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    UNDREAM
     少年
     夢の中の少年
     橙色の服着た少年

     少年は俺を突き落とす

     楽しそうとも
     悲しそうとも
     見受けられる無表情で

     俺は怒って泣きながら
     あるいは
     怒って笑いながら

     少年の名を呼ぶ

     少年
     夢の中の少年
     緑色の瞳の少年

     少年はいつも俺を突き落とす

     なのに少年は地面に転がる俺を見てめそめそ泣き出すんだ

     俺は痛くて立ち上がれない
     君が突き落とすから

     立ち上がれない



     少年は
    「またね」
     手を振って、俺を突き落とす


     甘い甘い夢の一時。
     ファンタジーな夢の森。
     空だって飛べる。
     あぁ、つまりは夢の中。
     それがどんなに儚いものでも、こんな一時の間くらい溺れていたい。


    『ハ……ヒコ……』


     この声さえ聞こえなければ。


    『ハルヒコ』


     ガラリ
    そんな形容が相応しいほど、世界が変わった。
     コイツの世界だ。
    『よう、ハルヒコ。楽しかったか?』
     こいつに空気を読むなんて言葉はない。いつだって勝手に俺をココにつれてくる。
     年はきっと小4から小6くらい。赤茶色の髪に緑色の瞳。俺の夢に勝手に現れる不思議な少年。
    「お前は何なんだよ、毎回毎回」
     不満気な声で俺は言った。もちろん、本当に不満があるからそう言っているのだ。
    『さぁ、僕に聞かれてもね~』
     少年はワザらしくおどけて、そう言った。
     少年がニヤリと笑った。けれど、無表情に。
     笑いたいのか、泣きたいのか。そんな、意味の分からない表情だ。
     俺はこの顔を知っている。そして、その先に何があるのかも。
    『またね』
     あぁ、やっぱりそうだ。
     少年が手を振った。
     俺の足元から地面が消えた。
     楽しそうに、悲しそうに、少年は俺を突き落とす。
    「おいっ!クソッ」



    「──!」



     ガバッ!

