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    感電一、ポッピンアパシー二、アンビリーバーズ三、感電一、ポッピンアパシー 明確な勝利者として、敵を殲滅せし者らとして、凱歌を奏するに相応しい戦果に吼える兵士達を御しながら、それでも敵の重要なポータルを完全に制圧した喜びを極上の美酒のように味わうことを、バロールは決して止めはしなかった。その酔いを軍紀の乱れに繋がるとするものもいるだろうが、バロールの思考はそういったものに繋がらない。酔いの度が過ぎればさすがに拳の一つでもくれてやって酔いを醒まさせるが、また一つ戦いに勝ったのだ、兵卒には流された血でできた偽りのミードであっても、生き死にの最中で張り詰めた思考を解かせる必要もある。バロールはアプリの効果で巻き戻された戦場だった場所で、まだその瞳を狩りの獲物を捜し求める狼のようにぎらつかせている少女を持ち上げた。
    「おい、今回の戦いは、もう終わった」
    「でもまだ、他のギルドのポータルを奪い取れる時間だよ」
    「今回はここを落すのだけが目的だ。――んな顔をすんじゃねえよ、いくらかわいい孫の頼みとはいえ、俺にも将としての立場がある。おいそれは聞いてやれねえんだ……グッハッハ、おいおいそうむくれるなよ。その可愛い面をさらに可愛くしてどうすんだ?」
     戦いの成果を重視する兵はその勝利に満足したが、狩り――敵との交戦を重視する少女には今回の勝利は物足りないらしい。臆した一兵卒は彼女の目には映らない、死の恐怖に取り付かれ後は大地に沈むだけの敵を、彼女は首級をとるべき相手として認識しない。恐れを持つのは別にいい。彼女が好むのは、恐れを呑み込んで己が前に立つ勇敢、あるいはその力に疑いを持たない勇猛な敵将だからだ。この東京で最初に出会ったのは厳密に言えばその親衛隊であるが、テスカトリポカに大いに影響を受けている少女を伴って、バロールは前線に立っていた。敵意でなく、いっそ純粋な闘志だけを宿し炯々と輝く瞳を見つめ返して、穏やかな最期ではなく、花火のような一瞬、けれど大輪を咲き誇らせる光のような最期を望む彼女にバロールが「この程度の戦いじゃあ、喰い足りねえか」というとまだその瞳を光らせる彼女はうなづく。
    「次はインベイダーズのポータルを落す。そこなら戦い応えの在るやつがいるだろうさ、お前に俺が戦いのことで嘘をついたことがあったか?」
    「ないよ、バロールは、言わないことはあるけど私に嘘はつかない。ねえ、そこには誰がいるの?」
    「ザナドゥの、草原の王者が。他がいるはわからねえが、そいつはまずいるだろうな」
     バロールに抱えられながら、まるで内緒話をするような距離の近さで、バロールと少女は次の戦争の話をする。甘い砂糖菓子でなく苛烈な闘争を好み、地面に根付く花々でなく飛び散った血の軌跡こそを美しいと思う少女に、奴はよく教育したもんだよと、バロールは彼女の頭を撫でてやりながら、テスカトリポカの顔を思い浮かべた。
    二、アンビリーバーズ 少女は自らの行いを戦いではなく、狩りという表現をすることを好む。しかし狩りという言葉を好むわりに、彼女は一方的な蹂躙を好まずそのように状態になりかければその瞬間、彼女はまた新しい獲物を探して戦地を駆ける。件のインベイダーズに籍を置く草原の王者と矛を交える前に、サモナーズと名乗る小さなギルドとバロールたちは交戦することとなった。ポータルも少なく、今まで生き残れたのが奇跡だとすぐにわかる、ごく小さなギルドだ。そもそもギルドを構成するメンバーも酷く少ない。先に壊滅させ、擁していた多くの人員を吸収したギルドの生き残りも、少なからずサモナーズのメンバーとして、彼らの元にいた。しかし、そんなことは少女にもバロールにも関係がない。
