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    繋がっていないお話二本やわい、愛良い子の躾方


    やわい、愛


    ふわり、ふわり。
    何がそこまで、まるで幼馴染が開花した真っ白な羽根の様に、柔らかいというのか。
    己の頭を、誰よりも大切だと言わんばかりに、優しく、愛おしそうに撫でてくる、骨張った大きな手に微睡みながら、亜蘭は瞳をとろりと細め、漠然と考えた。
    甘やかそうとしてくるその手付きか、或いは。
    耳に馴染んでしまった、時には吐息を混ぜながら囁いてくる、いつもよりも低めの心地良い声かは分からない。
    格好良くて、けれど少し意地悪で、厭らしくて、それでも誰よりも真っ先に自分を思いやってくれる男だということ、それを亜蘭は理解しているが。

    「ふふ、寝ちゃうかな?」

    今は、どうやら少し意地悪モードらしい。
    この男は分かっていながら、確かめてくるのだ。
    穏やかな笑みを、きっと浮かべて。
    ファンがこの場に居たら、次々と卒倒していくのではないだろうか。
    亜蘭は自分に貸してくれた膝枕に頬を一度だけ擦り寄せ、そのまま頭を預けながら、天を仰ぎ見る。
    人様の(それもよりによって互いのものではない)ベッドに、寝転がってしまいながら。

    「ああもう、そんなにうとうとしちゃって…亜蘭は可愛いねぇ」
    「ほまれさんの、せい…です」
    「ふふ、気持ち良かったみたいで嬉しいよ」

    嘘でも飾りでもないと言いたげに、ワインレッドの瞳がふんわりと細められるのを視界に捉えた亜蘭は、安心したかの様に息をほうと吐いた。
    何を考えているのか、未だに理解できないことも多い彼を、『嗚呼、また柔らかい』と思える瞬間。
    その体感にも似た感覚を、目で、耳で、肌で、一度でも感じてしまったからだろうか。
    亜蘭は緩んでくる己の頬に首を傾げてしまいたくなりながらも、右手をゆったりと伸ばした。
    幼馴染ほどではないが滑らかな、白いと思えるその頬へ向かって。
    眠気にもうすぐ負けてしまう自分の動きなど、スローモーションの他にないのだが。

    「亜蘭、ダメ」
    「ほまれ、さん」

    案の定、その肌を掠める直前、艶やかな黒で飾られた爪を持つ彼の長い指に、優しげに捕らわれてしまった己の手を、亜蘭は少々悔しげに睨んだ。
    あと、少しというところだったというのに、と。
    自分が今、何をしようとしたのか、寝呆けた頭で理解しないまま。
    普段、甘やかされ、受け入れるだけの人間が、自らが誰かに微熱を与えるということ。
    その尊さを、自覚することもせずに。
    だからだろう、男は止めたのだ。

    「今はそんな可愛いことしないで、ただ大人しく俺に撫でられて」
    「なんで、ですか」
    「此処が俺の部屋じゃないから」
    「…っ」

    紅い舌で自らの下唇の湿らしながら、上手く隠していた欲を孕む情を抱いているのだと、態と遠回しな言葉を選んで。
    これには流石に、己に関しては鈍感で天然な部分を織り交ぜた人間だと、周囲から不覚にも呼ばれている亜蘭であろうとも、微睡んでいた時間が嘘のように吹っ飛んだ。
    このベッドが彼の部屋の物でなくて良かったと安堵しながら。
    もしもそうでなければ、自分は今頃どうなっていたのだろうかと。

    「期待した?」
    「ちが…ッ」
    「んふふ、良いよ。欲しがりは俺だって、今は認めてあげるね」

    いつかは染まっていく。
    『不安』だと思い込んでいた筈の『期待』が、次第に色鮮やかとなって。
    望み、望まれ、求め、求められることを繰り返す、誰よりも恋しい、甘い関係を結ぶ為に。
    だが亜蘭は、未だ慣れていなかった。
    全身を突き刺すように駆け巡る、それでも寒気とは違うゾクリとした感覚や、まるで火をつけたような熱を両頬へ集めながらも。
    彼の言うとおり、認めたくないのかも知れない。
    もう両手では足りないほど、男の全てを受け入れたのだが。

    「誉さん、指、くすぐったいです」
    「そういう気分にしたいの」
    「誉さんの部屋じゃないって、自分で言いました」
    「でもほら、雫と要、遅いでしょ?」

