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    そして午後の三時はおやつの時間 彼が祖国の菓子を渡すわけシロークと見透かさないでほしいetcそんなこともありますよ誘惑味、ベリーアレーシュキだよご先祖ちゃん異文化コミュニケーション、露と日の桃の差異編おはぎ、大福。そして薫酒は満月に! 彼が祖国の菓子を渡すわけ 餌付けをされていることにはとっくに気づいてはいるけれど、あの戦いの後から、なにかと理由をつけて太平プロレスに顔を見せてはオイラに祖国の菓子を渡してくるシュテンドルフに、素直に美味しいといえば返ってくるのは豪放磊落な外見には少し不釣り合いな笑いで、クランベリーの砂糖漬けの甘酸っぱさに目を細めると、美味えかと聞き返す声に、同じくらい柔らかい感情を乗せてうん、と返した。

    シロークと見透かさないでほしいetc チョコレート掛けのシローク、といっても色々な店で買い求めたらしいそれはさまざまなパッケージをしている。一種類選んで一口かじればフレッシュチーズとその中に入ったキャラメルとチョコレートの旨味が調和して、思わず頬が緩んでしまう。そしてそういえば、と思う。シュテンドルフが顔を見せるたびに渡してくれる菓子は妙に口にあう。こんなに安心して食べられるのはなんでだろうと答えを求めて彼の顔を見ると、一応ワシも食ってるからなとやや不機嫌な顔をして、彼は酒を煽った。

    そんなこともありますよ チョコレートを好んでいることは誰にも彼にもとっくに見透かされているらしい。でも室町時代にはない類の甘さの虜になっているのは、もうどうしようもない。美樹のおやつを分けてもらっていることがどういう経緯かシュテンドルフにすら筒抜けで、ベリーの味がする、チョコレート掛けのゼフィールとは別に、日本で買い求めたらしい、というかこの近所で売っているから馴染みのあるチョコ味のマドレーヌとチョコケーキに舌鼓を打ちながら、まあ酒の肴にされていることにはいつも目を瞑っているんだからとまた一口、一口と、マシュマロようなやわい食感も、よく噛んで味わうことにした。

    誘惑味、ベリー ヴァレニエ、ゔぁれにえ。舌に馴染まない発音の、ジャムというには果実とシロップが溶け合っていないそれをどう食べるものか迷っていると、そのまま食えると言われ、美樹に食器を出してもらってみんなには内緒で食器を出してもらったお礼に、中身を少し残して瓶から二つに分けた甘く煮込まれたいちごを二人でえいやと口にする。シロップ溶け合わない果実の感触と、濃い甘さに美味しいと言葉にすればおうそうかとシュテンドルフは呵呵大笑する。
     そのうちこれ紅茶に合いそうといそいそキッチンに向かった少女を見送りながら、これ、なんだか花の匂いもする気がするといえば「なんだ、わかんのか」と想定外であったことを告げる声色に「わかるさ」と返した。その返答の一呼吸後に紅茶が三人分運ばれきて、ワシにもかというシュテンドルフにそれはそうでしょ、持ってきたんだからとオイラと美樹ちゃんの声が重なった。

    アレーシュキだよご先祖ちゃん このところシュテンドルフが三回に一回の割合で待ってる菓子の名前を覚えられずに見た目のまま、これはくるみクッキーと認識しているご先祖ちゃんに名前を覚えさせようとしているシュテンドルフと発音にも手こずっているご先祖ちゃんを見ながら、モモタロウは中に濃いキャラメルが入った菓子をもう一つつまむ。今のところ減量が必要ではないし、と思いながら後で一人でこんなに食べたのと怒られるのは覚悟の上で、またもう一つ土産を口に入れながら、手心を加えないのはそのままを覚えてほしいんだなあと呟いて、自分で淹れてきた茶をモモタロウはすすった。

    異文化コミュニケーション、露と日の桃の差異編 皮ごとかじるのには少々ばかりではなく向かないだろう、よく冷やされた日本の桃はシュテンドルフに。彼が持ってきた彼の国の、蟠桃がルーツであるらしい平たい桃を教わった通りに齧るとしゃり、とした食感がかえる。酒のつまみにはならないと桃を食べながらぼやくシュテンドルフに近づくと、誰かがこっそり隠したモッツァレラチーズが冷蔵庫にあることと、あれやそれやらがあれば桃が酒の肴に化けることを告げ口すると、そいつはいいと笑ったシュテンドルフは電話を借りるといって、その場から離れる。電話を受け取るだろうアカオニ・トムには少々かわいそうなことをした気はするが、まあ、言ってしまったものはしょうがないから、と呟きまた小ぶりな桃を口にした。

    おはぎ、大福。そして薫酒は満月に! 日本酒は案外と言うべきなのか妥当というべきなのか、同じ米でできたおはぎや大福によく合う。そう言って、酒と甘い肴を用意していた桃太郎を横目で見ながら、シュテンドルフは酒だけを飲む。なんせ千年この国にいたのだ、シュテンドルフにも日本酒自体は馴染みはあるから素直に美味い酒であることだ、と思う。慣れないのは、隣にいる桃太郎の姿だ。月を見ながら酒器を傾ける若武者の、妙に堂々として品すらある姿がシュテンドルフの目にいっこうに馴染まない。シュテンドルフは鼻を鳴らして大福を一つ口にすると「美味え」と言葉を発する。

    「へへ、そうでしょ」
    「ハッ、しかし、ワシとお前が酒盛りとはな」
    「そうだね。……正直、誘ったのはオイラだけど、受けてくれると思ってなかった」
    「フン。まあ、長く生きてりゃ、怨敵を許すことだってある」
    「…………はは! 試合に向けて減量中じゃなかったらモモタロウも呼べたんだけどね」
    「やめろやめろ、どうせキンタロウやら王子やらが集まってやかましくなるだろうが! こう言う酒は黙って飲むもんじゃ」
    「そうだね、宴に早変わりしちゃうや。じゃ、引き続き月に乾杯だ」

     一千年の悲しみと怒りにはケリがついた、月をみる眼前の青年の血を引く、さまざまな面でまだまだ未熟な闘士によって。シュテンドルフも桃太郎にならって月をみて、いい月だ、そう呟いて桃太郎を見ると、いつのまにやら月から目を離している彼は小ぶりなおはぎをふたつみっつと手をつけている。月よりおはぎかとシュテンドルフは大きく笑って、お酒も美味しいけどこっちも美味しいんだと言い訳のように言葉を連ねる青年に、それもそうかといって、シュテンドルフは滋味を味わうためにまたすぐに空になる杯を満たした。
    夜船ヒトヨ Link Message Mute
    2022/06/19 13:47:12

    そして午後の三時はおやつの時間

    謎時間軸でおやつを持ってくるシュテンドルフとそれを食べるご先祖ちゃんの話。幽霊じゃんとかいつだよ?はしらんの心意気。ほのぼの時空です、ええ。

    #ザ・モモタロウ
    #シュテンドルフ
    #ご先祖ちゃん

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