     ただ狩りの喜びに突き動かされるまま、少女は刀を翻し、単騎で戦場を駆け回る。先に恐怖が決壊した聖杯の神器を持つ少年から興味を失った彼女は、何かを告げようとした彼の元をすでに離れ、今は無窮と根絶の権能を持つ二人の少年と拳を剣を交わらせている。
     どこまでも今この瞬間が愉しいと、この瞬間に流し流れされる血の一滴すらもこの至福を加速させるのだと、彼女の存在を構成するすべてががなるように叫んでいる。この一瞬にすべてを捧げ、この瞬間にたましいのすべてを燃え盛らせている少女に、喧嘩慣れはしているが生命のやり取りに慣れているわけではないらしい無窮を宿す少年は不可解を見た。しかしもう一人の少年は不可解ではなく、今この瞬間に、闘争にしか生命を燃やせない少女に哀れをみた。制御などできない、荒れ狂い嵐めく情動と歓喜その身に押し込めた雌狼に、哀れを。
     バロールはタイクーンズに所属していたはずの狐の獣人と交戦していた。どんな奇縁があって自尊心の高そうな眼前の女がサモナーズにいるかは、バロールの知るところではない。ただ、崩されては立て直すために的確な指示を出す開拓の権能を持つ少年を、バロールは先に潰す必要がある。優秀な司令塔を放って雑兵と遊ぶ趣味はない。火炎を纏った鞭、少年の手足となる複数の悪魔。バロールが少女と意図的に切り離されているのはとうに承知している。実際、一対二の勝負で生じている単純な戦力差に、少女はじりじりと押されていた。それでもその瞳に宿る闘志が衰えることはない。先の戦いでは満たせなかった狩りの歓喜に満ち満ちた彼女は、とうとう空気を命数を引き裂くいっそ粗野で獰猛な、咆哮のような笑い声を上げる。
     少女は、剣がその首めがけて振りかざされるその刹那、それよりすばやく一歩踏み込んで、少女の行動が持つ意図を察知し、握った拳で応戦しようとした少年の腹部を突進と同じ勢いを保ったまま体をひねり刃を翻して切り裂き、血を吐いて倒れこんだ少年を放り、その速度のままさらに半回転し根絶の刃と鍔迫り合う。片方は防戦一方、もう片方は地に伏せた少年たちのほうに意識を反らした司令塔に声が飛ぶ頃には、本隊ではない、所詮一部隊であったとしても、それでも精鋭がそろったウォーモンガーズの部隊を相手に、結束を持って拮抗に近かった力を示したサモナーズの戦況は、あの空気を裂いた少女の咆哮をきっかけにしたように、一人また一人と地面に倒れ伏して、ささやかな落日を向かえた。
    三、感電「バロール、」
    「おう、楽しかったか」
    「――うん、たのしかった」
     アプリのまき戻しが起こるその前、もう誰のものともわからない血を浴びて少女は空に浮かぶ寒月が降らす光のように、ひどく鋭利に微笑っている。先ほどまで荒ぶる疾風であった名残をまだまとう、荒々しい御霊を秘めた雌狼は、峻峭な光を放ちながらどこまでも綺麗に笑っている。
    「ねえ、私はそんなに異常かな」
    「どうした? ずいぶんとらしくねえことを言いやがって」
    「刀を持ってた子がね、もはやその身を一思いに断つことが、お前にしてやれる唯一つの慈悲だっていったんだ。戦ってる間、あの子、ぜんぜん楽しそうじゃなかった。だからあなたは楽しくないのって聞いたら、すごく悲しいそうな……痛いっていうのを我慢してるみたいな、変な顔してた」
     バロールはアプリのまき戻しが終わって、血を滴らせていた傷跡もなかったことになった少女をその腕に抱える。
    「変な顔か」
    「うん、とっても変な顔。ほんとうは戦いたくないのに、でも戦うしかないみたいな、悲惨な顔。それに私、あの子たちと会ったことなんてないのに、あの子たちは私の名前知ってたんだ。それに記憶がどう、とか思い出したんだとか、戦うのが楽しかったから、あの子達の言葉なんて少ししか覚えてないけど、なんだかいろいろいってた。あと、ジェノサイダーズの名前も出してたっけ」
    「ジェノサイダーズ、か。なんだ、ずいぶん前に止めをさしたって話だったが、そうじゃあなかったようだな。アザトースの奴が何かしでかしたか?」
