イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    【コルダ4】きっかけ【須かな】きっかけ2人の仲を進展させる出来事。
    俺は、それをずっと探していた。

    きっかけ

    「巧さん。」

    そう呼ばれるようになって、どれくらい経っただろう。
    彼女が星奏学院を卒業するその日、俺はあの日の彼女に答えた。
    学院の屋上で、同じ曲を奏でて。

    『この日をずっと待ってました。』

    そう言って俺を受け入れてくれた彼女の笑顔を、俺は一生忘れないだろう。
    その時から、俺と彼女は教師と生徒ではなく、恋人同士になった。

    かなでさん。」

    1番分かりやすく変わったのは、こうやって下の名前で呼びあうようになったこと。
    でも、かなでさんが高校を卒業したからといって堂々と付き合えるって訳じゃない。
    今付き合っていることが周りに知れたら、一体いつから好きあっていたんだということになりかねない。
    俺はずっと真剣だったけど……きっとそんな単純な話ではないだろう。
    だから今は秘密の関係。
    まぁ、小倉とか支倉とか例外もいるけど……他には知られてない……はず。
    デートは大体が俺の家で、外出するにしても知り合いがいなさそうな方へ車で遠出するようにしている。
    送り迎えもするけれど、かなでさんの部屋の窓が見える少し離れた場所に車を止めるようにしている。
    帰りの時は部屋の明かりがつくのを待って、無事に着いたことを確認してから帰路につく。
    歳が近くて俺が先生やってなかったらもっと堂々と付き合えるのに……肩身の狭い思いをさせて申し訳ない。
    前にそんなことを口にしたら……

    『ただ想うだけだったときよりずっといいです!』

    かなでさんはそう言ってくれたけど、やはりずっとこのままというわけにはいかない。
    だから少しずつだけど、恋人らしいことをしようと自分なりに努力している。
    例えば一緒に歩くときは手を繋ぐ……とか。
    俺の家から帰るとき、玄関から出る前にキスをする……とか。
    俺にしては頑張ってる……と思う。
    ここまでは鈍足ながらも順調……なんだけど……

    (次何したらいいんだ……!?)

    家でかなでさんの作ってくれたウインナーコーヒーを飲みながら、俺は悶々と考えていた。
    デートして、手を繋いで、キスをして……その後は?
    もちろん考えたこともないなんて言ったら嘘になる……けど、まだ早い。
    ほぼ毎回のように自分の家に連れ込んでおいて何言ってんだって感じだけど……。
    いや、でも、ほら、それは、今は周りに秘密にしてるから仕方なくであって……!!

    「巧さん?」
    「ひゃいっ!?」

    悶々と考えていたところに突然かなでさんに声をかけられ、驚いて変な声が出た。

    「もしかして美味しくないですか……?」

    どうやらかなでさんは俺の飲むスピードが遅いので、自分の作ったウインナーコーヒーに何か不満があるのではないかと思ったらしい。

    「いや、そんなことないよ! 凄く美味しい!!」
    「本当ですか?」
    「ホントホント! 飲むのが遅かったのはちょっと考え事してたから……!!」
    「考え事ですか……?」
    「うん。でも、大したことじゃないから! 考えるのは止めて、かなでさんの作ってくれたウインナーコーヒーに集中するよ。」

    そう言って、俺はウインナーコーヒーを黙々と飲み始めた。
    そういえば、かなでさんがウインナーコーヒーを作ってくれたのはかなでさん自身が最近初めて飲んで美味しかったから、俺にも飲ませたくてって言ってたっけ。
    因みにウインナーコーヒーっていうのは、ホイップクリームの乗ったコーヒーで、決してソーセージの入ったコーヒーではない。
    けど、どちらも合唱団でお馴染みのウィーンが由来で『ウィーン風の』って意味らしいから発想的には間違ってないのかも……ってうんちくは置いといて!
    えーっと、話を戻すと……かなでさんがこうやって日常の何気ない出来事で俺のことを考えてくれるのが凄く嬉しい。
    学生時代の俺からしたら、まず恋人が出来ることすら想像できなかったのに……。
    うん、そう考えるとやっぱり凄い。
    今の俺、かなり前進してる!
    鈍足がなんだ! 焦る必要なんてない!! 俺たちは俺たちのペースで着実に進んで行けば……!!

