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    ほのぼのな日常 第19話 Happy Happy Cheerful Kiss先に記しとく設定
     衣笠晶(きぬがさ あきら):男性、高校1年生
     今出川乃那(いまでがわ のな):女性、高校2年生
     と言うことで。


     僕は晶。
     現在、高校1年生。
     この春に高校生になって、少し前に初めての試験、中間試験があった。
     試験の結果は「なんとか」だった。
     乃那さんに勉強を見てもらってたから結果を出せた。
     でも乃那さんにそう言ったら、
    『晶くんはできるんだからっ』
     って言われた。
     乃那さん、生まれる前からの幼馴染で今は僕の恋人。
     乃那さんには魅力がいっぱい、多すぎる。
    『僕なんかが乃那さんに釣り合うのかな?』
     前にストレートに尋ねたことがある。
     乃那さんの答えは、
    『じゃあ、私なんかが晶くんに釣り合うの?』
     だった。
     つまり僕と乃那さんはぴったり釣り合ってる、ってこと。

     春と梅雨の季節の間のある日。
     キーンコーン、キーンコーン、
     午前中の最後の授業が終わった。
    「起立、礼」
     を済ませて昼休み。
     僕のお昼ごはんはお弁当。
     乃那さんが毎日作ってくれてる。嬉しい。
     だから乃那さんと待ち合わせ。
     僕の教室は1階、乃那さんは2階。
     その上に3階があって、屋上がある。
     お弁当は屋上で食べる。
     でも待ち合わせは1階。
     理由は食堂で飲み物を買うから。
     階段の下で乃那さんを待つ。
     手提げ袋を持った乃那さんが来た。
    「お待たせ、晶くん」
    「えっと、僕も来たところです」
     いつもこんな感じ。
    「じゃあ、行こっ」
     僕の腕に腕をからませて、乃那さんはちょっとばかり強引に歩きだした。
     僕もあわてて歩き出す。
     これもいつものこと。
     もうひとつ「いつものこと」がある。
     乃那さんは僕と腕を組んで歩いてる。
     腕の組み方はどちらかと言うと「しっかり」気味。
     だから時々、乃那さんの胸が僕の腕に、ふにっ、てなる。
     乃那さんの胸、おっきい、を感じてしまう。
     食堂まではすぐ。
     食堂の端にある自販機。
     紙パックのジュースとかがならんでる。
    「乃那さん、何にします?」
     小銭を入れながら尋ねる。
     答えは分かってるんだけど。
    「もちろん牛乳ね!」
     乃那さんは牛乳のボタンを押した。
     ことん、と紙パックが落ちた。
    「晶くんは?」
    「えっと、僕は……」
     ちょっと迷ってからアップルジュースを選んだ。
     ことん、と落ちた紙パックを取り出した。
    「でも良いの?
     毎日、牛乳もらってるけど……」
     乃那さん、大丈夫かなって感じの声。
    「ぜんぜん良いです。
     乃那さんの分も、母さんからお金もらってますし、
     それにお弁当作ってもらってますから」
    「うん、そっか、
     そだねっ」
     乃那さんの声から不安が消えた。
     来た道を戻って今度は屋上を目指す。
     もちろん腕を組んで。
     だからやっぱり時々、ふにっ、てなる。
     組んでる腕をちらっと見て、牛乳のパックをちらっと見た。
     やっぱり関係あるのかな?
     つい思ってしまう。
     階段のいちばん上、古くて重たいドアを開けた。
     ドアの外、屋上に出る。
     雲ひとつない青空が広がってた。
     爽やかな風が吹き抜けてる。
     屋上のあちこちでお昼ごはんが始まってた。
    「んーと……、
     あ! あそこ空いてる」
     乃那さんが指す先、屋上の端の目立たないベンチが空いてた。
     ベンチにかけ寄る乃那さんを追いかける。
     ふたりでベンチに座った。
     乃那さんが手提げ袋からふたつ、お弁当箱を取り出した。
     ひとつは飾り気のない大きなお弁当箱、もうひとつは小さくてかわいい感じのお弁当箱。
    「はい、晶くん」
    「ありがとうございます」
     乃那さんから大きい方を受け取る。
    「あのね、パパに新メニュー教えてもらったの」
    「新メニューですか、嬉しいです」
     お弁当箱を開けると色とりどりのおかずがならんでる。
     その中に初めて見るのがひとつ。
    「えっと、これ、ですか?」
    「うん、そう。
