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    【とうらぶ】俺の主【たぬさに】俺の主初めて今の主を見たとき、正直最悪だと思った。
    だってさぁ、刀も振れないどころか戦も知らないような女が主だなんて笑い種だろ?

    俺の主

    『初めまして! これから宜しくお願いしますね。』

    そう言ってふにゃりと笑う目の前の女に面食らったのは記憶に新しい。
    おいおいこんなのが俺の主だってのか? 勘弁してくれ……。
    最初は心底そう思ったもんだ。
    だが、出陣したらんなことはどうでもよくなった。

    (この感覚……たまんねぇ!)

    今までは持ち主に振り回されるだけで、まぁ刀なんだからそれで満足だった。
    しかしこの"人の身"ってのは予想以上にすげぇ。
    思い通りに動けて敵をぶった斬れる。
    自分の力を最大限に引き出して戦えんのが最高に気持ちが良い。
    だから戦場に送り出してさえくれりゃ、主が男だろーが女だろーがもうどーでもいいわ!
    それはいいんだがよ……


    「なーんで刀が買い物に付き合わなきゃなんねーんだっての。」


    こーいうのとか畑やら馬の世話とかさぁ、刀のすることじゃねーだろ?

    「いいじゃないですか、たまには。」
    「長谷部はどうしたんだよ? あいつなら喜んで付いてくんだろ。」

    長谷部……あいつは本当に同じ刀なのか疑わしいぐらい刀らしくない。
    戦ってるときはそれらしいんだが、それ以外がどうもなぁ。
    主命主命って執心して、なんつーか犬っぽい。
    そんなんだから買い物連れてったら喜んで荷物とか持ちそうなもんだけどな。

    「長谷部さんは今遠征に出てもらっているので。」
    「なんで俺は留守番なんだよ。」
    「疲労が溜まっているでしょう?」
    「なのに買い物には付き合わせんのか。」
    「気分転換ですよ!」

    女にはそうなのかもしんねーけどさぁ。
    俺は男だしそもそも刀だし、全然転換できねーっての。

    「……にしてもよ、連れ回すんならもっと相応しいのがいんだろ。和泉守兼定とかさぁ。」
    「兼さんですか?」
    「あいつ自ら言ってるように見た目は良いし流行りの刀だ。俺みたいな不格好なのよりは良いだろ。」

    言っといて腹立たしいんだが、事実だから仕方がない。
    そもそも女が刀持ってるのがどうなんだって話だが、持たざるを得ないってんなら華がある方が良いだろう。

    「兼さんはかっこいいってお話でしょうか?」
    「んーまぁそうなんのか……。」

    こう改めて言われると余計に腹立つな。
    俺たちは武器なんだから、強けりゃそれでいいだろうが。
    けどこのふわふわした女主のこと考えちまうと、やっぱ俺みてーなのは不釣り合いなんじゃねーか?
    そんなどうでもいいことが頭ん中を駆け巡る。
    すると、それを知ってか知らずか女がヘラッと笑って言った。


    「同田貫さんも兼さんと同じくらいかっこいいですよ?」


    「……は?」

    予想外の言葉に変な声が出る。
    こいつ実は目が悪いのか……?

    「私は皆さんの様に戦えないので、強い人を見ると素敵だな~かっこいいな~って思います。」
    「強いとかっこよく見えるってか?」
    「はい! だから同田貫さんは強くてかっこよくて大好きです!!」

    女はそう言って満面の笑みを浮かべた。
    そんな恥ずかしい台詞をよくもまぁ平気で吐けるもんだ。
    別に悪い気はしねぇけどさ。

    「でも、そうですね……。同田貫さんが気になるのであれば、私が同田貫さんに相応しくなりますよ!」
    「あんたが?」
    「同田貫さんと同じくらい……いえ、それ以上に強くなって、同田貫さんを連れ回すのに相応しい主になってみせます!」

    俺と同じは流石に無理だろ……と思いながら、女が筋骨隆々になった姿を想像して思わず吹き出しそうになる。
    しかし女の目は至って真剣で、笑うのはわりぃかと必死に噛み殺した。

