「ハロウィン、だーっ!」
走り出したい。
走り出した上でお菓子なんかを引っつかんで家を出て、町中に配って回りたい。
たまには呪文も唱えてみたりして、ああ、ああ・・・
「はーろーうぃーんー!」
「うっせ」
冷めた目でこちらを見つめるのは、ジャック仲間のリッパー。
最近の汚職政治家や極悪人の不審死事件の犯人でもあるが、本人はいたって平常通り。
わざわざ淹れてやっためかぶ茶を飲み干し、ポットから補充する。
おい、ここ、俺の家なんだけど。馴染んでるなあ、お前。
「第一、ハロウィンとお前に何の関係がある」
「あれ、忘れた?それか知らない?おれ、ジャック・オ・ランタンよ?」
「お前の名前は知ってら。名前繋がりではしゃいでんなら馬鹿だなあって」
「むう・・・」
馬鹿とは。馬鹿とは何かね!全く。
この仏頂面の指名手配犯は、証拠すら残さない怪事件の犯人であるにもかかわらず、イベント嫌いらしい。
あんまり関係ないか?うーん、まあいいや。
とにかく、こいつはイベント嫌い。
俺は、イベント好き。
あれ?これ、相容れないような?
「第一、イベントではしゃぐヤツの気がもご」
仕方がないので、パンプキンパイを口に詰め込んでみた。
嫌そうな顔をして、もごもごと咀嚼。飲み込んでめかぶ茶を一口。
「・・・イベント事のいいところは、こういう美味いものが食えるところだな」
「だろ?」
嫌そうな顔のまま言って、飲み干す。
そのまま立ち上がると、軽く手を振って扉に手をかける。
リッパー君はお帰りのようだ。
「じゃーな、リッパー!またこいよー」
「次は和菓子を用意するか、紅茶にしろ。めかぶ茶に洋菓子は合わん」
閉じられた扉に笑顔。
なーんだ、やっぱり、仲良くなれそうだ!