イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    本当の主人公 9章75話「さとし」76話「사투리」77話「計画の全貌」78話「ありがとうございました」本当の主人公最終章



    75話「さとし」

     4月。始まりと終わりの季節。

     龍馬君と智明の喧嘩を目の前で見てから、大体三週間ちょっとが経過した。
     春休み中、心配した明人君が、二人の家に毎日のように傷を治療しに行ったり、執拗に顔を触られることにキレた智明が明人君にデコピンして、それに怒った彩ちゃんが智明君を左手の小指でねじ伏せたりしてた。
     龍馬君はそれを見て笑ってて、晶はそんなみんなを少し離れた場所でじっと見つめていた。

    「晶、どうしたの?」

     最近どこか上の空で、ずっと考え事をしている晶が心配になった私は、家に帰り、二人きりになったタイミングで晶にこう尋ねてみることにした。
     すると、晶は、一度大きく息を吐いてから私の方を向き、こう答えた。。

    「うちの家の事を4人に言おうか迷ってる」

     家の事…か。

    「あの4人の事大好きやし、ずっと一緒に居たいけど…一緒に居れば居るほど、隠し事をするのが難しくなってきて」
    「…それならいっそ、言っちゃった方がマシかもって思った?」
    頷く晶。

    「…あの4人なら分かってくれるよ、難しいかもしれないけど…信じてみよ?」

     そう言いながら晶を抱きしめると、晶は頷き、私の背に手を回した。




    「朱里、話って?」

     晶が話をすると決意し、みんなを呼び出す前、ほぼ傷口がふさがってきた智明を個人的に呼び出した。

    「智明に…いや、智に聞きたいことがあってさ」
     というと、智明は目を見開きあたりを見渡した。
    「あ、朱里…!」
    「ごめんごめん!ただ呼んでみたかっただけだから!」
    「だからと言って外でその名前を出すなって!!」

     大慌ての智明。かわいい…。
     でもあの噂本当だったんだ…智君が沢田さん家に引き取られたって噂!まさか?ほんとに?また会えたの?って思ったけど、本当に智君が智明だったとはな…。

    「…で、聞きたいことって?」

     ?あぁそうだったそうだった。

    「来年の三月、私たち、家探すじゃん?」
    「うん…そのつもりだけど…」
    「じゃあさ?その…一緒に探すよっていう…言葉を、信じれるような材料が欲しいんだけど?」
    「材料…?」
    「鈍感」

     鈍感で分からず屋の智明。そんな奴の胸倉を掴んでぐっとこっちに引き寄せる。
     困惑してる智明。少しだけ背伸びをした私。
     智明の甘い香水の香り。

    「!!!!!!!!!!??????????」
    「その反応毎回するつもり?これが日常になるんだから慣れてくれなきゃ困るよ?」
    「は、はい…………」


    「彩ちゃん、あのさ」

     私を呼び止める声。
     晶ちゃんに呼び出され、龍馬君のマンションの駐輪場に向かっていると、背後から晶ちゃんの声が。
     振り返ると、晶ちゃんが息を切らし、壁に手を付いていた。
    体力ないな…晶ちゃん…。

    「どうしたの晶ちゃん…大丈夫?」

     晶ちゃんの横に立ち、背中を撫でながらそう尋ねると、晶ちゃんはケラケラと笑いながら「ごめんな」と謝罪の言葉を口にした。

    「どうしたの?何かあった?」

     そう尋ねた瞬間頭によぎるあの夜。
     あの時の話かな、と、思ってしまった。
     しかし、晶ちゃんは私の想像の正反対を行った。

    「あのさ…三年になるまで、友達でいてくれて、ありがとうって…言いたくて」
    「晶ちゃん…」
    「彩ちゃんの、なんか、理想と違うかもしれんけど…うちは生きるからな」
    「…うん、何しても…生きてね」

     優しく微笑み、私の髪を撫でる晶ちゃん。

     …?

