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    promiseパソコンの画面が暴れている、気がつくとキーボードを勝手に押したままで意識が朦朧としていた。
    「わーーーーーっ!!!!」
    「うわーーーっ!!」
    東海林は飛び上がり横に置いてあった空の湯呑みが倒れてしまったほど驚いた。
    声の主は確認せずともわかった、目の前にいる大前春子だ。
    「居眠りしないでください、東海林課長!!!!」
    「お前…俺の耳引っ張って叫んでんじゃねーよ!!」
    「でないとあなたは起きないでしょう?」
    「うるせーな、別に寝てたわけじゃないよ。考え事してたんだよ」
    東海林はネクタイを整えて眠いまぶたを擦った。



    春子が再びS&Fの営業部へ来て1ヶ月。

    東海林は春子とある賭けをした。


    「お前のいる3ヶ月の間に社長賞を取ったら結婚してくれ」



    今度は、自分の力で実現させる、お前の力は借りない…でも少しだけなら。と若干弱気な東海林を氷のような表情で見つめながら春子は


    「絶対無理でしょうしいいですよ、もし社長賞を取れたら結婚しましょう」

    そう、東海林に約束した。



    そこから東海林は必死で新しいプロジェクトに取り掛かった。黒豆ビスコッティだけでは社長賞は狙えない。
    今の時代に見合った新しい食品事業をはじめなければ…。
    東海林は企画部の人間のような斬新すぎるアイデアを考えるのが苦手だった。だから企画部のメンバーと飲み会を開き様々な話を聞いたり、食品市場のリサーチなど必死で行った結果辿り着いたのがキッチンカーだ。

    本社のある丸の内はカフェやレストランなど飲食店も多いが少し値段が高いのがネックだ。だからようじ屋のような安い店が混雑する。それならキッチンカーで格安のランチメニューを販売すればいいのではないか。

    という事で企画部とタッグを組み、東海林はキッチンカーで海鮮丼を売るというプロジェクトを始めた。キッチンカーで生ものを取り扱うのは珍しい。食中毒などの対策や冷蔵などの設備などにお金がかかるものの、キッチンカー自体で市場に魚を購入して中で捌き販売するので飲食店よりもコストは安い。
    とにかくリスクは高いが成功すれば間違いなく注目されて社長賞も取れる。東海林は寝る間も惜しみながら業者への交渉や販売場所の通路への許可取りに保健所への申請などを行っていた。

    そしてその日は業務用冷蔵庫の業者とキッチンカーに積む冷蔵庫について話し合う日。
    東海林は午後になると業者へと向かった。

    魚と言えば春子の得意分野であるのに、春子には一切頼らず自分で何種類もの海産物を試して試作を繰り返した。そのせいか夢の中でマグロに襲われる夢を見たほどだ。

    「これだけ頑張って社長賞取れなかったら俺ショックで死ぬかも…」
    電車に揺られながらクマのついたやつれた顔を見て東海林は呟いた。


    5時になり春子はパソコンを片付けてそそくさと退社する。東海林のデスクをちらりと見るがその席は空のままだ。まだ外出先から帰っていない。

    あんなに必死に働く東海林を見たのはこれで2回目だ、名古屋で一緒に働いていた時と、今回と。
    (あの男は…私と結婚したいから社長賞を取るのか、それとも自分のために社長賞を取りたいのか…どっちなのか)
    春子は複雑な面持ちでエレベーターに乗った。

    そしてエントランスでちょうど東海林と鉢合わせた、近づいてみるとさっきよりも疲れきった表情をしていないだろうか。
    「東海林課長、失礼します」
    春子は一礼して通り過ぎようとした。
    「ああ、大前さん…」
    そう東海林の声がした数秒後に、ドスンと鈍い音がした。春子は異変を感じ取り振り返ると、嫌な予感が的中した。


    東海林が目を覚ますと、遠くに天井が見えた。いつも見ている景色とは少し違う。ここはどこだろうか、確か本社に戻ってきて、とっくりに挨拶してー…。
    「うわっ、とっくり!!」
    自分の横に正座して座っている春子に気づいた東海林は横になっていた体を起こす、そして背中と腹にダンボールが置かれていることに気が付いた。しかも今いる場所はロビーの端の方で、帰宅しようとする人たちがこちらをちらりと見ながら通り過ぎていた。
    「お前、ダンボールってホームレスか!」
    「あなたをおぶって移動などできなかったので、たまたま通りがかった清掃員さんに借りました」
    「じゃあ誰か呼んでくれよ…」
    そう言って腕時計に目をやると5時をとうに過ぎていた。春子が定時を過ぎても東海林が目を覚めるまでこの場にいたことに気づいた東海林は、淡い喜びを感じる。
    「…ありがとう、もう帰っていいぞ」
    礼の言葉を伝えると東海林は立ち上がりダンボールを片付け出した。
    「あなたは帰らないんですか?」
    「俺はまだ仕事があるから、今日中に見積書作りなおなさいといけないんだよ」
    春子はじっと東海林を見ていた、曲線を描く髪の毛にもかすかに白い線が浮かび首筋には鎖骨までの線にシワができている。

    「どうしてそこまで必死に働くのですか?別に社長賞を取らなくてももうクビにはならないでしょう?」
    春子は東海林に疑問を投げた。昔自分から社長賞を放棄した男がなぜ今更再び目標をもって動いているのかその理由が知りたかった。

    それに、なぜ自分と結婚したいのかも。


    「それは……お前との約束を守るためっていうのもあるけど…ただ決められた仕事をこなすだけじゃ嫌なんだよ。一生に一度くらい死ぬ気でやり遂げた充実感を味わいたいだろ。でなきゃお前に選ばれるような男になれねーよ」


    胸に手を当てて、いつもよりも低く胸に落とし込むような声で伝える東海林に、春子は体が熱くなるのを感じた。
    そしてダンボールを奪い
    「これは私が片付けて置くので、早く仕事に戻りなさい」
    上目遣いで微かに口角をあげて微笑んだようにみせてその場を離れた。



    地下1階のゴミ捨て場につき、誰もいないことを確認すると春子はダンボールを投げ捨て叫んだ。


    「惚れてまうやろーーーーーーーーーっ!!!!!!!」

    その声はビルの上にいる東海林にはまだ届かない。




    しゅ Link Message Mute
    2021/01/06 10:11:14

    promise

    私にとっては東海林はいい男なので
    そんな思いを全力でぶつけています。


    #ハケンの品格 #二次創作 #東春

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