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    笑顔と独占欲「おい、レン」


    それはパトロールの最中。
    先程からマリオンの隣を歩くレンの様子が可笑しい事に気付きマリオンはその名前を呼んだ。


    「なんだ?」


    呼び掛けには応えたもののやはり何処かレンの様子は可笑しい。


    「なんだ、じゃない。そっちはさっきパトロールを終えたばかりだろ?本当にオマエは方向音痴だな」


    マリオンは同じ方向へ行くレンに呆れた表情を浮かべながらそう言った。


    「ッ…!少し考え事をしていただけだ……勿論覚えている」


    レンはそう答えると方向転換をして再び歩き出した。


    「ちなみにそっちはエリオスのビルだ。僕の許可無くパトロールを終えて帰るつもりか?」


    「………」


    黙り込んでしまったレンにマリオンは深い溜息を吐く。
    レンの出身はサウスパークと聞いた事がある。
    だから多少迷うのは仕方ない事かもしれない。
    けれどそれはノースセクターに配属された一週間や二週間程度の期間の事だろう。
    あれから大分時間は経っている。
    やはりパトロールの最中でもレンの方向音痴は健在だった。


    (どうせサウスに居ようとこいつの方向音痴は変わらないんだろうけど)


    マリオンはそんな事を思った。
    けれどそれにしても今日のレンはやはり何処か様子が可笑しい。
    何時もより方向音痴が酷い。


    「考え事をしていたと言っていたが一体何を考えていたんだ?」


    唐突にマリオンから投げ掛けられた問いにレンはピクリと反応する。
    けれど口を開こうとはしなかった。


    「へぇ…そんなに鞭で打たれたいか?」


    そう言うマリオンは女王様の様なドS丸出しの笑みを浮かべている。
    それはレンにしか見せない表情だった。


    「ッ…!」


    それを見てレンは驚くと首を振った。


    「じゃあ話してみろ。パトロールにも支障が出る程のものなのかどうか僕が聞いて判断してやる。もしくだらないと判断したら部屋に戻った後に鞭で百叩きしてやるから覚悟しておけ」


    マリオンの言葉にレンの顔色はみるみるうちに悪くなっていった。
    そして観念したのかレンは何処か気不味そうな様子で口を開いた。


    「さっき…マリオンが街の人間に声を掛けられてたのを見た」


    「ん?あぁ…それがどうした?」


    それは先程の出来事だった。
    マリオンのファンだと言う若い男性からマリオンは声を掛けられていた。
    それを見てレンは少しだけヒヤヒヤしていた。
    今は大分落ち着いたみたいだがビルを出た時はまたガストが何やらマリオンの地雷を踏んだみたいで鞭でシバかれそうになっていた。
    当然機嫌の悪いマリオンがパトロールの相手に指名するのはレンで。
    ガストの事を心の底から恨みながらも結局断る事も出来ずにレンはマリオンとパトロールに出たと言う訳だ。
    それからあまり時間が経って無い出来事だったから当然レンはマリオンと市民との会話やマリオンの態度にヒヤヒヤしてしまう。
    マリオンはその女の様な見た目とは相反して気性がとても荒いのだ。
    直ぐに頭に血の昇るタイプの人間なのはレンも理解しているからこそそれなりにマリオンと居る時は顔色を伺いながら発言していた。
    まさか市民相手に鞭を振り回す事はしないだろうとは言え多少は強く当たったりするのかもしれない。
    そう懸念していた。
    以前のチャイナタウンの件。
    あれを任されるキッカケとなったのはキレたマリオンがドアを蹴り壊したりして問題を起こした事が原因だった。
    マリオンがメンターを解任されるのはレンにとっては非常に困る。
    だがそんなレンの心配も他所にマリオンは市民に笑顔で対応していたのだった。
    それもレンが今まで見た事の無いような表情で。
    ファンだと言う男性はそんなマリオンを目の当たりにして頰を染めながら握手まで求めていた。
    その要望にもマリオンは嫌な顔一つ浮かべずに対応していた。
    そんなマリオンが意外過ぎてレンはとても動揺していた。


    「……あんな顔も出来るんだなって。正直驚いた」


    レンはそう言った後ふと自分の発言を振り返り慌てる。


    「別に馬鹿にしてるとかそう言うつもりは…!」


    「は?何を焦っているんだ。まだ何も言ってないだろ?」


    「あ、ああ…」


    マリオンの言葉にレンは安心した。


    「フン、市民の前では愛想を振り撒いておけば良い。知っているか?あのブラッドでも市民の前では見た事もない様な笑顔を振り撒くんだ。キモチワルイ程のな」


    「そう、なのか…」


    レンはブラッドの笑顔もなかなか想像出来なかった。


    「まぁ市民に愛想を振り撒いて好感度を上げる事もセクターランクを上げる上で重要な事だ。オマエも少しは笑顔の練習でもしておくんだな」


    「笑顔…」


    マリオンの言葉にレンはそう呟いた。
    思えば家族をイクリプスに殺されたあの日から一度も心の底から笑った事などなかった。
    何をしても楽しくないし復讐も果たせていない自分が死んでいった家族を差し置いて楽しい思いなどして良い訳が無いと思っていた。


