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    愛を試すように 出陣も内番もない昼下がり、穏やかな春の気候が休息をより良質な時間にしてくれる。戦いの僅かなあいま、正しくはより効率的に戦うための時間。戦場に出なければ勝てやしない、だが出ずっぱりで勝てるなら誰だって戦に勝てるだろう。
    「ねぇ、兼さん」
     こうしてごちゃごちゃと考え込みながら主に借りた本を読んでいれば同室の国広がオレに声を掛ける。そこで途切れ途切れだった集中力は完全に切れた。おとなしく紙をめくる手を止めてオレを呼んだ声の方を見れば真剣な眼差しがある。
    「頼みがあるんだ」
     熱っぽい声でそう切り出され、二人きりの室内にまだ高い太陽に不釣り合いな空気が流れていく。こんな時間からもて余す肉欲を相手にしてくれとか言い出すつもりだろうか。いや、いくらなんでもそれはないなと己の微睡みに混濁した思考を払う。
    「少しだけじっとしていて?」
     一方国広はこちらの了承を待たずにじり寄り、脚の間に収まった。行為を受け入れれば黒目勝ちな大きな目は細められ、まるで獲物を見る蛇のようにも見える。違う、これは好奇の欲望だ。そう理解したときには少し遅かった。
    「いいよね、だって少しだけだから」
     迷い無く心臓のあたり伸ばされてまっすぐ突き立てられた指がそろそろと衣服の真ん中へと向かい、継ぎ目をなぞり開いた部分へ。そこから後は五本の指が広がりながら首に絡み付いてオレの呼吸はそこから男に伝えられる。何をしたいかは言わない、けれどそれが意味しているものを推測するのは難しくない。
    「怖い?」
     先を想像して体が強張ったのが伝わったのだろう。こうして嬉しそうに笑う男にはどこか幼さを感じさせる無垢さと、それ故の残虐さがいつだって宿されている。ふとしたときに向けられるその目線に今日も畏れを抱きながら受け入れていく。
    「別に」
     意地を張り短く吐き捨てて、この純真な態度への畏れの前ではそう言ってただ伏して目を逸らすことしかできなかった。
     ゆっくりと、絡みついた指に力が入り息遣いを奪われていく。しかし体格差もあって小さな片手で圧迫されているだけの首は僅かに痛い程度だった。
    「っつ」
     この程度ならと思った次の瞬間、制限された呼吸で薄っすら開きかけていた唇に国広の淡色が重なって、そのまま歯列を割り入りぬるりと舌が込んでくる。そこで一気に状況が変わった。それこそ貪られ食い殺されてしまうのではないかと思える程に呼吸ごと。曖昧な力で締め上げられたままいつも通りに腔内を蹂躙されていると互いの境が無くなってしまいそうだった。
     やっとの所で唇が放されると双方を繋ぐ様に銀糸が掛かって濡らした。糸の先には満足そうな、けれども少しばかりやり過ぎたと言わんばかりな顔があった。
    「ごめんね、どうしても美味しそうだったから」
     ああそんな声で、そんな顔で言わないでくれ。叱れなくなってしまうだろう。纏わりつく純真の声がオレをなぶり殺しにしていく。
    弥月 Link Message Mute
    2022/06/17 16:57:42

    愛を試すように

    支部再録
    純粋な気持ちで首を絞める話
    #堀兼

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