コインランドリーピンポーン…
偶然合わせたチャンネルでやっていたニュースを見るともなしに見ていた土曜の夕方。
こんな時間に誰だ。セールスの類か。
今日は特に誰とも約束をしていない。マイクとの宅飲みは来週末だったはずだ。
ピンポーン…
さらに言えばマイクならこんな遠慮がちな鳴らし方はしない。連打する。
セールスなら無言では鳴らさない。こっちの苗字か自分の会社名を言いながら鳴らす。
じゃあ一体全体誰だ。
ピンポーン…
テレビはそのままに重たい腰を上げて玄関まで向かう。
素足がフローリングにぺたぺたと吸いつく。
しょうもない宗教か何かの勧誘だったら帰ってもらおうと思いながら扉を開けた。
「どちら様で…」
廊下には誰もおらず、ただ安アパート特有の風景が広がるだけで。
何なんだ、と思いながら開いた扉を閉じようとした瞬間、視界の隅に見覚えのある金髪が見えた。
「……オールマイトさん…?」
小さく呟いた名前に、細い背中が振り返る。
「あ! 相澤くん!!」
パァッと目を輝かせて小走りに駆け寄ってきたのはスーツ姿ではなく普段着のオールマイトさん。
「良かった~ピンポン鳴らしても返事が無いから留守かと思ったよ~!」
「…はぁ」
「お休みでリラックスしてるとこ、突然ごめんね?」
オールマイトさんの言葉で自分の格好に気づく。今日は外出しないからと上下黒の部屋着で髪の毛もぼさぼさのはずだ。僅かな居心地の悪さと怪訝さに眉を顰める。
「いや、俺は別に…それより何でアンタがここに?」
そもそもここの住所を俺は教えていないはずなんだが、と記憶を探る。
「マイクくんに教わったんだ」
…あいつにはプライバシーとかそういう概念は無いのか。
「…それで、何の用ですか」
「あー、えっと、その…マイクくんに断られちゃって……」
「は?」
「しばらく泊めてくれない、かな…?」
「……は??」
着替えとか歯ブラシとかは持ってきたから! と言うオールマイトさんの顔と彼の腕に下がった紙袋を交互に見る。
「この通りっ!」
ぱんっと乾いた音を立てて腕の細さに見合わない大きな掌が打ち合わされるのを眺めながら、脳が状況を理解しようと高速回転を始めた。
「住んでるマンションが電気関係・水道関係のトラブルと、改装の都合でしばらく使えなくて……一週間だけだから!」
玄関先で土下座でもし始めそうな怪しい雲行きになってきたが、とにかくこれだけは確認しておきたくて口を開く。
「どうして俺の家なんですか」
「色々頼んだんだけど、断られちゃって…」
それで最後の頼みの綱という訳か。
「構いませんけど…」
「よかった~ありがとう!! 掃除洗濯料理は任せて! これでも一人暮らしは長いからさ!!」
「いや…あの…」
家の外で話すのもあれなので、とりあえずオールマイトさんを招き入れる。
「お邪魔しま~す… 相澤くんち何もないね!!」
「人んち入って第一声それですか」
きょろきょろとリビングを見渡すオールマイトさんに中を案内する。といってもそこまで広い家ではないが。
「そっちトイレで、向こうが風呂場。キッチンと…リビング兼寝室、以上です」
「…ホントに何もないね」
「まだ言いますか」
「ベッドが無い家、初めて見たよ…」
「寝袋あればいらないんで。客人用の布団はあるんで大丈夫ですよ」
その客人用の布団も宅飲みで終電を逃して泊まることが多いマイクが持ち込んだものだが。
「えっと、とにかくこれから一週間よろしくね?」
おずおずとはにかみながら差し出された右手に、一拍おいてああ握手か、と気づく。
「あー…こちらこそ、よろしくお願いします…」
しばらく二人でつけっぱなしだったニュースを見て、傾いた日がベランダから差し込んでくる頃、もうこんな時間かと腰を上げかけた自分より一瞬早くオールマイトさんが立ち上がる。
