僕は、人を殺めるにも等しいことをした。
この学園において、敗北は死そのものを指す。
が、負けたからって文字通り死ぬわけではなく、単に学生証を奪われるだけだ。
簡単なことだと思うだろう?ところがどっこい、そうでもない。
この学園では、学生証がなきゃ授業も施設も利用できない。
寮に引きこもって、じっとしているしかない。
衣食住が保障されている分、まだマシかもしれないけど。
だからといって、アレはない。
いろんなことを教えてくれた同級生を、罠にはめて倒すなんて。卑怯にも程がある。
確かに、僕の能力ではああするしか勝ちはないけど。
でも、あいつじゃなくたってよかったはずだ。
例えば、別の人でも、よかったはずだ・・・
けど、僕は、後悔していない。
後悔するのはもうやめた。
本人がいいって言ってるんなら、たぶんいいんだろう。たぶん。
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「僕」/氷属性・弱点付与型
実のところ、俺はずっと嘘をついている。
学生証狩り・・・というのは、俺の趣味だ。
他人を圧倒的な力によってねじ伏せて、学生証を強奪する・・・
なーんて、とんでもないことを、俺はあの日、あいつに行おうとした。
それは、あいつにとっては、裏切りとも言えるような嘘だ。
「困ってるようだから声をかけた」なんて嘘だったんだよ。
だから俺は、あいつに罰せられる日をずっとずっと待っていたんだ・・・
でも、だからってこれはない。さすがに卑怯すぎる。
背後から攻撃とか、一応校則では推奨されてないだろ。
ああ、うーん、でも、文句を言える立場じゃないのか・・・
わかってる、わかってるよ・・・
あー、そんなことより、だ。
今日はどの学生証を使おうかなあ。
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「俺」/炎属性・攻撃型
「さーて、さてさて?今日はどこ狙う?」
「生徒会に手を出すのはまだ早いよね。でも、足がかりは作っておきたい・・・」
「あ、確かに。同級生には飽きてきたよなあ・・・上級生狙うかなー」
「とりあえず、ひとつ上。今日は2年を狙おう。なんか弱そうなやつを」
「だな。作戦はいつもどおりで?」
「んー、属性が何ともわからないけど・・・」
「そこだよなあ。あ、あのセンパイ、いかにも風属性じゃねぇ?」
「マジだ、それっぽい。なんか笑える・・・じゃ、あのセンパイにしようか」
「おー。んじゃー、打ち合わせ通りにな」
「ん。打ち合わせ通りに」