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    蛇足自分らしさ0旅行3日目旅行4日目旅行5日目晶さん松田龍馬沢田ただの初恋の話○○と晶自分らしさ0




    「龍?頼むから、乱暴にすんなよ?俺ら親友だろ…?」
    「して欲しくないなら言う事聞いて、僕ら親友でしょ?」
    「あぁやっぱ無理今日はやめる、また明日に…。」
    「3…2…」
    「だからやめろって!!!!」



    30分。
    ぴったり30分だ。

    智明が僕を自分の家に呼んで、ピアスを開けてくれと頭を下げてから30分経った。
    保冷剤も溶けて温くなったし、智明が号泣したせいで用意しておいたティッシュ箱も空っぽだ。
    挙げ句の果てには僕の袖までビチョビチョに濡らして…。

    『ねえ…もうすぐ暗くなるよ?早く開けないと始業式までに間に合わなくなるよ?』

    なんて言ってみても智明が逆ギレし出すし…。
    …仕方ない…最後の手だ。
    門限まであともう少ししかないし…よし、やるしかない。

    「…もし今日のうちに開けられなかったら…」
    「あ…開けられなかったら何だよ…」
    「…中二の時の智明の黒歴史新しいクラスメイト全員に教える」
    「分かった!思い切ってやってくれ!!」

    本当に単純だなぁ…まぁ、こういうところも好きなんだけど。
    まぁ…勿論、友達としてね。

    智明の右耳を、もしもの時の為に用意しておいた保冷剤でしっかり冷やし、しっかりと消毒してから、ピアッサーをそっと充てがう。
    「…いくよ、覚悟出来た?」
    「…あぁ、一思いにやってくれ。」

    …よし、親友が覚悟してるんだ、僕も智明が付けた印に合わせて開けてあげなきゃ…。

    「カウントダウンするよ…3…2…1…。」
    0になるタイミングでピアッサーのボタンをぐっと押し込むと、「ガシャン!!」と大きな音がし、智明の首にグッと力が入った。

    「智明…!すごいね!よく頑張ったね…!」
    智明の頭をワシワシと撫でてからファーストピアスを入れると、とある事に気付いた。

    ……あぁ…。

    「……智明、あのさ」
    「な…何だ…?」
    「…めっちゃズレちゃった…これ2個開けないと変に目立つ…」
    「マジか…でも良いぞ今は一個だけで…」
    「いっきまーす」
    「ゔあ″あ″あ″あ″!!!」







    「…鬼、人でなし。」
    「…ごめんね、本当にごめん…何でも言うこと聞くから…。」
    「許さない、今日限り俺らは親友じゃない、ただの知り合いだ。」
    「智明…ごめんね、本当に…。」

    最終的に、僕が何回もミスをしたおかげで、本当は右耳に一つ、左耳には軟骨と耳たぶの二つで…合計3つの予定だったのに…右耳には二つ、左耳には3つという、初めてのピアスにしては多すぎる数の穴を開けてしまった。

    そのせいで智明が「セカンドピアスはこれをつけるんだ!」と意気込んでいたピアスを使わなきゃいけなくなって…。

    「…智明、ごめんね。」

    ごめん、流石に許せないよね。

    「いや、いいよ。」
    「いいよ!!??」
    「むしろ勇気出たわ、これで俺マジ本気で高校デビューできる!」

    なんか、えぇ……?