    『だから、思い出して』と強請るように、捕らえられた亜蘭の手を慈しむ手付きに加え、彼は指をひたすら絡め合った。
    嗚呼、何てことだ。
    自重は、吹っ飛んでしまったというのだろうか。
    その理由も、先程のやり取りが原因なのかも知れないが。
    亜蘭はもう息を呑みつつ、己の左肩へふわりと添えられた大きな掌に、胸の鼓動を早めることしか出来なかった。



    END

    居ない二人は、泥んこリーダーを女王様が拭き拭きしてあげていることにして下さい。


    良い子の躾方


    ロードワーク中だったのか、降り注ぐ豪雨に体を強か打ち付けられて帰ってきた後輩に驚き、己の部屋へと有無を言わさずに引きずり込んだのは一昨日のこと。
    風邪を引いてはいないかと胸をざわつかせながらその翌日の夜に彼の部屋を訪れたが、またロードワークへ向かったと純白の羽を入念に手入れしている彼の幼馴染が告げた言葉に、絶句したのは昨日のこと。
    流石に注意しなければと、ダンスのステップを相変わらずキレのある動きで踏んでいた彼に声をかけた、今日の放課後。
    ドンと鈍い音を立てながら己の肩口に衝突した後輩の頭に、誉は殆ど反射的に両腕を伸ばしていた。
    まるで、自分よりも小さな体を抱き留めるかのように。
    その直後、踏ん張らなければ共に倒れてしまいそうな程に耐えられない重みを両腕に感じたことで、よく受け止めたと自画自賛している場合ではないのだが。

    「どうしたの、らんちゃん!?」
    「亜蘭!?」

    彼が自分の腕の中で意識を失ってしまっていると察したのだろう、自分達へと慌てて駆け寄るリーダーと、チーム一過保護な相方(とこちらが一方的に思っているだけかも知れないが)を視界に入れつつ、誉は詰めてしまった息を大袈裟に吐いた。
    安堵か、はたまた呆れかも分からないまま。
    これがチームメイトや目の前の大切な後輩でなければ、恐らく苛立ちを覚えていただろうと自覚しつつ。

    「ごめん二人共、止めるのが遅かったよ」
    「何それ、どういうこと?」

    むしろ、こうなることを予測していながらも止めることが出来なかった己に対して、誉はただ眉間に皺を刻んだ。
    相方の、不安げに、だがそれでも鋭く自分を刺す声と眼差しに、罪悪感を抱いているのもあるのだが。
    抱き上げようと包み込んだ、火傷しそうな程に熱くなってしまっている彼の体に、こみ上げたのは自分自身に対する『情けなさ』だと、誉は分からざるを得なかった。
    もっと自分がこれでもかと気に掛けていれば、こんなことにはならなかったかも知れないというのに、と。
    己へ手を貸そうと両腕を伸ばすリーダーなら、もっと上手く、彼が体調を崩す前に練習を止めることが出来たのではないだろうか。
    或いは、自分ではリーダーに心酔している後輩を抑制することなど、出来ないのかも知れない。

    「あきちゃん、後で聞くから、今はらんちゃんを保健室に運ばないと」
    「そう、だね」
    「らんちゃんを守れるのは、あきちゃんだけだよ」

    本当にそうなのか、誉は頷きながらも、胸の内に不安を抱く。
    腕に力を込めれば彼の体は簡単とは言えずとも持ち上がり、くたりと己の肩口に凭れる頭を揺らさないように気遣うことも、出来ると思ってはいるのだが。
    それが後輩の為にしてやれる罪滅ぼしだと言うのであれば、相当お安い御用だ。
    誉は両サイドを歩くチームメイトに三日間のことを語りかけようと、重たい口を開いた。





    耳に届く二人溜め息に、誉は苦笑を浮かべながら枕元に落ちてしまった氷嚢を手に取った。
    これを林檎のように真っ赤な顔で、少し苦しげに眠っている彼が聞いたら、ショックを受けていたのだろうなと思いつつ。
    否、眠っていると分かっているからこそ、今だと言わんばかりに呆れを漏らしたのかも知れないが。

    「お説教が必要かな」
    「しーちゃんが言うと、らんちゃん凄く傷付きそう」
    「要が言ったら、もっと大変なことになると思うけど」
    「え~」

    心配だから、無理をして欲しくないから。
    そう思っていても、人の気持ちというものは難しいものだ。
    少なくとも、この後輩の場合は尊敬して止まない人から、深く愛され、大切にされている。
    その人を悲しませたのだ。
    誰よりも、辛いに違いない。
    きっと、深く反省するだろう。
    しかし自覚して貰うには、絶好のチャンスだった。
    どれだけ、自分が守りたいと思われている、かけがえのない存在であるかということを。