    「ふふっ。」

    考えが纏まりかけたところで、かなでさんの笑い声が聞こえた。

    「巧さん、クリームついてますよ。」

    そう言うと、かなでさんは自分の口の端を指差した。

    「え、どこ?」
    「あ、そっちじゃなくて……」

    見当違いな方に手をやってしまったのか、見かねたようにかなでさんが近付いてくる。
    もしかして拭ってくれようとしてる……?
    えぇ……なんか色んな意味で恥ずかしいな……。
    そう思ってそわそわしていたのだが、近付いてきたかなでさんはそこで止まってしまった。

    かなでさん……?」

    どうしたんだろう……。
    拭おうと思ったけどやっぱり汚いから無理!……とか?
    そうだよね……そもそも子供じゃないんだから自分でやれって話だよね……。
    そう思い、自分で拭おうとした時だった。

    「!?」

    不意に、かなでさんの手が俺の頬を包んだ。
    そして……

    「ここです。」
    「っ!?!?」

    そう言って、生クリームのついていたのであろう俺の口の端をペロリと舐めたのだ。
    その瞬間、ゾクリとした感覚が全身を駆け抜けた。
    かなでさんはイタズラっぽく笑っている。
    あっ、これマズイやつだ……。
    そう思ったときにはもう遅かった。

    「んっ!?」

    唇を重ねると、かなでさんは驚いたような声をあげる。
    突然のことで無防備なそこに舌を割り入れた。
    最初は戸惑い気味だったけれど、徐々に応えてくれるように舌が絡み合う。
    今まで、軽く触れるぐらいのキスしかしたことがなかった。
    それでも凄くドキドキして、心が満たされるような感覚があって。
    それだけで良かったはずなのに。
    深く求めあうキスが、こんなに気持ちいいものだなんて知らなかった。
    もっとほしい……

    もっと……


    もっと……!!


    そう思った時だった。
    何か目の周りに当たるような感覚。

    (あ……眼鏡……邪魔……。)

    きっとかなでさんにも当たっている。
    外さなきゃ……そう思って、唇を離した。
    名残惜しそうに唾液が糸をひく。
    かなでさんの頬は上気して、目はとろんとしている。
    さっきまで眼鏡を外して仕切り直しだと考えていた俺は、ここで冷静になった。
    いや、違うな……混乱した。


    (何やっちゃってんの俺!?)


    “俺たちは俺たちのペースで”とは何だったのか……。
    考えてたこととやってることが真逆……!!
    ってかこの先どうする……!?

    「巧さん……?」
    「あ、ご、ゴメン……急に……こんな……。」

    声を掛けられて出てきたのはそんな曖昧な言葉だった。
    その曖昧な言葉に彼女も応える。

    「いえ、その、私の方こそすみません。まさかこんなことになるなんて思わなくて……。」

    言いながら、かなでさんは恥ずかしそうにうつむいた。
    俺も絶対顔真っ赤になってる……。

    (どうする……どうする俺……!?)

    この後の選択……間違えたら一生後悔するやつなんじゃ……!?

    (冷静になれ俺……ここは……ここは……!!)