    「晶ちゃん…首になんか」
    「あ!?あーあーあーーーー後がつっかえてるから交代!!」
    「え!?はぐらかした!!ずるい女!!」
     晶ちゃんはどこか照れくさそうに私に手を振り、物陰で私たちを見ていた誰かに小声で何かを言ってから立ち去った。

    「彩さん」

     …物陰で私たちを見ていた誰かは、龍馬君だった

    「り、龍馬君…」

     …

     沈黙。

    「これから僕彩さんに告白するね」
    「は!?」
    「え?ダメだった!?」
    「別にいいけどなんか脈略無くない?なんか…もっとさ…前後に複線を…」
    「いいから聞いて!!」
    「わ、分かった…」

     汗で滲む掌。

    「最初ね、僕にとっての彩さんは、不思議な存在だった」

    「うん」

    「何を考えてるのか分かんなかったけど…そんなの抜きで考えるとさ…単純に…僕、彩さんと夢で会えるのが楽しかったし、嬉しかったんだ」

    「…うん」

    「彩さんが襲われる夢を見たとき、怖くて、失いたくないって思った」

    「…」

    「ずっと、彩さんが、怪物から僕を守ってくれてたみたいで」

    「…違う、違うんだよ、龍馬君」

    「違ってもいい」

    「…え?」

    「何か、下衆な思いがあったとしても…むしろあった方がいい!僕いっぱい間違えて…これから先ミス繰り返してどんな事件起こすか分かんないよ!!」

    「えぇ…?」

    「彩さんの全部、僕のために、許させて」

    「…は、はい」

    「その返事ちょっとおかしくない?」

    「いいから続き」

    「はい」

    「…」

    「どこまで話したっけ?」

    「全部許させて…ってとこ」

    「あー…いい言葉だよね」

    「…」

    「ごめん、続けるよ…」

    「…」

    「僕、彩さんの春になりたい」

    「…春?」

    「春だけじゃなくて、太陽とか光とか希望とか…ポジティブな何かになりたいんだ」

    「…」

    「色で言うと青より黄色、みたいな」

    「私のワンピースの色に引っ張られてない?」

    「そうだったっけ?あ、黄色だったね、確かに!」

    「話戻そう?…なんでポジティブな何かになりたいの…?」

    「…僕にとっての、彩さんが、そうだから」

    「もうなってるよ」

    「じゃあ、彩さんの…人生に、登場させて?」

    「…何の役?」

    「彼氏として」

    「それが告白…?」

    「うん…まあ…徹夜したけど…良いのが浮かばなくてほぼアドリブだけど…」

    「…うん、登場してほしい」

    「彼氏として?」

    「うん…だいすき」

    「僕も大好きだよ、あのね…ゴールデンウィーク」

    「?」

    「去年できなかった分、いっぱいデートしようね」

    「…うん、する」







     ノック15回。うるさいと怒られる。
    「合言葉は」
    「開けゴマ」
    「不正解」
    「山」
    「川、不正解」
    「隣の客は」
    「よく柿食う客だ、不正解」
    「カナダラマバサ」
    「アヂャチャカタパハ、不正解」
    「今履いてるパンツの色は?」
    「透明、不正解」
    「おぉ、ブラの色は?」
    「ベージュ、不正解」
    「うちの事どれくらい好き?」
    「大好き…!不正解」

     はは、ほんま可愛いやつ。

    「…名前言わなあかんの?」
    「一個秘密教えてくれたらそれでいいよ」
    「そしたら…あんたのこと全部教えてくれんの?」
    「うん」
    「…言うよ?うち…………」
    「……………………え…それマジ?」




    誰もいない高校に不法侵入したうちが、同じく不法侵入していた詩寂と楽しいガールズトークを終わらせ、ウキウキ状態のまま龍馬のマンションに向かうと…目の前に、大親友明人が。

    「晶」
    「どした?」
    「…おまえの、作戦、計画、完遂、できなかった」

     明人…。

    「そこは普通「失恋した」言うとこやろが!!」
    「あきら…」

    抱きついてくる明人。
    背中を撫でると、うちの肩あたりに頭をぐりぐりと押し付けてきた。

    「…それでよかったんか?」
    「自分にそう言い聞かせてる」
    「…」
    「それに…大学主催の絵画コンクールに応募して学長賞貰って「来年入学しませんか」って誘われたし」
    「は!!!???それはよ言えや!!!赤飯炊かな!!!!」
    「そうなるから言いたくなかったんだよ」



    76話「사투리」






    「龍馬さん、あの」

    事の経緯を大体理解して、適切なアドバイスをくれている朱里に勧められ、龍馬さんと二人で話すことにした僕。
    龍馬さんは振り返り、優しく微笑んでから小さくこう返事してくれた。
    「どうしたの?」

    周りに誰もいないことを確認してから、あの日の事を話す。

    「…あの、夜の事、覚えてますか?」
    龍馬さんは、少しの間黙ってからゆっくり頷いた。

    「うん、覚えてるよ」
    「それ…二人だけの、秘密ってことにしませんか」
    そう言いながら龍馬さんの手を握ると、僕の目をじっと見つめてから
    「明人君はそれでいいの?」と尋ねてくれた。

