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    野良猫の手懐け方法


    へくちっ。
    皆に気を遣ったのか、我慢をしたのかは定かではない。
    だが、指で鼻を摘まんだのは確かなのだろう、小さくどこか可愛らしいくしゃみの音は、どうやらパーティーの後方から鳴ったようで。
    そういえば凍った教室を先程まで探索していたのだったと思い返したシオンは、先頭を歩いていたアルドの肩をトントンと人差し指で叩いた。

    「うん?どうしたんだ、シオン」
    「少し後方に下がっても良いだろうか?」
    「あぁ、もうずっと出突っ張りだったもんな」
    「その事に関しては問題ない。すぐに戻る」

    あまり時間はかからない筈なのだ。
    何せシオンがこれから対峙しようとしている、先程くしゃみをしていた相手は、まるで野良猫に似ているのだから。
    否、見た目は兎も角、仕草が猫の様に愛らしいという訳でもないのだが。
    それでも近付けば一瞬だが無意識なのだろう警戒心を剥き出して、次にはバツが悪そうに目を逸らしながらもこちらの話に黙って耳を傾けてくれる。
    自分の物真似をしているようで常に騒々しい妹と年が近いにも拘わらず、そんな意外といじらしい一面を持った、物静かだと思えてしまう青少年の居る後方へ、シオンは足早に向かった。



    野良猫の手懐け方法



    シオンは大の猫好きだ。
    それは寛大な心を持つあのアルドでさえも眼を見張る程に。
    猫の方は、鬱陶しいとでも思っているのではないだろうか。
    彼が煮干しを差し出したかと思えば、端正な顔をほろりと蕩けさせるまではまだ良かった。
    感情の起伏を感じさせない男にそんな表情を浮かべさせるとは、猫よもっと懐いても良いのだと言ってやりたい。
    しかしその後、あまりにも構い、愛でるせいで、決まって足早に逃げられてしまうのだ。
    時には腕を足蹴りされながら。
    それさえも可愛らしいと思っている、図太過ぎる精神を持ち合わせているのがシオンという男なのだが。
    めげる事なく、今日も煮干しを片手に見掛けた猫の元へ向かう。
    誰もが皆、そう思っていたに違いない。

    「セヴェン、これを」
    「ッ!?」

    全くの予想外だと、この時に皆の心はきっと一つとなっただろう。
    いくら野良猫に似ているからなんて冗談はさて置き、まさか声を掛けてくるとは全く思っていなかったであろう青少年…セヴェンの驚きで見開いた目はまん丸だ。
    そんな彼を気にせずに渦中の男は、黙々と己の羽織りを両手でぶわりと広げ始めたが。
    何を、と聞ける勇者は当然居ない。
    恐らくこれから、自らの温もりが残るそれで固まって動けないセヴェンを包むつもりなのだろう。
    一体何の冗談だ。
    そんな悪戯をする様な年齢でもなければ、幼稚な考えを持ち合わせては居ないだろうに。

    「し、おん?」
    「風邪を引いたら、旅を共に出来ないだろう。しばらく羽織っていると良い」
    「へ?あ…の…、え?」

    なんで。
    セヴェンのヒクヒクと片側だけ吊り上がる唇から紡がれようとしていたその三文字は、音にならなかった。
    否、正確には近くに居た本日のメンバーであり自称愛の伝道師であるポムや、少女と見間違えてもおかしくはない少年シエルが、きゃあきゃあと騒いだ声で掻き消されたことによってなのだが。
    もうそれはそれは、えらい騒動だ。
    そんな中でも、実兄であるシオンの想定外の行動に思わず惚けてしまった妹…アカネも一瞬で我を取り戻したと思ったら、「風邪を引かれていると気付くなんて、流石です兄上!」と一人で盛り上がり始めたのは流石、或いは定石と言うべきかも知れない。
    どうしてこうなった。