    「そこは怒ってくんなきゃ…。」
    「怒らねえよ、親友だし!むしろありがとな!龍!」
    「えぇ…智明……。」

    眉間に皺を寄せながら首を傾げてみると、智明はうざったいくらいの笑顔で笑いながら僕の肩を叩いた。

    「わがまま言ったのは俺なんだし…それに」
    「それに?」
    「……この耳のおかげで、俺らしく、生きてける気がするよ。」

    旅行3日目
    明「…なあ」
    智「うん?」
    明「絆創膏ある?指切った」
    朱「あるよ…はい、どうぞ」
    明「ありがとう」
    晶「明人がお礼言ってる…!?」
    明「僕だって礼くらい言うわ、悪いか」
    晶「そっか」
    明「お前には言わないけど」
    晶「言えや」
    明「嫌だわ」
    晶「言えや」
    明「嫌だわ」
    龍「ちょっとうるさいよ…集中できない…」
    彩「ごめんね」
    智「なんで彩ちゃんが謝るんだよ」
    龍「ほんとに、なんで?」
    彩「条件反射?」
    智「……ふふ」
    彩「沢田の坊っちゃん笑わせた、私天下獲れる」
    智「獲れねえよ、俺結構ゲラだし」
    晶「なあ!待って!?やっぱ勉強会ってあかんと思うわ!一緒にいるのが楽しすぎて進まんもん!ずっと話してたくなる!」
    龍「確かに…待って、ノートに晶さんが言ってる言葉そのまま書いちゃった」
    智「マジ?マジだ…マジで「話してたい!」って書いてる…」
    龍「狭山先生これ見たらビックリしちゃうかな」
    晶「お間抜けさんやな……あ、お間抜けさんって書いちゃった」
    明「笑わせんな、貼る場所ミスっただろ」
    朱「一人で貼れる?」
    明「大丈夫、貼れた」
    朱「貼れてないよ」
    彩「不器用だね」
    明「黙れ、あ、黙れって書いちゃった」
    龍「明人君までふざけないでよ!!」
    明「明人が大覚醒した」
    彩「自分で言わないで」
    晶「お前基準で行くと大覚醒やない、大暴れや」
    明「なんで僕基準?覚醒と大暴れの違いは何?」
    朱「動かないで、貼れないから」
    晶「明人めっちゃ陰キャやん」
    朱「貼れたよ」
    明「違う」
    晶「せや」
    明「違う」
    晶「せや」
    朱「あ、せやって書いちゃった」
    智「流石にわざとだろ」
    彩「あ、流石にわざとだろって書いちゃった」
    明「あ、流石にわざとだろって書いちゃったって書いちゃった」
    彩「マジでしょーもない」
    明「お前が始めた物語だろ(?)」
    晶「明人が大暴れしとる」
    龍「今日何があったか聞かれたら「明人君が大暴れした」って言お」
    智「誰に?」
    龍「え?……あー……」
    晶「おもろい人言うて、誰やねんって人」
    龍「………あー」
    明「無茶振りすんな」
    智「龍馬無理すんな俺の名前言え俺の名前」
    龍「……ひじき」
    智「大滑りしてんぞ松田」
    朱「友達やめよ」
    晶「失望したわ」
    龍「なんで!晶さんだったらなんて言う!?」
    晶「え?あー…うー、うちは……」
    龍「僕を越えるくらい面白いこと言ってよ」
    智「マイナスだから何言っても勝つぞ」
    龍「親友やめよ」
    晶「……おとうさん」
    朱「マイナスの更にマイナス叩き出した」
    晶「言うなればプラスや」
    龍「そういうのマジでおもんない」
    晶「傷付いた、明人言ったれ、誰に言う」
    明「彼氏」
    晶「おらんやろ」
    彩「お、ちょっと面白い」
    朱「流れ変わった」
    龍「朱里さんは誰?」
    朱「明人君」
    龍「あー、同レベル…智明は?」
    智「もうそろそろ課題やる時間終わろうぜ」
    龍「言うまで終わらないよ」
    智「は?あー、じゃああれだ、あれ」
    龍「誰?」
    智「……隣のクラスの宮部」
    明「誰?」
    龍「誰?」
    朱「誰?」
    晶「あの子か~」
    智「一回話したことあってさ」
    晶「宮部は良いセンス、あの子なら面白い」
    龍「知らないから何も言えないよ」
    明「マジで誰なんだよ」
    旅行4日目

    朱「課題全然終わらん」
    龍「昨日話しすぎたんだよ」
    彩「もう朝だよ」
    龍「やばい、もう、あれだ、あの」
    智「なんだ」
    龍「深夜テンション」
    智「やめろ、暴れるな」
    朱「いつもうるさい二人がビビるくらい静かで怖いんだけど」
    龍「…明人君、晶さん、生きてる?」
    晶「生きてない」
    明「課題に集中して」
    龍「……」
    朱「おーっと、見て見て」
    彩「何?」
    朱「新しいニキビ」
    彩「何?」
    朱「潰します」
    龍「やめな、跡になるよ」
    朱「それ以外にやることないんだよ」
    明「課題やれ」
    龍「嫌だ」
    彩「なんで龍馬くんが答えるの…」
    龍「友達じゃん」
    朱「聞いて、私天才だから英語は終わったよ、来年からロンドンに欧米するから」
    龍「友達やめよ」
    彩「…ダメだ、笑っちゃダメなのに笑っちゃった」
    智「ていうかさ、旅行に来て…オールするって何…観光楽しめよ俺ら…」
    彩「終わらせなくても良いんじゃない?」
    明「姉さん帰ってもやらないくせに何言ってんの」
    彩「大人しくやります」
    晶「韓国語でさ、観光ってなんて言うんやろ」
    明「パラに聞けよ」
    晶「朝の四時やぞ」
    龍「集中!!!!」
    晶「……」
    明「……」
    龍「……」
    智「……」
    彩「……」
    朱「クァングァンだって」
    龍「あーーもう!!!!」
    晶「ハングル見せて、あーちゃう、発音が違うわ、관광!」
    彩「くぁんぐぁん」
    晶「ちゃうねん、舌をこう奥にごって入れて」
    彩「ご……」
    晶「その調子!」
    彩「관광」
    晶「맞아!완벽해!!천재!!」
    明「すげえ晶、バイリンガルじゃん」
    智「マジ不毛な会話だな…」

