ほのぼのな日常 第15話 口内炎から始まる日常先に記しとく設定、
今出川一司(いまでがわ かずし):男性
田辺京志(たなべ けいし):女性
一司の家はワンルームマンション、
と言うことで。
俺は一司。
俺には大切な人がいる。
京志、俺の恋人。
京志も俺のことを大切だと思ってくれてる。
これって最高の関係。
夕暮れの道を京志とならんで歩いてる。
京志と一緒だと、二人で歩いてる、それだけで楽しくって嬉しい。
ちょっとした違和感。
今日はいつもと何かが違う。
何が違うのか、ちょっと考えたらすぐに分かった。
京志が無口。
いつもの京志は次々と積極的に話をしてくれる。
でも今日は話そうとしない。
俺の言葉に相づちを打って話をまわしてる感じ。
家に着くまでずっと、京志はそんな様子だった。
家に着いて、中に入って、部屋の床にそれぞれのかばんを置いた。
京志が気になる。
だから聞いた。
「京志、ぜんぜん喋らないけど、どうした?」
京志の答え。
「舌に口内炎できて、すっごく痛い」
ぺろり、と舌を出してくれた。
舌の先に大きな口内炎。
「うぁ、痛そう」
「うん、まあ、2,3日で治ると思うけど……」
俺の率直な感想に、京志の声は心底辛そう。
ふと考えた。
『辛そうな京志』、『舌に口内炎』……。
……つながってひらめいた。
「口内炎、やっぱり早く治った方が良いよな?」
「痛いもん、早く治って欲しい」
京志の言葉は予想した通りで、期待してた答えだった。
だから、ちょっとだけにやり、とした。
「よし!
口内炎、早く治そう!」
京志はまだ俺が何を企んでるか分かってない。
と言うか、こんなに早く分かられると困る。
「早く治す、ってどうやって?」
京志の頭の上に『?』が浮かぶ。
「原始的な方法がいちばん効き目あるよな?」
俺の問い。
「原始的? どう言うこと?」
もちろん質問に質問が返ってくる。
想定内。
「野生の動物は怪我したらどうやって治す?」
もう一回質問。
「動物……?
……舐める?」
「あたりっ!」
京志の答え、俺が言って欲しかったことずばりを言ってくれた。
「つまり、口内炎を舐めたら早く治る、と言いたいと?」
京志の声は少しあきれてる。
「その通り!」
「はぁ……」
俺の言葉に京志はため息で返事した。
「口内炎なんよ、口内炎っ!
口の中だから、いつでも唾で消毒されてるって」
京志の言葉に返す。
「いや、『唾』の効き目が50%で『舐める』の効き目が50%かも。
それに、京志が痛がってるのは見たくない。
できることは何でも試そう」
京志からあきれた声で言われる。
「舌にできた口内炎をどうやって舐めろと?」
「それは大丈夫。俺が舐めるから」
俺の名案。
「はぁ……」
またため息で返事が返ってきた。
「つまり、今日はそう言うシチュエーションでスタート?」
「んー、まあ、そうかな。
でも、口内炎を治せたら嬉しい」
さすが京志、しっかりと分かってくれた。
「一司ってさ、ホント、いろいろ思いつくね」
「その方が楽しいから。
で、する?」
最後の確認。
「今日のはちょっと強引すぎ……」
と言いつつも、京志は体を俺に向けてくれる。
まぶたを閉じて、くちびるをついっ、と尖らせてくれた。
京志、キス待ちOK!
俺は京志を抱き寄せてくちびるを合わせた。
少しの間そうしてから、舌を伸ばした。
京志の中に入って口内炎に触れた。
京志の体がびくっ、と振るえた。
やっぱり痛いらしい。
一旦舌を止める。
ちょっとしたらその状態に慣れてきたようで、京志の体から力が抜けてきた。
その後は、二人で力を合わせてお互いをめいっぱい感じ続けた。
了