    「セヴェンがくしゃみをした音が聞こえたからな」

    全ては、落ち着けとアルドが女性陣(?)を宥める最中においても、そう平然と言いのけてしまう男のせいなのだが。
    元々、良かれと思ってやった行為であると皆は当然理解している。
    しかしその善意は、やがて青少年の羞恥を煽ることなど予想していなかったに違いない。
    先程から黙ってしまっていたセヴェンの体が、ぐらりと後ろへ傾いた。





    そんなこんなで、これまた条件反射で青少年の細い体を抱き寄せたシオンによって背負われながら(横抱きはアルドが必死の形相で止めたらしい)運ばれたと事情を女性陣から聞いたセヴェンが、激しい頭痛を覚えてしまったのは無理もない。
    それもいつの間にか宿が貸し出してくれる、(正直ダサいロゴの入った)シャツと短パンに着替えさせられたのだから余計と衝撃は大きいのだ。
    しかし今の彼の手には浅葱色の羽織が握られていて。
    このままでは、当然再び眠る訳にもいかなかった。

    (ミスったな…)

    何故、意識を失っている間もずっと手放さなかったのだろう。
    セヴェンは痛みの止まらない頭を抱えた。
    それは己でも自覚してはいなかったのであろう風邪のせいか、それとも。
    無意識に強く握ってしまっていたせいで、少し皺の付いてしまった羽織の持ち主が原因であるというのか。
    どちらにせよこのまま放置するなど、意外と義理堅いセヴェンには難しい話だった。
    皆が寝静まった頃にこっそりと返せば良いものを。
    羞恥心を忘れた訳ではない。
    女性陣に2人で話していることを見つかるなど、想像するだけで身震いものだ。
    しかしそれでも。

    (寒ぃ…)

    弱り切った体に、一人きりらしい薄暗い部屋は、少なくともセヴェンにとってはあまり良いものではなかった。
    自分の体が一度でも震えてしまったせいだろうか。
    何か、羽織らなくては。
    頭では理解している。
    幸いにも、宿には羽織るものならばいくらでも常備されているというのに。
    いつまでも抱き枕よろしく持っていたシオンの羽織を、セヴェンは微かに潤んだ瞳で静かに見下ろした。

    「…こういうのって、簡単に貸していいものなのか?」

    『誇り』と呼ばれている、それこそあの青年が重んじているモノなのではないのだろうか。
    仲間の為に手放したというのであれば、それが彼の本望なのであろうが。
    やり方は他にもあった筈だろうに。
    感動して良いのやら、怒りたいのやら。
    セヴェンは、再び襲いかかる寒気に身震いしながらも、ベッドを後にした。
    目指すは、恐らく一つの部屋に集っているであろう男性陣の元へ。
    だが、そこで思わぬ事態が訪れる。

    「アルド、入って良い?」
    「セヴェン!?もう歩いて大丈夫なのか!?」
    「うん、外じゃないし」

    そこまで体力は使わないのではないかと。
    思っていたのは、どうやらフラフラと今にも再び倒れそうな自分だけだったらしい。
    出迎えてくれて早々、焦りの色を全く隠せていないアルドに体を力強く支えられたことで、セヴェンは「あ、楽だ」と思った。
    想像以上に体が限界だったということは、倒れた原因は本当に風邪だったのだろう。

    「…ごめん」

    ポツリと零れた言葉は、一体何に、誰に対してなのか。
    支えてくれているアルドか、すぐにでも自分が寝れるようにベッドを空けてくれたシエルにか。
    不意に、セヴェンが片腕に抱えていた浅葱色が姿を消した。

    「わざわざ返しにきてくれてのか」
    「ん…」
    「恩にきる」

    だが、もう今は眠った方が良い。
    誰もが口にしたかったであろう言葉を、優しげに告げる暖かな声。
    そろそろと声のした方を見上げたセヴェンは、青年が浅葱色をあの時と同じようにぶわりと広げながら穏やかな眼差しを向けているのを確かに見た。
    また、この男は。
    もうやめて、もう与えないで、もう要らない。
    そんな、次々と浮かび上がる拒絶の言葉をも彼の色で優しく包むように抱き締めるつもりなのだろうか。
    今はさらされている、傷一つない綺麗な額をこちらの額へと擦り合わせながら。
    女性なら鼻血ものだよ、なんて言葉がすぐ近くから聞こえたのは気のせいだと思いたい。

