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    顔を合わせるたびドキドキ胸が痛くなるのにはなれるとなんかさみしくてすぐ会いたくなるのなんでだろ――?
     始めは、少しの好奇心。そばにいると落ち着かないけれど、幸せな気持ちになる。足元がふわふわとして、心が宙に浮かんでしまいそうな、そんな気持ち。それがなんなのか、もっと近づいて、触れたらどうなるのか。試してみたいと思ってしまった。
    「じゃあ、よろしくお願いします……?」
     どちらともなく重ねた手に力をこめると、手のひらにはじんわりと汗が滲んだ。そして、鼓動がうるさくなってくるのがわかる。
    「ハヤト、そっちもちょーだい」
     向き合うように身体の向きを変えて、離れていたほうの手も繋いでみる。そうすると、なんだか幼い頃に遊んだ手遊びのようだ。
    「せっせっせーの、よいよいよい」
    「ふっ、はは、懐かしいな」
     春名が吹き出して笑うと、隼人も嬉しくなった。そうして遊んでいると心臓が少し落ち着いてくるけれど、同時にもっとたくさん触れたい、なんて欲も出てくる。手遊びが一通り終わってしまうと、次に動いたのは春名だった。
    「こういうのは?」
     手の大きさを比べるみたいに手のひらを重ね合わせて、指と指を絡めて握る。手遊びよりも触れる部分が多くなって、また落ち着かない気持ちになる。触れたり離れたりするだけでこんなに心が動くのはとても不思議だった。
    「これ、俺知ってるよ! 恋人繋ぎってやつだ!」
     目を輝かせてはしゃぐ隼人を見つめ、春名は自然と微笑んでしまう。本来ならば恋人とするそれを、相手が春名でも喜ぶなんて微笑ましい。ぎゅうと強く握れば隼人も握り返してきて、そこから気持ちが伝わるかのように思えた。
    「次は、えっと」
     解かれた手のひらに名残り惜しさを感じながら隼人の試みを眺めていると、またすぐに手は繋がれた。今度はお互い片手ずつ、右手同士だ。
    「……あれ? 普通につなぐのってこうじゃないな?」
    「これじゃ握手だな!」
     春名が笑い飛ばせば、隼人は首をひねった。思ってたのはこうじゃないんだけど、と口の中でもごもご言う隼人を宥めて、それならばと春名は指をお互いに握り込むようにして先ほどとはまた違った手遊びの形を作る。
    「指相撲、どう?」
    「よーし、負けないぞー! えいっ!」
     受けて立つとばかりに春名の指を強く握って、隼人は親指を一生懸命に動かした。次第に勝負は白熱して、大きな笑い声や悲鳴にも似た叫びが上がる。熱中して指を動かしていると、いつしか二人の距離は近づき呼吸も荒くなっていった。
     もう降参、と肩で息をしながら手の力を緩めて、春名はゆっくりと顔を上げた。予想外に隼人の前髪が頬を掠め、ドキリと心臓が跳ね上がる。それがぶつかりそうになったからなのか、それとも隼人との距離が近かったからなのか。春名には判断がつかなかった。
     力の弱くなった春名の指を、隼人はチャンスとばかりに抑えて遊んでいる。息を切らして興奮したせいか隼人の頬は紅潮し、額には薄っすらと汗が滲んでいた。一人で遊ぶ隼人の指から逃げるように春名の親指は隼人の指の背中側に隠れ、骨ばったそこの肌を滑るように撫でてみる。隼人はビクリと身体を揺らし、弾かれたように顔を上げた。そして、先程の春名のように距離の近さに驚いたのか、ほんの少し身体を引いた。
     じっと隼人を見つめると、隼人も同じように視線を絡める。そうして見つめ合うと鼓動が少しずつ早くなるのがわかった。
    「すげぇドキドキするんだけど、もっと近づいてもいい?」
    「うん、いいよ。俺もそうしたい」
     お互いにほんの少しずつ、自分の心臓の音を確かめながら顔を近づけていく。相手の瞳に自分の姿が見えるようになる頃には、心臓が煩いだけではなく胸がぎゅっと何かに掴まれているかのように苦しくもなっていた。エメラルドグリーンとチョコレートブラウンが惹かれ合って、見えるところはすべて相手でいっぱいになる。そうすることで、幸福感に満たされるのだ。
    「まだヘーキ?」
    「うん。ハルナは?」
    「もっと近くにいきたい」