    そして、俺は意を決して言った。

    「き……」


    「今日は……帰ろうか……!!」


    「そ……そうですね……!!」

    お互いに変な笑みを浮かべながら、ドタドタと帰り支度を始める。
    そして、玄関まで来て2人して固まった。
    本来ならここでキスするところなんだけど……

    「き、今日はさっきしたから……!!」
    「は、はい……!!」

    とにかく次のキスを必死で回避!
    ギクシャクしながら駐車場まで向かって車に乗り込んだ。
    車内での会話は0。
    チラチラと視線を感じたものの、今は色んな意味で危険なので運転に集中……!!
    そんなこんなで、気が付いたらいつも送り迎えしている場所に到着していた。

    「着いちゃいましたね……。」
    「そう……だね。」

    いつもなら軽く談笑するとこなんだけど……き、気まずい……!!
    そう思っていると、俺より先にかなでさんの方が口を開いた。

    「あ、あの……!!」

    そう言ってから少しの間。

    「あの……また今度……!!」
    「ま、また……今度……?」

    また今度……また今度って……!?

    「い、いえ! あの、えっと……ま、また今度……!!」
    「え……あっ、あぁ! う、うん! また今度! また今度、ね!?」

    またお互い変な笑みを浮かべる。
    それから、かなでさんは車を降りて手を振って自分の部屋へと帰っていった。
    俺はというと……

    (また今度って『また今度会いましょう』ってことか……!!)

    そんなの当たり前なのに、俺は思ってしまったんだ。
    また今度……


    『さっきみたいなキスがしたい』って言われるんじゃないかって……。


    (んなわけないのに……何考えてんだ俺……!!)

    あんまりにも下心満載な自分の思考に嫌気がさしてハンドルに突っ伏した。


    プーッ!!


    鳴ってしまったクラクションの音にビクリと起き上がる。
    パッと彼女の部屋の方を見ると、既に明かりがついていた。

    (……帰ろう。)

    妙に冷静になった俺は、安全運転で帰路についた。



    あれから1週間が経過した。
    その間、かなでさんからの連絡は一切なし……。
    お互い忙しいからマメに連絡を取ってるって訳でもないんだけど……あんなことがあったので気が気じゃない。
    いつもなら気が付いたらかなでさんの方から今度はいつ会えるかって話を振ってくれるんだけど……。
    避けられてる……って考えるには1週間は短いだろうか?
    1ヶ月は様子見……。
    いや、たまには俺から誘ってみるのも……なんて考えながら携帯とにらめっこしていた時だった。

    「わひゃいっ!?」

    突如鳴り響いた着信音に驚いて携帯を落としてしまう。
    慌てて拾って確認すると、かなでさんからのメールだった。
    『今度はいつ会えますか?』という内容で、心底安堵する。
    俺はすぐさま会える日を返信した。




    そして当日。
    車で彼女を迎えに行く道中、俺は頭の中で必死に唱えた。

    (落ち着け俺……大人の余裕……大人の余裕……!!)

    その結果……


    「こんにちは、かなでさん。」


    大人の余裕のあるキラッキラスマイル……完全に"須永先生"である。
    いや、だってもうこうでなきゃ平常心を保てない……!!
    かなでさんの方はというと、特に普段と変わりなく挨拶をして車に乗り込んできた……ように見える。
    あ~、やっぱりかなでさんの方が男前じゃん!
    俺カッコ悪……!!
    けれど、そんなことを考えているなんておくびにも出さず、俺は余裕な大人を気取って車を発進させた。

    時間が経つのは早かった。
    お昼を食べて、会えなかった間にどんなことがあったとか、今度はこの曲を演奏するんだとか色々な話をして。
    それから夕飯を終えると、『食後の一杯を入れる』とかなでさんはキッチンへと向かった。
    今のところ問題ない……大丈夫。
    最終的には帰り際のキスがあるけど……この調子なら普段通りに出来る……はず……!!
    落ち着け須永巧……平常心平常心……。

    「はい、どうぞ。」

    心を落ち着かせていると、かなでさんが飲み物を目の前のテーブルに置いてくれた。

    「あぁ、ありが……!?」

    その飲み物を見て、思わず言葉が詰まった。
    こ、これは……


    ウインナーコーヒー……!!