    「んっ、しお、ん…」
    「熱が高い。部屋に送ろう」
    「わ…ぁっ」

    ここでは休めないと判断したのだろう。
    問答無用で背中と膝裏に腕を回され、横に掬い上げられるように抱えられたセヴェンは、小さく悲鳴を上げながら思わず両腕を伸ばした。
    しがみつくところなど、他にもあった筈だというのに。
    気付けば、必死に伸ばした両腕は目の前の白い首の後ろへ。
    だが、マズイと思ったところでもう遅いのだ。

    「セヴェンが眠るまで、私は傍に居よう」

    甘えるつもりなど、なかった。
    しかし、そんな甘く微笑まれては、もう。
    いっそのこと、鎖骨辺りに顔を埋めてしまえば良かったのだろうか。
    頬に熱が集まるのは、風邪だけのせいでは無いのかも知れない。





    ざっと体感して、熱は39℃といったところか。
    抱え上げている重くも軽くもない熱に、シオンは心の中で毒づく。
    薄着という次元ではない格好を普段からしているからといって、何故風邪を引かないと思ってしまったのだろう、と。
    もっと早くに体を温めていれば。
    自己管理が甘いのだと言えば、それで全ては終わってしまうのだが。
    凍てついた教室を彼の協力無しで探索するには、少々骨が折れる。

    「疲れもあったのだろうか」
    「ん…?」
    「否、独り言だ」
    「…そう」

    しかし、まだ意識はあるらしい。
    冷たくなってしまったシーツに体を横たわらせることに罪悪感を感じながらも、次には頭をそっと撫でてやればセヴェンはふわりと濡れた瞳を細める。
    微睡んでいるのか、気持ち良いのか、はたまた甘えたいのか。
    3つ目の考えはあり得ないだろうと思いつつ、シオンは頭を撫でる手を止めなかった。
    高熱で辛そうなのだ、早く寝かしつけてやりたいと。
    妹とあまり変わらない年齢にしては随分と大人びていたとしても、彼は自分よりも年下なのだ。
    シオンは再び熱を確かめようと、温かい毛布を掴み引き寄せ、ベッドの端に腰掛けながら身を屈めた。
    常に背筋を刀の様に真っ直ぐ伸ばす男としては、珍しく猫背になることも厭わずに。

    「な、なに?」
    「いや、熱を確かめようと…、セヴェン?」
    「手で良いでしょ…ッ!」
    「セヴェン、落ち着け」

    例えるならそう、熟れた林檎だった。
    カッと真っ赤に染め上がったセヴェンの頬を、口調は落ち着いているものの内心穏やかではないシオンが、反射的に両手で包み込む程に、見事な。
    そうしなければ、あり得ない考えであろうが思ってしまったのだ。
    溶けてしまうのではないかと。
    手のひらが火傷してしまいそうな程の熱によって。
    まるで焼いているような錯覚に、シオンは息を飲んだ。

    「すまない、驚かせてしまったようだな」
    「あんた、顔がきれいなんだから、やめろ」
    「…それは、喜ぶべきことなのだろうか」

    生憎、外面を褒められて喜ぶような性格を持ち合わせていないシオンは困った様に苦笑を浮かべた。
    長い付き合いという訳ではないものの、内面を知っているセヴェンがそう言ってくれるのだから、特に深い意味もなければ意図もないと察しているのだが。
    いくら野良猫のようでも、彼が愛らしい猫のように媚びることはないのだ。
    そこは、好ましい所だとシオンは思っていた。
    つまり要すると、今のは時に素直すぎるセヴェンの本音ということになる。

