国が推奨する「自然な」食べ物「え〜、ここ十年以上に渡って、厚生労働省は国民に『単なる自然食品ではなく、人間にとって本当に自然な食品を食べましょう』と云う啓蒙活動をやられてきた訳ですが……」
野党議員は、国会でそう質問した。
「え〜、では、参考人、御回答をお願いします」
「はい、その通りです。人間の歯を見れば肉を食べるように出来ているのは明かなので、タンパク質は植物性よりも動物性のものを、動物性のモノの中でも、魚介類よりも主に陸上に生息する哺乳類の肉がより『自然』であると云う啓蒙活動をやってきました」
厚生労働省の高官は、そう答えた。
「それだけでしょうか?」
「他にも、体が欲っしているモノこそが、より『自然』であるのは自明ですので、甘いモノや脂っこいモノを食べたい時は、我慢せずに食べろ、と云う啓蒙も行ないました」
「その結果、どうなりましたか?」
「はい、我が国の平均寿命は大幅減に下がりました」
「それで良いと思ってるんですか?」
「だって、年金を破綻させない事も、我が省に課せられた使命ですので」