    旅行5日目
    明「即興で物語作るゲームしよ」
    彩「なんかに使えるかもしれないから動画回しとくね」
    龍「容量あるの?」
    彩「脳味噌の容量?スマホの容量?」
    龍「両方」
    彩「龍馬君そういうこと言う子だっけ?」
    龍「僕もみんなみたいにいじりたくて…」
    彩「そっか、両方ないよ、でも回すね~」
    龍「あはは……」
    明「設定はスパイ任務、謎解き系」
    晶「いいやん、うち上司やる!主人公は明人な」
    明「…ボス、任務は?」
    晶「一昨日、うちのお得意先である雅さんとこの猫、たくやくんが誘拐された」
    明「そ、それが…?」
    晶「その捜索願だ!はぁ~!?みたいな流れからでかい事件を巻き起こしていこう」
    彩「いいじゃん!そのたくやくんの首輪にチップがあって、それがスパイ本部のなんか~セキュリティのあれに関わってたりする系」
    龍「良いね!それを敵に盗ませた的なやつか」
    智「よし!猫の種類は三毛とかどう?レアな感じする」
    明「猫自体に価値あるのはちょっと違う気がする」
    龍「逆に黒猫とかでも良いかも」
    智「あー黒猫良いな」
    朱「黒猫にしてみる?不幸の象徴みたいなもんだから、そういう感じにして…」
    智「会話に「黒猫は不吉」的なの入れたらなんか面白くなりそうじゃね?」
    龍「良い!良いね!ごめん智明」
    智「謝んな」
    明「たくや見つかるんだけど、首輪が無い!盗まれたんだ」
    朱「飼い主の朱里さん大激怒だよ、首輪はどこじゃ!って」
    龍「チップの中にGPSがあったことに遅れて気付く朱里さん!」
    彩「見てみたら首輪は敵本部の中にある!」
    龍「敵本部にはなんかレーザーとかがあんの!セキュリティ情報は首輪に入っちゃってるからもう明人君大苦戦!」
    明「僕はこう言う!「透明人間でもない限り無理だろ!」って」
    龍「分かった!犯人は猫なんだよ!!」
    智「……あん?」
    龍「猫なら入れる!」
    彩「うん」
    龍「それ以外は、まあ…浮かばないんですけど…」
    明「!たくやは誘拐されたんじゃなくて脱走したんです!」
    智「!すり変わってたとかどうだ?何言ってんだろ」
    龍「良い良い良い良い良い良い良い良い良い」
    晶「うるさ」
    朱「すり変わってたんだとしたらさ、なんで飼い主の雅さん気付かないの?猫は大切じゃないの?」
    彩「……猫に価値がないから?」
    智「うわ、なにそれ」
    晶「雅さん嫌いやわうち」
    朱「私も私嫌い」
    明「抜け出したっていう設定の上に、実は本物のたくやは脱走しちゃったから違う猫を用意してて、今探してるたくやはその違うたくやだった、って設定にしたらドロドロしてて雅のクズさ際立たん?」
    龍「手下が代わりの猫を用意してたのか」
    晶「たくやくんは抜け出した、その上代打のたくやは敵基地に乗り込んじゃった!飼い主の雅さんはたくやくんに価値がないからたくやくんには興味なくて脱走にも代打にも気付かなかった!」
    龍「…抜け出したことにも気付かない上にチップの事にも気付かなかったのはなんで?」
    朱「雅さんアホすぎん?」
    明「自分で言うのめっちゃ面白い」
    彩「……雅さんが敵のスパイだったとか」
    龍「……うわ」
    彩「……その、大慌てでみんなが…慌てふためいてたくやたくや言ってる間に…敵にチップ届けて、セキュリティ情報とかを渡してた、とか」
    龍「本当は入れ替わってなかった?」
    彩「不幸を運ぶ猫ってのは、事実だった、みたいな」
    智「……犯人猫じゃん…」
    晶さん
     