    「ま、精々頑張ってくれや。」

    そう言うと、女はまたヘラっと笑った。
    今となってはこの笑顔も悪くねーなと思えちまう。
    慣れってのはこえーな。




    「では、早速鍛練を始めます!」

    買い物から帰って早々、女は何処からか竹刀を持ち出してきた。

    「俺はしばらくこの辺で寝るわ。」

    女にそう告げて縁側にゴロンと横になる。
    俺も刀振り回してぇけど、さっきの買い物で余計に疲れちまった。

    「そしたら邪魔にならないように向こうの方で素振りしてきますね!」

    そう言って指差した方へ駆けていく女を見送って瞼を閉じる。

    (“強くなりたい”ねぇ……。)

    普段ヘラヘラしてっけど、あいつはあいつなりに色々考えてんのかもな。
    俺も前は色々と考えたもんだ。
    刀なのに見てくれがどーとか、意味わかんねぇ。
    んなもん、どうだっていいじゃねぇか……。
    そんな風に考えを巡らせていると、段々と意識が遠退いていく。
    眠りに落ちるまであと一歩……と、その時だった。


    「キャー!!」


    突然の女の悲鳴に、意識を呼び戻される。
    起き上がって確認してみても、辺りには誰もいない。
    でも確かに……と、意識を集中する。
    そして感じる気配に意識が徐々に覚醒していく。
    間違いなく敵の気配だ。
    それも、あの女が指差して駆けていった方から……!!

    (おいおい冗談じゃねーぞ……!!)

    思うが早いか、俺は悲鳴の聞こえた方へ走り出していた。
    ここは本丸の敷地内だってのに嫌な予感しかしねぇ。
    俺はとにかく女の姿を探した。

    「クッソ、何処にいやがんだ!」

    馬小屋を過ぎた辺りまで来たが一向に見当たらない。
    敵の気配も近いってのにこのままじゃ……と、その時だ。
    物陰から一体の敵が現れた。

    「やっぱりいやがったか。」

    どうやって入ってきたかしらねーが、入ってきちまったもんは仕方ねぇ。
    敵が一体とは限らねぇし、まずはこいつを叩ッ斬って……。
    そんな算段を立てていると、敵が何かを地面に叩きつけた。
    新手の武器かと目を凝らす。
    瞬間、息の根が止まる思いがした。
    バキバキに折れて使えない棒切れと化した竹刀。


    あれは……あいつの……!!


    これは……つまりそういうこと……なのか?
    コイツが俺の主を……?
    ダメだ……頭ん中真っ白んなってもう何も考えらんねぇ。
    ただ脳裏を過るのは、主のことばかりだ。

    『同田貫さんは強くてかっこよくて大好きです!!』

    『私が同田貫さんに相応しくなりますよ!』


    『同田貫さんを連れ回すのに相応しい主になってみせます!』


    「もう……どうだっていいな。」

    いや、違うな。鼻からどうだってよかった。
    俺はあいつに呼び出された刀で、あいつは俺を呼び出した俺の主。
    それ以上でも以下でもねぇ。
    ただ俺は主の刀として戦って戦って戦いまくって……そして主は俺の横でヘラヘラ笑って……


    俺に守られてりゃ……それだけでよかったんだ……!!


    「キィエェエアァアアアアッ!!!!」

    抜刀一番の重い斬り込み。
    その一撃で勝負は呆気なく終わりを迎えた。
    破壊された敵の残骸。
    それを放心状態で眺める。

    (もう主はいないのか……。)

    死ってのは本当に突然訪れるもんなんだな。
    ほんの少し前まで隣で笑ってた女はもういない。
    実感がわかないのは亡骸が見当たらないからか。
    探さなければと思うのに、探し当てたら主の死を受けとめなければならない現実が体を縛りつける。
    そうやって動けずにいると、後ろから声が聞こえた。


    「同田貫さん……?」


    その声に、動けずにいたはずなのに自然と体が動いた。
    もう聞こえるはずのない声のする方へ。

    「同田貫さんどうしたんですか……?」

    そこにいたのは紛れもなく死んだはずの主だった。
    ついに頭がイカれちまったんだろうか、幻なんか見るなんて。
    いや、でももしかしたら……。
    そんな淡い期待を抱きながら、目の前にいる主へと手を伸ばした。

