こいつらのことを考えていると、どうしてもこいつらはラスボスに殺される定めにあると思ってしまう。
―――
新人類・旧人類説:深海生物は元は人間だったとする説。
これは“クラゲニンゲン”の“竜宮城の乙姫”こと“リュー”からもたらされた新たな説で、非常に残酷で、考えたくないとてつもない説だった。
リューの知る深海生物の伝承によれば、あまりにも発達しすぎた文明は、神の御手によりゼロへと戻され、人々は天罰として姿を変えられ、無垢な子供たちは天へと舞い上がり、幸せに暮らしているのだという。
無垢な子供たちの子孫が天上街を形成し、それ以外の旧人類は水下街へと閉じ込められた、ということ?
神って、誰だろう。きっと、想像もつかないような古代魔法の使い手なんだろうな。
<ショータ・メモより抜粋>
・・・
「オイオイ、さすがにそりゃ、反則ってモンだろ・・・」
「言ってる場合か!バン!ライオ頼む!」
「おう!」
「しずまって、しずまってよ!なんで!なんで殺しちゃうの!?」
「落ち着けリュー!こいつに話なんざ通用するたぁ思え、っ」
「リィック!?オイオイオイオイ水生タリスマン全滅かよ!?」
「げほっ、けほ、まって、待ってリュー、前に出ちゃ駄目だ」
「ライオ!ライオ、おきた!」
「ごほっ、ごほっ、うへえ、で、どーすんだよ。ライオ、お前策あんの?」
「・・・たぶん、あいつの狙いはおれだよ。あの伝承は、人間が知っちゃいけないことだったんだ」
「よし、話せ。ギルドマスター命令な」
「あ、やべ。弾切れる。バァン、弾ー」
「あいよ」
「話聞いてたかな!?伝承話したらみんな殺されるんだって!」
「や、俺、既に一回死んでるようなもんだし」
「連帯責任だろ、何も問題ないじゃん。あ、やべ壊れた」
「おい」
「ねえ、ライオ、みんな、やさしーから。ライオひとり、おいてけないよ」
「でも、さあ」
「でももだってもねェーんだよ!俺が許可した!だから話せ!早く!可及的速やかに!出来ればリックが死ぬ前に!」
「俺は死なねェー!五式障壁展開だァー!三式ガン・ビットは一斉掃射ァー!」
「・・・」
「ライオが話さないなら、リューが話すよ?」
「や、リューの説明は時間かかるから今回ばかりは却下」
「うん、ライオの方が、せつめいとくいだもんね」
「あー・・・クソ、話すしかないのかよクソ!バンさんもリックさんも助けたかったのにさあ!クッソー!空気読め!」
「お前に言われたかねーわ」
「だよなあ」
「ところでバン、三式障壁の修理終わんないんだけど。ヘルプミーだよガチで」
「まだ終わってなかったんかい!?ガン・ビットに戦闘任せてたのはこれが原因か!」
「おら、ライオも手伝えー。手伝いながら話せー」
「はいはい・・・」
―――
・“神”
旧世界における研究者。燃料無しに動く機械と、それを動かすことの出来る人間(=新人類)を創りあげた正に天才。
しかし、そのために奴隷制度が復活してしまったので、奴隷たちを解放するために“天罰”を落とした。
水底に沈む直前、魔法により、世界中の旧人類を深海生物へと変えた。
・“天罰”
世界は、水に呑まれた。
ただの一人も残すことなく、全ての“罪人”は水底へと消えた。
だが、案ずることはない。
全ての“人間”は自由と平和を手に入れたのだから。
空へと浮かぶ、あの大陸で。
<リューの伝承より抜粋>
・“深海生物”
元人間だが、その当時を知る者は、全てが寿命で息絶えてしまった。
今は伝承が細々と残るのみで、その伝承も、御伽噺だと思われている。
ただ、新人類たちへの恨みは、ずっと消えないままだった。
“神”を神として崇め、神殿なども建築し、許しを得て、人間に戻る日を夢見ている。
ショータ・メモの伝承(リューの語る伝承)は、“クラゲニンゲン”の和解派に伝わる伝承。
反対派に伝わる伝承では、『無垢な子供たち』ではなく『ただの燃料』。
“クラゲニンゲン”の一族は、“神”にごく近い研究者仲間が姿を変えられた一族。
なので“神”も、和解派が勝っていれば、“クラゲニンゲン”を開放したのではないか、と思われる。
でも、反対派が勝っちゃったから、“クラゲニンゲン”は許されない。
リューという個体は見ていない。リューは“クラゲニンゲン”の一族でしかない。
神様というのは得てして頭が固いものだと、そう思う。
祈りを捧げたところで、ヤツはどーせ聞いちゃいない。
ヤツはただの人間だ。人間をやめた人間だ。
祈りなんて、はじめから聞こえる訳がないのさ。
でも、だからこそ、バンが彼らを、拾ってくれたのならば。
ライオが古代魔法を完全に扱えるようになったのならば。
リックがそれを、魔法と組み合わせることができたのならば。
リューが、“神”の正体に気付くことができたのならば。
勝機はそこにある。恐らくは。