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    【とな怪】不毛な恋の結末は【ヤマ雫】不毛な恋の結末はオレには今、気になっている女がいる。
    その女というのが……

    不毛な恋の結末は

    「あ、ヤマケンくん。」

    ……モサイ。
    今日も相変わらずモサイ服で、冬期講習に向かう道を単語帳を開いてガリ勉全開で歩いている。
    そんなモサくてガリ勉な女。
    そして何より……


    ハルを好きな女、だ。


    「今日は一緒じゃねーの?」
    「ハルのこと?」

    別にハルとは言ってねーけど。
    まぁ、共通の話題それしかねーからあいつの名前が出てくるのは当然っちゃ当然なわけだが。

    「彼は春にピクニックへ行くのを条件に冬期講習の間はおとなしくしてくれると約束してくれた。」
    「ピクニックって……ガキか。」

    あいつと出かける約束をしたことを聞かされて少しイラッとした。
    だが、この女は変わっている。

    「苦し紛れの提案だったのだけど、上手くいったみたい。これでやっと勉強に集中できる。」

    そうやって好きな男よりも勉強を優先できることを嬉々として語るのだ。
    オレには全く理解できない。
    何?そんな女が好きなのかって?
    違う。


    ただ、物凄く気になるだけだ。


    気になる理由はいくつかある。
    まず、なぜガリガリ勉強ばっかしているのか。
    これは前に図書館で会ったときに聞いたけど。
    良い結果が出て当たり前なオレとしては『へー』って感じだった。
    次に、なぜそんなにもモサイのか。
    美的センスの高いオレとしてはどうしても許せない。
    隣を歩くオレの身にもなれってんだ。
    そして、この女はどんな時に笑うのか。
    こいつが笑うのはかなりレアだ。
    もっと笑ったりすりゃかわいいのに。
    そんでもって……


    なぜ、こんなにもオレの鼓動は高鳴るのか……。


    (ってちげーだろ!)

    後半からおかしくなっていたが、特に最後のポエムみたいなやつにゾッとして心でツッコミを入れながら到着した教室の机に自分の鞄を叩きつける。

    「どうかした?」
    「別に。」

    ちょっと手が滑っただけだと冷静さを装って、いつも通り彼女のとなりに腰かけた。
    クソ、何やってんだオレは……。
    1人の女のこと考えて、浮いたり沈んだり……ってアホか。
    そんなのは女々しいヤツかハルみたいなバカがするもんだ。
    オレは違う……つーか気になるだけだしな。
    大体どうしたらこの女を好きになるんだ?
    ハルもどうかしてる……いや、あいつは元からどうかしてたな。
    ん?でもそう考えると……

    「なぁ……」
    「何?」
    「あんたさ……」


    「なんでハルのことが好きなの?」


    「……。」
    「……。」

    やっちまった……つい思ったことをそのまま口に……。
    しかしこの女、無表情でこっちを見ている。
    何か言えよ!気まずいだろうが!!

    「……なんで?」
    「いや、なんでって……」

    こっちが訊いてんのに質問で返すんじゃねぇよ!
    あー、本当に嫌だ……なんでこんな女……!!

    「わからない。」
    「……は?」
    「改めてそう訊かれると、考えたことがなかった。」

    おいおい、大丈夫か……?

    「ハルに好きだと言われて、気が付いたら意識していて……」

    『好き』って言われたから?
    それはつまり、好きだと言えば誰でも好きになるってことなのか?