     また、アイツの夢を見た。時たま夢に現れる少年。俺を突き落とす少年の夢。
     汗が気持ち悪い。それで服がへばりついている感触も気持ち悪かった。
     七月の朝はもう暑い。さすがにこの季節に長袖は無理があったようだ。
     重い動作で袖を捲る。消えかけた自傷行為の痕がそこにあった。
     引いた?大丈夫、俺も十分引いてる。ドン引きだ。
     長ったらしく息を吐いて、俺は今日見た夢を思い出してみた。
     赤みがかかった茶色い髪。
     人間味のある──アニメのようではない──緑色の瞳。
     中世のような世界にいるはずなのに、アイツの服は現代じみていた。
     夢の中で、俺はアイツを呼んでいた。けれど、夢から覚めた今、俺はアイツの名前を欠片も覚えていなかった。
    「イミフ(意味不明)だ……」
     気だるげに俺は呟いた。
     時計を見ると七時過ぎだった。昨日、というより今日、最後に時計を見たのは午前三時辺りだったと思う。つまり何が言いたいかというと、寝不足で気持ち悪いと言いたいわけだ。
    「学校行こ……」
     ぽつりと呟くと、俺はノロノロと学校へ行く準備を始めた。
     さすがにこの季節に長袖はかなり目立つ。とてつもなく、だ。
     半袖のシャツを着て、慣れた手つきで腕の傷痕を化粧で隠した。
     ……将来、特殊メイクのプロにでもなってやろうかコノヤロー。
     余りにも自分が可笑しくて、そんなことを思ってしまった。もちろんそんな仕事に就く気はないし、就けないし。その前に心の呟きが棒読みすぎてワロス。
    「くだんね……」
     カバンの中に教科書を入れていく。臨時時間割りなんかになっていたらアウトな件は完全無視だ。
     準備が終わると、俺はさっさと外に出た。
    「暑ッ……」
     外に出た瞬間、俺は思わず呟いた。
     それほどに外は暑かった。それに俺は、元より暑い所が苦手だった。
     どこにいようと夏は暑いんだろうけど、本当に酷な季節だ。あ、北海道とかは違うのか?
     できるだけ影を通りながら、俺は学校まで歩いた。女々しい?ウッセーよ、バーロー。かっこワライ。
     日焼け止めを塗ってないだけまともだコノヤロー。
     なんてアフォ(アホ)いことを思っていると、気づけば学校についていた。
    「よぅ、晴彦―」
    「ハヨー」
     後ろから聞こえてきた声に、俺は適当に返事をした。まぁ、返事をした時には声の主は俺の遥か先にいたが。
     因みに『晴彦』といのは俺の名前だ。フルネームは林晴彦。本名は鬱田もしくは中地……というのはもちろん嘘である。さっきからの口調で分かるだろうけど、俺は厨(中)二病だ。後、少々鬱っている。今現在、高校二年生だ。身長は一般的。一七〇センチを越えているから文句はないが、どちらかというと女顔の自分に不満がある。まぁ、男にモテるわけじゃないし彼女もいるから、かなり不満があるというわけではない。
     あ、彼女がいるといっても俺はリア充(リアルが充実している人間)ではないぞ。リア充は爆発すればいい。俺はそう思いました。(作文)
     まぁ、『リア充爆発しろ』なんて言ってるけど、決まり文句のようなもので実際はそう思っていないし、バカップルは見ていて呆れるが普通に幸せそうにしてる人間を見て『爆発しろ』だんて思わない。幸せなんだからそれでいいじゃないか、と俺は思う。
    「おはよぉ、晴彦」
     どうでもいいようなこと呆然と思っていると、後ろから声が聞こえてきた。
    「おはよ、浅井」
     横に並んできた浅井に俺は挨拶を返した。浅井──浅井史奈は、まぁ……うん。俺の彼女さんだ。きっかけは向こうが告白してきたからだったが、今はそれなりに仲もいい。可も無く、不可も無く、そんな関係だ。春休み前に告白されたから、四ヶ月くらい付き合ってる。俺にしてはまともに続いてると思う。
     別にモテモテというわけじゃないが、過去に彼女は二人ほどいた。どちらも告白されたからだったけどな。
     断る理由もないから付き合って、それなりに好きにもなっていた。けど、決まって別れを告げるのは彼女の方からだった。
    『好きな人が出来たの』
    『つまらない』
     だいたい理由はそんな感じ。俺も彼女を楽しませている自覚はそこまで無かったから呆気なく関係は終わってしまう。浅井ともそうなるのか、と思う辺り俺は彼女に対してどこか冷めているのかもしれない。
     一線引いた関係。
     それが、俺がリアルな世界で求めるベスト。
     ──もう、アイツのようなヤツはいらない……。
    「……ッ!」
     ハッとして、俺はアイツのことを頭から消した。アイツのことを考えても、思っても、もう意味は無いから。
    「晴彦、私こっちだから。バイバイ」
    「あぁ、またな」
     浅井が自分のクラスに向かった。その後ろ姿を少しだけ見つめて、俺も背を向けて自分のクラスに向かった。
    俺は一組で浅井は四組。それなりに離れているし、昼飯も浅井は友達と食べるみたいだから、学校で一緒にいることはあまり無い。俺を無理に束縛しようとしない。浅井のそんなところは普通に好きだ。
     朝から話す人でガヤガヤと騒がしい廊下を進み、自分のクラスに向かう。
     鬱ってて、ネットに入り浸るわりに俺って真面目に学校来てるなあ。なんて、どうでもいいことを思いながら。
    「ハヨー」
     適当に挨拶をしながら教室に入ると、何人かが適当に挨拶を返してくる。それが俺の学校での日常。
     俺のクラスでの位置は曖昧。出席日数に響かない程度に学校に来てるだけで、たまにいないし、遅刻して来ることもあるし、授業をサボることもある。かと言って、引きこもってるわけでも(俺的には引きこもってるけど)、チャラいわけでもなく、平和キャラな俺は、やっぱり曖昧な存在。まぁ、はっきりと位置づけられても困るけどさ。
     いつもと同じ。それなりに授業を受けて、それなりに友達と駄弁って。ただ、それだけ。それだけの代わり映えもしない日常。
     その日常が好きだったりもするけどな。変わってしまう日常なんて結局虚しいだけだと思わないか?
     あー、うん。俺のワガママ。でも、そんなエゴを思ってないと俺というちっぽけな人間は簡単に消えてしまいそうな気がする。
     非日常も、簡単に変わってしまう日常も、それは結局疲れてしまうだけ。それなら俺は何も変わらない、当たり前の日常の中にいたいと思う。
     もしかしたら、俺の日常は他の誰かにとってはおかしくて、それこそ非日常なのかもしれない。俺自身、薄々思ってはいるけど、やはりよく分からない。それなら何も知らずにいるだけだ。
     ──俺、朝から何考えてんだろ……。
     そう思い、自分自身に呆れながら俺は机に突っ伏した。俺は平和キャラであって、別に真面目キャラではない。だから俺が真面目にしていなくても気にするヤツはいない。
     まどろみの中、俺は静かに意識を手放した。