     私は良い感じって思うんだけど、どうかな?」
     乃那さん、ちょっと不安そう。
     僕は「新メニュー」にお箸をのばす。
     ひとくち食べて。
    「うん、美味しいです!」
     お付き合いで、とかじゃなくって本当に。
    「よかった、ちょっと心配してた」
     乃那さんの表情、不安が消えて笑顔が戻った。
     その後はふたりで話をしながらお弁当を食べる。
     楽しい時間。
    「乃那さん、本当に料理、上手ですね
    「んふふー、ありがとっ。
     やっぱり好きだから、かな?」
     乃那さんのお箸が止まった。
    「私ね……、料理とか、いろんな家事とか、上手くなりたいの。
     ……命おばさんみたいになりたいな、って」
    「母さんみたい、ですか?」
     聞き返す。
    「うん、
     命おばさんって、仕事もすごくって、家事とかもすごくって、
     ……ママがあんなのだから、憧れちゃうのかな」
     乃那さんの理想の姿は母さんで、乃那さんは母さんみたいになりたいってよく言ってる。
     僕は京志さんの方が良いって思うんだけど……。
     話が少し途切れた後、またお箸を動かそうとしたところで。
    「あ、晶くん、
     おべんとついてる」
     そう言って、乃那さんは自分のほっぺをちょいちょいと指で示した。
    「えっ、どこですか?」
     お弁当箱を置いてほっぺを手で探るんだけど見つからない。
    「晶くん」
     乃那さんの声に手が止まった。
    「えっとね、ここ」
     乃那さんの顔が近づいて、次の瞬間、
     ちゅっ、
     僕のほっぺに乃那さんのくちびるが触れた。
    「えっ!?
     の、乃那さんっ」
     驚くしかない。
    「ちょっと……、恥ずかしいね」
     乃那さんの顔、ちょっと赤らんでる。
     でも、これってもしかして次は……、
     乃那さんだからありえる、よね?
    「ね、晶くん、
     私にもおべんと、ついてないかなっ?」
     えっと、……やっぱり。
     乃那さんらしいです。
     でも「ついてない」なんて言えない訳で……。
    「んっと、
     ……ついてます」
     ついてる、って言ったから、次はやっぱり僕も同じように……。
     わくわく期待してる乃那さんのほっぺに顔を寄せて、ちっちゃなキスをした。
    「んふふっ、ありがとっ!」
     その声を聞きながら顔を離すと、乃那さんは恥ずかしそうで、嬉しそうで、とにかく笑顔だった。
     僕も笑顔になる。
     ふたりで残りのお弁当を食べて、食べ終わったところで、
     キーンコーン、キーンコーン、
     予鈴が鳴った。
     あと5分で午後の授業。
    「あっ、急がないと!」
     乃那さんは手早くお弁当箱を手提げ袋に片付けて、
     僕は紙パックふたつを手にとって、
     急いで階段に向かう。
     階段を下りて、2階で乃那さんと別れる。
     別れ際に乃那さんが言った。
    「ありがと、晶くんっ!」
     それから僕に近づいて、続きは僕にだけ聞こえるように。
    「晶くんのほっぺ、おいしかったよっ!」
    「え?!」
     乃那さんはすぐに僕から離れて、小さく手を振ってから教室に急ぐ。
     僕は一瞬、頭の中が真っ白になった。
     キーンコーン、キーンコーン、
     午後の授業を告げるチャイムではっとした。
     教室まであわてて走って、すべりこみでセーフ。
     授業が始まって少しして、
    『晶くんのほっぺ、おいしかったよっ!』
     乃那さんの言葉を繰り返す。
     じゃあ、
    『乃那さんのほっぺもおいしかったよっ!』
     かな?
     ……これって、乃那さんはきっと、嬉しい、って言ってくれる。
     でも僕は……。
     ちょっと勇気がない。
     だけど乃那さんにきちんと伝えたい、
     伝えられるようになりたい、って思った。


    混沌野郎 Link Message Mute
    2023/03/29 18:51:51

    ほのぼのな日常 第19話 Happy Happy Cheerful Kiss

    晶くんの高校生活の楽しみのひとつは『乃那さんのお弁当』。
    今日も爽やかな青空の下で乃那さんと一緒にお昼ごはん。
    楽しいお弁当タイムの途中、乃那さんが「何か」に気がついて……。そんなお話。

    #オリジナル #創作 #ほのぼの #青春 #恋愛

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