    「アザトース?」
    「こっちの話だ、聞きてえか?」
    「うーん……別にいいかな。どちらにせよ、もう一度日の目を見るかも知れないけど、ほとんど終わった話みたいだし」
    「そうか。予想外の抵抗あったが……順調にインベイダーズのポータルは奪えている。それに草原の王のいるポータルには後少しってところだ」
     バロールと少女はいつもの内緒話の距離で言葉を交わす。本当は別の色に染まるはずだった無垢を戦いがもたらす喜びだけで染め上げられた少女と、彼女と同じ時を過ごすはずだった、彼女を染めるはずだった存在の息の根を止めたことを、少女は知らない。一番側近くにあるバロールは、彼女にそれを告げる気はないから、このまますべてが進めば彼女は永遠に彼らのことを、かつて剣を交えて末は狩った獲物だとしか知らないままだ。
    「ねえ、そんなに異常なのかな?」
    「んなもん、戦争屋に聞くことじゃあねえよ。言っちまえば俺とお前は同じ穴の狢だぜ? お前を異常と認識する価値観からすりゃ、俺だって異常だろうさ」
    「そうかな?」
    「そうだ……安心しな、戦争なんてろくでもねえもんに慣れてる輩がいうんだ。お前が異常だなんだという話に、これ以上の説得力を持った返答があるか?」
    「そっか、そうだね。ねえ、バロール」
     そういって、少女は甘えるしぐさでバロールの胸に頭を、そしてその体重を体を彼にすべて預ける。
    「さいご、私の目に映るのは貴方がいいな」
    「……縁起でもねえな」
    「でも、最期がいつくるかはわかんなけど必ず来るでしょ。戦うことは別にいいんだ、私は戦うことが楽しいから、戦っている。それだけだし。でもね、別に誰に殺されたっていいけど、最期の景色くらい自分の好きなものであったっていいって思うんだ」
    「そいつは……グッハッハッハ! ずいぶんと、熱烈な告白だな?」
    「ふふ、通じてよかった」
     そういって、少女は先制攻撃や奇襲に成功したときのように悪戯っぽく笑う。この悪童め、というと今更だよ、と言葉が返る。
    「――いいぜ。お前がくたばるその時、このバロールがお前の最期を抱きしめてやるよ」
     バロールの言葉を聞きながら、最期を約束を取り交わした少女は肉体のすべてを預けながら満足げな吐息を漏らした。彼女の言う最期がそう遠くないことを、バロールも彼女もとっくにわかっていた。それでも最期を約束し、約束させたのは情でなく、確かに恋と愛からだ。恋と愛が焦土をゆき、過去に積み上げられ未来にまでしかれた亡骸の道の上を進む。片方は愛を目に映して果てるために。片方は恋を看取るために。腕に身を預ける雌狼が果てた時、嵐の痕跡が胸に残るだけということを知っていながら、もう幾度目かもわからない少女の最期をまた抱きとめるために、いずれすべてが瓦礫と化す街を、恋の肉体を抱えながら捕囚の足は踏みしめた。
    夜船ヒトヨ Link Message Mute
    2022/07/16 12:48:07

    感電

    愉しくお終いまで戦争する系のバロ主2、先はまったく明るくないけど今が楽しければいいよね、最期の約束取り付けたしな!というような話。ウォーモンガーズ所属で戦闘狂の主2、主2の性別は女性固定、設定上性格が断定的です。
    描写はあっさりしていると思いますが展開上サモナーズの面々がかわいそうなことになっていたりします、このループでの彼らは戦場でしか主2と出会ってないので……
    感想等おありでしたら褒めて箱(https://www.mottohomete.net/MsBakerandAbel)にいれてくれるととてもうれしい

    #東京放課後サモナーズ
    #放サモ
    #バロ主2

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