SS キュラドの絵SP「あ、キュラド、な、何を描いてるの……?」
キュラド「エスだ」
SP「う……あ、わ、我ばっかり描いてた、楽しいの?」
キュラド「楽しいに決まってるだろう?」
SP「で、でも、たまには、その、違うのとか、描かないの?」
キュラド「ほう、例えば?」
SP「その……じ、自画像とか……?」
キュラド「自画像……それは無理だな」
SP「……え、な、なんで?」
キュラド「何故と言われても……。俺は自分の顔を見たことがないからな」
SP「…………あ……そ、そっか……」
キュラド「吸血鬼は鏡にも写真にも写らない」
SP「き、き、気になる?じ、自分の、顔……」
キュラド「ふむ。興味がないといえば嘘になるが……」
SP「…………」
キュラド「そうだ。エスが俺の顔を描けばいい」
SP「えっ」
キュラド「フッ、我ながら名案だな」
SP「で、で、でも、そ、その、我、絵とか……あんまり……」
キュラド「何だ。選択科目は美術を選択したと言っていただろう?」
SP「それとこれとは…………」
キュラド「……嫌か?」
SP「ち、ちがう……」
キュラド「…………まあ無理にとは言わない。エスは日々忙しそうだ」
SP「……う、うん」
*
数日後
キュラド「……来たか」
SP「ま、また、絵描いてるの?」
キュラド「まあな」
SP「……こ、これは?」
キュラド「…………俺だ。だが、やはり顔だけがどうしてもわからない。想像で描くのもまた違う気がしてな」
SP「そっか……」
キュラド「……やめだ。この絵は永遠に未完成のままだろうな」
SP「…………」
キュラド「そんなことより学校はどうだ?何事もなく過ごせているか?」
SP「……あ、あのね」
キュラド「ん?」
SP「…………キュラドに………………その、わ、わ、たしたい、ものが、ね」
キュラド「渡したいもの?俺にか?」
SP「……うん」
キュラド「何だ」
SP「………………これ」
キュラド「これ、は」
SP「…………」
キュラド「……これが、俺なのか?」
SP「…………う、うん」
キュラド「……フッ、そうか。俺はこんな顔をしているんだな」
SP「あ、あの……でもね…………ち、ちがう……ほんとは、もっと……その…………」
キュラド「そうか……これが俺か……」
SP「……キュラド、ほ、ほんとは、もっと、かっこいい」
キュラド「エスは絵が上手いな。いや、上手いという言葉とは少し違うな。ふむ……」
SP「え、あ、う、う、うまくなんかない…………」
キュラド「エス」
SP「え、あ……は、はい」
キュラド「ありがとう」
SP「あ…………」
キュラド「とても嬉しいぞ」
SP「…………あ、えと、よ、よ、喜んでくれて、よかった」