「相澤くん、キッチン借りてもいいかな?」
「え? あぁ…どうぞ」
「ありがとう!」
オールマイトさんが、持参した紙袋からエプロンを取り出して身に着けながら颯爽とキッチンへ向かっていく。
足取り軽く冷蔵庫の前まで辿り着いたオールマイトさんが、勢いよくその扉を開けて悲鳴を上げた。
「うわあぁ!!??」
「っ何ですか!?」
そんなに悲鳴を上げるほど汚していただろうか、それとも虫かネズミでも入っていたか、と慌てて冷蔵庫の内部を覗き込むが、特にこれといって変わったところは無い。
「…相澤くん………」
「はい…!?」
「君、自炊してたんだね!!!」
信じられない、とでも言いたげに見開かれた瞳がオールマイトさんの驚きを表現している。
「てっきりウィダーで10秒チャージしてるのかと思ってたよ!」
「アンタ意外と失礼ですよね」
そりゃ冷蔵庫の中にはウィダーも入っているが、食材も多少は入っている。
「でも材料と調理器具があって安心したよ~」
「俺を何だと思ってるんですか」
「HAHAHA、ごめんごめん。相澤くん何食べたい? 大体の料理なら作れるよ、私」
「何でもいいです」
「Hmm…そういうのが一番難しいんだけどな…。分かった、できたら呼ぶからテレビでも見てていいよ」
「いや、自分の飯ぐらい自分で…」
「いーや! 作らせて! 家賃っていうか、ここに泊まらせてもらうお礼だからさ!」
ニカッと白い歯を見せて笑うオールマイトさんに引く気はなさそうだ。このまま言い争うのも合理的じゃないので仕方なく引き下がる。
「じゃあ先に風呂入ってきます…」
早速ペースが乱されつつある生活に疲れを感じながら風呂場へ向かった。
熱めのシャワーを浴びながらこれからのことを考える。
(…一週間って意外と長くないか?)
あと六日も続くらしい同居生活に一抹の不安を覚えながら、それを洗い流すようにボディーソープを泡立てた。
タオルで頭を拭きながらキッチンへ向かうと、オールマイトさんがリビングのテーブルに皿を並べていた。
「手伝います」
「あ、お風呂終わったんだ。ご飯食べたら私もお風呂借りていいかな…?」
「いちいち許可取らなくていいんで自由に使ってください」
できあがった料理を見ると一品一品の量は少ないが、そのぶん品数が多い。普段自分で作るときは大皿に適当に作って何日かかけて消費するのでこれだけ食卓が賑やかなのは久々だ。
「「いただきます」」
食べながら気づいたことがある。
まず料理が美味いということ。雄英の食堂で出されていてもおかしくないぐらいに美味い。
作った本人は食べ始めてしばらくは不安そうにこちらを見つめていたが、無言で箸を進めるのを見て安堵したように息を吐いていた。あの冷蔵庫の中身でよくこれだけのものを作れたな、と少なからず感心した。
そしてもう一つ。これは前々から少し気づいてはいたことだが、オールマイトさんは食べるのが遅い。一口が小さいし、それを何度も咀嚼してゆっくり嚥下するから常人の数倍の時間がかかっている。
「…ごめんね、食べるの遅くて」
こちらの視線に気づいたのか、申し訳なさそうに眉をハの字に下げた。
「いえ、気にせず自分のペースで食べて下さい」
胃が無いんだったか、と思い出す。常人に比べて明らかに細くか弱いその身体で世界の平和を背負ってきたのかと半ば恐怖にも近い驚きが心の奥をひやりとさせた。
「「ごちそうさまでした」」
自分の食べ終わった食器にオールマイトさんのも重ねて流しへ運ぶと、靴下をはいた足音がついてくる。
「食器洗いやるよ?」
「いいから風呂入ってきて下さい」
未練がましく流し台のそばをうろつくオールマイトさんを風呂場に追いやって黙々と皿を洗う。流水がシンクを打つ音と陶器のぶつかり合う音だけがしばらく響いていた。
