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    ファレノプシス

    「……バーン様がお呼びのようだ」
    バーンからの勅命を受けると、影は即座に立ち上がり部屋を出ていく。
    入れたばかりの紅茶を飲み干すことなく動くのがなんとも彼らしい、と死神は思った。
    呑気にカップに口をつけながら彼はちらりと同室にいる小さな子どもに視線をやる。
    「ボクとキミだけにするなんて、ミストって案外うっかりやさんだよね」
    言葉をかけられたのが意外だったのか、銀髪の子どもは訝しげに死神のほうを向く。
    「ボクがボウヤを始末しちゃうかもとか、考えないのかな?」
    「……あんたはオレに危害を加えたりはしないだろう」
    「へぇ、どうしてそう思うのさ」
    肩を竦め、小馬鹿にしたように死神は問う。
    「きっとあんたは……ミストバーンの邪魔はしない」
    小さくぼそぼそとした張りのない声だったが、しかし死神は瞳を大きく見開く。
    「ミストバーンは大魔王のためにオレを利用するつもりなんだろう?」
    だったら、と銀の子どもは今度はハッキリとした声で言い放つ。
    「ミストバーンの同僚であるあんたも、同じなはずだ」

    「………アハハハハッ……!」

    突然目の前の相手が大きな声で笑いだしたので、今度はヒュンケルの方が驚き硬直する。
    「幼い身にしてはなかなかの観察眼だ、でもね、残念ながら不正解だよ」
    空になったティーカップをテーブルに置き、死神は立ち上がる。
    長身で黒づくめの姿は威圧感があり、ヒュンケルは本能的にぐっと身構えた。
    「覚えておきたまえ、ボクはボクのためにしか動かない。ミストとは……違うのだよ」
    まあお仕事だったら別だけどネ、と前置きして死神はまたククッと笑う。
    「バーン様が君に利用する価値があると認めていらっしゃるうちは、
    ボクにキミを殺す『仕事』が下されることはないだろう。もしボクがキミを殺すとしたら」

    それは君がミストを悲しませる真似をしたときだ。

    最期の言葉を飲み込み、死神は踵を返す。後ろ向きに軽く手を振り、バイバイと合図した。
    「ミストが戻ってきたら、ゴチソウサマって伝えておいて」
    「………ああ」
    扉を開き死神は影の私室をあとにする。長い廊下を一気に駆け抜け、ようやく足を止めた。

    (これ以上あの子とふたりきりでいたら、本当に殺してしまいそうだな)

    ふたりがお互いに利用するだけの関係だと思い違いをしているうちに、
    あの子どもを殺して芽を摘んでしまうのが得策だと、頭の中では分かっている。
    けれど。
    それ以上にミストがあの子を失い悲しむ姿を見たくないという気持ちが勝ってしまうのだ。
    非合理的で無駄にすぎる、しかしこれだけは自分でもどうしようもない。

    ボクはボクのためにしか動かない。
    だって、ボクはボクの可愛いミストを愛しているから。

    「……まだボウヤな君には、分からないだろうがね」

    森下一葉 Link Message Mute
    2018/08/23 8:01:08

    ファレノプシス

    死神と、影に守られた人間の子どものお話。
    #キルミス #闇師弟

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