イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    I do not know you.
     パーセンテージの書かれた瓶に首を振れば相手の目が丸くなる。アルコールで思い出すのは病室の白い壁だ。記憶は根深く、それが道楽と知ってからも今一つ手を伸ばす気になれずにいる。食事も同様で、必要十分、明日に希望が持てるだけの量があればいい。
     現代と言う名をした過去はそこかしこに充足がある。
     ひっそりと呼吸も憚る夜のこと。休日という概念に足元をふらつかせながら、自分は友人の家で酒に浸っている。鉢合わせただけの此方の腕を掴み、いい酒があるんだと笑った相手はぐいぐいと腕を引いて自分を部屋に押し込むと早々にグラスを満たしてしまった。こんないい日を祝わないなんて罰が当たると、一体今日が何の日なのか告げることもせず高らかに杯を掲げた。Cheers! 鳴らされた硝子の音が涼やかで、その美しさに免じて同席している。楽しげな相手と意味の分からない幸いにグラスを翳す。

     それを三回繰り返し、四回目で諦めた。

     机にだらしなく伏せると水滴の浮いた硝子を指で撫ぜ、落ちそうな瞼を瞬きながら視界を探す。まるで変わらぬ顔色で愉快気に杯を煽る姿を横目に、聞きたいことがあるのだと胡乱に呟いた声を、彼は見落とすことなく拾い上げた。聞いていると示すかの如く、机に這うだけのこちらの掌に熱を重ねてくる。目を閉じても相手がそこにいるのだと分かる。熱量、澄ませた鼓膜に潜めた息遣い、微かに脈打つ心臓が刻んだ。口を開くには十分の青。
    「たまに、俺にひどく優しくするだろう。何でだ?」
    「――――」
     答えの代わりに重なる熱が無言で指を這っていく。指先から関節を辿って手の甲を覆い、手首へと至り更に深くを探ろうとする。触れた箇所から骨の形が顕わになって、肉を断たれる錯覚に目が回った。仕草の色香にも素知らぬ振りで口角を上げている。一つ残らず捌いて数えた、未来の出来事が幾重にも重なり層を生む。あれらは夢になった。今はもう無い。
    「Silver」
     曖昧に繰り返すだけの夢は妄想以上に成り得ないと決めた。例えば彼の背中を殴りつけたことも、蹴られた頭の鈍痛も、全て夢だと決めている。幾度繰り返したところで夢は夢。現実に食い込まない、食い込ませない。虚構と見做した妄想が記憶に紛れようと、そんなものは既に茶番と化している。貴方が死んでしまった未来はもう無くて、自分が殺した命ももう無くて、こんなものは全部形を持たない陽炎だ。
     未来を救う英雄が、何者でもない自分の頬を撫ぜて言う。
    「俺がもらった希望の話さ」
    「……」
    「あの時叫ばれなかったら失くしていた。だから、今も大事にしてるんだ」
     穏やかな声音に合わせて指先が額を辿る。それがどうして自分と繋がるのかなぞ分かるはずがない。慈しむべきは自分ではない。何も覚えていない、美しい未来しか知らないはずの、自分に優しくする義理など彼にはない。俺はなんにも不幸じゃないよと言いかけた言葉は酩酊に紛れて歪んでしまう。酔いにつられて伏せた瞼から涙が落ちそうで、堪える。なんだってこんな、意味の分からないことばかり抱えて奥歯を噛み締めなければいけないのか、答えなんて欲しくない。全部夢だと笑ってくれれば苦笑うだけで済んだだろう?
    「いい子だ。お前は、昔からそうだったよ」
     掌が柔らかに額を往復する。昔なんて知らない。俺は未来に産まれるだけの可能性で、英雄の名前すら知らなかった。そんなのは全部勘違いだ、ヒーロー。夢だって言ってくれ。俺はアンタを殺してなんかいないし、誰も死ななかったし、失くさなかったんだよ。
     馬鹿だと笑って全部妄言にしてくれなきゃ困るんだ。

    34_6 Link Message Mute
    Feb 14, 2020 12:54:33 PM

    I do not know you.