    「レン?」


    黙ったままのレンの名前をマリオンは呼んだ。
    だがレンはマリオンの呼び掛けには応えない。
    レンの何処か思い詰めたような表情を見てハァと溜息を吐いた。


    「おい、両手を上げろ」


    急に意味の分からない事を言い出すマリオン。
    その言葉は聞こえていたみたいでレンは驚く。


    「えっ?なんで…」


    銃口でも突き付けられそうなその言葉にレンは焦った。
    何かカンに障る事でも言ってしまったのだろうか?と考える。


    「素直に言う事を聞くのと鞭でシバかれるのとどっちが良い?」


    「ッ…!」


    その言葉に急いでレンは言われた通りに両手を上げた。
    所謂相手に降参する時にするポーズだ。
    レンが両手を上げたのを確認するとマリオンはレンの背後に回る。


    「………?」


    鞭でシバかれるのかと不安になりながら顔だけ後ろへ向けた。
    その時だった。


    「ふぁッ?!!な、何をッ…!やめ、ははっ、擽っ…」


    背後に回ったマリオンはレンの無防備な脇の下に手を伸ばすと触れたのだ。
    身悶えながらも手を下ろし必死に脇をガードする。


    「勝手に手を下ろすな」


    「そんな、無理だッ…やめッ、ははッ」


    逃げようとするレンの腕を掴み、なおも脇を擽るマリオンに耐えられずにレンは涙目になりながら身体を身悶えさせるとなんとかマリオンを振り切って逃れた。
    そんなレンに


    「本当にオマエは弱点だらけだな」


    マリオンはそう言って口元だけ笑った。
    訳が分からずレンは自分の身体を守る様に腕を回したままマリオンを呆然とした様子で見ていた。


    「まぁそれだけ笑う事が出来たら市民への対応も安心か」


    「今のは無理矢理ッ…!」


    「何か言ったか?」


    「な、なんでもない…」


    マリオンの言葉にレンは首を振った。


    「ならパトロールを続けるぞ」


    「あ、ああ…」


    そう答え歩き出すレンの横をマリオンは歩く。
    マリオンの行動がやはりレンには予測不可能だし理解出来なかった。
    隣を歩くレンの横顔を見てマリオンは思った。


    (嫌な事を言ってしまったのかもしれない)


    と。
    家族を殺されて最早復讐の為に生きていると言っても過言では無いレン。
    レンにも以前直接言った事だが自分がレンの立場だったらとてもじゃ無いが耐えられない事だろう。
    そんなレンが気安く他人に笑顔を振り撒ける筈も無い。
    だから元気づけるつもりで強制的に笑わせてやろうと思いあんな事をした訳だが。


    (思えば初めてかもしれない。こいつの笑った顔を見たのは)


    マリオンはそう思った。
    普段の涼しい顔からは想像も出来ない様な先程のレンの顔。


    「………」


    「…なんだ?」


    先程から突き刺さる様な視線に耐えられずレンは気不味そうにマリオンに顔を向けるとそう声を掛けた。


    「先程のオマエの台詞、そのまま返す。それと」


    「え?」


    そう言うとマリオンはレンの前に立ちはだかった。
    そして


    「やはりオマエは市民に愛想を振り撒くな。そう言うのはガストに任せておけば良い。分かったな?」


    そう言うとレンを置いて先に歩いて行ってしまった。


    「えっ?なんでいきなり…おい、マリオン。待ってくれ…っ」


    やはりレンにはマリオンの行動や言動が理解出来なかった。


    (あんなレンの顔を他の人間に見せたらレンのファンが増えてしまう…)


    マリオンがそんな事を考えている事などやはりレンは知る由も無い。

    終わり
    ꒰๑͒•௰•๑͒꒱ℒℴѵℯ❤ Link Message Mute
    2023/03/02 21:12:19

    笑顔と独占欲

    一応前の続き。
    今回はえちくない。
    パトロールのマリレン。
    マリ→レぽい。
    くすぐりプレイ違。
    笑顔にまつわる話とレンちゃんのその顔を見てもやもやするマリちゃまの話。
    えちも好きだけど普通にお兄ちゃんなマリちゃまと弟レンちゃん可愛くて好き。

    #エリオ腐R #マリレン #腐向け #二次創作

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    後悔先に立たず(マリレン)
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