脱衣する野郎ヤバすぎだろォ」
「脱衣の事情はともかく女は身の回りのチェックがうるさくてな。外出するにもいちいちその服は合わないだの髪をちゃんとしろだのと面倒くさい」
「UニクロかGーメンツ(本家)でなんとかなる。車じゃミセスでもかけとけェ」
「適当だな」
「本命とここぞという時はマヤデライラでも低音で流すといいぞォ。エモエモでメロメロなバンドネオン五重奏のオブリヴィオンなんぞを流したりワインボトルに入った緑茶出したり店主が海苔で巻いた雲丹や生ハムを手渡してくるような店選ぶのは逆に悪手だぜェ」
「しかしお前は時々そういうことをスラスラ言うが一体どこから知識を仕入れているんだ」
「まさちかァ」
「ところで実家で気付いたがまもなく姉の誕生日だ。いつも渡すものに困るんだが日常使うものなら悪くないだろうと思い洗面台に置いてあった口紅をひっくり返してメーカーを確かめると俺は百貨店のそこの売り場にのこのこと出かけて行った」
「売り場の女性に飾ってあった口紅を指さしこれを一本包んでくれと頼んだ。すると彼女は愛想よく笑いどちらのお色にいたしましょうと聞く。中身は確認していない。家族の唇の色など気にしたこともない。俺は困った」
「すると女性はやにわに服の袖を捲り上げたかと思うと剥き出しになった腕に口紅で何本も線を引き始めるじゃないか!そしてその腕を俺の目の前にすっと出しどちらのお色がお好みでしょうと聞く。度肝を抜かれて呆然とした俺がおずおずとそんなに塗って大丈夫かと聞くと彼女は婉然と微笑みこう言うんだ。洗えば落ちるので大丈夫ですよ、と」
「凄まじいものを見た。俺が言えるのはこれだけだ」
「あースウォッチだろォ、チビらがTikTokでキャッキャ言いながらチェックしてる」
「女にとってはあれは日常茶飯事なのか。信じがたい」
「知らんけどォ」
「まあいい、お前にも渡すものがある。女からでなくて悪いが受け取ってくれ」
「何だよ」
「お前が激突大破させた脱衣所ドアの交換費用見積書。¥115,700(税込)」
「おォ…」
「それと商店街のガラポンでもらったE賞のトナカイのせんべいだ。Merry Christmas and Happy New Year!」
「こいつァとんだあわてん坊のサンタクロースだぜェ…」
「たまにはオチっぽいことを言うな」
最初以外はフィクションです
言うほど女子じゃなかった