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    強さとは 自分なりに努力を続けてきたつもりだ。
     基礎的な訓練はもちろんのこと、両親のデータを元に訓練メニューを組み、その結果を元により自分に合った訓練に改良し徐々にハードルを上げる訓練をベースに、空中での姿勢制御に役立つかと吊り輪を取り入れ、最新の論文をチェックしては訓練に役立て、……誰もが行っていることだと思う。私がどんなに真摯に多くの時間と努力を捧げたつもりでも、それでようやく他の方と同程度の結果を得ることしかできないのだ。
     久間さんに訓練の協力を求めたのは、あのひとが両親の活躍をよく見ていたからだ。……両親と同じくらい強くなっているという言葉は、期待していなかった。ただ、久間さんに協力していただくようになったあの日の自分と比べて、ほんの少し、両親の強さに近づいていると。たとえただの気休めでも、そう仰ったなら、私のこの努力は報われた。
    だが、どうも全くの無駄だったようだ。久間さんは私の「強さ」と両親の「強さ」は違うと仰った。
     違うものか。同じ土地、同じ所属、同じ技能、同じ、いや当時より改善されている環境、同じ技能、同じ性別、……同じ白糸の血を持ちながら。何が違うというのだ。「才能」という言葉に逃げたくはない。それは、人の幾倍も努力し続けた者のみが使うことを許される言葉だ。私のように、一日の大部分を捧げても尚、人と同程度の努力にしかならない者に使う資格はない。私が無能すぎるのだ。久間さんは、攻撃技能保持者として強くなることは諦めて、違う形で作戦に貢献した方がいいと仰っているのだ。
     気が付いたら、自分の靴の先を見ていた。地面にシミが増えてゆく。情けない、無能なら無能なりにこの時間も己の強化に努めればいいものを。切り替えて、ランニングの続きに入ろうと足を上げる。上げた、つもりだった。前に足を出すどころか、顔を上げることすらできない。情けない、情けない、たったこれだけのことで動けなくなっていてどうする。こうして無駄な時間を消費し続けるからお前はいつまで経っても無能なんだ。どうにか動こうとしたが、やはり一歩も進むことはできず。最後には、その場にへたり込んでしまった。ぼんやりとオレンジに染まりつつある空を眺める。山風が通りすぎ、頬の濡れている場所を冷やしていった。
     涙が乾き、どうにか動けるようになった頃には辺りは暗くなり始めていた。しかし何となく家に帰る気が起きず、海を臨む高台までランニングを続ける。高台の手すりにもたれ掛かり、星空と電灯で光る風景を眺める。ふ、と下を見ると、そこは切り立った崖だった。風が髪を乱す。目の前がキラキラと輝いて見えてきた。

     そうだ、たとえ技能を持っていなくても、空間内に入らなくても。
     人間は一生に一度だけ、空をとべるじゃないか。
     空を飛ぶ技能など持たなくとも、私は、誰かと空をとべるのだ。
    碧_/湯のお花 Link Message Mute
    2018/10/08 22:43:02

    強さとは

    廃棄空間  ##廃棄空間
    夢が叶うことに気が付いた白糸結の話  #強さとは

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