魔法少女的寿限無「精霊神様、お姿を現しください」
「ほう、誰かと思ったら魔法の国の王ではないか」
「本日はお願いがありまして参りました」
「ほう、おぬしがわしに頼みとは珍しいな。
　何だ」

　精霊神が聞きますと国王が神妙な顔で言います。
「はい、私どもに赤子が生まれました」
「それは良きこと。
　街の様子を見たときに感じていたが、真に良きことだ」
「今日が生まれて7日になりまして、
　王妃と話を致しました。呪文を授けなければと」
「そうだな
　7日目には呪文を授けるものだ」
「それで王妃が私に授けてやってくれと言うのですが、私はそう言うことは苦手でして。
　どうしようかと思っていますと、王妃が精霊神様に頼んではどうかと。
　ですので呪文を授けていただけませんでしょうか」
「しかし……、わしが呪文を授けるということは、わしの眷属になると言うことだ。
　構わんのか？」

　もちろんです、と頷く国王に、
「そうか、では授けさせてもらおう。
　生まれた子は男の子か？　女の子か？」
「はい、王女です」
「王女か。
　おぬしも親になったのだ。
　このように育ってもらいたい。このように成って欲しい。と言う願いがあるだろう。
　どのような呪文が良いか？」

　国王が言います。
「魔法の国の繁栄がとわに続くような、強くとも優しい呪文をいただければ。
　生まれる前は、こうなって欲しいああなって欲しいと思いましたが、顔を見ると欲がなくなりまして。
　とにかく、魔法の国の繁栄がとわに続けば良いと思いまして」
「ほう、魔法の国の繁栄がとわに続く呪文か。
　では、『ピリカピリララポポリナペペルト』ではどうか？」
「これは優しそうだ。他にも何かありますでしょうか？」

「うん、
　『キャノパンプルピンプルパムポップンピンプルパンプルパムポップン』
　と言うのもあるな」
「これも素晴らしい呪文なのでしょうか？」
「その通りだ」
「他にも教えていただけませんでしょうか？」
　呪文に感動している国王に、精霊神も悪い気がしません。

「『星の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ。契約の元、王女が命じる。レリーズ！』
　と言うのもあるな」
「これも強い力なのでしょうか？」
「力を求めるか、では、
　『闇よりもなお暗きもの夜よりもなお深きもの混沌の海よたゆたいし存在金色なりし闇の王我ここに汝に願う我ここに汝に誓う我が前に立ち塞がりしすべての愚かなるものに我と汝が力もて等しく滅びを与えんことを！ギガスレイブ！』はどうじゃ？」
「なるほど、力がありそうだ」

「他には何かありませんか？」
「そうじゃの、
　『幾千億の星の子達綺羅星の輝きをそして数多の力をどうか私の星力に変えて……エトワール！』
　と言うのもあるな」

「こう言うのも思い出した。
　昔、人間界に『フェナリナーサ』っと言う国があったのだそうだ。
　その国の王女は常に前向きだったらしい。
　呪文は、『ピピルマピピルマプリリンパパパレホパパレホドリミンパ』だったそうじゃ」

「私の記憶をたどればまだあるが、どうする？」
「できればいただきたい」
「『リリカルトカレフキルゼムオール』、とにかく強い呪文らしい。
　それに『魔法よ魔法生まれておいで』、優しき呪文じゃ」

「他にもいろいろあるが、さらに記憶をたどろうか？」
「いえ、ここまで教えて頂けると。
　今日は7日目ですので、今日中に授けたく思います。
　ただ、覚えきれませぬ故、ここへ記していただけますか」
　と、国王は言います。
　精霊神はそれまでの呪文を国王が取り出した紙に書いて渡します。

「ありがとうございます。
　しかし、これだけたくさんとなりますと、とても決められません。
　精霊神さま、これをいただきます。
　宮殿に戻って、王妃と相談して決めます」
「そうか、では決まったら教えてもらおう」
　精霊神の姿が消えると、国王は急いで宮殿に帰りました。

　呪文を書いた紙をもらって宮殿に帰った国王。
　王妃と話をするけど、どれもすばらしい呪文ですから、とても決め切れるものではありません。
　そのうち選ぶのがつらくなり、
「ぜんぶ授けてしまえ」
　と言うことで、候補に上がった呪文をぜんぶ授けてしまう。

　ありがたい呪文のご利益なのか、王女は病気一つしないですくすくと育ちます。
　やがて人間界で修行するようになると、時折、悪魔が攻めてくる。
　王女は変身します。
「変身！
　ピリカピリララポポリナペペルト・ キャノパンプルピンプルパムポップンピンプルパンプルパムポップン・星の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ。契約の元、王女が命じる。レリーズ！・闇よりもなお暗きもの夜よりもなお深きもの混沌の海よたゆたいし存在金色なりし闇の王我ここに汝に願う我ここに汝に誓う我が前に立ち塞がりしすべての愚かなるものに我と汝が力もて等しく滅びを与えんことを！ギガスレイブ！・幾千億の星の子達綺羅星の輝きをそして数多の力をどうか私の星力に変えて……エトワール！・ ピピルマピピルマプリリンパパパレホパパレホドリミンパ・ リリカルトカレフキルゼムオール・ 魔法よ魔法生まれておいで！」
　悪魔は王女が変身するのを待ちます。

　王女がやっと変身しました。
「悪魔よ！　私の技を受けなさい！
　ピリカピリララポポリナペペルト・ キャノパンプルピンプルパムポップンピンプルパンプルパムポップン・星の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ。契約の元、王女が命じる。レリーズ！・闇よりもなお暗きもの夜よりもなお深きもの混沌の海よたゆたいし存在金色なりし闇の王我ここに汝に願う我ここに汝に誓う我が前に立ち塞がりしすべての愚かなるものに我と汝が力もて等しく滅びを与えんことを！ギガスレイブ！・幾千億の星の子達綺羅星の輝きをそして数多の力をどうか私の星力に変えて……エトワール！・ ピピルマピピルマプリリンパパパレホパパレホドリミンパ・ リリカルトカレフキルゼムオール・ 魔法よ魔法生まれておいで！」
　悪魔はまた王女を待ちます。

　王女の呪文がようやく終わりました。
「プリンセス・ハリケーン！」
　悪魔はすぐに撃退されました。

　この後、王女の活躍はまだまだ続くのですが、それはまた別のお話。


了