    『~♪』
    『またそれかよ~』
    『いいいじゃん、別に』

     懐かしいアニメソング。懐かしい……アイツの声。



     ──また、か……。
     アイツの声と一緒に聞こえてきた、教師の声。ボーッと黒板を見ると、どうやら今は数学の授業らしい。数学は四限目にあったはず。つまり俺は朝から四時間も眠っていたらしい。昨日──というより今日も眠れなかった。だから、このぐらい寝てもおかしくない。まぁ、四時間も寝ていて皆スルーっていうのはさすがに驚いたけど、俺以外にも居眠りの常習犯はいるから気にならなかっただけだろう。
     それにしても、久々に見た夢だった。夢というより、久々にアイツの声を聞いた気がする。
     夢の中のアイツ。まだ幼い頃の夢だったから、俺もアイツも声が高くて、背も低かった。まぁ、虚しいことに俺の顔はあまり変わってない。童顔というか女顔の自分に呆れすら覚える。
     夢で見た、変わらないアイツの笑顔を思い浮かべながら、俺は歪にフッと微笑んだ。
     チャイムが鳴った。
    「アイツが──って、もう──か……」
     俺の呟きはガヤガヤと席を立つ周りの音で掻き消された。



     何も言わず家の扉を開ける。「ただいま」なんて言葉は滅多に言わない。その言葉を言う時があるとしたらそれは、
    「おかえり、お兄ちゃん」
    「ただいま、ちぃ」
     妹の千恵がいる時だけだ。「ちぃ」ってのは、俺が千恵を呼ぶ時のあだ名。
     今日は千恵の方が早く帰っていたようだ。俺は、部活はしていても幽霊部員みたいなもので、部室である美術室にたまにフラッと立ち寄るくらい。部室が美術室ということから分かるように俺は美術部に入っていて、何ヶ月かに一枚は絵を提出している。顧問に言われてコンクールに応募したこともあるから完全な幽霊部員というわけではない。ただ活動をしに行かないというだけ。
     そんなわけだから、普段は俺の方が先に帰っている場合が多い。千恵は俺と違って普通に部活をしているだろうし。
    「ちぃ、部活は?」
     リビングに行き、カバンを下ろしながら俺は聞いた。
    「今日は休み。ご飯作ったから好きな時に食べてね」
    「分かった」
     それだけ言うと、ちぃは二階の自室に行ってしまった。少し寂しかったりなんかもしたが、あまり干渉して嫌われたくもない。俺は千恵を引き止めることはせず、その姿をただ見送った。
    「疲れた……」
     ボスッとソファに座り込み、天井を見上げた。ちぃがいないだけで、家の中は随分と静かになった。夜になっても、ちぃがいなければそれは変わらない。
     両親はいるが、いないようなものだ。仕事人間で滅多に家に帰って来ないし、出張でいろんな所を飛び回ってるから、今どこで何をしているのか、それすら知らない。子供は金さえ与えていればそれでいいと思っているようだ。まあ確かに、金さえあれば何とかなるのも事実だったりする。そんな両親だからこそ、俺は幼い頃から現実を見据えた、大人びた子供だったんだろう。自分が子供だと思う時の方が多いけどな。
     幼い頃の俺のそんな状態を世間一般では「育児放棄」と言うのだろう。けど、それが過去も今も俺にとっては当たり前で、寧ろ優しくされるとかなり怖い。怖いというか、不安でどうしようもなくなる。母さんは俺が幼い頃、怒ると暴力を振るうこともあったから余計に。
     父さんは酔うと人格が変わってしまう、典型的なダメ人間。
     それと、成人して家を出た姉がいる。まるで逃げるように家を出たくせに、度々家に来る姉を俺はどうしても好きになれない。家を出るまではそれなりに姉として慕ってはいたが、それまでだ。
    「なんて家族だろうね、この家は……」
     リビングのテーブルに課題を広げ、それをタラタラとしながら、アニメソングを口ずさむ。今日、学校で見た夢でアイツが歌っていた懐かしいアニメソングを。
     ──アイツの夢なんか見るからだよな……。
     そう思いながらも、ずっと俺は無気力にそのアニメソングを口ずさんでいた。
     懐かしいアニメソング。小学校の帰り道、よく駄菓子を買って、公園で駄弁りながらそれを食べていた。遊具で遊ぶときもあったし、夢で見た記憶のようにベンチに座って菓子を食べながら話す時もあった。
     思い出せば思い出すほど、アイツとの記憶は尽きない。幼なじみで、親友で、悪友で。それが俺にとってのアイツであり。アイツにとっての俺であった。
    「思い出させるなよ……」
     アイツのことを考えても意味はない。そう思い、考えることを打ち切るように俺は目を閉じた。