    やっと落ち着いたと思ったのにあの日の事がいっきに蘇ってくる。
    マズイ……これは非常にマズイぞ……。

    「あの……また一緒に飲みたいなと思ったんですけど……嫌でしたか?」
    「いや、そんなことないよ!?」

    俺が押し黙ったからか心配そうに聞いてくる彼女に、何でもないようにうそぶく。
    しかしかなでさん、そんなに気に入ってたんだ……。
    せっかく作ってくれたんだし、飲まないわけにはいかない。

    「じゃあ、頂こうかな。」

    無理矢理貼りつけた須永先生スマイルでコーヒーカップに口をつけた。
    今回は生クリームがつかないように慎重に……。
    そうやってちまちま飲んでいると、かなでさんも隣に座って飲み始めた。
    きっと美味しいだろうに、緊張で味が全く分からない。
    頑張れ俺……ここを乗り切れば後はなんとかなるはずだ……!!
    そうやって必死に自分を鼓舞し、どうにかこうにかウインナーコーヒーを飲み干した。
    生クリームはついてない……はず!
    さり気なく手で顔を触って確認して、俺は安堵の胸をなでおろした。
    これで今度こそいつも通り……そう思いながら何気なしにかなでさんの方を見た。

    「!?!?」

    あまりの衝撃に変な声が出そうになるのを必死で堪える。
    かなでさんの口の周り……


    クリームが……ついてる……!!


    ちょっとついたレベルじゃない。
    大量に……ついてる……!!
    かなでさんは特にクリームを拭う様子はない。
    気付いてない……わけないよなこの量で……え、もしかして俺、試されてる……?
    いや、でも違ってたら……!!
    悶々と考えた末、俺は意を決して彼女に話しかけた。

    「……かなでさん。」
    「はい?」
    「もしかして……さ、わざと……?」

    自分の口を指差して。
    やっぱ俺には恋の駆け引きとか出来ないし……間違えるくらいなら素直に聞いた方が良いと思った。
    すると、彼女は顔を真っ赤にして口を手で覆った。
    そして……

    「わっ……」


    「分かってるなら言わないでください……!!」


    「ご、ゴメン……!!」

    どうやら考え的には合っていたけど、行動を間違えたらしい。
    いや、だって考えが間違って行動してたら俺勝手に欲情した変態みたいじゃん……!!
    そんな言い訳めいた事を考えている間に、かなでさんはクリームを拭ってしまった。
    気まずい沈黙が流れる。
    その沈黙を先に破ったのはかなでさんの方だった。

    「……軽蔑しましたか?」
    「え……?」
    「またこないだみたいなキスがしたいなんてやらしい子だって……」
    「そ、そんなこと、思うわけない!」

    今にも泣き出しそうな彼女に、俺は力強く答えた。

    「俺も、同じこと……考えてた……から。」
    「巧さんも……?」

    目をパチクリして聞いてくるかなでさんに、俺は無言でコクリと首を縦に振った。
    お互い顔を真っ赤にして、また沈黙。
    こ、これはキスしていい流れだろうか……?
    しかし、臆病な俺は行動に移せず、しどろもどろに言葉を紡いだ。

    「その、だから、さっきは本当にゴメン。せっかくかなでさんなりにきっかけを作ってくれたのに……。」

    すると、彼女は微笑んでこう言った。

    「そんなこと、もういいですよ。だって……」


    「きっかけなんて、また作ればいいんですから。」


    「えっ……?」

    スッと、彼女の手が伸びてくる。
    驚いていると、掛けていた眼鏡を外された。
    視線が絡む。
    それがきっかけになって、お互い吸い込まれるように、深く長いキスをした。
    ショコラ Link Message Mute
    2019/04/27 19:00:00

    【コルダ4】きっかけ【須かな】

    須永先生視点。卒業後、恋人設定。かなでさんのとある行動がきっかけで初めての深いキスに発展!?『もう1度したいな……』と思うんだけどなかなか言い出せなくてもだもだする話です。
    #金色のコルダ4 #コルダ4 #須かな #すなかな #須永巧 #小日向かなで

    more...
    作者が共有を許可していません Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    NG
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品