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    【ときレス】精神安定剤【辻主】精神安定剤もう駄目かもしれない……。
    そう思ったとき、アイツの声が聞こえた。

    精神安定剤

    「ありがとうございました!」

    少しだけ扉を開けて確認すると、笑顔でコチラに向かって来るのが見えた。
    部屋の前を通りかかった瞬間、オレは美奈子を中へ引きずり込んだ。

    「キャッ!? か、魁斗さん!?」

    いきなりのことに小さく悲鳴をあげる彼女。
    顔見知りとはいえ、人気のない部屋に訳のわからないまま連れ込まれて動揺を隠せないようだ。

    「魁斗さん? どうしたの……?」

    不安そうな……それでいて俺を心配するような瞳。
    俺は何も言わず、ただただその瞳を真っ直ぐに見つめた。

    「あの……魁斗さ……んっ!?」

    沈黙に耐えかねて再び声をかけてくる彼女。
    それが合図だったかのように俺は彼女に口付けた。
    長い長いキス。
    唇を離せば酸素を求める荒々しい息遣い。
    苦し気に瞳を潤ませる彼女。
    それでも、俺は止まらなかった。
    何度も何度も口付けた後、首筋に吸い付くように顔を埋める。

    「やっ……魁斗さん、ダメ……!!」

    拒絶するくせにどこか甘ったるい声。
    俺は彼女の耳元でそっと囁いた。

    「声、出したら誰か来るかもな……?」

    そして、そのまま噛みつくようなキスを首筋へ。
    声にならない声が聞こえる。
    俺は髪で見えないだろう箇所に無数に痕をつけ、とりあえず満足して顔を上げた。
    彼女の顔を見やると、紅潮する頬、潤んだ瞳。
    そして“何故こんなことをするのか?”と言いたげな困惑した表情、眼差し……。
    あぁ、今のこの感じ……良いな。
    俺のことで頭いっぱいになってる感じ。
    他のことなんか考えられないくらい俺でいっぱいになってるこの感じ。
    そうやってもっと俺だけのこと考えてほしい。


    もっと、もっと、もっと……!!


    「!?」

    そんなことを思っていたら、不意に彼女が抱きついてきた。
    突然のことに呆気に取られていると、更にギュッと抱き締められる。
    彼女のその行動に、何とも言えない感情が押し寄せてきて……。
    気が付けば、俺も同じように彼女を抱き締めていた。
    触れたところから伝わる体温がとても心地いい。
    さっきからずっと触れていたくせに、今更ながらにそう感じた。

    「何かあった……?」

    彼女が優しく問いかけてくる。
    初めは言葉に詰まったが、俺を待つような穏やかな沈黙にほどかれるように口元が開いた。

    「……振り付けのことでちょっと揉めた。」
    「ライブの?」
    「そう。でもさ、今回のは俺が悪いってわかってるんだ。最近失敗が続いててイライラして……。まぁ、つまりは八つ当たり。」

    自分で言ってて本当に情けなくなる。
    ちょっと泣きそうなぐらいだ。

    「そんで霧島君に怒られて飛び出してここに引きこもってたらお前の声が聞こえて、それで、つい……。」

    良くないって解ってたのに、止められなかった。

    「本当、ゴメン……。」

    抱き締める腕に力が入る。
    すると、彼女の体温が離れていく。
    ドキッとしたけれど、見えた顔は笑っていた。

    「大丈夫、怒ってないよ? ちょっとビックリはしたけど……。」

    言っていて何をされたのか思い出したのか、彼女は顔を赤くした。
    それを可愛いと思ってる自分は、本当に反省してるのか疑わしい。

    「あ、えっと、そ、それに! 司さんも……怒ってはいるかもしれないけど、魁斗さんのこと心配してもいると思うよ?」
    「霧島君が……?」

    照れ隠しで話題逸らしに言ったのかと半信半疑だったが、彼女がニコッと笑って言った。

    「うん! だって、私を呼んだの司さんだから。」

    それを聞いて少し複雑な気持ちにはなったが、彼女の言葉は更に続いた。

    「いつもよりチーズ料理の注文が多かったんだけど……魁斗さんのためなんじゃないかな?」

    その事実に、俺は本当に自分が情けなく、恥ずかしい奴だと思い知らされた。
    結局、自分のことしか考えてないじゃん俺……。

    「……ゴメン。」
    「それは司さんに言ってあげて?」
    「うん……でも、ゴメン。」

    そう言って頭を下げる。
    そして気合いを入れて頭を上げた。

    「じゃあ俺、霧島君に謝ってくる。」
    「うん、行ってらっしゃい!」

    見送るためのとびきりの笑顔。
    俺はたまらなくなって再び彼女に口づけた。

    「か、魁斗さん!?」
    「ははっ!」
    「もう! 本当に反省してるの?」
    「してるしてる!」

    真っ赤な顔の彼女は、やっぱり可愛い。

    「じゃあ行ってくる。」
    「料理はちゃんと謝ってから食べるように!」
    「はいはい。」

    立ち上がり、ドアノブに手をかける。
    出ていくときに彼女の姿が見えて。
    そういえば謝ってばかりでまだちゃんと言ってなかったなと、扉を閉める前に口を開いた。

    美奈子。」
    「ん?」


    「サンキューな!」


    それを聞いて笑顔で手を振る彼女に見送られながら、俺は部屋を後にした。

    「……よし!」

    頬を叩いて気合いを入れる。
    まずは霧島君に誠心誠意謝ろう。
    その後はアイツの料理。
    ……でも霧島君のことだから、謝ったら作戦会議かもな。
    そしたら折角のアイツの料理が冷めてしまう。

    (したら店に行けばいいか。)

    さっき会ったばっかなのに、またすぐ会いたくなってる。
    俺の心を捕らえて離さない、愛しい彼女に。
    ショコラ Link Message Mute
    2018/07/28 19:00:00

    【ときレス】精神安定剤【辻主】

    魁斗さん視点。色々と行き詰って精神的にキテる魁斗さんが安定を図ろうと主人公ちゃんにチューしまくる話。
    #ときめきレストラン #ときレス #辻主 #辻魁斗

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