     晶さんと知り合ったのは、私がまだこの国に、そしてこの社会の仕組みに慣れていない時だった
     周りの環境が肌に合わなくて、自分の体が怖くて不快で、いつも感じる視線が気持ち悪くて隅で震えていたのを覚えている。
     年上だらけで、心の許せる相手がいない上に、体が変で怖かった。
     
     そんなとき、晶さんに声をかけられた。
    「あんた新入りやんな、名前は?」
     言ってる言葉の意味が分からなかった。
     殺すぞ、とかそういう嫌な事を言われてるのかと思って、それなら今すぐ死んでやるって思って刃物を握った。
     
    「ああ、違う違う…えっと…。」
     すると、刃物を持った私に怯えた晶さんが慌てながら携帯を取り出し、何か文字を打ってからそれを見せてくれた。
     そこには晶さんが私に伝えたかった言葉が、韓国語で、私の分かる言葉でこう書いてあった。

    「この言葉で大丈夫?」と。
     何度も頷くと、嬉しそうに頷いてから、私の名前と、私の生まれた日、誕生日、年齢を聞いてくれた。
     私も晶さんの持ってる携帯に話しかけて、翻訳して貰って、そうやって会話した。
     
     楽しかった。
     でもそれを見てた人達はよく思わなかったみたいで、こんな奴に近付くな、とか色んな事を言われていた。
     言ってる言葉の意味は分からなかったけど、晶さんが激怒しているのを見て「この人達が言ってる言葉は悪い言葉なんだ」と理解する事は出来た。
     腹が立った。
     晶さんより3ヶ月くらいは早く産まれてるから、私が守らなきゃって思った。
     でも晶さんはそれを拒否した。
     
     その後で信じられない言葉を口にしたんだ
     その時の私に感謝したい。
     その時の私が晶さんの携帯を手に取って、マイク機能をオンにしてなかったら今頃晶さんに付いて行ってる自分が居なかったから。
     
     マイクをオンにして、晶さんが話す文章が韓国語に翻訳されていった。
    「年功序列式?性別?知らん、私がヒョンだ。」と映し出された。
     
     その瞬間、付いて行こうと決めた。
     この人の為に生きようと決めた。
    松田龍馬

    「あ、行っちまった。」
     他人事のようにそう呟いてからぐっと伸びをし、大急ぎで廊下を駆ける松田の背中を見る。

    「松田!」
     名前を呼んでも見向きもせず走る松田。
     大事な事を言おうと思ったのに…と思いながらも、松田にまだ私の声が届くはずだ、と信じ、こう叫んでみる。
     
    「絶望しろ!松田龍馬!」
     知らない一般人からすれば、何かのゲームの話か、私が松田龍馬を虐めているのか、それとも厨二病だから訳のわからないことを言っていると捉えられるだろう。
     
     それでいい。
     私は愚か者でいいんだ。
     悪役でいい。
     ちょい役でいい。
     馬鹿でいい。

     これが目を覚ました者の運命であり宿命なのだから。
     宿命であり、運命であり、呪いなのだから。
     
     包帯のせいで蒸れたのか、むず痒い首を包帯の上からぽりぽりと掻きながら窓から空を見上げる。
     呆れるほど綺麗で、私は何度目かの絶望を迎えてしまった。
     すとん、と肩から何か重大な物が落ちるような感覚に慣れてしまったな、とふんわり思った。
     風に流される雲を見ながら、人間はあんな風に死に向かうのかな、と思った。
     向かっているんだな、と理解してしまった。
     
     綺麗だな、と思った。
     死ぬほど、殺したいほど綺麗で鬱陶しいなと思った。
     思ってしまった。

     この世界の人間よ。全てに絶望しろ。生きて、絶望して、死にたく思いながらも生きろ。うざったく思える程、生きて、生きて、生き抜くのだ。
     そうすれば全てが受け入れられる。
     誰かの、せいにできる。
     そうでしょう。そうなのでしょう。



     私の視線の先には、見つめ合っている池崎彩と…晶がいた。
     晶の鼻は真っ赤に染まっていて、池崎彩はそんな晶の頬を摘んで怒っているような表情をしている。
     
     何をしているかはこれから先分かっていくだろう。
     そう思いながら包帯を解き、首の関節を鳴らしながら廊下を歩く。

     弟が帰ってくる。迎えに行ってやらないと。



     私に、家族が居てよかった。
     私の愛おしい弟。
     愛おしくて、何よりも美しい弟。
     私の後ろをついて回るひよこのような奴。
     私に似て視力が悪くて、眼鏡がないと歩けない弟。
     ブラコンだと言われても仕方ない。
     
     
     