    シルバーとソニックで記憶と夢のこと。ソニシル。 ◆新ソニの記憶がある人と、あるかも曖昧な人の話。

    more...
    Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    OK
    模写・トレース
    NG
    • 恋人協定GUNの病院に担ぎ込まれたシャドウ。
      そんな彼の元に現れたソニックは一つの提案をする。
      「看病される理由が必要? なら一週間恋人になろうぜ」

      シャドウ視点によるシャドウとソニックの話。
      (表紙:popoco様/2011年発行同人誌の再録)
      #sonic
      34_6
    • 喝采スマX時点の他社組。ブログから再掲。
      #スマブラ
      34_6
    • Who are you.スマXでのある日の光景。他社組やら鼠組やら。
      #スマブラ
      34_6
    • クローゼットに詰め込んだ他社組で女装あり。
      #スマブラ
      34_6
    • Escape from the world.ソニックと分かたれてしまったダーソニとスパソニの話。グロ有。2010年より再掲。
      #sonic
      34_6
    • Lose one turn未来で出会うかも知れない三針の話。 ◆気に入っていたので、2013年より再掲。
      #sonic
      34_6
    • 観測者にはもうならない不在のソニックを探すスパソニ&ダーソニと、彼らを見ていたシャドウの話。
      #sonic
      34_6
    • 今も届かない。死なない世界の殺伐とした他社組。針と蛇。
      #スマブラ
      34_6
    • The sky is blue.シャドウと少年とシルバーの、あるかも知れない未来の話。 ◇popoco(@popoco_623)さんの設定【https://www.pixiv.net/artworks/71084065】をお借りしています。
      #sonic
      34_6
    • brotherソニシル。『A beautiful night.』の先にあるかも知れない未来のこと。
      #sonic
      34_6
    • something foundシャドウとソニック。2013年より再掲。とある作品へのオマージュでした。
      #sonic
      34_6
    • メモリーフライト未来捏造で、GUNでバディ組んでるシャドウとシルバーの幕間。
      #sonic
      34_6
    • A beautiful night.ソニシル。どこにいるかも分からない。
      #sonic
      34_6
    • Antinomic appetiteソニシャソニでグロ(カニバ)有。2010年より再掲。 ◆好きだと言って下さる方がいたので。
      #sonic
      34_6
    • Is the sky blue.シャドウととある少年の、少しだけ未来の話。 ◇popoco(@popoco_623)さんの設定【https://www.pixiv.net/artworks/71084065】をお借りしています。
      #sonic
      34_6
    • 朝焼け前に射殺して夜の明けきらない室内に、それは音も無く転がっていた。昨日、一昨日、それよりもずっと前から、ソファの上で死んだように眠っている、黒い塊。カーテンの隙間から漏れた光が少しだけその体毛を照らし出す。そうされることで、心なしか体毛が藍色に映る。
       澱んだ水面を見るようだ。
       小さな足音と共に歩み寄るも、ソファの上の男は身じろぎ一つしなかった。これも、いつもと変わらない。その肌に触れる時だけ男はゆっくりと目を覚ます。それ以外の時は、眠っている。もしかしたら起きているのかも知れないが、その眼は固く伏せられているので分からない。此方にもわざわざ男を起こす理由は無い。そうして幾日も、自分達は冷たいこの部屋で朝を迎え夜を潰す。時間を忘れたように変わらぬ日々を繰り返す。
       ソファの背に手をかけて男を覗き込む。今日も固く閉じられた瞼を見下ろすと、隠れた眼が嘗て宿していたものが浮かんできた。眼だけではない。男が纏っていた、空気に色がついているのではないかと思えるほどの明確な感情。人を射殺す程に燃えていた気配は形を潜め、今はその四肢だけがただ、屍のように転がっている。無機物に近かった。無機物ですらないのかも知れなかった。自分達は。
      「死ぬのか」
       指に触れた感触は冷たい。相手は、長い長い沈黙の後に短く、さぁと掠れた声を漏らした。錆び付いた音は誰をも殺さず床に落ちる。鋭利な煌めきは何処にも無い。動かない身体。伏せられた目。その隣に腰掛け、自分はカーテンの隙間に視線を向けた。
       銃声は聞こえない。硝煙の香りもしない。此処は平和な暗い部屋で、外は恐らく戦場だろう。緩やかに人々が死んでいく、そんな世界だ。自分達の素体である彼は飛び出していったまま帰らない。英雄は必要とされたが、それは依り代としての英雄であって、つまり自分が呼び出されるような事態ではないらしい。単純な力が役に立たない世界を、彼は今走っている。
       毎日その足で自らを踏みつけながら。
      「……」