    「少し狡いのではないか?」
    「しらない。本当のこと、だから…」
    「あまりそう大人をからかってくれるな」
    「ちがう」

    むぅと、セヴェンの唇が微かだが拗ねたように尖る。
    その普段は決して見られないであろう年相応の仕草に加え、相変わらずストレートな物言いのせいだろうか。
    鋼のような理性と精神を持つシオンの胸が、僅かに疼いた気がしたのは。
    まさか、幼気(いたいけ)な病人を前に。
    この自分が。
    本当に、庇護欲以上のものを抱いているとしたら。

    「しお…、ん」

    これ以上は、少なくとも今夜は言葉をもう交わす訳にはいかない。
    そうしなければ、戻れなくなるかも知れないのだ。
    何に、どこへとは中々雄弁など出来ないのだが。
    それでもシオンは己の中で確信する。
    掠れた声で自分の名を呼ぶセヴェンの鼻に、自らの鼻先を掠めさせながら。

    (…拙いな)

    安易に気持ちを確かめようとした自分が愚かだった。
    口付けをしたいと思ってしまったら、きっとそういうことなのだと。
    それならば大人しく現実を受け止め、噛み締めようとすることまで考え、顔を寄せて。
    まさか、美しく可憐な女性とは程遠い、細くとも多少は体を鍛え上げている青少年の乾いた唇を、本気で潤したくなるとは。
    一体何がこの衝動の起因となったのだろう。
    火照った頬をさらす、整いながらも幼さの残る顔が、可愛らしいと思ってしまったのかは分からない。
    本音に心を打たれたせいだというのなら、自分はなんと未熟なのだろうか。
    しかしそれでも、咄嗟に鼻同士を接触させた己をシオンは褒めてあげたかった。
    正に、これぞ自画自賛。
    セヴェンに非は全くないというのに。

    「…おやすみ、セヴェン」
    「もう…?」
    「っ、らしくないな」
    「それは、あんたの方だろ」

    そうだ、全くもってその通りだ。
    図星を突かれたシオンは、その端正な顔を僅かに顰める。
    気付いているというのならば、何故。
    否、分かっていながら煽るような口振りで自分を潤んだ瞳で見つめてきているとしたら、セヴェンはとんだ小悪魔だ。
    風邪によって弱ったせいで、彼の冷静沈着な思考も今は正常に働いていないだけなのかも知れないが。
    そうだ、きっと快調すれば恐らくいつもの調子となり、本音を隠そうとするだろう。
    本音さえ、耳に届かなければどうということはない。
    日々を生き、義を貫きながら仲間の為に刀を振るう日常を取り戻せる、と。
    シオンの気持ちがトントンと整理された、その時。

    「ひとりは、寒い」
    「…! セヴェン、まさか、」

    シオンの左袖が弱々しい力で引かれた。
    まるで、寂しげな幼子が離れゆく親を引き止める様に。
    嗚呼、そうか彼は本当に甘えたかったのか。
    熱に弱り、寒気に震えてしまっている、頼られた男よりは小さい体を毛布で隠しながら。
    2人部屋に一人眠るのは余りにも寂しいと。
    そんな大事なことこそもっと早く、素直に言えば良かったものを。
    否、伝えることの出来ないのが、『セヴェンらしい』のだが。
    己の頬が徐々に緩んでいくのシオンは感じた。

    「添い寝でも何でもしよう」
    「それは移るから悪い、し…。眠るまでって、言っただろ」
    「そんな顔のセヴェンを放っておける程、私は鬼じゃない」

    そんな、頭を撫でるだけでは気が済まなくな程、どこか不安げで泣きそうな顔を無意識なのだろうがされてしまったら。
    例え此処にいたのがアルドであろうとも、甘やかしたに違いない。
    シオンは自らも驚く程の甘ったるい声と、柔らかな微笑をセヴェンへ向けた。