     愛してる。愛してるんだ。
     奪わせたりはしない。決して。

    沢田




    死にたいと思った。
    そう思ったのはアコースティックギターの音がやけに喧しくて。
    流れている歌声が汚く聴こえた時だった。

    そういう風に聴いてしまう僕の、私の心というか、俺の耳というか、まぁ、全てが汚いんだろうけど。
    どうせ金を稼ぐ為に作ったんだろうとか、思ってしまう自分が、自分の何もかもが汚くて。
    指の先を水で濯いでも、二の腕に爪を立てて洗っても、痛いだけで綺麗になるわけがなくて。



    今すぐに死んでしまいたかった。
    洗面器に満ちた水に、頭を沈めてしまいたかった。



    水が溢れる音が聞こえたのは、そのすぐ後だった。
    薄い鉄の匂いがした気がする。
    喉の奥が乾いて、渇いて。
    酸素でも、水でもない何かを渇望している事に気付いた。

    存在価値なんて大袈裟なものじゃなくて
    ただ、ただ

    ただ


    居場所が欲しかった。


    アコースティックギターの曲。
    イントロがまた流れてる。
    なんかリピートにしてる。
    嫌いなはずなのに。
    汚いはずなのに。
    自分の心の汚さが
    露呈するから嫌だって
    思って
    思ってたのに

    思ってたのに








    本当、綺麗な声だな。



    そっか。


    私達、もう話せないんだね。




    2024年XX月XX日 沢田

    ただの初恋の話
    バイトの帰り道、薄暗くなった街を歩いていた時、憧れのあの人を見つけた。
    あの人は、長めの髪をざっくりと纏め、パーカーの紐をいじりながら煙を吐いていた。
    彼女の、街灯に照らされる姿が美しくて見惚れていると、火を消し、小さな声で私に「好きにしていいよ」と伝えた。

    それから、関係が始まった。

    彼女は、まるで、蛇のような、そんな女だった。
    どこか私に似ているような、そんな存在だった。
    彼女を見ていると、胸の奥から苛立ちに似た熱い感情がふつふつと溢れるのを感じながらも、彼女特有の下手な笑顔に惹かれていた自分を否定しなかったんだ。
    出来なかったんだ。

    愛していたから。



    今思えば、初恋だったのかもしれない。

    これが、私の人生において、初めての恋だったのかもしれない。
    ○○と晶



    「私はお前が好きなのかもしれない」

    ____の口から発された言葉に、口に含んだコーラが喉に引っかかり、噎せてしまった。
    「ゴホッ!……は…?お前……何言ってんの…?」

    左手で口を押さえ、右手で鞄を漁ってティッシュとハンカチを取り出す。

    ____は、そんな__を見て、ゲラゲラ笑い
    「嘘に決まってるだろ!」と、目尻に溜まった涙を人差し指で拭いながら言った。

    「おい…____、笑いすぎ。」
    いつもより低い声で____の名前を呼ぶと、数回頷き、嬉しそうに
    「ごめんごめん、でも…そんな反応するってことは…?」
    と言った。
    「んなわけあるか」
    「だよねー!」

    ……なんか、こいつといたら…ずっと振り回されてるような気がする。

    こいつの言動に困り果てていると、そいつはニヤニヤと笑い、自分の髪を撫でながら質問をしてきた。

    「__、私茶髪似合う?」

    話を変えるタイミングが唐突すぎる…
    ん?あー…そういえば、こいつ…一昨日髪染めたんだっけ。

    地毛は茶寄りの黒だったからそんなに変化はないけど……。
    いざ言われてみれば、茶が濃くなってる気がする。

    ……こいつには…正直に、感想を言った方がいいかな。
    「似合うけど」
    「けど?」
    「黒の方が____らしくて好きだった」
    というと、嬉しそうに数回頷き、こう言った。

    「そっか…なら」
    「なら?」

    「__が卒業したら、黒に戻して会いに行くよ。」


    言い終わった後、にんまりと微笑み、自分のドリンクのストローを、嬉しそうに噛んだ。
    ……なんだ、それ。
    「勝手な事言ってあいつら困らせんなよ?」
    「せっかく手に入れた立場なんだから、利用させてもらうよ?」
    「……はいはい」

    ……これじゃどっちが年上か分かんないな。

    ……こいつなら、

    こいつなら、信じられるかもしれない。

    なんて、


    ……あぁ、コーラって…こんな味だっけ。

    …____。

    __は、お前を愛せるようになりたいよ。
    正ちゃん Link Message Mute
    2023/02/23 16:26:10

    蛇足

    おまけです。
    #オリジナル #創作 #オリキャラ #一次創作 #本当の主人公

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