ほのぼのな日常 第1話 大事にすること、大事なこと先に記しとく設定。
衣笠晶(きぬがさ あきら):男性
今出川乃那(いまでがわ のな):女性
今出川京志(いまでがわ けいし):女性
今出川一司(いまでがわ かずし):男性
乃那の家はマンション
と言うことで。
僕は晶。この春、高校生になった。
僕が入学したのは、ひとつ年上で生まれる前からの幼馴染、乃那さんが通ってる高校。
入試。僕の力ではちょっと難しかった。
けど、乃那さんが受験勉強を手伝ってくれた。そのおかげで合格できた。
入学式をすぎて、新学期が始まった。
新学期が始まってすぐ、乃那さんが嬉しさいっぱいの声で言った。
『じゃあ、約束通りにね!』
乃那さんとの約束。
『晶くんが私と一緒の高校に入ったら付き合う』
これも僕が受験勉強をがんばれた理由。
幼馴染から恋人にランクアップした。
部活。乃那さんは帰宅部。
僕は何かの部活に熱中したいって思ってた。けど、結局、帰宅部の部員になった。
放課後。乃那さんの家に行くことが多い。
授業に着いていくのは僕にはなかなか難しい。
だから乃那さんに勉強を見てもらってる。
今日もそんな日。
乃那さんの部屋。床に置かれた小さいテーブルで向かい合って、僕も乃那さんも宿題をしてる。
少しして、乃那さんは宿題を終わらせた。そのままの勢いで予習に入る。
僕はまだ宿題と格闘してる。
シャーペンを持つ手を止めて、乃那さんが唐突に言った。
「ね、晶くん、
晶くんって、性欲ある?」
!
手にしてたシャーペンに力が入った。芯が折れてどこかに飛んだ。
乃那さんを見る。視線が合った。
乃那さんと僕との間に嘘はない。
だから答える。
「それは……、あります」
「うんうん」
乃那さんは満足そうにうなずく。
「じゃあさ、エッチなこと、したいとか思わない?」
嘘は言わない。
「それも……、思います」
「うんうん」
乃那さんは嬉しそうにうなずく。
「じゃあ、じゃあ、
すぐそばにいる私にエッチなことしよう、とか思うよね?」
これにも正直に答える。
「それは思いません」
「んー」
乃那さんの機嫌が悪くなる。
それから聞かれる。
「どうして?」
僕の答えは決まってる。
「乃那さんを大事にしたいんです」
「むー」
乃那さんがもう一段、不機嫌になる。
「晶くん、それは違うよ。
大事にしたいんだったら、大事にエッチなことしたら良いでしょ?」
確かにそうかもしれない。
でも、
「僕にはまだ早いです。
だから……、そのときが来たら……、します」
「そっか」
乃那さんの表情が元に戻って、そのまま笑顔になった。
カチャン、玄関から音がした。鍵を開ける音。
キイ、と小さい音がして、それからバタン、ドアが閉まった。
「「ただいまー」」
二人の声が重なってる。
乃那さんが立ち上がって部屋を出る。僕も続く。
玄関にいたのは乃那さんの両親。京志さん、母親と、一司さん、父親。
仕事から帰宅だ。
「おかえり」
「おじゃましてます」
僕は軽くおじぎをする。
その僕に京志さんが言う。
「お、晶くん来てたんだ。
晩ごはん、食べてくよね?」
僕が晩ごはんを食べてく前提の質問。
「はい、
お願いします」
僕も前提にして答える。
「一司、と言う訳で晩ごはんは4人分だ」
京志さんが一司さんを向いて言う。
「了解」
スーツを着てる京志さんと一司さん。隣の部屋に入って着替える。
少しの後、出てきた。二人ともラフな服だ。
「手伝う!」
「OK!」
キッチンに向かう一司さんに乃那さんが着いていく。
一司さんが晩ごはんを作る。乃那さんがそれを手伝う。
京志さんは……、ソファに座ってた。
視線が合う。
京志さんがぽふぽふ、とソファ、自分の隣を叩いた。もちろん笑顔で。
座れ、と言うこと。
京志さんの隣に腰を降ろしつつ考える。
晩ごはんを食べて帰る、と言うことは……。
「あ、そうだ、母さんにメール」
京志さんに待ってもらう。
ポケットのケータイを取り出して、「晩ごはんは食べて帰る」と母さんに送った。
終わるのを待ってくれてた京志さんが話し始める。
「晶くん、学校どう?」
京志さんに聞かれる。
「授業、けっこう厳しいです。
乃那さんに教えてもらってるから何とか、って感じで……」
「そっか、でも、どうにかなってるんね」
京志さんはうんうんとうなずいた。
何気ない会話が続いた。
京志さんが話題を変えた。
「ところでさ、晶くん、
晶くんって、性欲ある?」
!
体に無駄な力が入って、一瞬、固まった。
京志さんを見る。視線が合った。
嘘は言えない。
だから答える。
「それは……、あります」
「うんうん」
京志さんは満足そうにうなずく。
「じゃあさ、エッチなこと、したいとか思わない?」
これも嘘は言えない。
「それも……、思います」
「うんうん」
京志さんは嬉しそうにうなずく。
「じゃあ、じゃあ、
いつも一緒にいる乃那にエッチなことしよう、とか思うよね?」
これにも正直に答える。
「それは思いません」
「んー」
京志さんの機嫌が悪くなる。
それから聞かれる。
「どうして?」
僕の答えは決まってる。
「乃那さんを大事にしたいんです」
「むー」
京志さんがもう一段、不機嫌になる。
「晶くん、それは違うよ。
大事にしたいんだったら、大事にエッチなことしたら良いでしょ?」
確かにそうかもしれない。
でも、
「僕にはまだ早いです。
だから……、そのときが来たら……、します」
「そっか」
京志さんの表情が元に戻って、そのまま笑顔になった。
「できたよー」
乃那さんがそう言いながら料理が盛り付けられたお皿をテーブルに置いた。
一司さんもお皿を持って続く。
「おー、今日も美味しそうだ」
京志さんがテーブルに着こうとする。
「京志、手、洗ってきなさい」
「はい……」
僕も一緒に洗いに行く。
戻ってきたら、乃那さんと一司さんは席に着いていた。
京志さんと僕もいすに座る。
4人で『いただきます』をして晩ごはんが始まった。
美味しいごはん。
だけじゃない。
楽しいごはん。
贅沢な時間がすぎる。
ごはんを食べ終えて。
時計を見ると、良い時間になってた。
「あの、そろそろ帰ります」
「ん?
もう帰る?」
京志さんに尋ねられた。
「はい」
乃那さんの部屋に入って、教科書とノート、それに筆箱をかばんに入れる。
かばんを持って部屋から出る。
乃那さん、京志さんと一司さんが玄関で僕を見送ってくれた。
「じゃあね」
「またね」
「また、来いな」
3人が言ってくれた。
「はい」
僕は玄関から出た。
しっかりと夜になってる。
夜空の下、僕は家へと向かう。
今日は良い日だった。
僕はしっかりと笑顔だろう。
それくらい嬉しくて、楽しかった。
明日もこんな日になって欲しい。
そんなことを考えながら、僕は歩いた。
了