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    深夜3時の告白 もぞもぞ、ごろり。上手く寝付けず布団の中を転がっていれば、小さな溜息と共に体が引き戻された。布団の限界、布と畳の境界線ギリギリを攻めていた私の体はそれで呆気なく逆向きに転がされる。
    「…寝る時くらい落ち着けねぇのか、おまえは」
    「ごめん、起こしちゃった?」
     半回転して辿り着いた先には眠そうに目を瞬かせる肥前くん。ぐっと寄せられた眉根と懸命に開こうとしている両目がなんとも愛おしい。寝起きの声は掠れており、焦点の定まらない瞳はどこかぼんやりと私を見つめていた。
     それはそうだ、何せ時刻はもうとっくに日付を跨いでいる。一日中本丸で座りながら仕事をしていた私と違って肥前くんは出陣と演練、それに帰ってきてからは南海先生のお世話にと本丸内を駆けずり回っていたのだ。疲労度が違うのだよ、疲労度が。いや書類仕事だってとても疲れるけれどそれはそれ。やはり肉体労働の辛さには敵うまい。
    「今何時だと思ってんだ…」
    「三時前だね」
    「寝ろアホ」
     肥前くんの口は半分も開いていない。さっきまで辛うじて開いていた目はとっくに瞑られているし、喋りながらもどんどん意識は眠りへと落ちていくから最後の方はもう何を言っているのかほとんどわからなかった。むにゃむにゃと口元を動かしながら、それでも私へのお小言を怠らない彼にくすくすと忍び笑いが漏れる。ふふん、可愛い奴め。半分寝惚けている肥前くんはとっても可愛いから撫でてあげよう。
     普段しっかりしている彼だからこそ、こんなにぐずぐずになっている姿を見れるのはとても貴重なのだった。多分肥前くんのこんなに可愛いところを知っているのは私くらいなんじゃないだろうか。もしかしたら南海先生やむっちゃんも知っているかもしれないけれど、そこは一つ気を利かせて知らないことにしておいてほしい。
    「ふふ、可愛いね」
     布団から腕を出し、彼のふわふわの髪の毛を撫でれば閉じられていた目が薄っすらと開く。本当に眠そうに二度、三度と瞬きを繰り返した肥前くんはもう一度大きな溜息をつくと「いいから寝ろ」とだけ言い置いて私の体をぎゅっと抱き寄せた。
     これ以上眠りを妨げられてなるものか、という強い意志が伝わってくるほどの抱き込み具合。片腕を布団から出していたせいで肥前くんの頭はちょうど私の胸元に沈むような感じになっている。そこそこ強い力で抱きしめられてしまえば、寝付けないからといって布団の中を転がり続けることもできない。肥前くんに申し訳ないから流石にもうしないつもりではあったけれど。
     ぎゅっと私を抱きしめたまま胸元に顔を沈める肥前くんの体にそっと腕を回す。穏やかな呼吸、緩やかに上下する背中に何とも言えない気持ちが競り上がって来て、私はまたふふ、と忍び笑いをこぼした。
     抱きしめ返した肥前くんの体はぽかぽかと温かい。肥前くんは普段から体温が高い方だけれど、こうやって眠い時や眠りに落ちる前は一段とその熱が高くなるのだ。温かい彼に抱きしめられ、抱きしめ返していると冷え性の私までだんだん体がぽかぽかとしてくるから気持ちがいい。
    「ねぇねぇ肥前くん」
    「……んだよ」
    「私のこと好き?」
    「…」
    「愛してる?」
    「……」
    「ねぇってば、聞いたらちゃんと寝るから」
    「あいしてるあいしてる」
    「棒読みなんだよなぁ」
    「…いいから寝ろっつってんだろ」
     体はぽかぽかとしてきたけれど、それでもまだ睡魔はやってこない。すぐにでも眠りに落ちてしまいそうな肥前くんに絡めば鬱陶しそうにされるものの、元来彼は優しくて世話焼きだ。なんだかんだ言いつつ眠気を堪えて構ってくれるから私はますます眠気から遠ざかってしまうし調子にも乗ってしまう。九割私が悪いけど残りの一割は肥前くんだよ。律儀に返事なんかしてくれるから、この時間が終わるのが勿体なくて眠るのが嫌になってしまったのだ。
     手遊びするように肥前くんのふわふわの髪の毛を撫で続けていれば諦めたのか、それともこれ以上起きているのは限界だったのか何も言われなくなってしまった。代わりに私を抱きしめる腕の力は強くなり、まるで寝かしつけるように緩やかに背中が叩かれる。
    「……私もう子供じゃないんだけど」
    「子供の方がマシだ」
     それは一体どういう意味だと胸元にある肥前くんの頭を抱え込めば、可笑しそうにくつくつと笑いが返ってくる。納得がいかない。けれど一定のリズムを保って体を叩かれ、温かな彼と体温を分かち合っていればいよいよ私にも睡魔が襲いかかってくる。
     ぐずるように何やら呻きながら肥前くんの体にしがみつけば、殊更優しく背中が叩かれるので困った。これでは本当に子供のようではないか。いい歳をした大人だというのにこんなあやされ方をするなんて。そんな言葉を半分も動かなくなってしまった口で訴えたところで肥前くんはあやすのをやめてくれない。
    「明日構ってやるからもう寝とけ」
    「……もう一回好きって言ってくれたら寝る」
    「……愛してるから早く寝てくれ」
    「仕方ないなぁ」
     おまえなぁ、と呆れた肥前くんの声をわざと聞こえない振りして目を瞑れば、ゆるりと気持ちの良い眠気が体中を包み込む。今なら寝れそう、とまろび出た欠伸を噛み殺すことなく部屋に響かせればすかさず肥前くんからの「おやすみ」が飛んできた。それに笑っておやすみを返すと、いよいよをもって私は迫り来る眠気に意識を手放したのだった。
    c_han8 Link Message Mute
    2022/11/16 22:21:41

    深夜3時の告白

    これは気に入ってる。

    #刀さに #女審神者 #ひぜさに #肥前忠広

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