    「ならさ……」


    「オレがあんたに『好きだ』って言ったら、あんたはオレを好きになんの?」


    一瞬、彼女は驚いたような顔をした。
    が、その表情はこれまた一瞬でいつもの無表情に戻った。
    そして、一言。


    「それはないと思う。」


    「……なんで?」

    正直、イラッとした。
    だってそうだろ?
    少し驚いたみたいだったが、ほぼ秒殺で否定しやがった。
    例えIFの話だとしても、オレの"好意"を。

    「告白はハルを知ろうとするキッカケでしかなかったと思う。」
    「知った上でアレを好きになるって相当だね。」

    嫌味と本音を織り交ぜて言うと、彼女は『確かに』と同意した。

    「最初は勉強の邪魔でしかなかった。」
    「あんた、本当に勉強好きだよね。」
    「そうなの。でも、ハルを知るたびに変わっていく自分に気が付いた。」

    "変わっていく自分"……ねぇ。

    「自分が変わっていくのはとても怖いと思った。」
    「まぁ、人間ってのは変化を嫌うからね。」
    「でも、それが心地いいと思えるようになった。」

    それはつまり、ハル色に染まったってことか?

    「それに、ハルも少しずつだけれど、良い方向に変わっていっている気がする。」
    「あぁ……。」

    たしかに、あいつは変わった。
    それは……

    「もしそれが……」


    「私の影響だとしたら……嬉しい。」


    あぁ、また彼女のカオが変わった。
    またあいつのことで、オレじゃない。

    「……っと、ごめんなさい。なんだか話が大きく逸れてしまった。」
    「いや、別に……。」

    なんだよ、結局あるんじゃないか。
    "お互いを高めあえる存在"……十分な理由だ。
    まぁ、自覚ないみたいだが……。
    ……って、なんでまたオレがこの女の心情を推測しなきゃならないんだ?
    話を振ったのはオレだが、口がすべっただけでこんな話が聞きたかった訳じゃ……

    「でも……」

    なんだ?フォローでも入れるつもりか?
    "オレをもっと知ったら好きになるかも"……とか?
    そりゃオレは魅力満載だから、知っていけばそうなるのは当然……

    「私は……」


    「どうしたってあなたを好きにはならないと思う。」


    「……。」

    こ……んの女……っ!!
    そこまで言うか!?そこまで言うのか!?!?
    どんだけオレが嫌いなんだ!?

    「そもそも私が好きになるかどうか以前に、あなたが私を好きにならないのでは?」

    底の底まで叩きのめされていたオレは、その言葉を聞いていっきに這い上がった。
    そうだ、オレはこの女を好きなわけではないのだ。

    「あなたは頭が良いしモテるようだから、わざわざ好きな相手がいる人を好きになるとは思えない。」
    「それもそうだな。」

    確かに、俺に言い寄ってくる女なんてごまんといる。
    何もハルを好きな女なんかを好きになる必要なんかない。
    オレはこんなモサくてガリ勉でおまけにハルみたいなバカを好きな女なんて好きじゃない。
    そうだ、そのはずだ。

    そのはずなのに……


    『彼と、もっと誠実に付き合ってあげてください。』

    『あなたはすごいな。』

    『文化祭の時のあなたの言葉に感動したから。』



    『それだけあなたが魅力的なんでしょう。』




    水谷さんの表情や言葉が、頭から離れない。




    ……仮に、だ。
    仮に、オレがこの女を好きだと認めたとしよう。
    それでどうなる?
    この女はハルが好きで、ハルもこの女が好きで。
    どうにもタイミングが噛み合わないだけの、相思相愛。
    どう考えても、不毛な恋になるのは目に見えている。
    それでも……


    "この恋の結末が見てみたい"だなんて……


    (オレもバカになってしまったんだろうか……。)

    それからすぐに講師が来て、講習が始まった。
    今日の講習内容は、今まで以上に耳に入ってこなかった。
    ショコラ Link Message Mute
    2018/07/15 20:29:20

    【とな怪】不毛な恋の結末は【ヤマ雫】

    ヤマケン視点。ハルをピクニックへ行く約束で丸め込んだ後の冬期講習での出来事を妄想。
    #となりの怪物くん #とな怪 #ヤマ雫 #ヤマシズ #ヤマケン #山口賢二 #水谷雫

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