【始春】なんの味? お雑煮祭りが終わって部屋へと戻る。
さも当然のように始が後からついてきたのでケトルでお湯を沸かす。
少しばかり食べすぎた自覚はあるのでプーアール茶を選んだ。
熱々のお湯を茶葉の入ったポットに注いで一度捨てる。
それからまたお湯を注ぎ、数分。
厚手のマグカップへプーアール茶を入れる。
ふたり分のマグカップを持って始の待つソファへ運んだ。
「はい、どうぞ」
「サンキュ」
ほんのわずか、始が眉を持ち上げる。キッチンから流れてきた匂いで予想はついていただろうに、わざわざ春に見せたのだ。
だから春もわかっているよと微笑んでみせる。
始と距離を詰めてソファへ座った。
「たくさん食べたねえ」
「食べすぎたんじゃないか?」
「こーら、勝手に触らない」
腹部へ伸びてきた始の手をはらい、春は軽く身をよじった。
けれど近くに座りすぎたせいで逃れられなかった。
やわやわと腹部をつまみながら始はマグカップを傾ける。
「ここが、俺の作ったもので出来上がるのは満足なんだがそこそこにな」
「それはリーダーがコントロールしていただかないと」
「自制って言葉を知っているか、春?」
「今まさに始の指に言いたい言葉だね、それは」
「単なるチェックだ」
「チェックにしては長い」
ひそやかな笑いとともに始の顔が近づいてきた。
触れる唇はやわらかな熱を含んでいる。
ここでプーアール茶の味がするって言ったら嫌な顔をするんだろうなと思いながら春は離れないようその先をねだった。