万死に値する ……何回目の転生だろう……?
あと……何回転生すれば良いのか……?
もう大概の変な世界は驚かなくなった。
意志を持った恒星だった事も有る。
コンピュータ・ネットワーク上の情報生命体だった事も……。
最初の世界の人間にそっくりなのに植物から進化した生命体。
恐竜から進化した知的生命体。
人間またはそれに相当する生物が滅んだ後、魔法で作られたらしいゴーレムのようなモノが自己複製で増えている世界。
スライム状の知的生命体と……その天敵である全く知性が無い人間に似た獣が争う世界……。
その程度では、「ありきたり」だと思うようになった。
それでも……多分……定められた転生回数の十分の一も消化していまい……。
「ブヒッ?」
どうやら……今回は……最初の世界のありきたりなファンタジー・ロール・プレイング・ゲームのような世界だった。
ありきたりだ……。
一応、人型生物のようだが……足は……最初の世界のブタに似ている。顔もそうだろう……。
ありきたりだ……。
「居たぞ‼」
どうやら……最初の世界のありきたりなファンタジー・ロール・プレイング・ゲームでは……主人公側として使われるような種族が……この世界での私の「敵」らしい。
ありきたりだ……。
敵の放った攻撃魔法や矢が次々と私の体を貫き……。
くそ……これだけは……何度、体験しても「ありきたり」だとは思えない。
この世界では……運良く転生してすぐ死ぬ事が出来た。
「国民の皆様の政治への信頼を損なうような真似をした事、誠に申し訳ありません……」
畜生……何で、俺だけが……。
「検察の起訴内容を全て認めます」
ああ、検察は嘘は言ってねぇよ。俺より悪質な真似をしてる奴らを何故か見逃しやがってるだけで。
「私のやった事は、万死に値し……」
「えっ……ええっと……」
あれ? 前回の裁判長の声と違うような気が……裁判所の人事異動の時期は、もう少し先じゃなかったか?
ふと……前を見ると……そこに居たのは……閻魔大王……少なくともそうとしか呼べない外見をした「何か」だった。
「す……すまん……そなたの世界で……いきなり全世界規模の核戦争が始まったせいで……そなたは定められた寿命より先に死んだので……異世界に転生させてやろうと思ったのだが……ああ、なるほど……それが望みか……」
「はぁ?」
「確かに、そなたは……そなたの世界のそなたの国のそなたの時代の基準で、色々と罪を犯しているようじゃな……。いじめに……立ち小便……カツアゲに……裏口入学に……脅迫に……セクハラ・パワハラに……相手の同意を得ていない性行為に……汚職と……」
「あ……あの……」
「では、望み通り、一万回転生して、その度に非業の死を遂げるようにしてやろう」
死の瞬間……脳裏を過った走馬灯は……この……いつ終るとも知れぬ繰り返しの始まりの時の光景だった……。
ところで、この繰り返しが終った時……私はどうなるの……いや、まだ、当分先の事なので、その時になって考えるか……。