気を遣われるのはあまり慣れていない。この家に泊まりに来る物好きは、勝手知ったる人の家、とばかりに押し掛ける腐れ縁の同期ぐらいだから。
「お風呂のお湯抜いて洗ってきたけどよかったかな?」
ぺたぺたと湿った音を立てながら湯気を纏って出てきたオールマイトさんは、水玉柄の寝間着を着ていた。詳しい年齢は知らないが、その年でそれを着こなせるのは中々にすごい事なんじゃなかろうか、とぼんやりと思う。
「ありがとうございます。布団そこに出してるんで適当なところに敷いて下さい」
「わーありがとう! どこにしようかな~」
さして広くもないリビング兼寝室を歩き回るオールマイトさんをそのままに、自分の寝袋を引っ張り出す。
「…相澤くんはどこで寝るの?」
「他人がいると寝付けないんだったら玄関の方にでも行きますけど…」
「ち、違うよ!!」
君が家主なんだから玄関とか行かなくていいから! と必死に弁解するオールマイトさんに、じゃあ何でそんなこと聞くんですか、と問う。
「私さ、寝てる間に吐血しちゃうこととかあるから、その…できる限り離れて寝た方がいいかな~って……」
「汚れて困るようなものは特にないんで気にしなくていいですってば」
さっさと寝ましょうよ、と言ってもまだ悩んでいる様子だったので、面倒くさくなってきた。時間は有限。
「じゃあ好きにしてください。俺は寝ます」
返事を待たずに照明を落として、寝袋の中に潜り込む。お互いに気を遣っていたら疲れてしまう。食後の眠気も合わさって、いつもより少しだけ眠りに落ちるのが早かった。
相澤くんの家に転がり込んで六日。この六日の間、色々なことがあった。
そして新しい発見。
相澤くんは実は優しくて、思っていた以上に私に対して好意的だったってこと。
危惧していた "寝ながら吐血" で汚してしまった布団を洗っていて、さらに慣れない道のせいで遅刻しそうになった日は、先に出勤していた相澤くんが校長に事情を説明してくれていたから、お咎めなしで済んだ。
早起きして二人分作ったお弁当を、文句を言いながらもちゃんと残さず食べてくれた。
一度、ヒーロー活動で遅くなることを知らずに夕飯を作って待っていた私がそのまま寝てしまってからは、遅くなる日はきちんと連絡をしてくれた。
「おはよう」とか「ただいま」とかの挨拶にも返してくれる。
他にも沢山。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
夕食の片付けも終わって綺麗になったテーブルで、持ち帰った答案に赤ペンで採点している相澤くんの正面に座る。
マグカップに淹れたコーヒーを相澤くんの手元に置いて、自分はホットミルクの入ったマグカップを持って。
ちなみに相澤くんの使っている品は猫柄の割合が高いというのも、新しい発見の一つだったりする。
「…先に寝ててもいいですよ」
「明日は土曜日だから、もう少し起きてるよ」
ペン先が紙の上を滑る音がリズミカルに続く。教育方針については正面から意見がぶつかり合ってしまうことが分かっているから、お互いに口出ししないのが暗黙の了解のようになってしまった。だから学校関係のことはここでは一切話題には上らないし、上らせない。
「そういえばこの家って洗濯機あるの?」
お風呂場のカゴに随分溜まっていたのを思い出す。
「そろそろ私の服の洗い替えがないんだけど…」
「ウチ洗濯機ないですよ。寝間着ぐらいなら俺の使っても構いませんけど」
いや、その優しさはすっごくありがたいんだけどね?
「衛生上よくない気がするんだけどな…」
「洗ったやつがタンスに入ってます」
「…あっ! ごめん、違うんだよ! そっちじゃなくて!」
危ない、重大で失礼過ぎる勘違いが起きるところだった…!!
