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    恋の悩み知る君は「聞いていただけますか、ルシファー」


     議場の自席に座ったまま、立ち上がる気配のない男がぽつりと呟く。
     一つ離れたデスクの天板に浅く腰掛け腕を組んでいたルシファーは、僅かに眉を寄せてから声の主へと視線を向けた。
     彼と自分以外、議場には誰もいなかった。まるで普段の喧騒など知らぬとでも言うようにしんと静まりかえった部屋に、随分と覇気のないその一言は静かに溶けていく。
     ルシファーの思うバルバトスとは、少し首を傾げる程度で飄々とすべてを躱し、控えめな笑みを浮かべてずっとそこに立っているような男だった。二人でいると、たまに底の見えない深淵を覗き込んでいるような気分になるときすらある。それがまさか、肩に憔悴と煩悶を纏ってルシファーに助けを求める日が来ようとは思いもしなかった。


    「昼も夜も落ち着かないんです。見かけただけで温かくなるのに、別れたらすぐ、たとえば角を曲がってその姿が見えなくなった途端にその背を追いかけたくなります。いえ、そもそも姿が見えなくなる前に腕を取って引き留めようとする自分がいるんです。誰かと楽しそうに話しているのを見るだけで凍てつくように冷える気がするのに、私に気付いて表情が変わる瞬間を見ると、そんなことはどうでもよくなってしまいます。溜息が出たと思ったら煩いほどに心臓が鳴って、一時も心の休まる暇がないというのに、こうして悩むのも嫌ではなく。本当にこんなことは初めてで……これは一体何なのでしょうか」


     誰もいない場所をぼうっと見つめるバルバトスが本当は何を見ているか──より正確に言うなら誰を思い描いているか、それがわからぬようなルシファーではない。
     何度だって見てきたものだ。それこそ何を差し出しても構わないとすら思えるほどに愛した末っ子を、ルシファーはつぶさに見ていたのだから。


    「バルバトス。お前はそこまで分かっていて、本当に何も心当たりがないのか?」
    「…………」


     徐ろに顔を上げたバルバトスとルシファーの視線が交わる。果たしてどれほど情けない色をしているものかと思われた深碧は、しかし予想に反して力強く、僅かに朱にさえ色を変えてルシファーを見上げていた。


    「私は、ルシファー、あなたがた兄弟が羨ましくてたまりません。私がきっといつか捨てなければならないこの感情に、名をつけることが許されているのですから」
    S_sakura0402 Link Message Mute
    2023/01/02 10:34:06

    恋の悩み知る君は

    長男+執事→留♀
    バルバトスが「自分には許されない」とまだ思っていた頃の話。

    more...
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