       隣で横たわる背に指を這わせる。慰めるでもなく、励ますでもない。この男は死ぬのかも知れなかった。英雄から分かたれたこの黒い質量が単なる憎悪であったなら、こんな形で弱ったりはしなかっただろう。憎悪や破壊欲といった単純な形なら、彼より余程早くに外へと飛び出して、自由の限りを尽くしたはずだ。
       そうではなかった。
       この男は、そうしなかった。
       部屋には耳も目も閉ざした男と、必要とされなかった自分が残った。残されたものが二つ並んだところで、そこには恐らく何の意味も無い。慰め合うとか、励まし合うとか、そんな意味があって二つ置き去りにされた訳ではない。結局、現実と向き合えるのは彼だけだったという、それだけのことなのだ。そうして国家や大衆を恨むこともしない彼が抱えた感情が一体何なのか、ただの力である自分には理解できない。できるのは、明日このソファに誰もいなかったらと想像することぐらいだった。
       動かない男の隣で自分も静かに目を伏せる。喚き暴れるほどの価値も認められない世界に退屈して、男は早々に眠り込んだ。片隅で、もう目覚めなくてもいいと思いながら息を継ぐことを放棄した。感情が消える、それは一つの終焉に違いない。そして一つの終焉を迎えた後で残った世界に意味を見出すかは、彼が決めることなのだ。どんなにか周囲に望まれたところで、どんなにか綺麗なものが残ったとして、彼が人一人殺した後に見る世界が如何ほどの意味を持つかは、彼だけにしか決められない。そこに力が介入する余地などあるはずもない。
      「……役立たずは、俺の方かも知れないな」
       笑みを零すと彼を思い出せる気がした。
       部屋の主は、今日も帰ってこない。
      夜の明けきらない室内に、それは音も無く転がっていた。昨日、一昨日、それよりもずっと前から、ソファの上で死んだように眠っている、黒い塊。カーテンの隙間から漏れた光が少しだけその体毛を照らし出す。そうされることで、心なしか体毛が藍色に映る。
       澱んだ水面を見るようだ。
       小さな足音と共に歩み寄るも、ソファの上の男は身じろぎ一つしなかった。これも、いつもと変わらない。その肌に触れる時だけ男はゆっくりと目を覚ます。それ以外の時は、眠っている。もしかしたら起きているのかも知れないが、その眼は固く伏せられているので分からない。此方にもわざわざ男を起こす理由は無い。そうして幾日も、自分達は冷たいこの部屋で朝を迎え夜を潰す。時間を忘れたように変わらぬ日々を繰り返す。
       ソファの背に手をかけて男を覗き込む。今日も固く閉じられた瞼を見下ろすと、隠れた眼が嘗て宿していたものが浮かんできた。眼だけではない。男が纏っていた、空気に色がついているのではないかと思えるほどの明確な感情。人を射殺す程に燃えていた気配は形を潜め、今はその四肢だけがただ、屍のように転がっている。無機物に近かった。無機物ですらないのかも知れなかった。自分達は。
      「死ぬのか」
       指に触れた感触は冷たい。相手は、長い長い沈黙の後に短く、さぁと掠れた声を漏らした。錆び付いた音は誰をも殺さず床に落ちる。鋭利な煌めきは何処にも無い。動かない身体。伏せられた目。その隣に腰掛け、自分はカーテンの隙間に視線を向けた。
       銃声は聞こえない。硝煙の香りもしない。此処は平和な暗い部屋で、外は恐らく戦場だろう。緩やかに人々が死んでいく、そんな世界だ。自分達の素体である彼は飛び出していったまま帰らない。英雄は必要とされたが、それは依り代としての英雄であって、つまり自分が呼び出されるような事態ではないらしい。単純な力が役に立たない世界を、彼は今走っている。
       毎日その足で自らを踏みつけながら。
      「……」
       隣で横たわる背に指を這わせる。慰めるでもなく、励ますでもない。この男は死ぬのかも知れなかった。英雄から分かたれたこの黒い質量が単なる憎悪であったなら、こんな形で弱ったりはしなかっただろう。憎悪や破壊欲といった単純な形なら、彼より余程早くに外へと飛び出して、自由の限りを尽くしたはずだ。
       そうではなかった。
       この男は、そうしなかった。
       部屋には耳も目も閉ざした男と、必要とされなかった自分が残った。残されたものが二つ並んだところで、そこには恐らく何の意味も無い。慰め合うとか、励まし合うとか、そんな意味があって二つ置き去りにされた訳ではない。結局、現実と向き合えるのは彼だけだったという、それだけのことなのだ。そうして国家や大衆を恨むこともしない彼が抱えた感情が一体何なのか、ただの力である自分には理解できない。できるのは、明日このソファに誰もいなかったらと想像することぐらいだった。
       動かない男の隣で自分も静かに目を伏せる。喚き暴れるほどの価値も認められない世界に退屈して、男は早々に眠り込んだ。片隅で、もう目覚めなくてもいいと思いながら息を継ぐことを放棄した。感情が消える、それは一つの終焉に違いない。そして一つの終焉を迎えた後で残った世界に意味を見出すかは、彼が決めることなのだ。どんなにか周囲に望まれたところで、どんなにか綺麗なものが残ったとして、彼が人一人殺した後に見る世界が如何ほどの意味を持つかは、彼だけにしか決められない。そこに力が介入する余地などあるはずもない。
      「……役立たずは、俺の方かも知れないな」
       笑みを零すと彼を思い出せる気がした。
       部屋の主は、今日も帰ってこない。
      34_6
    CONNECT この作品とコネクトしている作品