「お風呂場のカゴの方!」
「ああ、そっちですか」
ずず…とコーヒーを啜りながら、相澤くんの視線がお風呂場の方向に向けられる。
「ん? じゃあ相澤くんは普段どうやって洗濯してるの?」
「コインランドリーでまとめて乾燥までやってます。月一ぐらいで」
「へぇ~合理的に?」
「まぁそうですね」
コインランドリーかぁ…行ったことないな……
「……行きます?」
「へっ?」
「近所ですし、こんな夜中なら人もいないでしょうから」
行きたいんでしょう、アンタ。そう言って笑いながら立ち上がる相澤くん。
「でも採点が」
「明日は土曜なんで」
お風呂場の方へ歩き始める相澤くんを呆然と見送る。
「…行かないんですか」
洗濯物が入ったカゴを片手に出てきた彼に慌てて頷いた。
ぽつぽつと電灯が等間隔に照らす夜道を二人で歩く。
歩き続けて数分後、ぼんやりと暗がりに浮き出るように建つ小さなコインランドリーに辿り着いた。
押、と書かれた札がついている入口を指示通りに押して入る。天井の蛍光灯が切れかけているのか、一か所だけ明滅を繰り返している。
八つ設置されたドラム式洗濯機のうち、二つが稼働中で水音を奏でていた。
明かりに誘われて入ったものの、出られなくなってしまったのであろう蛾が一匹、蛍光灯の周りをバタバタと忙しなく飛び回っているのが見える。
「ここがコインランドリー……初めて来たよ」
店内は無人で、何とも言えない淋しさの様な空気で満たされていた。
「オールマイトさん、カゴこっちに下さい」
「あ、うん」
持っていたカゴの中身を開いていた一基に放り込んで、私が持っていたカゴのぶんはその隣りへ入れて、蓋が閉められる。流れるように行われるその作業を、私はただ立ち尽くして見つめていた。
相澤くんの長い指がピッ、ピッとボタンでコースを選択した後、小銭を数枚入れて、スタートボタンを押す。
数秒して、洗濯機が重たい音を立てながら回転を始める。
相澤くんは少し離れたところにあるベンチに座って、置いてあった雑誌を読み始めた。
丸い扉の中でタオルやシャツがざぶざぶと回るのをしばらく見つめていた。私の家にある洗濯機はドラム型じゃないし、中身を見ることができないから、何だか新鮮だ。
規則正しく右回転左回転を交互に行うドラムを眺めるのにも飽きて、相澤くんの隣に腰かける。
洗濯機の稼働するゴウゴウという音と、相澤くんが雑誌の薄っぺらいページを捲っていく音に耳を傾けながら、店の外の夜闇をボーっと見ていた。
凭れかかってくる温かい体重に、寝たのかと紙面から視線を上げる。そろりと横目で様子を窺うと、小さな青い光が瞬くのが見えた。
…寝てはいないようだ。わざわざ押しのける必要性も感じなかったので適度な重さはそのままに、再び雑誌に目を戻す。
別に興味深い記事が掲載されているわけではない。有名ヒーローの下らないゴシップだとか、新商品の宣伝だとか、その程度の内容しか入っていないありふれた雑誌だ。
三冊目に手を伸ばそうとしたとき、ピロピロというメロディが洗濯の完了を告げた。
ベンチから立ち上がって「乾燥」のボタンを押して100円玉を指定の数だけ投入する。スタートボタンを押してから、再びベンチに座る。
「相澤くん」
三冊目のページが半分ほど捲られた頃、オールマイトさんが沈黙を破った。
「なんですか」
文字を追っていた視線を声の主の方に向ける。けれど視線はかち合わず、青い目は俺じゃなく店外を見つめていた。その視線の先を追いかけても目ぼしいものは見つけられなかった。
それっきりまた沈黙が落ちる。まるで引いた波が帰ってくるように。
「オールマイトさん」
「なんだい?」