    「はい、あれは…駄目な事だったから…」
    「明人君は、それで、良いの?」

    優しい龍馬さんの声。

    少し悩んでから僕は頷いた。抱きしめてくれる龍馬さん。

    「……気休めにしかならないかもしれないけど」
    「はい…」
    「…好き、だったよ、明人君の事」

    だった、という言葉が、痛々しく、胸を、締め付けた。

    僕から離れていく龍馬さんを、引き寄せて…頬に軽くキスをした。

    「じゃあ、これで、全部、真っ白って…事に、しましょう」

    ぐっと悲しそうな顔をしてから、もう一度、僕を抱きしめてくれる龍馬さん。

    「…明人君、僕のお父さんと会いたい?」
    「…いえ、もう、いいんです。」

     本当に、これで。




    「パラパラパラパラパラパラパラパラ」
    『しつこい、今普通に用事あったのに抜け出して電話してるんだから早く要件言って』
    「ありがと、あのさ、三年に上がるタイミングで…言いたくて」
    『何を?』
    「好きに生きろって」
    『…マジか』
    「嫌だった?」
    『いや…なん…か、嬉しくて』
    「そっか、じゃ」
    『明人、あの』
    「?」
    『…学長賞と推薦おめでと』
    「うん、ありがと」



    77話「計画の全貌」




     マンションの駐輪場の奥。龍と俺が殴り合いの喧嘩をした場所。
     晶いわく、龍だけが自分の話をした事をズルいと思ったらしく、自分も自分についての話を俺らに聞いてもらいたいと思ったらしい。

    「まず…質問コーナーからやな?」
    「出た弱小配信者」
    「ファンチはどこだ…」
    「智明ファンチを目の敵にしてるよ…」
    「いいから話せよ」

     こういう不毛な会話…いいよな。
     でもさっさと本題に入らなきゃな…じゃあ、聞くか。

    「俺から質問!お前が考えてた計画教えてくれ!」

     と言うと、晶が一度大きく頷き、ゆっくりと話し始めた。

     晶曰く、入学式で明人を見つけたのが全部の始まりだったらしい。
     龍をじっと見てストーキングのようなことをしていた明人。
    完全な不審者。そんな明人と接触し、友達になった晶は、明人の思い人の特定を始めた。

    その結果松田龍馬という存在と家族構成を知った晶。
    そして、明人の為、知り合い全員に当たり、龍馬の事を調べていると「松田弓月」という女性の名前を知ったらしい。
     松田弓月は自分の母親の親友の一人、彼女に当たると「息子を誘拐された」と悲しみ、心を病んでしまっていたらしい。

     自分の家が関係している。直感でそう思った晶。
     それは当たっていたらしく、龍馬は誘拐された子供だったらしい。
     それが引き金となり、抗争が起き…晶の母親は晶を庇い殺された。

     「息子が誘拐された」と警察に通報しても「ヤクザの揉め事の延長だ」と言い、本腰を入れて捜査してくれなかった、と弓月さんは悲しんでいたらしい。
     そんな中現れた晶という存在、龍の父親、明人の恩人は感謝し、すべてに協力してくれたらしい。

     晶は確信した。明人と龍馬が結ばれてくれたらすべてが解決すると。

     そして、龍馬の親友である俺に目を付けた。
     龍は俺に対して何かコンプレックスを持っているのではないか、と。

    「…自分より弱い存在をあてがえば、依存してくれると思った」
    「実際…そうなったな…僕単純すぎ…」

     晶は続ける。

    「まず親元へ帰す準備をして、それが整った時と同じタイミングで、龍馬に明人を恋愛として意識させることにした」
    「…どうやって?」
    「龍馬に意識させることと、明人の克服を兼ねて…龍馬を襲わせた」


    …。


    「じゃあ、あの時明人が俺を殴ったのは?あれも計画のうちか?」
    「うん、龍馬に「明人は智明よりお前を優先する」って教えるため」
     …。
    「こっわ…」
    「マジでそれ、ほぼ成功してたってのがなおさら怖い」
    「漫画本は計算外やったけど、結果的にそれを利用することも出来たから…一応、一段階は成功してたな」

     こいつこんなこと考えていつも動いてたのかよ…。

     待て、じゃあ…あれは?

    「明人がこの前俺に「ゴミ」って言ってきたんだけど、あれもか…?」
    「うん、あれは智明に「龍馬から離れろ」って伝えるため」
    「こっわ…」

     …ん?

