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    肌と肌でふれあって 好きな人と肌を直接触れ合わせることがこんなにも気持ち良いだなんて、ハヤトと付き合うようになってから初めて知った。二人でひとつの毛布に包まって、隙間を無くすようにぴったりとくっつき合う。ハヤトの肌はなめらかでさらさらで、でも吸い付くような柔らかさもあって、ずっと触っていたくなる。オレの腕の中で気持ちよさそうに眠るハヤトの背中を撫でながら額にキスを落とすと、ハヤトはくすぐったかったのか顔をオレの鎖骨あたりに埋めてしまった。

     時刻は深夜一時。ハルナの誕生日を一番に祝うんだ、と、そう言ってオレの部屋に泊まりにきたハヤトは、夜に二人きりという状況で我慢できなかったオレのせいで今ぐっすりと眠っている。その代わりに、枕元で着信やメッセージの受信を知らせてたびたび震える携帯には一度も手を伸ばしていない。
     ハヤトは、既に日付が変わっていることを知ったら怒るだろうか。でも、起こしてほしいとも言われていないし、よく眠っているのに起こすのは気がひける。それに、誕生日を祝ってほしいみたいでちょっと恥ずかしいと思ってしまう。明日は何も予定がないし、ハヤトが自然に目を覚ますまでこうしているのもいいだろう。そう思ってハヤトの細い体を抱きしめ直すと、ハヤトが身じろぎをする。起こしてしまったかと思ったけれど、聞こえてきたのはさっきまでと変わらない寝息だった。それを聞いて少し残念に思う自分もいて、やっぱり本当はハヤトに早く誕生日を祝ってほしいのかもしれない。
     小さい頃は、こんなふうに誕生日を迎えるだなんて想像もしていなかった。好きな人と裸で抱き合って、だなんて。意図せずともそう出来たこと、そんなことが出来る相手と出会えたこと。それが何よりも幸せなことだと思った。
    「……はる、な」
     かすかに、ハヤトの声が聞こえた。今度こそ起きたのかと思ったけれど、寝起きのハヤトとは様子が違う。これはどちらかと言うと、寝言に近いような。顔が見たくて体を少し離して上を向かせると、目を閉じたままのハヤトはやっぱり、眠ったままだ。柔らかな頬を撫でると、よく懐いた犬や猫のようにオレの手のひらに擦り寄ってくる。甘えてくるような仕草が可愛くて、ついつい口角が上がってしまう。
    「誕生日、おめでと……。すき」
     眠りに落ちたままのふわふわとした声でハヤトの口から溢れた言葉は、待ち望んでいた祝いの言葉と普段は照れてなかなか言ってくれない言葉。嬉しさがこみ上げてきて、心のままに力いっぱいハヤトを抱きしめた。きっと起こしてしまうけれどこの衝動はどうしても抑えきれなくて、ぎゅうぎゅうとめいっぱいに抱きしめる。案の定首元で呻くような声がして、それでやっとオレはハヤトを解放した。
    「いっ、痛い、ハルナ!?なに!?」
    「ハヤトが可愛いのが悪い!」
     突然起こされたハヤトはオレの胸に腕を突っぱねて、服を着ていないことに気付いたのか慌てて顔の向きをオレの胸から顔へと移動させる。でもそれも恥ずかしかったのか、かち合った視線はすぐにそらされてしまった。ハヤトからしてみればわけのわからないことを言いながらまた体を抱き込もうとするオレになんとか抵抗して、その意味を考えようとするハヤトはやっぱり可愛い。
    「えっ?あ、あれ、俺もしかしてなんか言った……?」
     戸惑いながらオレの反応を伺うハヤトを返事の代わりに緩みきった顔で見つめれば、全てを察したようでみるみるうちに顔が赤くなっていく。きっと夢の中でもオレの誕生日を祝ってくれていたんだろうと思うと、顔が緩むのはどうしたって制御できそうになかった。
    「待って、ちゃんと言う……から」
     腕の力が弱まった隙にもう一度抱きしめてしまおうかと思ったけれど、やめた。ハヤトが真面目な顔で深呼吸をしたからだ。何度か大きく息を吸って、吐いて。何か決意したかのように真剣な顔で、口を開いた。
    「ハルナ、誕生日おめでとう」
    「ありがと。……もう一言あったろ?」
     幸せで心がいっぱいになって、緩まった顔は到底戻せそうにない。さっきの寝言が聞き間違いじゃなかったと信じたくて、はやくと続きを促すのはちょっといじわるだろうか。ハヤトは少しだけ目線を彷徨わせてから、最後にはきちんとオレの目を見て言ってくれた。
    「……ハルナのこと、大好きだから、これからもずっと祝わせてくださ、……んっ」
     ハヤトの言葉の最後は、オレの口の中へと消えた。細い腰を引き寄せて自分へと密着させて、もっともっと深くハヤトを味わう。口付けたまま薄く目を開けてハヤトの様子を伺うと、ぎゅっと目を固くつむって苦しそうにしながらもなんとかオレについてこようとしているのがどうしようもなく可愛かった。

     こんなに可愛くて大好きな人が、これからもずっとオレの誕生日を祝ってくれるという。その気持ちはもちろんオレも同じで、きっと同じくらいに想い合っている。肌から肌へと直接伝わる熱が、その言葉が嘘ではないことを証明してくれていた。
    琉里 Link Message Mute
    2022/06/25 19:23:08

    肌と肌でふれあって

    pixiv初出:2016年3月30日
    ※思いっきり事後なので気持ちR15
    #春隼  #SideM腐

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