     隼人の鼻先を春名の吐息が掠めた。かと思えば、唇が鼻の頭に触れる。
    「(うわ、これ、キスされてる)」
     ぎゅっと目を瞑ると、そこにもキスが落とされる。どうしていいかわからずに、震える指を春名の指に絡ませた。強く握れば同じ強さで握り返されて、少しだけ安心する。
     どこまで近づいても、どれだけ触れ合っても、ふたりの鼓動が落ち着く気配はなかった。
     次に春名の唇は隼人の頬を這うように何度も口づける。隼人が薄く目を開け頭の向きを変えると、ほんの一瞬だけ唇と唇が触れ合った。触れた場所から電撃が走ったように刺激となり、身体がうずく。それは隼人も春名も同じだった。
    「口、気持ちよかった……もっかいしていい?」
    「うん、俺も。今のが一番気持ちよかった」
     それからは、どちらともなく唇同士を重ね合わせた。はじめはゆっくりと触れるだけで心臓が壊れそうだった。角度を変えて何度も重ね、身体が熱くなってのぼせそうになる。唇が離れた合間に浅く呼吸をして、今度は唇の感触を確かめるように食んで味わう。それだけしか考えられないかのように、数えられないくらい夢中でキスをした。
     すがるように指を絡めて、春名の空いた手は隼人の頬を撫で、隼人の手は春名のシャツを握る。心臓の音はもうどちらのものかわからなくなっていて、一体になってしまったのかとさえ思えるほどだった。耳に聞こえるのは絶えず大きく鳴る心臓の音と荒い息づかい。それから、唇が離れた際に名残惜しく鳴らす音だけだ。
     春名の唇が隼人に触れたかと思うと、温かくて湿った舌が唇の表面をなぞっていく。初めての感覚に身を竦ませるが、春名にはそこでやめてやれるほどの余裕はなかった。唇をなぞった舌は隙間を見つけるとそこから咥内に入り込み、侵入した先で並んだ歯列を順番に撫でる。
    「っは、う」
     酸素を求めて口を開ければ、春名の舌が更に奥へと入ってくる。落ち着いて息をすることはおろか唾液を飲み込むこともできず、混ざりあった二人の唾液が隼人の口端から溢れて顎を滑っていった。それに構わず春名の舌は咥内を我が物顔で動き回り、夢中になって隼人の舌を吸い上げる。
     ドン、と隼人が強く春名の胸を叩いたのが合図だった。
     唇は離れ、春名は呼吸を整えながら隼人の口端を指の腹で拭う。
    「わりぃ、苦しかった?」
     息を切らしているのは春名も隼人も同じだ。だが、自分のやりたいように動いていた春名よりも、翻弄されてついていくのがやっとだった隼人のほうがより消耗して見える。のぼせたように頬は桃色に染まり、瞳は蕩けて薄い涙の膜が張っていた。
     何度か全身で目一杯呼吸をしてから、隼人の身体は春名のほうへと倒れ込む。頭を春名の肩へ擦り寄せるように持たれかかって、労るような春名の手が自分に触れたことに安心してほっと息を吐き出す。そして、言葉を伝えようと懸命にしびれの残る口を動かした。
    「苦しかった、けど」
    「けど?」
    「きもちよくて、しんじゃいそう」
     隼人の吐息の中に言葉を見つけると、身体の奥が疼いて髪を撫でる手に思わず力が入る。隼人をこんなふうにさせてしまったことに罪悪感を覚えつつも、同じくらいの満足感が春名の心にはあった。
    「(やっぱり、わかんねぇ……)」
     どれだけ触れてもどんなに気持ちを伝えてもその正体はわからなくて、迷宮入りの予感に頭を悩ませる。
     二人が感情の名前を知るのは、まだしばらく先のお話。
    琉里 Link Message Mute
    2022/06/25 20:10:12

    顔を合わせるたびドキドキ胸が痛くなるのにはなれるとなんかさみしくてすぐ会いたくなるのなんでだろ――?

    9/27パバステネップリ
    pixiv掲載:2020年10月4日

    タイトルのような気持ちをお互いに持っている春名と隼人がその気持ちの正体を探るお話です。
    ばんちさんのネップリの続きになっておりますので、先にぜひばんちさんの漫画をどうぞ!
    https://www.pixiv.net/artworks/84793213

    #SideM腐 #春隼

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