    「何回も質問してごめんな…もし明人が襲った時龍が拒否してドン引きしたらどうするつもりだったんだ?突き飛ばしたり…通報する可能性は考えなかったのか?」
     そう質問すると、晶がぐっと黙り込み龍を見つめた。

    「僕バイセクシャルなんだ、気付いたのは最近」
    「それを…晶は、分かったのか?」
    「…心読める時、龍馬が男性と女性両方に魅力感じてたから、一種の賭けみたいなもん」
    「そう…なのか…」
    「計画の目的は、龍馬と明人が付き合う事、それに色々、誘拐とか漫画本とかが絡んで、ついでに朱里と智明も付き合わせれば良いかなって思ったんよ」
    「こっわ」
    「そやないと朱里が澁澤環とかいうあのアホとくっ付けられるんちゃうかって思ったんよ」

     長い沈黙。
     それを破ったのは明人だった。

    「次僕の話する」
    「…うん」
    「去年の冬にコンクールに絵出して、学長賞と推薦貰った」
    「マジで!?」
    「うん、来年その大学行って美術学ぶことにした」

     明人…。

    「あとついでにもう一個」
    「何?」
    「僕性自認変わった」
    「え!?つ、ついででそんな大切な事言う…?」
    「見た目変わるわけでも死ぬわけでもないんだしいいじゃん」
    「それもそうか…」


     そんな、自分についての考えや秘密をみんなが話し始めた。
     朱里と俺が付き合ったこと、龍と彩ちゃんが付き合ったこと、そして、明人が変化したきっかけや過去。彩ちゃんの信じられないような話と、そのおまけに大バッシングを食らった彩ちゃんの実は好きなカップリング(クロエ×カルマ)

     それを聞いて決意したのか、晶が
    「あのさ、うち実は自分の家継ごうかなって思ってるんよ、普通に生きんと…うちなりに行けるとこまで行ってみるよ」
    と言いながら俺らに背を向け、着ているセーターを脱いだ。

    「…!!」

     晶の背中には、血のように赤い彼岸花と蜘蛛が描かれている。
     それを見て察した龍馬が頷き、優しい声色で「応援してる」と言った。
     晶はそれを聞き、一瞬泣きそうな顔をしたがすぐに真顔に戻り、龍馬のようにゆっくりと頷いた。

     晶…。

     …晶が、話したのなら、俺も。


    「俺も、自分の話していいか」
    「いいよ」
    「…俺の、本当の名前…言いたい」
    「?」
    「俺、本当の名前は…沢田智明じゃないんだ」
    「え?」

     息を吸う。



    「俺の、本当の名前は…澁澤智しぶさわさとしだ」



     沈黙。



     後悔した。
     セーターを着た晶は、俺の背を撫で頷いた。

    「話してくれてありがとう…じゃあ、うちももう一個秘密言うわ!」
    「うん」
    「うち彼女出来た」

     …

    「「「「「は!!!???」」」」」



    78話「ありがとうございました」


    「僕も恋人欲しいな、どっかに居ないかな、めちゃくちゃイケメンだけど本当はクールでとっつきにくいとこがある人」
    「いたら教えて、私式場抑えるから」
    「彩ちゃんに大事なとことられた!じゃあ私同人誌書く!」
    「じゃあ僕売り子するね」
    「いやなんで…?」
    「書くんなら名前考えなあかんやん」
    「伝説のイケメンにしよう」
    「幻でええやろ」
    「英雄とかどう」
    「なんで英雄…?」
    「伝説からの…連想……ふふ」
    「よし、英雄にしよう」
    「明人と付き合うくらいだから英雄だわな」
    「殴られたいかクソ智明」
    「同人誌ノベライズして欲しかったらいつでもどうぞ」
    「わ~助かる!」
    「なんで僕そんなイケメン浮かんだんだろ」
    「ただ理想言うただけちゃうん」
    「それもそうか」
    「明人君の彼氏候補になる驚くくらいのイケメンいないかな~」
    「警察行って「驚くくらいのイケメンいませんか」って言ったら工務執行妨害で逮捕されるかな」
    「発想がクソガキなんだよ彩さんは…」

    正ちゃん Link Message Mute
    2023/02/23 10:00:00

    本当の主人公 9章

    今までありがとうございました。
    #オリジナル #創作 #オリキャラ #一次創作 #BL表現あり #HL表現あり #本当の主人公

    more...
    Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    OK
    URLの共有
    OK
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品