悪夢のターゲティング広告 ──知らぬは本人ばかりなり──「だから、どうなってるか聞いてんだよッッッ?」
どうやら、あっちこっちを盥回しにされたらしい中高年男性らしき男は、こっちが女だと判ると怒鳴り散らし始めた。
「いや、ですから、それはターゲティング広告と言いまして、そちら様が良く御覧になっているWEBページなどを元に……」
「それでも変だろッッッッ‼」
「で……ですが……」
「頭おかしいのかッッッ⁉ どこがターゲティング広告だッッッ⁉」
「ですので、ウチが様々なサイトに提供している広告は、AIによる分析を元に……」
「うるせ〜、クソッッッッ‼」
それから1時間以上、そのクレーマーはヒステリーだかオステリーだかを起こしたらしく、本人は極めて理性的かつ論理的なつもりだろうが、他人からすると「うきゃきゃきゃきゃきゃあぁぁぁぁッッッッ‼」と叫んでいるようにしか聞こえない人間の言葉ではない何かをまくし立て続けた。
「またですか……」
「ええ、今月に入って、もう百件近くです。
グルメサイトや食べ物関係の動画やWEBページを見てたら、
スカトロもののエロ・
コンテンツをお勧めする広告が表示されたってクレームが……」
「クレーマーの特徴は……ふうん、中高年・男性・独身で……趣味は……ああ……」
「ああ、このタイプの人達は……」
「しょ〜もない連中だよなぁ……
最近、
SNS上で、こいつらの事を『
糞蠅』
って呼ぶのが流行ってるんでしたっけ?」
「そうそう、本人達は気付いてない……あっ……」
「……あっ……」