    『「あか」はお払い箱』



     ハッとして俺は目を覚ました。
     眠る前は子守唄のように聞こえていた教師の声が、やけにはっきりと聞こえた。昼休み後の授業、俺以外にも居眠りをしているヤツはいるようで、誰も気に留めず授業は続いていた。
     そんな中で俺は、次々と埋められていく黒板に対し真っ白なノートや、呪文のように言葉を吐き続ける教師の声よりも、目覚める前に聞いた声の方が気になっていた。
     ──『あかはお払い箱』?意味分からん。そもそも「あか」って何だ?赤?垢?
     夢なのか幻聴なのか、どっちつかずのその言葉の意味が俺に分かるはずもなく、答えの出ない問いは思考を止めるより他なかった。そもそも幻聴なら、要は俺の頭から引き出されるはずだ。どちらにせよ意味不明だ。
     さらに、少年の夢を見たわけではないのに、その言葉を囁いた声が少年だったことが、余計に俺を悩ませた。
     夏の朝以来、俺は少年の夢を見ていない。元々、少年の夢を見る頻度は少なく、ここ最近になって頻度が一年に数回から一カ月に二、三度に変わった。
     まるで俺の精神の不安定さとリンクしているようで気に食わない。少年の夢を見る自分も、夢に現れる少年も、何もかも気に入らない。
     ──考えても仕方ないよな……。
     そう思い、黒板に羅列された文字を真っ白なノートに写すことに俺は集中することにした。集中しようとすればするほど、残響のように目覚める前に聞こえた言葉が聞こえてきた。
     どうしようもなく、イライラする。
     ──あぁ……また、やってしまった。
     見下ろすと、真っ黒になったノート。シャープペンシルがデタラメな線をノートに描いていた。せっかく書いた板書もこれで無駄になってしまった。そうしたのは俺だけど。
     もう一度黒板に書いてあることを書く気にもなれず、とりあえずチョークの色を変えて書かれている言葉だけをノートに写した。
     書き終えてノートを見たが、それが何を意味しているのか全く分からなかった。だから頭が悪いのか、とは思ったが、今更なので気にすることをやめた。
    ヨウ Link Message Mute
    2018/08/07 21:32:57

    UNDREAM

    少年
    夢の中の少年
    少年はいつも俺を突き落とす


    少年は

    またね……

    手を振って、俺を突き落とす





     未完結/シリアス/更新低
     原案は別の方

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    • まじょさんTwitterの某タグのもの
      左右から読むと異なる文章にしたかった……

      #創作 #オリジナル #小説
      ヨウ
    • 13番目二次創作/ #コンパス /13/SS
      13メインテーマ「天使だと思ってたのに」より歌詞引用



      名もない讃美歌 write:2018.01.26

      独白 write:2018.01.27

      白黒 write:2018.01.30

      その感情に名前はいらない write:2018.01.31
      ヨウ
    • 永遠『未完成』表現を愛した彼の話

      write:2013.01.30

      #オリジナル #創作 #小説 #一次創作
      #一人称視点
      ヨウ
    • SS置き場不眠 write:2018. 08.26
       眠りたいだけ。

      バットエンド write:2018.09.26
       彼は叶わない恋をしている。

      #創作 #一次創作 #小説 #SS #短編
      ヨウ
    • Dream King夢の中の孤独な王様の話。

      write:2013.11.06
      ヨウ
    • ワールドカラーと魔女の歌”色のない世界”と”色の魔女”

      未完結
      思いついた時に追加

      1 write:2013.05.19
      2 write:2018.02.13
      ヨウ
    • 心佑何を犠牲にしてでも彼になりたかった。
      ちっぽけな劣等感を抱く彼の話。

      Illust.朔
      write:2011.09.15
      ヨウ
    • SSまとめ(2)季節もののSSまとめ

      ーSpring
      ファインダー write:2013.04.07
       君に春を写す。
       
      スケッチ write:2013.10.23
       春は嫌い。

      ーSummer
      シーグラスを集めた write:2014.06.16
       君の欠片探し。

      アナタ色 write:2015.9.20
       気まぐれと雨とアナタ。

      ーWinter
      どうせ嘘なら、甘いのがいい write:2017.03.13
       潔癖と罪悪感と彼。
      ヨウ
    • セーラー服に純情を描いた”僕”は”彼女”に恋をしている。

      ep1 write:2014.02.15

      ep2 write:2014.04.25
      ヨウ
    • SSまとめ(1)かなり前のSSだだけ
      消すかもしれない……

      涙 write:2011.11.01

      恋慕恋焦 write:2011.11.01
      ヨウ
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