李雄はどうしたって人間界に帰ることができないと理解していた。
だからこそ残してきた家族のことやいろんな未練を全部捨ててまで、
こっちの世界に馴染もうとして、でも魔法のことなんて全然理解できなくて。
だからこそ肉弾戦でごまかしてみたり、知識をいろいろ蓄えてみたり、
たくさんたくさん努力して、魔法界の人間らしくあろうとした。
でも、だからって本当になれるわけじゃなくて。
他人からすればほんの些細な、あるいは全く気付かないような、細かい・・・
とてもとても些細なこと。
でも李雄にとってはそれがとてつもなく大きなこと。
李雄はもっともっと魔法を活用できるようになりたい。
なぜならそれが李雄の考える『魔法界の人っぽさ』だから。
ユーリイやレイを見ていて思った、それっぽさだから。
それで思い出した、一つの話。
「なあ李雄、どこだったか忘れたけどさ。コロシアムってのがあるらしいぞ」
「へえ」
「腕試しにはちょうどいいそうだ、おれは興味ないけど」
「いいじゃん、一回くらい挑戦してみようぜ」
「先輩のいうことは絶対、とか?」
「卒業してからでも構わないけど?」
「じゃあ、おれが卒業するまで待って」
「わかった」
・・・・と、ここまではユーリイとの勉強会のひとこま。
卒業してから、特に行くアテもないので、
その話を頼りにコロシアムへ行ってみた。
適当な試合を見学して、純粋に、「すげえ」と思う。
姉以上の大きな壁を見た気がして、自然とその壁を越えてみたくなって、
それなら、じゃあ、やってみようかな?って。
週末は星歌の手伝いをするので、平日の5日間だけ。
ちょっとだけ、行けるところまで行ってみようかな?
って、軽い気持ちで参加することにした。
最近ではちょっと慣れてきたのか肉弾戦が強くなりましたとさ。
魔法はちょっとずついろんなことを試している最中。
だが、彼は想像力が乏しい。
なので、昔読んだ漫画やゲームの水属性魔法を
必死に思い出しながら、なんとか自分に合うように
改良を加えている。
・・・のだが、考えるのに疲れてきて
「むしろこの魔法の使えなさは個性じゃないか?」
という考えも出てくるほどにはぐったりしている。
アルスはそんな李雄を見守りながら、
でも、彼の目標、つまり『魔法界の人っぽくなる』ことには
どうしても理解が出来ていない。
李雄は李雄のままでいいのになあ、なんてさ。
どうでもいいけどこのことに関してだけは
イメージ曲がしっかり決まってる。
→Get Over The Barrier!
零の軌跡ってゲームの通常戦闘曲。
ゲーム内で散々言われている『壁を乗り越える』というテーマが、
なんとなく、李雄にしっくり来たのが理由。
現在の決定事項まとめ。
李雄→コロシアムに挑戦しながら魔法を使いこなしたいと思っている。
星歌→週末に個人的に補習を開く。勉強会のようなもの。
ユーリイ→草属性の人を観察しながら魔法の勉強。
レイ→特に変わった様子もなく平和に学園生活を満喫。
そうしてあと一人、光属性の子がほしい。
ユーリイ関連で魔法界の人。というのは決まったんだけど。
あと鳥かご。
詳しいことは未定だし、それよりやることがあるのでこれは保留・・・
とりあえず「ヴェルベット・ヴェンツェル」は決定として
名前は・・・性別すら決まってない以上決めらんないな。
やっぱり、李雄が「それ」を知ったとしたら
「そこまでしてやる必要あったのかよ!」
って思うだろうなあ
そうして覚悟の強さを知って、諦めない強さを知って、
あの人の強さはそこから来ていたことをやっと理解するのかな。
どうしたって無理だと諦めて、逃げていたばっかの自分恥じたりさ。
変わるわけなんてないよって見ていた戦いも、
たくさんの意味と強い覚悟があったと知って。
今からでも間に合うかなあ、
人の身にそれは重いものかなあ、
たくさんの人が挑戦している難題を。
「僕はその一端を背負うことができるのか」
なーんて、悩んだりして。
結局のところ越えてみたい壁の内の越えられる一人だから、
なんとかしたいと思うはずだろうなあ。
帰ることについてはどうしても意欲がわかないだろうし、
一度諦めた夢をもう一度追えるほど強くはないからなあ。
夢を追うその人を助けるという意味では追ってるのかな。
李雄自身が私と同じハッピーエンド主義だから。
いろんなツテや星歌の知識、ユーリイの夢とレイのいうサムライさん。
そんなものを使って、調べて、調べて、でも結果は出なくて、
いつもならそこで諦めるけどこの事だけは諦めなくて、
越えるために、越えたことを証明するために、
バカなことやって笑いあったり、美味しいもの食べたり、
人生を楽しんでもらいたくて、とか。
「そんなこと望んでいない」って言われたとしても
「僕は『アンタ』の為にやってるんじゃなくて、アルスに会いたいだけなんだよ」
とか言いそうだなあ。どんなツンデレだよ。
なんとなーく思ったことでしたとさ。
ユハ・ヴェルベット・ヴェンツェル!
常に幻見てる系電波男子かっこはぁと