虚空を見つめていた視線がこちらを向く。ぽろりと、本当にぽろりと、言うはずのない言葉が零れた。
「好きです」
見開かれた青色に、ああしまった、と思う。
自分でもどうしてその四文字が出てきたのか分からない。混乱する脳内とは別に、どこかストンと腑に落ちたような妙な達成感があった。
「好きです、オールマイトさん」
ぽろぽろと零れ落ちた言葉は、反響することもなく、寂れたコインランドリーの中に染み込んで消えた。
ありったけの静寂の後、ピロピロと気の抜けた音が鳴った。
乾燥も終わって、中身を取り出すために雑誌を元の場所に戻して立ち上がる。
丸い蓋を開けると温かい空気と太陽の匂いが溢れ出した。
まだ熱を持つ衣類を取り出して、持ってきたカゴに放り込んでいく。オールマイトさんはまだベンチに座ったままなのか、どうしているのかは見えない。
「ねぇ相澤くん」
全部をカゴに入れ終わり、声のした方へ振り向く。
いつの間にか全ての洗濯機が止まっていて、一切の物音が店内からは消えていた。
「私も、相澤くんのことが好きかもしれない」
オールマイトさんの言葉を脳内で一句ずつ噛み締める。何度も何度も反芻して、ようやく理解する。
「……帰りましょうか」
「そうだね」
両手にカゴを持って店を出ると、夜の空気が肌を撫でていく。
「カゴ、一個持つよ」
「ありがとうございます」
空いた片手に、するりと骨ばった指が絡む。
容易く振りほどける程度の力で握られたそれに戸惑いながら、ちらりと視線を向けると金髪の隙間から覗く耳が、夜目にもはっきりと分かるほど赤く染まっていた。
真夜中の住宅街を、月明かりと街灯の光を浴びながら歩く。
「今夜は満月なんだね」
「あぁ…綺麗ですね」
「うん。真ん丸で大きいね~」
煌々と輝くそれを見上げる横顔が、あまりにも青白く見えて、そのまま溶けて消えてしまうんじゃないかと不安になった。
「っ、痛いよ相澤くん」
知らず知らずのうちにきつく握りしめてしまっていたようで、小さく謝罪して指の力を緩める。
「オールマイトさん」
「ん?」
「好きです」
馬鹿みたいだ。こんな真夜中、暗い夜道で洗濯カゴを持って、部屋着のスウェットのままで。
たった六日間、寝食を共にしただけで、そこまで仲が良かったわけでもないのに。
気づけば惹かれ、どうしようもないぐらいになっていた。
「…まずは、お友達からで、お願いしてもいいかな……」
「一緒に住んでるのに、ですか」
「これは…ほら、一時的なアレだし…」
口ごもるオールマイトさんの手は俺の手を離しはしなかった。
「相澤くんと一緒にご飯食べたりテレビ見たりするのは、すごく楽しい」
ぼそぼそと、普段の口調とは違う歯切れの悪い声。
「それが、その…相澤くんが好き、とかそういうのかは……分からない」
「そうですか」
「っでも! でもね、相澤くんと、こうやって手を繋いで歩くのは、嫌じゃない、よ?」
へにゃ、と力の抜けた笑顔がこちらへ向けられる。
「…なら、よかったです」
痩せ細った手をグッと握りなおして、歩く。
「相澤くん…」
「別に今すぐ返事が欲しいわけじゃないです。だから、ゆっくり考えて下さい」
「うん、ごめんね」
「謝らなくていいです。俺の家に居たいならいくらでも居て構いませんから」
アンタの飯は美味いですし、と言えば嬉しそうに緩む頬。
「明日の朝ご飯、何が食べたい?」
「何でもいいですよ」
「だからそういうのが一番難しいんだってば」
くすくすと笑うオールマイトさん。告白の返事はきっと悪いものではないだろうな、と密かに期待をしている自分がいる。
待つという行為は性分に合わないが、嫌いなわけじゃない。