    「同田貫さ……キャッ!?」

    掻き抱くように腕の中に収めると、女は小さく悲鳴をあげた。

    「どうしたんですか? どこか具合が悪いとか……?」

    困惑しながらも俺を気遣う言葉を他所に、女を抱く力を強める。
    柔らかな温もりを確かに感じる。
    顔を首元に埋めてみれば汗の臭いがする。
    黙っている間の微かな吐息だって聞こえる。
    幻なんかじゃねぇ。
    主は間違いなく此処に……


    俺の、目の前にいる。


    「はぁ……。」

    俺は安堵して大きなため息を吐いた。
    主の顔を見ると、やはり状況を飲み込めていないようで疑問符を浮かべている。

    「……あんた、素振りしてたんじゃなかったのかよ?」
    「え? し、してました……けど……。」

    問いかけると、女はしどろもどろに答えた。

    「そ、その……この辺りで素振りをしていたら、馬当番だった鯰尾くんが馬糞を投げて遊んでいるのに出会しまして……。」
    「馬糞……。」
    「巻き込まれそうになったので叫んで逃げたんですが、その時に竹刀を落としてしまって……。」
    「あー……もういい、わかったから。」

    とりあえず鯰尾は後で叩ッ斬る。

    「それで、同田貫さんはここで何を……?」
    「……ん。」

    女に問われ、敵の残骸へと視線を促す。
    残骸を見た女は目を丸くしたかと思うと、そちらへ駆けていった。

    「わ、私の竹刀が……。」

    おいおい、そっちじゃねーだろ!
    竹刀がぶっ壊れていることを嘆く女に、つい心の中でつっこんじまう。
    それからハッとしたような顔をしたかと思えば、今度はこちらに駆け寄ってきてこう言った。

    「同田貫さん怪我してないですか!?」
    「……あんた、色々とズレてないか?」

    ため息混じりにそう言うと、女はしゅんと項垂れた。

    「すみません……私、強くなるって宣言したばかりなのに……。」
    「あー、そのことなんだがよ……」


    「あんたは強くなる必要なんかねーよ。」


    「え……?」

    さっき思ったことを口にしてみる。
    と、女の顔が見る見るうちに強張っていく。
    あー、これは絶対伝わってねぇ。
    ったく、どーも言葉ってぇのは複雑でめんどくせぇ……。
    そう思ったらつい舌打ちしちまって、女の顔がますます強張った。
    駄目だ、早くなんとかしねぇと……。

    「必要ねぇってのは、俺のために強くなる必要はねぇってことだ。」
    「で、でも……。」
    「柄にもなく見てくれなんか気にしちまったけどさ、他人が何言ったって俺はあんたの刀で、あんたは俺の主だ。」

    そう言ってもまだ不安そうな女の頭に、ポンと手を置いた。

    「だからさ、あんたはあんたらしくいてくれりゃあそれでいい。そしたら……」


    「そしたら俺が、全力であんたを守ってやるよ!」


    「同田貫さん……。」

    俺の言葉に、女がいつもみたいにふにゃりと笑う。

    「……何笑ってんだよ。」
    「だって、何だか嬉しいんです!」
    「……そうかよ。」

    それが妙にこそばゆくて誤魔化すように女の頭をガシガシと撫で回した。

    「うーん、でもやっぱり強くはなりたいです!」
    「それより先にやることあんじゃねーのか? 例えば本丸の結界を張り直すとかな。」
    「あー!!」
    「あんな雑魚に破られるような結界張ってるようじゃ、この先思いやられるぜ。」
    「す、すみません……。」

    この女はどこか抜けている。
    そう思わせておいて実は結構しっかりしている……と見せかけて、やっぱりどっか抜けてる。

    「ったく……しっかりしてくれよな、主様?」
    「ま、まずは防御力を高めますね!」

    それでも……


    俺の守るべき、大事な大事な主様だ。
    ショコラ Link Message Mute
    2018/08/04 19:00:00

    【とうらぶ】俺の主【たぬさに】

    同田貫さん視点。柄にもなく見てくれを気にしてしまう同田貫さんの話。基本ほのぼの。 ※途中死ネタっぽい展開になりますが、死ネタではありません。
    #刀剣乱舞 #とうらぶ #たぬさに #同田貫正国 #女審神者 #刀剣乱夢

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