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    神の作り方神の作り方

    僕は、何も取り柄のない子供だ。
    何の取り柄もない…だからこそ害もない、そんな子供だ。
    そう言う意味では親の育て方、住んでいる村ーーすなわち環境が良かったのだと思う。

    両親を含む、村に住んでいる害のない人々。
    ただ無邪気なだけの、害のない人々。
    僕は、そんな害のない「村」が愛しい。

    ーーー村が干ばつで、飢饉が起きるまでは。

    飢饉が起きた村は、一般的には人身御供として、子供が生贄になる。
    村で一番幼いのは僕だ。僕はきっと生贄になるのだ、と思っていた。
    そして実際、僕は選ばれた。

    予想とは変わった形でーーー



    「生贄」という体裁を嫌ったのか否か、村長は僕を、神として祀りあげることにしたらしい。
    村に形だけでも神を作り祀りあげ、雨乞いと同じように、神に信仰を集めて捧げ、干ばつした村に雨を降らせるつもりらしい。

    まず、身体を清められた。
    ーー神に相応しい身なりであるように。
    次に、長時間の瞑想を日課にするよう、命じられた。
    ーー神に相応しい、豊かな気を養うために。
    次に、髪を切ることを禁じられた。
    ーー神に相応しい豊かな気を、髪に気を留めるために。
    次に、言葉使いを徹底的に修正させられた。
    ーー神に相応しい言葉使いで、話せるように。
    最後に、神に相応しい倫理観を叩き込まれた。
    ーー神の視点で、物事を判断できるように。

    神としてあるべきことを叩き込まれていく度、私の中の「何か」が削がれていきました。
    「何か」が削がれていく度に、元々黒かった私の髪は、白く透き通っていきました。

    最初は、私の髪が白くなっていくのを
    「神に近づいている」と喜んでいた村人達も、私の黒髪の割合が少なくなっていくにつれ、畏怖の眼差しで私を見るようになりました。

    挙句の果てには、私の両親は「早く人間に戻ってください」と泣き出す始末。

    なんと傲慢なのでしょう。

    だから私は可能な限り、穏やかに努めて答えたのです。

    「これが、貴方達の望んだことでしょう?」とーーー


    私の言葉を本当の神様が聞いていたのか、その後急激に天気が崩れ、干ばつだった村が全て水に沈んだのは笑えましたね。

    これはきっと、神を冒涜した罰なのです。
    行き着くべき結果だったのです。

    ーーーそして私は人としての生を終え、本当に神になりました。



    神になってだいぶ経ちましたが…
    それでも私は、何も取り柄のない神です。
    何の取り柄もない…だからこそ害もない、そんな神です。

    今は亡き両親を含む、村に住んでいる害のなかった人間達。
    ただ無邪気なだけだった、害のない人間達。
    私は、そんな害のなかった「村」を……それでも愛しく思うのです。

    おかしいでしょう?
    きっとこの感情は「私」の毛先だけ黒い髪が完全に白くなるまで、残り続けるのでしょうね。

    ーーー以上が「神」の作り方です。
    参考になりましたか?
    ご静聴ありがとうございました。
    貴方に「神」の加護があらんことをーーー

    end
    あいと Link Message Mute
    2023/05/22 18:28:02

    神の作り方

    1人の少年が神になる話。
    案外、神は作れるのかもしれませんね?
    暇つぶしになったのなら、嬉しいですー

    [2021/5/4にツイッターに投稿したものと、同じ内容です]

    #オリジナル  #創作 #ホラー  #切ない  #悲しい

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