1章 3話「.....で、そのストーリアって所まで遠くないか!?」
「そうかな?」
「別に普通だよ?」と言って先を進む。これ普通じゃないだろ.....
「それに」
「?」
「もう見えてるよ」
そう言って今まで引っ張っていた裾から手を離す。
「これが.....」
「ストーリア国、この世界の始まりから今に至るまでの情報が全て置いてある場所」
この世界の始まりから、今に至るまで.....
中々凄い国なんだな、ここ.....
「この国それなりに広いから迷子とかにならないようにしてよね?」
「いやならねぇよ」
俺一応高校生だぞ?迷子とかになんかなる訳ないだろ.....
いやでも待て?この広さだと.....有り得なくはない、よな.....迷子.....この歳でなりたくねぇよな.....
「もし迷子になっちゃっても兵士さんに聞けばお城まで連れて行ってくれるから、そんなに心配しなくても良いんだけど」
「だいぶ優しい国なんだな.....?」
城まで連れて行ってくれる.....なら別に大きな問題はないな。まぁ俺は迷子にはならねぇけどな!
.....と思うのはいい、がこの国にいる兵士.....RPGゲームに出てきそうな格好だよなぁ.....
鎧とか剣とか、かっこいいよなー.....
「ホムラ?.....本当に迷子になるよ?」
「だからならねぇって」
「.....本当かな」
なんでそんなに疑ってくるんだ.....って思ったけど、小学生の時に1回道迷ってたな.....なんでかは覚えてないが。
.....そんなことを考えていて前を見ていなかったせいか。
「って!」
ガンッと言う音を立てて何かにぶつかる。と同時に後ろへ倒れる。倒れる、と言うより尻もちを着いた感じか。
「大丈夫!?」
「なんとか.....?」
音が派手だっただけで一応大丈夫ではあるな。
「済まなかった、大丈夫か?青年」
「え、あ、あぁ一応.....」
.....ごつい。ごついぞこの兵士。何を食べてどうやって鍛えたらそうなるんだ.....?
「怪我はないか?」
「え、まぁ別に、怪我とかは...」
してない、どこも怪我なんてしてない。.....あんなにすごい音はしたのに。
「そうか、なら良いんだ。.....本当に、済まなかったな」
「いやいや、ちゃんと前見てなかった俺の方が悪いんで.....」
だから早く目の前から退いてくれ、中々に迫力があって流石に怖ぇ.....
「.....ホムラ、いつまでも座ってるとズボン汚れるよ」
.....そうだ、尻もちついてそのままなんだった.....どうりで迫力あると思った.....
「よっ、と.....」
やっぱりどこも怪我してないな。
.....でも、この兵士は立って見ても座って見ても迫力凄いな.....
「ところで君達はどこへ行こうとしているんだ?」
「お城まで行こうと思ってるんです」
「城まで?」
イナバが「そうです」と言うと、その兵士は「そうか.....」と呟き
「ここから城までは近い、が今みたいなことが起こらぬよう気をつけてくれ」
「はい、気をつけます.....」
「うむ、では私は仕事に戻るとしようか」
.....とだけ言って、早々に立ち去っていく。
「.....兵士って、忙しいんだな.....」
「それなりには忙しいと思う.....」
さっきの兵士が歩いていった方向を見ながら話す。きっと城の警備とかで忙しいんだろうな.....
「そういえば、城って.....」
「あそこに見えてる大きな建物だよ」
あれが、これから行く城か.....外から見ただけじゃ正確な広さとかはわかんねぇけど、それなりに広いんだろうってことは分かる。
「お城に行くまでの道、少し入り組んでるけどわかりやすくはあるから」
「行こう?」と言って手を差し出してくる。......もしかして、手を繋いでいくつもりか.....?
「.....手、繋がないといけないのか.....?」
「だってさっき人とぶつかったばかりでしょ?繋いだ方がいいと思って」
「ほら早く」と言わんばかりに右手をズイッと差し出してくる。
.....なんだこれ、繋がないと城までいけないのか.....?拒否したい、こんな人が集まるような場所で手を繋いで歩きたくない.....
「.....拒否するっていう選択肢は」
「ないよ」
即答かよ。少しは手を繋ぐことに恥ずかしさを感じろよ.....
.....こうなるとイナバは引かないよな.....仕方ない。
「早く行くぞ。.....手を繋いでるのとか、余り人に見られたくない」
「小さい時はよく繋いでたのにね.....?」
「それ小さい頃の話だろ!?」
「確かにそうだけど、今もあんまり変わらないと思うなぁ.....」と呟いて歩き出す。
どこら辺があんまり変わらないんだ.....だいぶ変わってると思うんだが。
「手を繋ぐって言っても、お城に着くまでだからね.....?」
「むしろこれ以降も繋いだままとか、流石にないだろ.....」
手を繋ぐことがいや.....というか、人が大勢いるような場所で手を繋ぎたくないというか。.....自分で思ったくせに、どういう事なのかよく分かってない。
.....駄目だ、もう考えないようにしよう.....
1人でそんなことを考えながらイナバに手を引かれつつ、城までの長いようで短く感じる道を歩いた。