ほのぼのな日常 第20話 あて先注意報発令中!先に記しとく設定
衣笠美衣那(きぬがさ みいな):女性、克晶と双子
衣笠克晶(きぬがさ かつあき):男性、美衣那と双子
卯蘭鈴(うらん すず):女性、美衣那の友人のひとり、あだ名は『鈴ちゃん(りんちゃん)』
と言うことで。
アタシはミナ。
『美衣那』なんだけど『ミナ』って呼ばれることが多い。
だから『ミナ』。
現在、絶賛の高校生。
青春を駆けまくってる。
アタシには弟がいる。って言っても双子の弟。
克晶、『かーくん』。
かーくんはときどきアタシを妹扱いする。
甘えてる。
アタシが姉でかーくんが弟。
姉弟だからって甘えちゃダメ。
ふぃー、お風呂って最高。
お風呂に入ってほっこほこになって部屋に戻ってきた。
ほかほかの体でデスクに置いてたスマホを手に取る。
あ、メッセージ届いてる。
んっと、鈴ちゃんからだ。
鈴ちゃん、アタシの親友のひとり。
ノリの良いムードメーカー。
なんだけど、ときどきノリすぎちゃうのがちょっと残念。
とりあえずメッセージを開く。
『どーだ、セクシーだろっ』
短い文章。
その後に写真。
……なんだ? これ?
写真、服脱いでブラとショーツだけの、……鈴ちゃん?
これって……、そっか、鏡に向かって撮ったんだ、なるほど。
それと、手が良い位置。
上手く顔を隠してる。
鈴ちゃん、なに考えてるんだ?
アタシの理解の外だ、うん。
でもこれ……、もしかしてアタシを挑発してる、ってこと?
だったら負けられない。アタシも撮らなきゃ。
大っきい鏡はないけど……。自撮りしたら良いよね。
それじゃ早速。
まずは、……どんなポーズが良いかな?
んーと、パジャマをはだけさせてとか、良さそう。
パジャマのボタン、全部外してはだけさせる。
おっぱいがぎりぎり見えないくらい。
おっぱいが見えちゃうのはさすがに恥ずかしい。
スマホをアタシに向けて……。
パシャッ、
パシャッ、
パシャッ、
3回撮ってみた。
さて、どんなのが撮れたかな。
ちょびっとドキドキしながら写真を確認。
1枚目は……、顔がちょっと写ってる。
これはダメ。
2枚目。
パジャマがはだけすぎておっぱいが見えてる。
ダメ。
3枚目。
うん、良い感じ。
顔もおっぱいも写ってない。
と言うことで、3枚目に決定!
メッセージアプリ開いて、
『アタシだって負けないぞっ』ってメッセージ。
それから、写真。
鈴ちゃん、どう出てくるかな。
ちょっぴりわくわくし始めてすぐ。
ばたんっ、
部屋のドアが大きな音をたてて開いた。
開けたのはもちろんかーくん。
こんな乱暴な開け方はかーくんだけ。
「ミナ! なに考えてんだっ!」
かーくんは怒ってる7割と困ってる3割、そんな感じ。
なに言いにきたのか分からないけど、
でも、まず言わなきゃ。
「ノックくらいしてよ」
不満いっぱい、って感じで言ってやる。
「ノックなんかどうでも良い!
なんだよ、『アタシだって負けないぞっ』って?」
アタシのすぐそばに来て、かーくん、スマホの画面をアタシに向けた。
なんなのよ、まったく。
スマホの画面を見る。
画面にはパジャマをはだけさせた女の子。
自撮り。
顔は写ってない。
パジャマはアタシのと同じデザイン……。
!
一瞬で頭の中真っ白。
もう一瞬で言葉が出た。
「これ、アタシ!?」
写真の女の子、絶対アタシだ。
それにメッセージ。
『アタシだって負けないぞっ』
アタシのだ。
プチパニックなアタシにかーくんはあきれた声。
「こんなの送りつけて、なにしたいんだよ」
かーくんの言葉に言い返す。
今いちばん分からないところ。
「どうしてかーくんがこれ持ってるの?」
すぐに言葉が返ってきた。
「どうして、って、ミナが送ったんだろ」
えっと、つまり、どう言うこと?