    「もう少し端へ詰めらるか?」
    「え、ほんとに添い寝するつもりなの…?」
    「私は至って、真面目にそうするつもりだが」

    人肌は心細さを解消し、熱を吸い取る。
    それは今のセヴェンにとって、一石二鳥である筈だと。
    シオンは両手を伸ばすと、セヴェンの体に被さるものを無言で引っぺがした。
    当然、返せと伸ばされる彼の右手を左手で捕まえながら。
    普段から刀を握る手を解くなど、病人には不可能だと分かっている筈だというのに。
    側から見ればなんと非道な行為か。
    唯一の救いは、シオンに下心がないということだけだ。
    それも時間の問題なのだろうが。

    「ちょ、あ、あんた何して…ひっ、つめた!?」
    「ああすまない、私は低体温なのだ」

    隙間なく身を寄せ合い、伝わる熱いくらいな彼の体温を全身で受け止めたシオンは、先程引っぺがしたもので互いの体を覆った。
    風邪を引いていない自分がすっぽりと首元まで毛布で覆うのは、少々寝苦しいものを感じるが。
    低体温など、肌が触れ合えば簡単に熱を帯びるのだ。
    しかし、今のセヴェンにとって己の体温は氷のように感じるのかも知れない。
    シオンの腕の中にある予想以上に細い体は、もぞもぞと身じろいで落ち着かない。

    「どうした」
    「体温低いのに何で?その、羽織…オレに貸して…、」
    「ああ、そんなことか。私は風邪など引かぬ、案ずるな」
    「おい、それはオレを馬鹿にして…」
    「していない」

    相変わらずプライドが人一倍高い男だ。
    だが、これがいつもの彼だった。
    シオンはセヴェンを抱き竦め、突如込み上げた安堵の息をふっと吐き出す。
    無意識に己の体が緊張していたことを、自覚しながら。
    添い寝は自分から言い出したことだというのに。
    未成熟とは言えない同性、それも先程まで煽りに煽ってきた男を相手としているのだから仕方のないことかも知れないが。
    シオンはさざ波の立つ心の内を誤魔化す為、セヴェンをぎゅうと引き寄せると、柔らかな髪をそっと抱くように撫でた。
    彼の下敷きになっていた己の腕は、さり気なくそのまま頭の下へとズラして。
    瞬間、鼻を掠めた仄かな香りは彼の汗だろうか。

    (明日は体を拭いてやらねば)

    これだけの高熱だ、汗をかくのは無理もないだろう。
    彼が倒れた後にすぐ着替えさせたので、不快感を抱く程にはシャツもまだ濡れていないが。
    セヴェンは余りわがままを口にしない。

    「セヴェン、何か我慢はしていないか?」
    「…」
    「セヴェン?」
    「…ん、ぅ」

    まさか、もう眠ってしまったとは。
    シオンの胸元をきゅっと握り、首元に顔を埋めて。
    そのまますりすりと鎖骨辺りに擦り寄せられる柔い肌と、伝わる熱に男は言葉を失う。
    これでは、まるで自分に懐いているようで。
    それ程、安心してくれているのだろうか。
    信頼した相手にしか、こんな一面など見せてはくれないだろうに。
    シオンは思った。
    愛してやまない猫が甘えてくれた、と。

    「据え膳…というものか」

    いつぞやか、同じ時代に生きる黒髪の海賊が豪快に語っていた言葉を、シオンはふと思い返した。
    きゅんと胸が甘い疼きを覚える相手が、無防備な姿をさらすせいだ。
    どんな表情で眠っているのかを確かめることは、残念ながら叶わないが。
    それで良かったのだろう。
    今、見てしまったら、恐らく箍が外れてしまうに違いない。
    すぅすぅと繰り返される穏やかな呼吸の音を聞いていようと、シオンは集中した。
    罪悪感によって、己の中に久しく芽生えていなかった感情を抑え込む為に。



    続く


    未完結その1
    生まれ変わったるり Link Message Mute
    2019/02/24 12:25:41

    野良猫の手懐け方法

    #腐向け シオン×セヴェン

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