    「あのさ、俺が言っても良いかな」
    「え、あきちゃんが?」
    「誉こそ、ダメでしょう」
    「でもそんなことを言ったら、誰も亜蘭に伝えられない」

    此処にいる人は皆、頼りになる彼の真面目さやストイックさを見守った結果、時には感化され、もう大丈夫なのだと油断させられ。
    あの惨い過去によって、こうして独り追い込まれてしまうというのであれば。
    自分が伝えなくては、意味がない。
    大切なものを理解させ、腕に抱かせてくれた大切な後輩に。

    「起きて、亜蘭」
    「誉、そんな無理に言わなくても、」
    「しーちゃん、大丈夫。あきちゃんが俺達の中で一番、らんちゃんのことを想っているから」

    楽しくて、面白くて、刺激的なことを誰よりも求め、愛している自分が、初めて『お気に入り』という理由だけでは収まらない存在を見つけてしまったからこそ。
    思い入れで終われないと認識した彼を、愛して止まない自分が。
    完敗かもと、そんな呟きと穏やかな笑い声を溢すリーダーと。
    絆が少しでも綻ばないことを願う相方の代わりとして。

    「ごめんね、情けない姿を見せちゃったけど、何があってもこれだけは譲れないや」

    誉は肌を刺すほどに冷たい氷嚢を、浅い息を繰り返し通す首筋へ押し当てた。





    びくりと大きく肩を揺らした後、ゆるゆると瞼を持ち上げた後輩を誉は掻っ攫うように己の部屋へ連れ帰った。
    眠ったままの彼を運ぶのは少々骨が折れると思ったのだ。
    鍛え方が不足しているのかも知れないが。
    目を丸くしたり、クンツァイトの瞳を不安げに揺らしたりと忙しい彼が、己の首へ腕を回してくれることによって、抱え上げる腕の負担は何倍も軽くなるのだから仕方ない。

    「ありがとう、此処まで暴れないでくれて」
    「ほ、まれさ…っ!」
    「うん?」
    「あの、これは、えっと…俺、どうして?」
    「そこから?」

    心身を鍛え過ぎて、無自覚さが増してしまったのだろうか。
    高熱を帯びている後輩の体を、誉は苦笑を浮かべながらそっと己の特注ベッドに横たわらせた。
    シーツが冷たかったのかびくびくと震える体から、無意識だろう放たれる色香によって、噎せ返りそうになりつつ。

    (本当、亜蘭の不安げな顔は美味しそうだな)

    このまま見ていたら、お説教だけでは済まないのではないだろうか。
    ぶれそうになる決意を固めようと、誉は後輩の真っ赤な首元まで暖かな毛布を引き上げた。
    病人に対して無体を働く訳にもいかない、そんな邪な気持ちを抑える為に。

    「誉さん?」
    「亜蘭、本当に何も覚えてないの?」
    「え…」
    「亜蘭のその無自覚さは、タチが悪いを通り越して、厄介だよ」

    迷惑をかけられている訳でもないが。
    本音を曝す前に、誉はあえて彼の胸を突き刺す言葉を選んだ。
    心苦しいが、人は多少の痛みがあると自覚は早くなる生き物だから、仕方あるまい。
    例え、真っ直ぐ見つめている目の前の瞳がじわじわと潤み始め、零れ落ちる寸前の宝石のような光を放とうとも。
    相手の心も体も弱りきった時にこちらの心を鬼にすることで、こうなってしまうことも分かっていながら。

    「ねぇ、亜蘭。本当に覚えてない?」
    「お、覚えて…ます。俺、倒れて…、すいませ…!」

    風邪の自覚はなかった、気を付けたつもりだった。
    そう吐露する後輩は、息も絶え絶えに、遂にその顔を両腕で覆い隠した。
    息苦しさか、信頼を得ている自分のような存在に責められたことで込み上げる悲しみに耐え切れないせいか、ぼろぼろと大粒の涙を必死に押さえ込もうと。
    それは、なんと無駄な努力か。

    (それでも美しく、酷く愛おしい)

    漏れる喘ぎに似た嗚咽も、わなわなと震える唇を噛み締めようとする様子も、全て。
    そんな光景に、誉は瞳を眩しげに細めつつ、己の胸が上げる悲鳴をそのままに両腕を伸ばした。
    衝動的に、幼子のように泣きじゃくってしまった体を掻き抱こうと。
    あまりの衝撃が伝わってしまったのか、されるがままになりながらも息を詰めてしまった彼を、ただ強く。
    だがそのままでは呼吸困難になってしまうので、すかさず横たわったままの体を抱き起こしながら。
    誉は、強張る背中を掌で優しくトントンと叩いた。
    彼が、ゆっくりと息を吐けるように。