「スマホ、見てみろ」
かーくんは、まったくミナは……、って感じ。
そんなかーくんに言われてスマホ、メッセージアプリを開く。
鈴ちゃんのページ、
……ない。
写真とメッセージ、
確かに送ったはず、なのに。
「俺のは?」
かーくんの声。
見るの怖いけど見なきゃ。
かーくんのページ。
うん、写真もメッセージもあった……。
つまりこれって……。
「相手、間違えたんだろ。
ったく、なにやってんだよ」
はふー、
体から力が抜けた。
かーくんの言う通り。
アタシ、ホントになにやってんだろ。
気を取り直してかーくんを見るとスマホをいじってた。
「写真、消すぞ」
アタシにも画面が見えるようにして、タップ。
写真が消えた。
「これで良いな?」
「うん……」
もちろん良いに決まってる。
「じゃあ、次からは気つけろよ」
かーくんが部屋から出ていこうとして。
……気づいた!
「かーくん!
ちょっと待って!」
あわてて呼び止める。
「なんだ?」
アタシに顔を向けたかーくんに確認する。
「写真、アプリから保存し直せるよね?」
「あー、できるな」
かーくんの視線がちょっと揺れる。
だよね! できるよね!
「せっかく良いお守りもらったのに」
アタシの言葉に残念そうなかーくん。
「なによ、『お守り』って!」
「ん?
これあったらミナに殴られないし蹴られないだろ」
さらっと言われた。
かーくんがあの写真持ってるなんて許せない!
「そんなのダメ!」
何か良いアイデア出さなきゃ……、そうだ!
「じゃあ、かーくんの写真、撮らせて!」
うん、良い考え。
かーくんの揺れてた視線がアタシに戻った。
「なんだよ! それ!」
かーくんは言うけど、今はアタシの意見が大事。
「パジャマ脱いで!」
「はあ? なに言うんだ?」
かーくんは完全にあきれてる。
でも、
「とにかく脱いで!」
かーくんのパジャマをつかんで、ちょっと強引だけど脱いでもらう。
脱いでもらったのはもちろん上だけ。
さすがに下はダメよね。
「ったく、
なんでこんなことしなきゃならないんだよ……」
そんなこと言うんだけど、かーくん、あきらめてアタシの言うことを聞いてくれた。
えらいぞ、かーくん。
「じゃあ、そこに立って、
あ、顔は隠して良いから」
「隠すに決まってるだろ!」
アタシのしれっとした言葉にかーくんの声が返ってくる。
もちろんそんなの気にしない。
腕で顔を隠したかーくん。
そんなかーくんにスマホを向けて、
パシャッ、と撮影。
写真を確認する。
うん、良い感じ。
顔もしっかり隠れてる。これなら大丈夫。
「どうかな? 上手く撮れてるよね?」
かーくんにも見てもらう。
はぁーっ、て思いっきりのため息。
そのあとに、
「……もう良いよ」
って力のない声。
でも、かーくん「良い」って言ってくれた。
だから「良い」。
「これで良いか?」
かーくんの声にはまだ力が入ってない。
「うん、これで良し」
アタシの言葉を確認して部屋から出ようとしたかーくん。
足を止めてアタシを向いた。
「メッセージ送るの、気つけろよ。
俺だったから良かったけど、変なとこに送ったら洒落になんねーぞ」
って言って出ていった。
やっぱりアタシのこと心配してくれてた。
嬉しい、って思う。
かーくん、こんなとき優しいんだよね。
ちょっとずるい。
スマホを見たらかーくんのヘンな写真。
画面をタップして写真を消した。
うん、これで良し。
でも……、ちょっともったいなかったかな? なんて思った。
了