    「ひ、ぅ」
    「そんな怖がらなくても大丈夫。ショックだけど、俺はそんな亜蘭を守るって決めているから」
    「ごめんなさ、いっ」
    「んふふ、良い子だね。まぁ、今日やったことは悪いことだけど」

    悪い子には、お仕置きが必要だよね。
    自分は、そこまで相方に感化されている訳でもないのだが。
    その言葉に怯えているのか、困惑しているのか、弾かれたように上がった彼の顔を、誉は愛おしげに、見つめた。
    舌で己の下唇を湿らせながら。

    「ねぇ亜蘭。舌、べーって出して?」
    「へ…?」
    「早く」
    「…ふ、ぇ」

    口を躊躇いながらも開き、真っ赤な舌を言われるまま曝す後輩の心情は、一体どういったものだろうか。
    嫌われたくない一心で言うことを聞こうとしてくれているのか、或いは。
    許されたい、懇願で頭が一杯になってしまっているのか。
    嗚呼、こういう時は従順だというのに。
    誉は下腹部が熱くなるのを感じながら、大きな背中を丸めた。

    「誉さ、…んんっ!?ん、んっ」
    「ん、ふ」
    「んぅ、は…ふ、んッ」

    熱いと思っていた彼の舌を誉は甘噛みし、すかさず舌を溶けそうな口内へ滑り込ませた。
    本当は顎を持って、上顎を舌先で撫ぜてやりたかったのだが。
    その深い口付けは今の後輩には負担となるだろう。
    誉はただ、ゆったりと舌を絡め、じれったい程に優しく彼の甘い唾液を吸い上げた。
    部屋に響くのは、厭らしい水音だけ。
    だがそろりと己の首に細く引き締まった両腕が回ったところで、誉は名残惜しくも口付けを中断した。
    まさか止めるとは彼も思っていなかったのだろう。
    上気した頬を涙で濡らし、てらてらと光る舌先を下唇に乗せながら、口呼吸を荒々しく繰り返す彼の姿は、切なげだ。

    「は、ぁ…っ」
    「ふふ、えっちで可愛い亜蘭をこのまま愛してあげたいけど…このままじゃ、俺に風邪が移っちゃうなぁ」
    「…!?」
    「まぁ、俺としては構わないけどね」

    愛しい後輩の風邪を貰えるなら、本望だ。
    だがそれ以前に、今行為に持ち込めば、彼の風邪は益々悪化の道を辿るに違いない。
    しかし誉はあえて前提は告げず、大して気にも病まない言葉を口にした。
    完全な揺さぶりであると、動揺した後輩が気付くことはないと分かっておきながら。
    案の定、首に回っていた両腕はなくなり、代わりに彼の両手が誉の肩に置かれたのは言うまでもないだろう。
    己を引き剥がそうと、随分と弱々しい力を込めて。
    甘えたい、溶かされたい、でも自分のせいで苦しませてしまう。
    もう完全に、この後輩は欲求と罪悪感に板挟み状態だ。

    (流石に、お仕置きが過ぎたかな)

    意地悪したくなる人間と、優しくしたくなる人間。
    誉の中で彼は後者に近い。(時々前者が勝つが)
    仕方ないのだ。
    再び目尻に涙を溜めこんでしまった彼を見てしまったら。

    「ねぇ亜蘭、風邪が治ったら沢山愛してあげる」
    「…ぅ」
    「ううん、愛したい。今の俺、完全に据え膳だからね」
    「お、れも…っ」

    愛して欲しい。
    そう告げられなくとも、誉はその身も心も全て己自身がこれでもかとずぶずぶに甘やかし、蕩けさせるなんて当たり前のことだった。
    珍しい、後輩のおねだりを聞けてしまったのは儲けものだったが。
    誉は涙で濡れたままだった彼の頬を、自身の胸元にそっと押し付けさせた。
    その柔い髪を梳きながら。
    落ち着いて、今はゆっくり眠って欲しいと願って。



    END

    えろまで行きたかったし最初は行きかけたけど、思い留まった。
    要亜も雫亜も大好きだけど、一番は誉亜。
    というより、くらりてぃは皆で皆を愛し合えば良いのよ。
    他のCPはこれから増えると思っているので、手は出さないけれど…!
    生まれ変わったるり Link Message Mute
    2019/02/24 12:29:55

    繋がっていないお話二本

    #andl腐 誉×亜蘭

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